May 19, 2008

自転車を取り巻く状況の変化

陽気もよくなって、野外活動には絶好の季節となってきました。


風薫る季節、休日に自転車を楽しむ人も多いでしょう。そして、季節が良くなってきたからだけではなく、以前にも増して、その人数が増えている感じがするのは私の気のせいではないと思います。自転車がブームと言われ、今までのような単なる日常のアシに留まらず、趣味やスポーツとして楽しむ人は確実に増えているようです。

単にブームというだけでなく、メタボ対策など健康面への貢献、自転車と歩行者との事故の増加と道交法の改正、親子3人乗りの問題など、さまざまな面から注目されたという要素もあります。そして、何より環境問題への関心の高まりから、二酸化炭素を排出しない自転車の優れた『環境性能』が見直されていることが大きいでしょう。

今月も、そうした傾向を裏付けるような出来事やイベント、地方自治体の政策や警察の動きなど、各地の自転車関連のニュースが報じられています。今回は、そんな記事の中から、目を惹くものをいくつかピックアップしてみようと思います。


オフィス街でレース自転車:オフィス街を疾走、競技PR 東京

丸の内の路上で行われた自転車のスプリントレースで力走する選手たち=東京・丸の内で2008年5月18日午後1時16分、須賀川理撮影 東京のオフィス街を自転車が疾走−−。東京・丸の内で18日、「自転車スプリントGP(グランプリ)『トリックスター』in丸の内」(財団法人JKAなど主催)が開かれた。

北京五輪を前に、自転車競技の魅力を知ってもらおうと企画した。ブランド店などが並ぶ丸の内仲通りに、全長300メートル、幅3.5メートルの自転車走路を特設。五輪に出場する2人を含む競輪のトップ選手8人が出場。1対1の150メートル走でビルの谷間を駆け抜けた。(後略)(毎日新聞 2008年5月18日)


近づく北京五輪の種目としても、自転車はマイナーなので、そのPRを兼ねたイベントのようです。有名なツールドフランスをはじめとする自転車ロードレースが高い人気を誇るヨーロッパと比べ、日本で自転車競技の認知度は高くありません。実際に間近で見ると、自転車そのものに対するイメージも大きく変わるのではないでしょうか。


もっとPRを「もっとPRを」市民、注文の声 美濃であす自転車国際レース

自転車の国際ロードレース「ツアー・オブ・ジャパン美濃ステージ」が20日、美濃市で開かれる。初開催の昨年、世界レベルの選手が21・3キロのコースを7周半疾走。沿道は市民らの歓声で沸いた。市は、大会を地域の活性化につなげる考えだが、地元への浸透はまだ十分とは言えない。競技に対する市民の理解を深め、市のPRにも役立てる取り組みが求められている。

公道を走る大会は、広範囲にわたって交通規制が行われる。一般にはなじみが薄い競技でもあり、昨年は市民から「本当に市の活性化につながるのか」という疑問の声も出た。これを受け、美濃ステージ実行委員会は、精力的なPR活動を展開。市職員や数百人のボランティアが大会を支え、来場者は2万人を超えた。

誘致の先頭に立った実行委員の後藤穂さん(59)は「声援のすごさに選手が驚いていた。『同じコースを走りたい』と市外から訪れる人もいる」と話す。今回ボランティアに申し込んだ団体職員市原斉さん(25)は「美濃の名が世界に広まってくれれば」と期待する。

一方、スタート地点となっている「うだつの上がる町並み」の住民らからは「選手が出てしまったら、町並みはがらがらになる」「交通規制のために、観戦に行きづらい」との声も漏れる。

生活や観光に自転車を取り入れる「サイクルシティ構想」を進める美濃市は、大会を定着させ、同じコースで競技を行う2012年の国体に向けた機運を高めようとしている。しかし、「競技のルールや市の構想について良く知らない」と話す市民は少なくない。ある市民は「もっとPRに力を入れた方がいい」と注文する。

美濃市の大会は、今のところ3年限りとされている。美濃ステージ大会長の石川道政市長は「市民の賛同があれば、長く続けたい。サイクルシティ構想の説明も進め、自転車に親しみやすいまちづくりをする」と話している。(2008年5月19日 中日新聞)


