
自転車で道路を走行する時、気になるものは少なくありません。
信号や標識、クルマやオートバイに他の自転車、歩行者の飛び出しなどにも警戒しなければなりません。駐車車両や障害物にも気を使いますし、場合によっては、伸びた街路樹や植込みの木の枝とかガードレールの金属片、倒れかかった捨て看板、迷惑駐車を防ぐための灯油缶が行方を邪魔していたりします。
路面の状態にも気を使います。舗装の剥がれや陥没、割れたり無くなっている側溝の蓋、道路工事の鉄板、事故等で飛散したガラス片、浮き砂や石ころ、ゴミや落下物なども含め、注意を怠れば落車、悪くすれば事故につながりかねないものも少なくありません。

そんな中の一つ、路面の状況にも影響し、サイクリストにとっては決して有難くないものに「マンホール」も含まれるでしょう。歩道上にもありますが、車道にも意外と多いです。メンテナンスの都合からか、ちょうど車道の左端、自転車が通る部分にあることも少なくありません。
クルマには影響のない車道の端だと、段差の出来ているマンホールが、しばしば放置されていたりします。場合によっては自転車にとって危険なほど飛び出したり、へこんでいるものも見ます。あまり自転車の車道走行が想定されていないのでしょうが、出来れば修正して欲しいところです。
また、直線道路ならともかく、スリップ防止のためフタにつけられた模様が摩耗したマンホールに限って、カーブの部分にあったりします。特に雨模様の時など、ツルツルに滑りやすくなったマンホールにヒヤリとした経験のある人は多いかも知れません。摩耗・劣化したものは、なるべく早く交換してほしいところです。

ついでに言えば、マンホールではありませんが、四角い金属の排水溝のフタなど、長方形の格子状の穴があいたものがあります。あの穴の長辺が道路と並行していると、細長い穴に、ちょうど自転車のタイヤがハマる場合があります。目が細かければいいのですが、ちょうどタイヤの太さに近いものが少なくありません。
ママチャリなら問題ないのかも知れませんが、ロードバイクなどの細いタイヤだと特にハマり易く、もしハマると非常に危険です。ハマらないにしても滑りやすい気がします。おそらく、雨水を流してゴミを通さない幅なのでしょう。ふさげとは言いませんが、なんとか、あの格子状の穴、長辺を道路と垂直方向にしてもらいたいものです。
さて、あまり意識していない一方で、突然その存在に驚いたりすることもあるマンホール、正確にはマンホールのフタですが、ふつう何か幾何学模様の描かれた地味なものというイメージがあります。四角もありますが、多くは丸で、中を通るのが、水道かガスか電気かによって多少模様は違うのでしょうけど、そのくらいの認識です。

ところが、実際にはマンホールの蓋は自治体ごとにデザインされており、実に様々な種類があるのです。自分の街のものでも、じっくり見ることは稀だと思いますが、改めて観察してみると、凝った絵柄もあって驚くかも知れません。また調べてみると、そんなマンホールの蓋の写真をコレクションしている人も思ったより多いことに驚きます。

そうしたコレクションを見てみると、単なる模様と言うより、芸術性に富んだ作品と呼べるものが少なくありません。全国に推定一千百万枚もあるマンホールの蓋ですが、その種類も3千種はくだらないと言われています。各地を訪ねて写真を撮るのを趣味にしている人も少なくないようです。
神奈川の県立高校の先生、垣下嘉徳さんは「
路上の芸術―マンホールの考察、およびその蓋の鑑賞」という本まで出しています。珍しいのは奈良県の
中田芙紗さんで、全国を巡ってマンホールの拓本をとっていらっしゃいます。魚の魚拓をとるように、マンホールに墨を塗って和紙に写して、実物大を保存するわけです。

その土地の名所や名物、歴史など郷土色の濃いものから、アンパンマンや名探偵コナンなどキャラクターものまで、カラーのものもあれば、ポイ捨て禁止などの看板を兼ねたものまであります。一般の常識の域を超えるようなデザインのマンホールも多々存在するようです。なるほど、コレクションしたくなるのも頷けます。

1980年代から、自治体が競ってフタを飾るようになったと言います。凝っていて、力作と呼べるものも少なくありません。そうした「作品」を見ていると、電力会社やガス会社、電話会社などの、何の変哲もないマンホールが残念に思えてきます。

街を走っていると、たまにマンホールの表面にアスファルトをコーティングしたようなマンホールがあります。周囲の路面の舗装と同じになって目立たないですし、滑りにくいので、自転車乗り的にはベストかなと思っていましたが、絵柄がないのも、ちょっと寂しく見えてきます。
海外でもやはり、マンホールは丸が圧倒的に多いようです。そう言えば、私も以前本で読んだ記憶がありますが、アメリカのマイクロソフト社の入社試験に、「マンホールはなぜ丸いか。」という問題が出たという有名な話があります。
「穴が丸いから、蓋も丸い」では芸がなさすぎます。「四角いフタだと、四角い穴にフタを斜めに入れてしまうと落ちてしまうが、丸ければ落ちることがない」「丸いフタなら、ころがして運べる」「フタが外れても角がないので、クルマをパンクさせない」「円筒状の穴は掘るのが容易」、考えると、いろいろ理由がありそうです。

最近は、災害時にトイレになるマンホールというのもあります。震災などで非難した際、実はトイレが深刻な問題になるようです。緊急時に、マンホールをそのまま便器とし、囲いをつけて即仮設トイレとして使えるようにするため、下水道のマンホールに導入する自治体も増えていると言いいます。
また最新のものは、マンホール内への不法投棄や犯罪目的で侵入されるのを防ぐため、特殊な錠がついて、専用の道具を使わないと開けられない構造になっているそうです。金属泥棒が発生する昨今、ある朝、突然フタがないなんて事態もありえますが、対策は進められているようです。
ふだん、あまり意識もしないマンホールですが、調べてみると、いろいろと面白いものです。自転車にとっては、走行上、ただ邪魔なだけの存在かと思えば、一瞬でその上を通り過ぎるのは惜しいアート作品もあるようです。遠出した時など、機会があったら、少し観察してみてもいいかも知れません。
(参考までに、)
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マンホール友の会
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マンホールミュージアム
考えてみると、いつ頃からでしょうか、道路に子供の落書きを見なくなりました。たまに子どもが道路に屈みこんで、何をしているのかと思えば携帯ゲームという時代ですからね。
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