改正の中で一番話題になっているのは、クルマに乗った時の後席シートベルトの義務化でしょうか。バスやタクシーにも適用されますので、当初はお客とのトラブルがあるかも知れません。バスガイドも走行中は着席してベルトを装着することになるので、乗客のほうを向いた対面では案内できなくなるわけです。
75歳以上のドライバーはクルマの前後に高齢運転者標識、いわゆる「もみじマーク」を付けることが義務化されます。やはりタクシーも例外ではありません。法人の場合は定年がありますが、個人タクシーのドライバーは1割ほどが75歳以上と言われています。「お客に敬遠されるのではないか」と心配する人もあるようです。
犯罪も誘発しかねません。タクシー強盗は、金が奪えるかどうか運転手をよく観察してから犯行に及ぶと言いますから、強盗に狙われやすくなる可能性が指摘されています。高齢者の運転による事故など、法改正の主旨もわかりますが、年齢による差別につながりかねないと危惧する声も聞かれます。
自転車関連の改正もあります。普通自転車が歩道を通行できる場合の見直しが行われ、従来の「標識により通行が認められる場合」に加え、児童、幼児、70歳以上の高齢者が安全確保のため、やむを得ない場合には歩道通行が認められます。ただし、警察官が歩道を通行してはならないと指示した場合は、これに従わなくてはなりません。
一時、物議を醸すきっかけとなった改正ですが、現在でもほとんどの人は標識がなくても歩道を走行していますから、結果としては現状を追認する形と言えるでしょう。肝心の、自転車の『車道通行の原則』は変わっていません。このことは警察のサイトなどを見ても明記されています。
目新しい部分としては、児童や幼児が自転車に乗る場合にはヘルメットを着用させるよう、その保護者に対し努力義務が課せられたことでしょう。今までも学校などの指導でヘルメットを着用させている地域はあったわけですが、今回の規定も努力義務であって強制ではないので、どのくらい着用が広がるかは不明です。
地域によっては、学校や教育委員会などを中心にヘルメット着用に力を入れているところもあります。自転車店でも、子供用ヘルメットが売り切れるほどの勢いのところもあれば、ほとんど売れ行きに変化のないところもあり、地域によってまだら模様になっているようです。
大人だって着用するに越したことはありませんが、子供の場合は特にかぶらせた方がいいのは間違いありません。やはり大人に比べて、怪我をする確率は高いですし、万一のことを考えれば、ふだんから備えるべきでしょう。最初は嫌がるでしょうが、慣れです。そのうち、無ければ落ち着かなくなるでしょう。
自転車事故の増加を受け30年ぶりに改正された「交通の方法に関する教則」も6月1日に施行されます。警察庁は、法律上は違反であるにも関わらず、その意識の低い、幼児を乗せての「3人乗り」の禁止を明記する方針でしたが、お母さんたちの猛反発を受けて、今回は記載が見送られたようです。
もともと、この「交通の方法に関する教則」そのものに法的な強制力はありません。学校での安全教育や自動車教習所の教本の元などになるものです。しかし、これに禁止と明記されれば、安全運転のための義務と見なされ、悪質な場合などには、安全運転義務違反として取り締まられる可能性が出てくるでしょう。
この教則の主な改正点としては、幼児や子供にヘルメットを着用させる義務のほかに、「クルマから目につく目立つ色を着る」とか、「歩道でむやみにベルを鳴らさない」、そして「自転車の原則車道走行」も盛り込まれています。これも一時話題になりましたが、「自転車に乗りながらの携帯電話やヘッドホンの使用を禁止」しています。
実際にケータイを操作しながら自転車に乗っていた人が、歩行者を死亡させる事件も起きています。歩行者にぶつかっておきながら逃走し、ひき逃げで逮捕された事例もあります。自転車と歩行者の事故急増という背景があるので、今後警察の取り締まりも強化されるでしょう。
つい、やってしまうという人も多いのかも知れません。そんなに重大な事故には至らないとも思うのでしょう。しかし、もののはずみで深刻な事態に陥りかねません。誰の身にも起こり得ますし、人を死傷させてからでは遅すぎます。自損事故もありますし、いずれにせよ、危険ですから絶対にやめるべきです。
