もし、見ていなかったら再生してみてください。
高速道路上を逃走する二輪車をパトロールカーが追跡していますが、よく見るとオートバイではなくペダルをこいでいます。最後には警察を振り切ってしまうのですが、この逃走する自転車の男、かなりのスピードです。すごい加速力も見せています。
実はこれ、コマーシャル用に作られた合成の動画です。アメリカでは、しばしば警察と逃走車両のカーチェイスがヘリコプターから中継されます。そんな実際のシーンを撮影したフィルムに、後から自転車で走行する人をコンピューターで合成したものだそうです。画質の粗さやノイズが逆に臨場感を引き立たせています。

道路が渋滞している都市部などでは、実質的な速度で自転車が有利になる場面は多々ありますが、高速道路上であるかはともかく、まともに速度でクルマと競争しようというサイクリストはいないでしょう。ロードバイクやリカンベントなどなら、瞬間的にはかなりのスピードが出せますが、その速度を維持するのは困難です。
自転車に取り付けたサイクルコンピューター(速度計)にも最高速の表示が出ますが、必ずしも意味のある数字ではありません。ロードレースなどに興味がある人でも、動力付きの乗り物と競争しようとは思いませんし、そもそも競争が成り立つとは思っていないでしょう。
ところがインドには、自転車同士で競うのではなく、最高時速120キロの特急列車と勝負して、しかも勝つ人がいます。インドのムンバイに住む宝石商、ビノド・プンミヤさんです。この話題、新聞にも載っていたので、ご存じの方も多いかも知れません。

ネットで調べてみると、いくつかの記事が見つかりました。なんと、この方現在50歳です。以前は国際大会にも出場した経験のあるアマチュアレーサーだったようですが、競技から引退して17年経った今でも、早朝トレーニングで鍛えあげていると言います。驚くのはその記録です。
プンミヤさんが、インドでは最も速い特急列車の一つ、「デカン・クィーン」と競争したのは、マハラシュトラ州プネ駅から、ムンバイ郊外のドムビブリ駅まで、線路とほぼ並行して走る道路、約140キロです。なんとデカンクィーンより、20分早い、2時間14分14秒でゴールしたそうです。計算すると、平均時速約63キロになります。
ツール・ド・フランスなどのプロのロードレースの平坦なステージでも、せいぜい平均時速は50キロ程度でしょうか。選手同士の駆け引きもあるので、もちろん全区間全速力ではありませんが、仲間の選手を風避けに利用するなどの好条件があって、この程度です。ちょっとにわかには信じられないようなスピードです。

どんな道路だったのか状況はわかりませんが、十数台のテレビ中継車を従えて爆走したそうです。不可能な数字ではないのでしょうが、驚異的な速さです。ましてや何度も書きますが、50歳です。もちろん素人がマネの出来る速さではありません。
聞けば、毎日午前2時に起床して、交通量の少ない夜明けまでにトレーニングするそうです。警察から、高速道路で自転車に乗ることのできる特別な許可証までもらっており、ペースメーカーのバンを風避けにして、毎日200キロ近く練習走行していると言いますから本格的です。
インドでは、少し金がたまるとオートバイやクルマを買い、自転車に乗る人を見下す風潮があると言います。このビノド・プンミヤさん、空気も汚さず、燃料も使わず、人を健康にする素晴らしい乗り物、自転車をもっと普及させたいとの思いからチャレンジを続けているのだと語っています。

ちなみに、次のターゲットは、最高速140キロの観光バスと高速道路上で対決し、その勝負は全長400キロという長さになるそうです。おそらく、バスには停車駅も時刻表もあって、ある程度の勝算があるのでしょうけど、エンジンのついた乗り物と勝負しようという人は、そうはいないと思います。
実用的な意味では、自転車は近距離の交通手段です。長い距離を高速で移動するには不向きで、そうした移動にはクルマや列車、航空機が適していると誰もが考えます。しかし、信号がなく、他の交通や歩行者などを気にする必要もなく、風の影響を受けにくい環境であれば、意外に、遠くへもっと高速で移動出来るものなのかも知れません。
海外では、日本の高速道路にあたるフリーウェイが無料の所も多く、従って柵もないので自転車でも走れる場所があります。例えばカナダあたりのフリーウェイだと、日本のように高架になっていない場所も多く、走ろうと思えば誰でも路肩を自転車で走行することが出来ます。(もちろん必ずしも速く走る必要はありません。)

おそらく野生動物の飛び出しへの配慮だと思うのですが、路肩の幅が本線以上にかなり広大にとってあり、本線上のクルマとはだいぶ間隔をとった上で、自転車でも安全に高速で、長い区間走れる場所もあります。私もカナダへ旅行した際には、実際に走っている人を何度も見ました。
日本の高速道路では、たまに間違えて侵入した例が報じられますが、自転車で走ることは出来ません。いくら温暖化とは言え、自転車専用の高速道路が整備されるなんていうのも、夢のまた夢ですが、出来るのであれば、一度でいいから、思う存分スピードを出して、長時間ノンストップで高速道路を走行してみたいものです。
私も最初の動画のように、警察から逃走するような場面に陥りたいわけではありませんが、自転車で高速道路を走ってみたいなと思ったことのある人は、案外多いのかも知れません。信号もなく、飛び出す歩行者もなく、路面の状態なども申し分なく、好きなだけスピードが出せます。自分の脚力の限界も試せそうです。
実際に、思う存分スピードが出せる場所は、そうはありません。例えば正月とかお盆とか、クルマの交通量の少ない時期を選んで、年に一度など限定で構わないので、高速道路を自転車に開放してくれないものでしょうか。一日、いや数時間でもいいです。プンミヤさんではありませんが、思う存分爆走してみたい気もします。
ミシュランガイド東京2008が話題になっています。食べに行ってみたい気もしますけど、混んでるんでしょうね、当分は。
関連記事
自分の力で世界最速の称号を
はたして人間の力だけで、どのくらいのスピードを出せるのだろうか。
本当に優先すべきは何なのか
新規高速道路の開通だけでなく、自転車への開放イベントがほしい。
ベロシティという都市の理想
自転車専用の高速道路なんて構想は、夢のまた夢に過ぎないのか。
夢から覚めた現実的未来都市
いや、交通や輸送の未来を担うのは自転車だと主張する人達もいる。
Posted by cycleroad at 23:30│
Comments(6)│
TrackBack(0)