路側帯と言えば、場所にもよるでしょうが、縁石や側溝との間に僅かな幅しかない場所も少なくないと思います。仮に路側帯を広くとっても、結果として違法駐車に占領され、実質的に意味がない場合もあるからでしょうか、あえて路側帯を狭くし、その分歩道にして自転車も歩道を通させようとする傾向も強いようです。
自転車は車道の左端、もしくは路側帯を通行することになっているので、必ずしも路側帯がないと通れないわけではありません。ただ車道の幅に余裕があるとも限らないので、路側帯が広ければ通行しやすいのは確かでしょう。ちなみに、歩道がない道路の場合、二重の白線で区切られた路側帯は自転車通行禁止です。
歩道がない代わりに、ある程度の幅の路側帯があった場合、クルマは交通法規の定めに従って、歩行者等のために道路の端から75センチ以上の余地をとって駐車しなければなりません。ところが、他車の邪魔にならないよう思いきり路側帯の中に駐車していたりします。歩行者や自転車は車道側を迂回させられるわけです。
車道の幅を狭めて路側帯を広げて、自転車利用促進を図ろうと実験を始めたのが岩手県の盛岡市です。
河北新報から引用します。
路側帯広げて自転車利用促進 盛岡・NPOなど実験
車道を狭め、自転車が走れる路側帯の幅を広げる実験が11日、盛岡市中心部で始まった。自転車の利用を促し、環境に優しい街をつくることを目指した試み。主催する「減クルマでまちづくり実行委員会」は11月10日までの期間中、自転車のマナー向上も呼び掛けながら路側帯拡幅の効果を探り、車社会を見直す機運を盛り上げる。
市内のNPO、バス会社、行政などが参加する実行委が「まちぐるみエコ交通転換社会実験」の名称で、国交省の事業を活用して取り組む。市中心部にある下の橋通り、東大通り、大通商店街が対象。いずれも一方通行の市道で、交通量が多い道を選んだ。
初日は、歩道が狭く車と自転車の並走が危険だった下の橋通りで、路肩の白線を道路内側に引き直し、路側帯を赤く塗る作業を行った。170メートルの区間中、特に混雑する地点は、両側合わせて3.9メートルだった路側帯を5.8メートルに広げ、車が通る部分の幅を4.9メートルから3.0メートルに狭めた。
普段はスピードを出して入る車も減速し、自転車も広くなった路側帯をゆったりと走る姿が見られ、近くの住民は「これまでより安心して通れる道になった」と話した。東大通りは280メートルの区間で12日、右折レーンをなくすなどして両側の自転車レーンを広げる作業を行う。大通商店街は10月から、38台分の駐車スペースのうち10台分を駐輪場とし、約100台の駐輪スペースとして活用する。
実行委は、各通りに自転車マナーの向上を呼び掛ける看板を設置し、大通商店街では交通指導員がマナー違反の自転車に注意も促す。事務局の寺井良夫さん(50)は「環境に優しい『減クルマ社会』の実現には、自転車を利用しやすい街づくりが欠かせない。マナー向上も呼び掛け、自由度の高い便利な乗り物である自転車の魅力を見直す機運を盛り上げたい」と話している。
歩道のない道路では、歩行者と自転車が狭い路側帯で交錯することも多いわけで、当然歩行者にとってもメリットがあります。もともと一方通行の道路で、車線を減らしたわけではないようですが、車線を狭め、「減クルマ」を打ち出しているところが評価できます。
今までは、増えるクルマの交通量に追いつくため、いかに車道を拡幅するかという方向性が当たり前だったわけですが、それとは反対に車道を狭め、環境に優しい『減クルマ社会』の実現、自転車を利用しやすい街づくりを目指すのは、21世紀の都市の姿を先取りする先進的な考え方と言えるでしょう。
まだまだ少ないですが、自転車レーンの設置を模索する動きは今後、増えていくことが期待されます。歩行者との事故を減らすためにも、今までよくあったような歩道上に自転車通行帯を色分けしてお茶を濁すものでなく、きちんと車道に自転車レーンが設置されていくことを期待したいものです。
それでは、具体的にどんな自転車レーンが望まれるでしょうか。参考のために世界の都市を見てみると、うらやましい例はたくさんあります。

さすがに左のような道路は望めないでしょう(笑)。人々の間にコンセンサスが形成され、都市部においては自転車優先となっても不思議ではありませんが、まだ当分はクルマ社会が続きそうです。右のように、半分でもいいですが、まだちょっと無理そうです。