地域の活性化やPR、観光客の増加などを見込んでイベントを誘致する動きもあります。ただ、こうした競技が、単なるイベントから市民に支持される「文化」として根付き、大きな波及効果が見込めるようになるまでには、長い期間がかかるのが普通です。息の長い取り組みが求められます。


佐渡ロングライド海風受け佐渡を自転車で疾走

佐渡の豊かな自然を楽しみながら自転車で走るイベント「佐渡ロングライド210」(佐渡観光協会など主催)が18日、行われた。参加者はさわやかな海風を受けながらペダルをこぎ、心地よい汗を流していた。

3回目のことしは、全国各地から2650人が参加。佐渡を1周する210キロから、佐渡金山の観光も付いた40キロまでの4コースに分かれて走り、完走者2533人にはトキを描いた手刷りの版画が贈られた。(後略)(新潟日報 2008年5月19日)


一般の人も参加できるレースやイベントも、年々人気を高めています。この佐渡ロングライドには、元F1レーサーの片山右京さんやタレントの鶴見辰吾さんなど、自転車好きの有名人も参加しています。ただ、やはり一般的な知名度、認知度ということで言えば、まだまだこれからと言えるでしょう。


自転車ロードレース映画「シャカリキ!」の撮影順調=日本初の自転車ロードレース実写映画

高校生の自転車ロードレースを題材にした「シャカリキ!」の撮影が、宇都宮市森林公園で行われた。同公園はロードレースのジャパンカップが毎年開催されるなど、自転車好きが集まる「聖地」。日本初のロードレース実写映画の制作は、7月の完成を目指して順調に進んでいる。

自転車で坂を登るのが大好きな主人公「テル」が、ロードレースや仲間に出会って成長していく姿を描く本作は、曽田正人氏の原作マンガの実写版。選手は時速60キロを超えるスピードで走るため、空気抵抗が大きな障害になるスポーツ。エースを勝たせるために風よけになるなど優秀なアシストがいるかどうかが勝敗を左右する。(後略)(時事通信 2008/05/08)


しかし、自転車ロードレースの映画が製作されるなど、着実に変化が起こりつつあるようです。この映画は、人気若手俳優が起用されるなどの話題も報じられており、今までロードレースに関心が無かった層にもアピールすることになると思われます。


自転車祭り:ルールやマナー周知を図ろう−−盛岡/岩手

自転車の利用促進とルールやマナーの周知を図ろうと、「自転車祭り」(盛岡自転車会議主催)が17日、盛岡市菜園のデパート前で開かれた。18日まで。 木製自転車やトライアスロンのアジア選手権で優勝した選手が実際に使ったロードレーサーなど約20台を展示。自転車の無料点検や、道交法に基づく自転車利用のルールなどに関するクイズによる啓発も行われた。

世界最速の自転車で知られるリカンベントを自作して持ち込んだ同市下飯岡の自営業、浅沼範道さん(48)は「素人でもプロ選手並みのスピードが出て、サイクリングを楽しめますよ」と勧めていた。通行人らは、珍しい自転車に興味津々だった。 主催団体の斎藤純会長は「自転車がより使いやすい街づくりができるよう、提言やイベントで啓発を促したい」と力を込めている。(後略)(毎日新聞 2008年5月18日 地方版)


自治体や地域の民間団体などの企画するイベントも、こうした傾向を反映しています。以前なら、あまり見向きもされなかったであろう趣向が実現する背景には、一般的な人の中にも、スポーツバイクに対する興味や関心が広がっていることを裏付けています。


サイクルトレイン西武鉄道と秩父市 “銀輪散策”電車でGO エコ・観光誘致へ相乗効果

西武鉄道と秩父市は18日、西武池袋駅(東京都豊島区)から西武秩父駅(埼玉県秩父市)まで電車で移動し、秩父市内のサイクリングコースを楽しめるイベント「秩父サイクルトレイン」を開催した。西武鉄道が、自転車を折りたたまずに乗せることができる臨時列車「サイクルスポーツ」号を運行し、早朝の西武池袋駅のホームは、自転車を引く乗客であふれ、普段とは違う風景を見せていた。

秩父サイクルトレインの開催は今回で2回目。昨年11月の第1回イベントでは250人の募集に対し1000人を超える応募があり、「次も早く開催してほしい」との要望が多く寄せられたことから、今回の開催となった。この日は沿線の他のイベントと重なり、応募人数は700人強と前回には及ばなかったものの、遠く大阪から参加した人もいて、盛況だった。 (後略)(2008/5/19 FujiSankei Business i.)


