July 06, 2007

ハイブリッドは一つじゃない

アメリカではプリウスが非常に高い人気を誇っています。


もちろん言わずと知れたトヨタのハイブリッドカーです。最近のガソリン価格の高騰も手伝って、その人気は衰えを知りません。最長で半年待ちになるほど予約が殺到しているそうです。いわゆる従来型のアメリカ人好みのクルマとは違いますが、その人気、ガソリン高だけではなさそうです。

燃費の悪い大型車からハイブリッド車に人気が移りつつあるとすれば、悪い傾向ではありません。しかし、必ずしも環境に負荷をかけたくないとか、エコだからハイブリッドカーに乗るのではなく、エコに気をつかっていますとアピール出来るから乗る人が多いのだそうです。

アメリカでのある調査によれば、プリウスを購入した理由について、自分を表現するためとの答えが、なんと6割近くを占め、排気ガスが少ないからなどの答えは全体の4分の1に過ぎなかったそうです。したがって他の車種にもハイブリッドはありますが、一目でわかるハイブリッド専用モデルのプリウスでなければダメなのだそうです。

アカデミー賞の表彰会場に有名俳優がプリウスに乗って登場したり、著名人の愛用がメディアで紹介されたりするなど、プリウスが一種のステイタスにもなっており、そのブランドイメージがしっかり確立しています。アメリカ人に、エコな人と見られたい、エコが「クール」だという意識の変化が起きているようです。

そのせいかプリウスは、日本より北米中心に売れています。日本の消費者は、同クラスのクルマと比較して車両価格が高く、価格差を燃費で相殺するまでには相当の距離を走る必要があることから、購入をためらう人も少なくないようです。「元をとる」ため余計に走るのでは、環境的には本末転倒になってしまいます。

メーカーは大排気量のクルマへもハイブリッドシステムを搭載し始めています。環境に配慮するなら排気量は小さい方がいいわけですが、言ってみれば、「ハイブリッド」は、もはや環境に優しいことの代名詞のようになっており、世の中に逆行する大排気量のクルマの免罪符として、ハイブリッドを搭載しているようにも見えてしまいます。

自動車会社も営利企業ですから、必ずしもその売り方を非難するつもりはありません。大排気量車でも燃費がいいに越したことはありません。でも環境への負荷という面から言えば、「パワフルなエコ」というスタンスには、矛盾を感じてしまうのも事実です。

TWIKEトワィク

そんなエコカーの代名詞のようになっているハイブリッドですが、考えてみればハイブリッドは、ガソリンと電動モーターの組み合わせに限りません。このスイス生まれのハイブリッドカー「TWIKE」は、電気モーターと人力のハイブリッド自動車です。人力とはペダルをこぐ力で、すなわち自転車と電気モーターのハイブリッドカーです。

なんだ電動アシスト自転車かと思う方もあるでしょうが、ちょっと違います。最近日本でも増えつつあるベロタクシーや、以前取り上げたベロモービルにも電動アシストが搭載されているモデルがあり、屋根やフードがついているなど似ていますが、こちらは電気のみでも走行できます。バッテリーカーにペダルがついている形です。

電動で走行する場合は、最高時速85キロとパワーもあり、航続距離も130キロに及びます。リカンベントのように寝そべった姿勢で乗車する二人乗りの3輪車で、全長260センチ、全幅120センチの、ちょっとかわいらしいですが、れっきとした電気自動車です。

平坦な道路では足こぎモードにしてエネルギーを節約すれば、さらに長い距離も走行できます。電動でも時速50キロで走行する場合、エネルギー消費量は100Kmで6Kwという効率の良さを誇ります。歴史は意外に古く、20年前に誕生し93年にシリーズ化が決まりました。

現在も小さな工場で作られているので、年産100台がやっとと言います。いま世界中で走っているものを合わせても1000台に満たないのですが、人気で注文に供給が追い付かない状態なのだそうです。円形のハンドルは無く、中央のスティックで操作します。

自転車と電動のハイブリッド電気・人力ハイブリッド

アンチロックブレーキもついていて、減速時には回生ブレーキとなって発電し、コンピュータで制御され、バッテリーに電力を戻すシステムもついています。都市部で使う分には十分実用的ですし、郊外へ出かけても、充電が無くなればペダルを漕げばいいだけです。

もちろんコンセントがあれば、どこでも充電可能です。フル充電には3時間弱かかりますが、ゆっくりと昼食をとって、おしゃべりでも楽しんでいるうちに、帰りの分が満タンになります。そんなスローな楽しみ方が似合う、お洒落なクルマでもあります。

