東京池袋の歩道で自転車に乗っていた男性が、歩いていた89歳の女性に衝突し、転倒して頭を打った女性は亡くなりました。男性は重過失致死の疑いで現行犯逮捕されています。歩道で歩行者に衝突するという過失があったにせよ、自転車に乗る人は誰でも死亡事故を起こしかねないことを、いま一度肝に銘じるべきでしょう。
警察の調べによれば、乗っていたのはスポーツタイプの自転車で、前かがみになって運転していたと言います。男性は「1メートルほど前しか見ておらず、女性に気付くのが遅れた」と供述しているそうです。スポーツバイクに乗っている人ならわかる通り、誰でも「前かがみ」、前傾姿勢になるのが当たり前です。
そのライディングポジションが、前方を見にくいの態勢なのは間違いないでしょう。もちろん、前方を見ないで走行するなんて出来ませんし、前方不注意は当然責められるべきです。ただ、特に疲れた時など、うつむきがちになるのも理解できます。歩道を通るなら当然ですが、人通りの多い場所では油断しないようにしたいものです。
さて、そのスポーツバイクですが、前傾姿勢で乗るように出来ているのは、風の抵抗を少なくし、ペダルに力が伝わりやすいなど、多くのメリットがあるので当然のことです。体重もサドルとハンドルに分散し、長期距離でもお尻が痛くなりにくいなど、きわめてリーズナブルです。
ただ、初めて乗る人や慣れない人には少々きつい姿勢かも知れません。最初は乗りにくく感じ、肩が凝ったり、首や腕が痛くなったりするかも知れません。また、慣れている人でも、疲れにくい態勢とは言え、長時間同じ姿勢を続ければ、少し違う姿勢を取りたくなることもあるに違いありません。
その意味でも、この“
Switchbike”は画期的です。走りながら、しかもハンドルから手を放したりすることなくポジションを変えることが出来ます。どうやって変えるのか、文章で説明するより、下の動画を見てもらえば一目瞭然です。真ん中の再生ボタンをクリック(または2度クリック)して下さい。(音量に注意)
これは目から鱗のアイディアです。なるほど、ポジションが切り替わる自転車、スイッチバイクと言うわけです。一般的な自転車が、リカンベントスタイルにもなります。一台二役、しかも自在に切り替えられるという、今までには無かった発想の自転車と言えるでしょう。
ペダルは、一般的なリカンベントほど高い位置にはなりませんが、ちゃんと背もたれもついていますので、リカンベントスタイルになってもペダルに力がかかるようになっています。ビーチクルーザーやローライダーなどと呼ばれる自転車のようなポジションに近いかも知れません。
起きた姿勢の方は、動画で見る限り、スポーツバイクと言うよりアップライトなシティサイクルのポジションですが、ハンドルやステムなどの形状によっては、もっと前傾姿勢をとれそうです。多少アレンジを変えれば、本格的なロードバイクと本格的なリカンベントのポジションにも出来るでしょう。
これは面白い自転車です。ネタ元の“
fresh creations”によれば、Holland Innovationという展示会に出展されていたそうで、製作者のRon de Jongさんは、現在生産を手掛ける会社を探していると言います。個人的には、充分に現れる可能性があると思います。
すでに中国やロシアを含め、欧米各国の多くのブログでも取り上げられており、この自転車の斬新さを評価する人は少なくありません。面白い、欲しい、ユニーク、といった感想も多いようですが、中には、ほんとに使えるのか、意味がない、といった意見もあるようです。面白いけど、単なる変り種自転車という反応でしょうか。
確かに、シティサイクルで買い物や最寄り駅まで出かけるだけの人には、あまり意味をなさないかも知れません。しかし、「特に長距離を走行するとき、姿勢を変えられていい。」とか、「市街地走行のとき、前方が見やすくなって便利。」といった理由以外にも意味があるように思います。
リカンベントは、その構造からして「登り」が苦手です。登りに差し掛かったら、このSwitchbikeの要領で姿勢を変えられる機能があったら有難いでしょう。また、地上高が低くなるので、クルマなどからの視認性が低くなるのも弱点ですが、交通量の多い幹線道路などでは、姿勢を高くして走行すれば安全にも貢献します。
逆に、姿勢を低くしたときは、ホイールベースも広がり、高速安定性が高まります。風の抵抗も小さくなるでしょう。ただ同じ姿勢が疲れるというだけでなく、場面に応じて、このスイッチバイクの二つのカタチを使い分ければ、非常に合理的、かつ実用的な使い方が出来るかも知れません。
実は、ロードバイクよりリカンベントのほうがスピードが出るものなのです。そのため、レースの世界ではリカンベントは禁止になっています。しかし、生活の中では速度が上がれば便利な場面もあるでしょうから、リカンベントを選択することも意味があります。ただ、リカンベントだけにするのは抵抗があります。
先ほど挙げたような弱点もあり、実用性や収納場所などの問題からリカンベントの普及率は高くありません。しかし、このスイッチバイクのスタイルなら、リカンベントにロードバイクのメリットをプラスし、「いいとこどり」のような使い方も可能となって、ぐっと実用性も高まるでしょう。
構造や重量など、もう少しシェイプアップして「スポーツバイク版スイッチバイク」にすれば、非常に魅力的な自転車が出来るかも知れません。ちょっと買いかぶり過ぎの面はありますが、ひょっとすると新たなカテゴリーとして確立し、人気も出て、当たり前のように乗られるようになる可能性も否定できないのではないでしょうか。
いずれにせよ、このスイッチバイク、面白い自転車です。単なる変り種自転車に留まらない可能性を秘めているような気がします。走行中でも形状を自在に可変なところが、何となくアニメなどに出てくる未来の乗り物のような雰囲気を感じさせないでもありません。市場に登場してくることを期待したいです。
この自転車なら、乗ったままリンボーダンスだって出来そうですね(笑)。やっぱり、急ブレーキをかけると起きあがっちゃうような、アニメ的動きになるんでしょうか。
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リカンベントにだって、当然いろいろなタイプのものがある訳で。
うつむいた自転車という名前
世の中には、いろいろなポジションの自転車を考え出す人がいる。
Posted by cycleroad at 22:00│
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Slyway recumbent bikes
[youtube:http://jp.youtube.com/watch?v=d03L97i0YkY]
見ていて怖いのだが、似たようなことをしてる俺が言っても説得力はない。
木フレームも自由度が高い
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