競技やスポーツバイクへの関心だけでなく、実際に自転車に乗ってサイクリングを楽しむ人たちの増加に伴い、交通機関もサイクルトレインをイベントとして実施しています。こうした企画を通して、もっと一般的に認知されるようになれば、イベント時だけでなく、恒常的に電車に自転車を持ち込めるようになるでしょう。


バスに自転車北海道洞爺湖サミット:ニセコ町ニセコバス、自転車積める循環バス運行/北海道

国内外からの観光客が増えている後志管内ニセコ町は5月から、ニセコバス(本社・同町)と共同で自転車を積める循環バス「ふれあい号」の運行を始めた。環境が主要テーマとなる北海道洞爺湖サミットを契機に、観光客に自転車利用を促して二酸化炭素の排出削減を図る取り組みだ。

同町は冬季はスキー、夏季はゴムボートで急流を下るラフティングなどのアウトドアスポーツが人気で、年間150万人以上が訪れる観光スポットとなっている。ただ、ホテルやペンションはスキー場周辺に集中し、400メートル前後の標高差がある市街地との行き来に自転車を利用するのは難しい。そこで、「町民の足」となっているシャトルバスを改良。車体後方に幅約2メートル、奥行き約70センチのキャリアを取り付け、自転車を2台まで積めるようにした。(後略)(毎日新聞 2008年5月14日 地方版)


バスと自転車の連携を模索する動きも始まっています。日本ではまだ珍しい存在ですが、乗客にしてみれば自転車が積めるようになることで、バス下車後の行動範囲が広がります。バス路線を補完し、バスの利用価値が上がることにもなって乗客を増やす効果が期待できるわけで、バス側にもメリットは少なくないでしょう。


佐渡を観光佐渡観光は自転車でのんびり

自転車を使って佐渡観光の魅力を高めようと県が設置したポタリング誘客検討委員会は14日までに、自転車で観光しやすい島内のモデルルートの選定を提言した報告書をまとめた。環境に優しい自転車の人気が広がる中、利便性も高めるため島内外のレンタサイクルを相互利用できる体制づくりなども求めている。

ポタリングとは、目的を決めて走るサイクリングと異なり「のんびり自転車を楽しむ」意味。島内では「佐渡国際トライアスロン大会」や「佐渡ロングライド」など自転車を使った競技イベントが定着しているが、一般観光客や島民の利用は一部にとどまっている。(新潟日報2008年5月15日)




駐輪場不足市の連携不備、批判の声 サンサ右京の駐輪場不足

京都市が建設し今年3月にオープンした右京区の複合施設「サンサ右京」で、自転車の駐輪場不足が深刻だ。自転車が歩道にあふれ、放置自転車対策を進める市内部からも批判が出る一方、施設のほぼ真下にある地下鉄駅の駐輪場では空きが目立つ。サンサ右京の駐輪が無料なのに対し駅駐輪場は有料なためだが、同じ市の施設だけに、ちぐはぐな計画への批判も高まっている。 (後略)(2008年5月19日 京都新聞)


自転車を活用した街づくりを目指す自治体は全国で増えていますが、単なるブームに乗ったうわべだけの政策では、市民にも受け入れられないでしょう。自転車の活用を呼びかける一方で、自転車の通行空間や駐輪施設の整備が不十分であれば、実効も上がりませんし、その姿勢が疑われます。


サイクルシェアリング一挙三得?、「サイクルシェアリング」広がる

自転車を複数の人で共用する「サイクルシェアリング」が都市部で広がっている。環境に優しく、健康にも良いと自転車が見直されているのに加え、迷惑駐輪対策にもなるためだ。ビジネスとしても軌道に乗り始めた。

大阪市此花区に2007年10月に完成したマンション「リバーガーデンシティさくらの丘」(220戸)は、駐輪場にサイクルシェアリング用の自転車を5台置く。各戸に2台分の駐輪スペースがあるが、それ以上の台数が必要な家庭や、たまにしか乗らない住民に使ってもらっている。(2008年5月18日 読売新聞)