これこそ、環境に優しいハイブリッドと言えるでしょう。雨にも濡れずにすみますし、二人横に並んでペダルをこぐのも楽しそうです。都市間の長距離の移動や大きな荷物の輸送には使えませんが、都市部での交通には必要にして十分です。ガソリンと電動のハイブリッドと違って、排気ガスや二酸化炭素を全く出しません。

同じように水しか出さない燃料電池車もクリーンと言われますが、水素をガソリンやエタノールから取り出すので化石燃料を消費する点は変わりません。水素ステーションのようなインフラが不要という点でも、燃料電池車より優れていると言えるでしょう。

トワイクTWIKE

ところで、昨日発表された今年上半期の日本の自動車販売台数トップ10のうち、6車種を軽自動車が占めました。最近は、若い世代を中心にクルマを単なる移動の手段ととらえる消費者が増えていると言います。日本の消費者は、ハイブリッドより軽自動車のほうが燃費や価格、スペース効率、維持費なとの効率がいいと考えているようです。

ハイブリッドにすることでも燃費は向上しますが、その分重くなり、価格も高くなるのであれば、軽自動車のほうが合理的という判断はあります。日本独自の規格である軽自動車が、多少小さくても受け入れられる土壌があることを考えれば、案外日本でも、この「トワィク」スタイルのクルマが普及する可能性があるのではないでしょうか。

現在トワィクはバッテリー込みで3百万から4百万円と、その価格がネックです。しかし、量産されれば価格も下がります。バッテリーの性能も日進月歩ですし、最新の軽量ボディーを作る素材も進歩しています。日本の技術力を持ってすれば、更に高性能で安くて使い勝手の良い「電動人力ハイブリッド」も開発可能でしょう。

ただ、メーカーの利幅は薄くなるかも知れません。エンジン回りは一切なくなりますし、軽量化のため、その他さまざまな部品が不要になります。いくら都市内と都市間で住み分けるとしても、自動車メーカーは積極的には作りたがらないことが考えられます。

だからと言って、その姿勢を一概には非難出来ません。自動車産業は裾野が広く、多くの雇用も創出しています。誰しも流通や交通面でその恩恵も受けています。日本経済に与える影響を考えれば、例え都市部だけであっても、そう簡単には従来型のクルマを売れなくすることは出来ないでしょう。

より環境にやさしい未来の乗り物か

経済と環境の両立は容易なことではありません。しかし、今後だんだん大きなクルマが売れなくなり、人々が真の意味で環境を考えるようになり、不要不急のクルマの利用が減っていくとするならば、人力ハイブリッドは十分現実的な選択肢として浮上してくる可能性があります。

価格が軽自動車くらいになれば、ペダルもついている電気自動車として充分魅力的です。今のクルマを電気で動かそうとすると大きなバッテリーが必要で重くなり、開発も難しくなります。トワィクくらいに小さく軽くして、航続距離をペダルで補うなら、都市部での交通としての電気自動車は現実味を帯びてきます。

政府も真剣に、「明日のエコでは遅すぎる」と思うなら、思い切って都市部から排気のあるクルマを排除する手もあるでしょう。トワィクと今までのクルマが混在する状態だと、どうしても貧弱ですし、事故などに懸念が残りますが、都市部では、トワィクと自転車、バッテリーカーなどだけに制限するわけです。

コンパクトですから、現在片側2車線の道路を3車線にして、1車線は自転車レーンにすることが出来るかも知れません。TWIKEも自転車も、ガソリン車のように排気ガスを出しませんからヒートアイランド現象も緩和し、交通事故や騒音も減って、大気もきれいになり、都市が人間に優しくなるに違いありません。

今はまだ考えられませんが、世界的な流れから言って、少なくともヨーロッパでは、ガソリン・ハイブリッドやバイオ燃料、燃料電池車と並んで、自転車電動ハイブリッドが、エコカーとして注目される可能性はあると思います。ガソリンと比べてそのランニングコストは10分の1以下、あるいはもっと安くなるはずです。

ヨーロッパなどの都市で、経済より環境への配慮を政治決断し、都市部での化石燃料カー禁止に踏み切る可能性も充分考えられます。そうした流れが顕在化するようになれば、いつ、どの量産メーカーが電動・人力ハイブリッドの投入に踏み切るのか、ある意味時間の問題になるのかも知れません。



いやぁ、久しぶりに飲みすぎてしまいました。飲みすぎた後は、いつも反省するんですが..(笑)。

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