大手保険会社のアンケート調査によれば、過ごしたい夏休みの理想は4割強の人が「自宅でゆっくり」と答え、実際の過ごし方についても、6割の人が自宅でゆっくりするそうです。理由は多くの人が「外出すると混雑している」「疲れをとりたい」などと答えています。多そうに感じますが、帰省との答えは全体の4分の1でした。
ただ、家でゆっくり休みたいけれど、子供がいるとそうもいかない、なんて方も多いでしょう。普段なかなか相手が出来ない穴埋めに、プールや遊園地へ連れて行かされたり、花火に付き合わされたり、中には、ここぞとばかり夏休みの宿題を手伝わされる親御さんもいらっしゃるのではないでしょうか。
ところで、夏休みの工作には向かないかも知れませんが、欧米には自転車の手作りを趣味にしている人を時々見かけます。ここで言う自転車の手作りとは、フレームビルダーに注文したり、コンポを選んでカスタムバイクを組んだりオーダーメイドすることではなく、廃品や身近な部材を使った、文字通りの手作りのことです。
今までも何度か取り上げていますが、それはそれで楽しそうです。しかし、なぜか日本では、あまり多くないように思います。日本では、スポーツバイクに乗ったり、自転車を自分でメンテナンスするような人は少数派で、ママチャリを買って乗るだけの人が圧倒的に多いという事情もあるのでしょう。
確かに、多少自転車に興味がある人、あるいは自分で修理したり出来る人であっても、そんな簡単に自転車の手作りなんて出来ないと思うのが普通です。特にフレームを切断したり溶接したり、といった作業になれば専用の工具も必要ですし、敷居が高いのも事実です。
しかし、考えようによっては、その敷居はかなり低くなるかも知れません。先日、“Office Chair Bike”を取り上げました。その時には触れませんでしたが、これを作った方が、「
Wooden Bikes」と名付けられた趣味のサイトを開設しています。このサイト、見方によっては、自転車の手作りについて示唆に富んでいます。
Office Chair Bikeはユニークですが、普通の自転車にフレームを継ぎ足してリカンベントにするなど、素人には難しい作業があります。しかし、他にもたくさんの自転車を作られていて、サイトの名前どおり木材が多用されています。なるほど木ならば手に入れやすく、素人でも加工しやすい素材です。
木と自転車用パーツを組み合わせて自転車を作るのであれば、ある程度の知識や経験があれば、さほど難しいことではなさそうです。最近はホームセンターで材料や道具を買ってきて、日曜大工で何かを作ったり、身の回りの品の修理をする人も多いですから、決して敷居は高くないでしょう。
ちょっと乗ってみたい自転車、例えば二人乗り自転車とか、リカンベントなどを作ってみるのも面白いかも知れません。こうした自転車は、あまり流通していませんし、買うとかなりの金額だったりします。そんなに乗る機会が多くないので、買うのは躊躇するような車種でも、廃品利用の手作りなら気軽に試せそうです。
自転車で引っ張るカートなんかを作れば、案外実用的に使えるかも知れません。ある程度木工に自信があるなら、アイデア次第でいろいろ作れるでしょう。ゆったり走行するリカンベント、子どもと乗るタンデム、更には雨にぬれない屋根付き自転車、愛犬も乗せられる自転車、いろいろ考えるのも楽しそうです。
材料は、壊れて乗らなくなった自転車や余ったパーツを利用するだけでなく、自治体などが撤去した放置自転車の払い下げなどを利用する手もあります。乗れる自転車でも安いですが、壊れた自転車のパーツなら二束三文でしょう。その点では、日本の場合は廃棄自転車が多いぶん恵まれていると言えそうです。
自転車のパーツは元々安いものですし、最近はホームセンターでも手に入ります。木材も探せば廃材が手に入りそうですし、場合によってはホームセンターで買って、必要な大きさに加工してもらうことも出来ます。もちろん、身の回りの様々な廃品を活かして工夫するのも一興です。
「Wooden Bikes」にはヒントも満載です。左上のように、キックボードのような自転車もあれば、右上のようにフレームに角材でなく板材を使ったものもあります。左下は、市販のキックボードと合体させていますし、右下の三角形の木箱のような自転車も面白い発想です。
こちら、なんで“SkiBike”なのかと思えば、フレームにスキー板を使っています。弾力があって乗り心地がいいのかも知れません。右側、補助輪をつければ、誰でも1輪車の練習が出来るでしょう。考えてみれば、自転車の先祖、オーディナリー型そのものです。
タイヤも木材で作って軸を中心からずらせば、遊園地などで見かける上下にスイングしながら進む自転車です。ちょうど蒸気機関車の動輪のような動きになります。タイヤと角材しか無かったとしても、足で蹴って進むシンプルな自転車の出来上がりです。
失礼ながら、他人から見ればガラクタにしか見えないようなものもあります。例えそうであっても、作る過程が楽しいわけで、失敗作も含めて愛着がわくであろうことは想像に難くありません。そもそもこの方は、何かのイベントのパレード用の山車(だし)のようなものを作ってから、廃品利用の手作り自転車にハマってしまったようです。
「Wooden Bikes」は、文字通り木製の自転車ですが、サイトには木を使っていない自転車もあります。Woodenという単語には、「こわばった」とか「ぎこちない」「ぷざまな」「間の抜けた」などの意味もあるので、このネーミングに、作者の謙遜とユーモアが含まれているようにも見えてしまいます。
夏休み、自宅でゆっくりしながら、こんな自転車作りに挑戦してみてはいかがでしょう。宿題ではないので、失敗しても困るわけではありません(笑)。子どもと一緒に取り組めば、出来はともかく、親子のコミュニケーションに貢献することは間違いなさそうです。
「自宅でのんびり」志向は今年だけの傾向ではないそうですが、今年は特にガソリンの高騰も影響していそうです。海水浴場にはサメが出るし、そうでなくてもこの猛暑、出かけたくなくなるのは頷けますね。
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