都市部では自転車の駐輪スペースの確保も容易ではありません。駅前などの放置自転車も問題になります。同じマンションの住人同士でクルマをシェアする例もありますが、自転車を共有しようという動きも広がっているようです。不特定多数だと上手くいきませんが、限られたコミュニティの中なら有効な手段でしょう。


警察署員が生活目線で街チェック 一宮署員が自転車60キロ

一宮署員が、管内の全交番・駐在所を自転車で回って地域事情を把握する特別行事「ツール・ド・一宮」が17日開かれた。生活者の目線に近い自転車で、交番の配置や交通量などを確認。署員同士の関係も深めようと初めて実施。清水啓任副署長や各課長、地域課の署員ら40人が非番を利用して参加した。

管内には現在21カ所の交番と駐在所があり、すべてを回ると距離は60キロになる。参加者は地図で道順を確認し、念入りに準備。一宮市真清田の宮前三八市広場に集合し、天野景春署長の号令で午前9時出発の第1団から、さっそうと駆けだした。早い人は3時間強で全部を回った。(後略)(2008年5月18日 中日新聞)


こちらは珍しいイベントですが、自転車の乗り方を指導し、違反を取り締まる立場の警察官が自転車の交通ルールをきちんと把握していないと思われる事例もよく聞かれます。地域の自転車通行環境の実態を知り、問題点を発見したり、事故や違反を未然に防ぐためにも有効です。他の地域でも十分に取り入れる価値があります。


デパートでも松屋銀座でイタリア自転車フェスタ−こだわりのブランドを紹介

松屋銀座は5月14日より、1階スペース・オブ・ギンザで「GINZA ロード&シティバイクフェスタ」を開催している。同展は、ツール・ド・フランスと肩を並べる世界最大の自転車レース「ジロ・デ・イタリア」を開催するなど、自転車競技の盛んな本場イタリアのロードバイクに注目し、速さを追求し、究極にまで近づいた機能美やイタリアの職人気質のこだわりや美しさを感じる自転車や関連グッズを紹介する。

ターゲットは30〜40歳代のこだわりのある男性で、ロードバイクのエントリーモデルから、すでにロードバイクを乗りこなしている人向けのトップエンドモデルまで幅広く商品展開を行う。(後略)(2008-05-14 銀座経済新聞)




日本初の直営展示販売所 世界的自転車メーカー

世界的な自転車メーカー、米スペシャライズドの日本法人、スペシャライズド・ジャパン(東京都中野区)はこのほど、日本初の直営展示販売店「スペシャライズド・コンセプトストア」を東京都渋谷区にオープンさせた。

12日に行われたオープニング式典には、増田寛也総務相も出席し、「わが家は夫婦で6台のスポーツ自転車を持つほどの自転車愛好家。環境にも健康にもいい自転車を一緒に広めましょう」とあいさつした。(後略)(2008.5.18  サンケイ新聞)


小売店や海外のメーカーも日本市場の変化を感じているようです。シマノも南青山にアンテナショップをオープンさせていますが、青山や外苑前といった、今までの自転車のイメージを覆すような「オシャレ」な街に出店しているのは注目されるでしょう。若者がカッコいいと感じなければ、スポーツバイクの普及も拡大しないと思われます。


女性誌もファッションなどを特集している

自転車通勤派のおしゃれをチェック!

エル・オンライン編集部周辺で働く女性たちのスナップをお届け。本日のテーマは「自転車通勤派のおしゃれをチェック!」(2008.5.19 エル・オンライン)


女性誌などでも、自転車が特集で取り上げられたりしているようです。今まで、あまりなかったことでしょう。ヒールで自転車に乗ることの現実性、是非は私にはわかりませんが、これまで男性が圧倒的に多かったスポーツバイクの世界も様変わりしていくことでしょう。

ここに挙げた例は一部に過ぎませんが、さまざまな点で、自転車を取り巻く環境は確実に変化しつつあると感じます。ただ、これが単なるブームに終わるとしたら残念なことです。環境のためにも、これらの変化が確実に人々の生活に根付き、街のインフラを変え、文化やライフスタイルとして定着してほしいものです。



気持ちのいい季節には間違いないのですが、既に、かなり紫外線は強くなっているようです。先日もだいぶ日焼けしてしまいました。あまり焼けたくない方は、紫外線対策もお忘れなく。

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