March 02, 2008

ネット時代の自転車の乗り方

自転車もインターネット時代の乗り物として進化していくのでしょうか。


クルマの場合、ゆくゆくは一台一台がインターネットに接続され、一種のモバイル端末としても動作するようになると言われています。あるいは自転車もネット端末化していくのかも知れませんが、バッテリーや機器の重量の問題などもありますから、なるとしても更に先の話になるのは間違いないでしょう。

emetersただ、自転車を直接ネットに接続しなくても、ネット時代の自転車の乗り方、自転車生活のスタイルとして、インターネットを使った自転車乗り同士の交流や、ネット上での情報の共有、コミュニティの形成などという形で、インターネット利用が進展することは充分に考えられます。

今回、そんなスタイルを促進するアイテムが登場しました。ブリヂストンサイクルから発表された、新しいサイクルコンピューターです。同社はサイクルメーターと呼んでいますが、「emeters(イーメーターズ)」というネット対応の、いわゆるサイコンです。発売と同時に専用のSNSサイトも開設するとしています。

サイコンをパソコンにUSBで接続して、そのデータを自動でブリヂストンの運営するSNSサイトへアップロードするだけですので、当然のことながら、自転車がネットワーク端末になるわけではありません。今までも、パソコンに接続できるサイクルコンピューターはありましたので、特に新しい技術というわけでもありません。

ネットへアップロード新しいのは、パソコンに接続すると専用ソフトがインターネット経由で同社のサイトへデータをアップロードしてくれる点です。そのデータを同社の開設するサイクリングSNS、emeters WEBサイト上で公開し、ネット上でのユーザー同士のコミュニケーションなどに利用するわけです。

今までも自分の走行記録を管理する人はいましたし、それをブログなどでネット上に公開する人もいました。また、こうした専用機器を使わなくても、走行距離などのデータを入力することによる「エコマイレージ」など、既にネット上に類似のコミュニティもあります。取り立てて新しい試みというわけではありません。

しかし、メジャーなメーカーから専用器具として発売されることで、こうしたスタイルが加速するきっかけになる可能性はあります。同社は専用のSNSサイトを開設することで、ユーザー同士の連携を図り、ダイエットや、世界一周などのシミュレーション、走行距離ランキングなどを通してコミュニティの活性化を目指すとしています。

サイクリングSNS走行距離に応じ、エコポイントとして環境への貢献が目に見えるようにするなどの企図もあります。個人スポーツとして認識されることの多い自転車ですが、コミュニティとして楽しむ新たな自転車生活を提供し、さらには環境に優しい自転車利用者の拡大を目指すとしています。このコンセプトは評価できます。

別に、自動でアップロードしてくれなくても、距離と時間などを手入力で打ち込んでもいいわけですが、そこはメーカーですから、自社のサイクルメーターの売りとしてアピールし、更にはそのメーターを標準装備した自転車の販売促進の面もあるのでしょう。僅かな手間でも自動でやってくれることが継続の助けになるかも知れません。

多少残念なのは、このemetersを買った人でないと参加出来ないというところです。メーカーのやることなので仕方ないと言えば仕方ないのでしょう。この製品を買うことに対する付加価値ということにもなりますから、販売戦略からも、買った人だけに限定するのは理解できます。

ネット上のコミュニティ同社のメーターや同社の自転車購入者だけにアクセス権を与え、顧客を囲い込む戦略に必ずしもケチをつけるつもりはありませんが、買わないとサイト閲覧すら出来ないようです。SNS、ソーシャルネットワーキングサービスですから、それも当然のことなのかも知れません。

ただ、環境に優しい自転車利用者の拡大を目指すとの立派な目標を表明するのなら、参加を一般にも許可する手はあるような気がします。せっかくのコンセプトなのに、同社の販売計画から見ても、当初の参加者はごく少数に留まりそうです。面白い試みですが、コミュニティが広がっていかなければ自転車利用者の拡大にはつながらないでしょう。

