整備されたサイクリングロードは、走っていて気分がいいものです。
しかし、その自転車道に、まさか落とし穴が開いているなんて思いもよらないでしょう。
そんな事件がアメリカ・カリフォルニア州で起きました。
自転車道に“落し穴”50個掘る 米加州で52歳男逮捕
米カリフォルニア州南部の公園の自転車道に半年で約50個の穴を掘り、ライダーを転倒させるなどした、52歳の男が逮捕された。穴はライダーから見えにくいように細工したものもあった。幸い重傷者はなかったが、男は公共物破壊の罪に問われる見通し。動機について男は、以前マウンテンバイクにひかれたことがあり、その報復だと話している。(AP=共同・2008.1.7 )
実際に遭遇したらと考えるとゾッとします。以前の事故を根に持っての犯行のようですが、罪のない第三者を巻き込む恐れもあったはずです。どういう経緯があったか知りませんが、陰湿な人がいるものです。全てのサイクリストに敵意を持っていたのでしょうか。それにしても、半年で50個も掘るなんて凄い執念です。
陰湿と言えば、日本でも山梨県甲府市で、
こんな事件が起きています。
自転車道脇の空揚げ食べた犬が死亡 青の粉末付着 甲府
6日午後8時半ごろ、甲府市の30代の女性から「空揚げを食べた犬が死亡した」と、山梨県警南甲府署に通報があった。犬は、同日午後3時ごろ、同市国母4丁目のサイクリングロード脇にあった空揚げをなめたとみられる。空揚げには、青色の粉末が付着していたという。同署は、器物損壊と動物愛護法違反事件として調べている。調べでは、青色の粉末はカルバメート系の殺虫剤で、犬は中毒症状により死亡したらしい。(2008年01月07日)
どんな事情があったのか分かりませんが、殺虫剤の粉末がついた唐揚げが自転車道の脇にあるというのは不自然です。誰かが故意に置いたとするならば、犬とその飼い主に対する恨みや報復なのでしょうか。サイクリングロード利用者とサイクリングロードで犬の散歩をさせていた人との間にトラブルがあったのかも知れません。
こうした結果だけを見ると奇異な印象も受けますが、そこに至る相当な経緯があったのだと思われます。きっかけは些細なことだったとしても、深刻なトラブルに発展することはあり得ます。これらの事件は特別としても、自転車道での歩行者とのトラブルは、警察沙汰にならない小さなものを含めれば数多く起きていそうです。
例え自転車「専用」道であっても、歩いている人はいます。日本の場合は歩行者と混在させるような自転車道も多く、場合によっては歩道のようになってしまっているところもあります。中には横に広がって歩くなどして、自転車の人とトラブルになることも少なくないようです。
自転車に乗る人にしてみれば、歩道ならともかく、サイクリングロードを歩くなと言いたくなることもあるでしょう。普通に歩いているならまだしも、横に広がって道をふさいでいたり、歩道があるのに自転車道部分を歩いていたり、犬のリードを長く伸ばして道を横切り、自転車にとって危険な状態にしているような飼い主も実際に見ます。
一方、歩行者にしてみれば、歩行者優先という意識もあるでしょうし、自転車に猛スピードで突然脇をすり抜けられたり、ベルをガンガン鳴らされたりすれば、頭にくることもあるはずです。いざ事故になれば、より重大なダメージを受けるのは歩行者であることも間違いありません。
お互い反目しあう自転車と歩行者ですが、自転車を降りて歩行者となった時に、自転車の脅威を感じた経験のある人だって多いでしょうし、ふだんは徒歩でも自転車に乗った時に歩行者を邪魔に感じた経験があるかも知れません。お互いの気持ちを、理解出来ないことはないと思います。
ただ、それでも実際の場面では、なかなか譲り合いの精神を持てないものなのかも知れません。自転車同士であっても、マナーの悪い利用者に腹が立つこともあるでしょうし、ルールを無視した危険な行為も目につきます。すべての人に高いモラルを期待するのは難しいと言わざるを得ません。
ならば、やはり物理的に歩行者と自転車を分離したり、右側通行や並走などに注意を促すような手立ても必要でしょう。最近、歩道を走行する自転車と歩行者の事故急増が問題になっていますが、サイクリングロードでも、事故防止や安全性の確保が必要となってくるのではないでしょうか。
近年、徐々にサイクリングロードも整備される傾向がありますが、必ずしも好ましいものばかりではありません。こう言うとなんですが、自分で走ったこともなければ、今後も絶対走らないと思われる「お役人」が作ったとしか思えない、おざなりのものも見受けられます。
単に舗装だけして、後は自転車と歩行者と仲良く使え、と言わんばかりの場所も少なくありません。自転車専用とするなら、歩行者に注意を喚起し、間違って立ち入らないようにすべきですし、歩行者と共用とするならば、当然起こりうるであろう混在による危険を回避するため、予め分離すべきでしょう。
実際にサイクリングロードなどを通っていて、歩行者とのセパレート以外にも配慮に欠ける場所に遭遇することはないでしょうか。ふだんは気づかないこともありますが、合流やカーブ、交差点などで、事故を誘発しやすい欠陥が見られたりします。見通しが悪かったり、なぜこんな造りをするのか首をかしげるような場所もあります。
自転車に乗る人にすれば、例えばスピードにのっている時にはなるべく止まりたくないでしょう。そうした自転車の特性や心理、ふるまいを理解して造られていないので、事故やトラブルが頻発しているような箇所も実際に存在します。地域によってもスタイルが違い、戸惑うようなこともあるはずです。
また、例えば急坂を下ったところで停止するなど、ブレーキを最大に利かせて減速しなければならない場所があったとします。その脇に民家があったとしたら、一日中ブレーキのキーキー鳴る音に悩まされるかもしれません。周辺住民とのトラブル回避のための構造も、最初に整備する時点で配慮が必要でしょう。
自転車専用道や自転車レーンなど、自転車向けのインフラが整備されるのは喜ばしいことですが、あと少しの配慮が足りなかったため、事故やトラブルを誘発するのでは残念です。ただ造ればいいと舗装するだけだったり、歩道のように自転車と歩行者を混在させ、事故が多発しているような状況まで再現することはありません。
せっかく整備するなら、利用する人の立場に立って設計し、事故やトラブルが起きにくく、安全快適に走行出来て、使いやすい道にしてほしいものです。道路や歩道と同じように、自転車道も社会インフラとして、その構造や安全基準、統一の規格などを構築していくべきなのではないでしょうか。
このところ春のような暖かさです。春どころか、沖縄では1月というのに25度以上の夏日、石垣では5日連続の夏日と言いますから驚きます。これは3連休もサイクリングに..と思えば、一転して真冬の寒さ、雪が降るかも知れません。うまくいかないものですね。
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せっかくある自転車道を、どうやって上手く活用するかが重要だろう。
将来の環境を左右する分岐点
自転車と歩行者の事故の急増を受けて対策が始まっているが..。
どの新聞のどこの面に載るか
海外では環境面からも、自転車道整備の重要性が認識されている。
Posted by cycleroad at 23:30│
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