その友人は、ふだん自転車には全く乗っていない人だったので、話の流れで自転車のある生活を勧める形になりました。友人も全く興味がないわけではなく、乗るなら本格的なロードバイクに乗りたいと思っていたようですが、あの服装が、なんだか恥ずかしく感じると言うのです。
言うまでもなく、体にピッタリとフィットしたサイクルジャージとレーパンのことですが、必ずしもそれを着用する必要はなく、普段着で乗っている人も少なくないと話しました。乗り始めは、お尻の痛みに悩まされることもあるので、その場合レーパンをはくにしても、インナータイプがあることも教えました。
実際にジーパンで乗っているような人も見ますし、ふだんは動きやすく風でバタつかない服なら何でもいいわけです。ただ、乗るうちに、風の抵抗や汗の速乾性、背中のポケットなど、その合理性や機能性に納得がいって着るようになる人も多いことや、あの格好が格好いいと思えてくれば着ればいいのでは、と言いました。
その点は一応納得したようでしたが、スネ毛を剃るのは恥ずかしいと言います。どうして知っているのかと尋ねると、たまたま自転車専門店に入って店員に聞いたことがあって、「ロードバイクに乗るときは剃るものだ。」と言いきられたそうです。知り合いに聞くと剃っているようだし、そこもネックだと話していました。
意外とスポーツバイクに乗らない人でも、すね毛の処理について聞き及んでいる人が多いのかも知れません。私も調べたわけではありませんが、服装への抵抗感と同じように、スネ毛を剃るのが何となく抵抗を感じる元、敷居の高さになっている可能性はあります。
入門書のような書籍を見ても、特にすね毛の処理については書いてないでしょうし、サイクリストの間でも、改めて話題になることも多くありません。考えてみれば、私も今までの記事で、すね毛の処理について取り上げたことはありませんでした。
どこかに明文化され、提示されている訳でもないのに、言ってみれば都市伝説みたいな伝聞や噂となって、ロードバイクに乗ったことのない人の間でも、「ジャージやレーパンでロードバイクに乗るなら、すね毛を剃るものだ」と、何となく知っている人が多いのかも知れません。ある意味で正しく、ある意味で誤解だと思います。
ロードバイクに乗る人が、果たしてスネ毛を剃るべきか、剃らなくてもいいかについては賛否両論あるでしょう。実際に剃っている人と剃っていない人と両方います。ただ、アマチュアのレースや大会に出場するような人は剃っている人が多いのではないかと思います。剃っていないと素人っぽいなどと言う人もいます。
そもそも、スネ毛を剃る理由は、「ロードレースに出場するようなプロのレーサーが剃っている」ことからきていると思われます。確かにツール・ド・フランスなどのレースの中継で、選手の足が映ったところをよく見ると、ツルンとしています。表彰シーンなどで注意するとよくわかるかも知れません。
では、プロが剃る理由はなんでしょう。「足のマッサージの邪魔になる」「擦過傷などの際に傷口の処理がしやすく、バイ菌が入りにくい」「空気抵抗の低減になる」などの理由からだと言われています。一見もっともらしいですが、必ずしも決定的な理由とは限りません。
確かに、プロのレーサーは皆剃っているようです。言われるように、ふくらはぎのマッサージは、スネ毛がない方がやりやすいかも知れません。特にスネ毛が濃ければそうでしょう。擦過傷の処理も、毛がない方が良さそうです。しかし、すね毛の薄い人までわざわざ剃る必要はない気もします。
空気抵抗についてはナンセンスでしょう。競泳など、水中での抵抗ならまだしも、空気抵抗はほとんど変わらないはずです。スネ毛は処理されて全くないのに、腕の毛はモジャモジャという選手もいます。空気抵抗を言うなら、腕の毛も剃る必要があるはずです。
同じように、腕のマッサージや怪我もあると思いますが、腕の毛を剃っている人が多いようには見えません。結局、それなりにある程度のメリットはあり、剃るのも頷けるが、誰もが、どうしても剃らなければいけないほどの理由ではなさそうです。あまり濃くない人なら、むしろ定期的に処理する方が面倒でしょう。