カリフォルニア州のBurbankのように、土地が広くて道が広ければ、いくらでも自由がききそうです。中央分離帯に自転車レーンを持ってくるのも一つの形でしょう。自転車にとって全米でも屈指の恵まれた環境と言われるオレゴン州のPortlandは、追い越し車線まで整備されているところがあります。

ヨーロッパの自転車先進都市でよく見られるレーンは、歴史のある都市だと石畳だったりもしますが、きちんと縁石などでセパレートされており、区分もよく厳守されています。右のように、きちんと秩序が保たれれば、白線でも構いません。

ニューヨークでもブルックリンの方には、歩道をセパレートしたようなスタイルの自転車レーンもあります。しかし、歩道と同じ高さになっているとは言え、車道との段差は解消されています。よく見ると歩道を塗り分けたのではなく、歩道との段差を解消したような形状です。
歩道との間に街路樹などが配されて、きちんとセパレートされていますから、単に歩道と同じ高さの部分があるというだけで、車道に設置されたレーンに違いはありません。段差があるぶん、クルマに侵入されにくいのもメリットで、これも一つの考え方です。
ちなみに余談ですが、
こんな自転車レーンは御免蒙りたいところです(笑)。また、あまりにも自転車レーンの設置が進まない場合は、
市民自らが実力行使するなんてシーンも見られるかも知れません(笑)。
以前も取り上げましたが、自転車が歩道を走行すると、かえってクルマとの事故が増えるという調査があります。車道を走っている自転車はクルマから見えていますが、歩道を走ってい自転車はクルマから見えにくく、死角となって交差点で出合い頭の事故や左折巻き込み事故が起きるからです。
クルマと歩道の自転車の間に、街路樹や生垣、ガードレール、遮音壁、駐車車両、電柱、看板、歩行者、バス停、その他あらゆるものが邪魔をして視認しにくくなります。ですから、車道走行の方が安全との考え方が成り立つわけで、アメリカなどに多いスタイルの自転車レーンは、駐車車両の列より更に車道側にレーンがあります。
しかし、このスタイルの自転車レーンにも欠点があります。現実にはバイクレーンが車両にふさがれたり、ドアの開け閉め、右折待ちの車(日本でなら左折待ち)などによる危険があるわけです。ニューヨークなどでは、バイクレーンを駐車しているクルマの列より歩道側にずらすべきとの声も上がっています。
こちらの動画を見ると、その問題点がよく分かります。(ボリューム注意。)
駐車車両より車道側の自転車レーンが、事故を防ぐ点で合理的とは言っても、現実にはそう単純ではありません。道路の構造や交差点付近の駐車禁止の徹底によっても変わってくると思いますし、交通量や場所によっても違うでしょうから、現実に即して判断すべき、難しい問題です。
いずれにせよ、今後道路は事故防止や交通ごとの分離など、様々な視点が求められるでしょう。道路に求められる機能や考え方も時代と共に変化して当然です。景観や災害対策からも、電線の地下埋設や共同溝の整備も進むでしょうし、ヒートアイランドや集中豪雨対策として、緑化や雨水浸透舗装などのニーズも高まると思われます。
いざ大地震が起きた時には、道路が放置されたクルマで塞がれた状態になり、救援活動や物資輸送に大きな障害になることが推測されていますが、うまく造れば、自転車レーンが緊急用の通路に使えるかも知れません。もちろん温暖化対策の観点からも、自転車レーンの必要性は高まっていくでしょう。
補修も含めて、日々道路工事が行われていく中で、バラバラな考え方で自転車レーン整備が進めば、充分にその機能が発揮できない事態も容易に起こり得ます。自転車レーンの設置が進むことを期待するだけでなく、どんなレーンにすべきか、何が必要なのか、具体的に考えるべき時期に来ているのかも知れません。
ロイター通信の伝えるところによれば、一目ぼれに必要なのは0.5秒という研究結果が出たそうです。そんなもんでしょうか。いやー、個人的にはもう少し必要な気がします。0.5秒じゃあ、人混みの中も歩いていても一目ぼれしそうです(笑)。
関連記事
みんなで通ればユメではない
自転車専用レーンではないが、バスレーンと共有するという考えも。
広がりつつある気づきの記号
最近、クルマ社会のアメリカでも自転車レーンが話題になっている。
横から切ると隠れている無駄
日本でも自転車レーンと道路の構造の議論が進むことを期待したい。