すでに、サイクルコンピューターを使って走行距離や速度などの走行記録を管理・保存したり、目標の達成などに利用している層も取り込めば、コミュニティの盛り上がりや、広がりも違ってくるような気がします。同社のメーターの省力化などのメリットや、使い勝手をアピールしてユーザーを増やすことにもなるのではないでしょうか。

あくまで個人的な感想です。しかし、いずれにせよこうした新しい製品によるネット利用の提案は、自転車の楽しさを広げ、活用促進につながる可能性があります。もちろんダイエットなどのモチベーションを保つのにも有効でしょうし、その前の段階として、サイクルコンピューターの普及にもつながると思います。

サイクルコンピューターサイクルコンピューターを既に使っている人なら、距離やスピードが表示されることで、より自転車に乗る楽しさが広がることを理解できると思います。でも広く普及しているとは言えず、シティサイクルなどを利用する層には、まだサイクルコンピューターを使っていない人も少なくありません。

必ずしもネットで公開しなくても、自分のスピードや走行距離などの数値によって自分の能力を再認識すると、興味や向上心もわくものです。体重などと併せて記録することでダイエットの励みにもなります。サイコンをつけただけで、自転車がより楽しくなった経験がある人も多いのではないでしょうか。

そうした「自分の走りが目に見えるようになる効果」に加え、ネットを利用することで、必ずしも近くにいるとは限らない同好の士と知り合うきっかけも出来、自転車の楽しみ方が増えるのはいいことです。もしかしたら、他社も追随して同様のサイトが増えていくかも知れません。

折しもこの4月から、厚生労働省が企業に対して、社員のメタボリックシンドローム対策を義務づける特定保健指導制度がスタートします。企業で、こうした機器を使って健康のための自転車利用を推進するところが出てくる可能性もあります。病院や保健所が、糖尿病などの運動療法の管理に活用することも考えられます。

これらの利用法が、必ずしも本人の自転車生活を楽しくするとは限りませんが、健康管理面から、自転車の利用距離情報をやりとりするスタイルも一般的になってくるかも知れません。なかなか自分だけでは運動習慣が続かない場合も多いわけですから、有力な選択肢にはなるでしょう。

自転車生活のスタイル今のところ、同社の設定するエコポイントがたまっても、特段のメリットはないようですが、もしかしたら何らかの特典と交換するスポンサーが現れるかも知れません。そうなると文字通りマイレージを貯めるために、自転車に乗るモチベーションが高まることも考えられます。

一人ひとりの自転車利用では、その単位が小さ過ぎますし、二酸化炭素の排出権取引に使えるわけではありませんが(笑)、少なくとも環境への貢献が目に見える形になるのは有意義です。金銭的な特典がなくても、クルマの利用を控え、自転車に乗ることで環境へ貢献している実感が沸くのも悪いことではないでしょう。

同時に、距離が積算されていくにつれ、場合によっては金銭的価値に匹敵するメリット、すなわち自分の健康というマイレージがたまっていくのも確かです。コミュニティが確立されれば、ほかにもいろいろな使い方が考えられます。アイデア次第で、さまざまな広がりを見せる可能性があります。

今まで単に交通手段として自転車に乗っていただけの人が、ネットによって新しい楽しさを知るきっかけになったり、今でもブームとは言われていますが、更に趣味やスポーツとして乗る人、またその距離を増やすかも知れません。たかがサイクルメーターですが、新たなスタイルを開く役割が期待されるアイテムと言えそうです。



その4月から始まる「特定健診・保健指導」(メタボ健診)で、厚生労働省は企業が実施する職場健診での腹囲測定の際、着衣のままの測定や健診会場での自己測定を認めることを決めたそうです。腹部を出すことへの抵抗感による受診拒否を避けるためだそうですが、ずいぶん遠慮深いことで..(笑)。

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