それでも、プロのレーサーとなると例外なく剃っている理由はなんでしょう。以前、何かの本で読んだか、映像で見たか忘れましたが、ツールに出場している選手が、子供の素朴な疑問に答えていたシーンがありました。なぜ毛を剃るのかという問いです。
その答えは、「理由は分からない。でもこれが伝統なんだ。」というような答えだったと思います。つまり、ツールに出場するようなトッププロの選手でも、周りがみんな剃っているから、剃っているだけということなのでしょう。いつの間にか、そういうものだという暗黙の了解が出来ているようです。
レーパンをはいてスネ毛が出ていると汚くて見苦しいという意見も分かりますが、主観の問題です。サッカー選手でもバスケットの選手でも、スネ毛の濃い選手はいくらでもいます。濃かろうが薄かろうが、みんなが剃っているスポーツはロードレースだけではないでしょうか。(詳しくないですが、もしかしたら競泳もそうかも知れません。)
結局、「アマチュアは、必ずしもスネ毛を剃る必要はない。」わけです。ただ、レースなどに出場するようになって、周囲から浮いているようで気になるなら剃ればいいでしょう。レースに出なくても、そういうものだと納得するなら剃るのも自由です。いずれにせよ、必ずしもスネ毛をそる必要はありません。
他のスポーツでもそうですが、プロのスタイルを真似て剃るのもおかしくはありません。ただ、温泉などに行った時、短パンをはいた時など、周囲から何か違う系統の趣味(笑)と間違われたり、日常的には気味悪がられる可能性もあります。正確に観察した訳ではありませんが、実際、剃ってない人も少なくないと思います。
湿布だとか、テーピングなどをはがす時、毛がない方が痛くないというのはあるでしょう。よく湿布やテーピングをする人で、毛を剃っておくのが合理的だと思えば、剃ればいいのです。脛以外だって剃る選択肢はあります。面倒だとか、ふだんの時に抵抗感があるなら、剃らなくてもいいのではないでしょうか。
それに、私も経験ありますが、意外に剃るのは手間がかかります。特に普通の剃刀などだと、怪我したり剃刀負けするかも知れません。そのせいか女性用の無駄毛剃り用の器具を使う人も多いようですが、一旦剃ってしまうと、短く生えてくるとチクチクして気になるものですし、定期的な処理が必要となって、余計に手間が増えます。
日本では、自転車のロードレースがメジャーではありません。ロードレースについて広く知られるようになれば、スネ毛が無くてもおかしく見られないと思います。レースをやる人が剃っていてもおかしくないし、アマチュアが剃らなくても全く気にする必要がないことも、自然に理解されるでしょう。
くだんの友人に、「剃るもの」と言いきった店員さんも、決して間違っていたわけではありません。実際問題としてレース時や、レースに出るような人の間では剃るのが普通のようになっているのも事実でしょう。もちろん悪気があったわけても何でもなく、そういうものですよ、という意味で言いきったものと思います。
スネ毛を剃るのは、ちっとも悪くありませんが、世間一般の常識からすると、ちょっと違和感があるのは否めません。伝統を否定するつもりは全くありませんが、入門者やもっと気軽にロードバイクを始めたい人にまで、すね毛剃りのプレッシャー(笑)をかけることもありません。
服装なんかもそうです。機能性を追求すれば、今のようなスタイルは必然なのでしょうが、ロードバイクに乗る時のファッションも、もう少し多様化し、自由度が増してもいいのかも知れません。マニアックな感じもいいですが、もっとラフな感じがあってもいいでしょう。
特に日本人の場合は、周りから浮いてしまうのを嫌って、その世界の常識とか暗黙の了解に気を使う傾向があるようです。でも、ロードバイクだからと言って構える必要はありません。細かいことは気にせず、気楽に始めて欲しいものです。
毎日新聞の記事、「
大蛇逃げる」。一瞬、アナコンダか何かかと思ってしまいました(笑)。大蛇って、体長1メートル50センチだそうです。まあ、大きいと言えば大きいですが..。実は私も以前、かなり大きなヘビに突然遭遇した経験があるのですが、出会いたくないですね、特に自転車の時は..。
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すね毛を剃らずに、肌色のストッキングをはけば見苦しくないかも。