また、雨天時に傘をさしての走行は片手運転になるので危険とされています。それと今回、傘を自転車に固定するのも視野を妨げたり、歩行者に接触するなど危険な場合があると指摘しています。特に大阪などで普及している「さすべぇ」などの製品のことを指すのでしょう。
一部には今年に入って、商品に「風の強い日や人ごみの中で使用するのは危険」と表記されるようになりました。メーカー側は警察庁に対し、使用を認めるよう申し入れたりしたものの、昨年末に自転車装着の傘立てが禁止されるとの風評を受け、一時売り上げは激減したそうです。
メーカーは、安全運転のための発明であり、直接事故につながった例はないと主張しています。確かに片手運転より安全との見方もあります。私は使ったことがないので判断しかねますが、例え透明なビニール傘だったとしても視界が悪くなるのは避けられないと思います。普通の傘なら、もっと見えにくくなるでしょう。
推測するに、走行すれば前から雨が吹きつける形になるので、傘は前に傾けて固定する人もあるでしょう。傘を傾けたために、前方、特に先の方が見えにくい状態で走行している人もいるのではないでしょうか。だとすれば、少なくとも危険度が増すことは否めません。
ただ、器具の問題と言うより、使う人の問題のような気もします。そんな視界の悪い状態で先を急ぐのが危ないのであり、人の多い場所、特に歩道では、必要ならば自転車を降りて押すくらいのことをしないと事故は防げないはずです。雨で視界が悪い中を、無理やり晴天時と同じように走行しようとすることが問題でしょう。
考えてみますと、自転車に乗りながら傘をさすという行為自体、日本独特のような気がします。海外でも、ちょっとそこまで、と言うなら傘をさして乗る人がいるかも知れませんが、日本ほど多くは見ないと思います。海外の場合は、圧倒的に雨がっぱを着て乗る人が多いような気がします。
私も海外に出かけた時、写真のような雨がっぱを着て自転車に乗る人は見ますが、傘をさして乗っている人は見た記憶がありません。欧米だけでなく中国などでもそうです。中国内陸部はもちろん、上海などでもまだ自転車に乗る人は多く、雨が降ろうと平気で乗っていますが、皆ほとんど例外なくカッパを着ています。
そのほうが実用的ということでしょう。やはり、傘さし走行がこんなに多いのは日本だけなのではないでしょうか。おそらく、どっかりと座って乗る自転車、すなわちママチャリが圧倒的に多いことと無関係ではないような気がします。ママチャリなら傘をさしても比較的乗りやすいですし、安定しています。
ちなみに、私はママチャリを持っていませんし、雨の日は自転車に乗らないことにしているので、傘をさして乗ることもありません。出先で降られて、仕方なく雨中を走行することもありますが、雨が降りそうなのに自転車に乗るなら、傘よりレインウェアを持っていきます。
傘をさして乗った経験がほとんどないので推測ですが、短い距離ならともかく、結局は濡れそうです。横なぐりの雨にも弱いでしょう。一方、レインウェアは動きにくいし、蒸れたり、雨が中まで侵入したりして、あまり快適でない面があります。そう考えると、海外でよく見るポンチョのような雨ガッパは、結構良さそうに見えます。
傘を持つ必要がなく、横なぐりの雨にも強いですし、ポンチョ型なのでハンドルまで、あるいは前カゴまでカバーできそうです。上からかぶるだけなので手軽ですし、体に密着せず下側は解放されているので、蒸れることがなさそうなのも長所と言えるでしょう。
以前読者から情報をいただいたのですが、このサイクルポンチョ、実は日本でも売っています。いつ頃から売られているのかは知りませんが、リンク先(
写真をクリック)の商品レビューを見ますと、少なくとも一昨年からは売られているようです。ただ、雨の日に乗らないからか、地域によって偏りがあるのか、私はあまり見たことがありません。
このサイクルポンチョ、商品名は「チャリぽん」です。ネーミングはともかく(笑)、少なくとも傘より安全そうですし、もっと人気が出ても良さそうです。そんなに高いものではないですし、もしかしたら今回の改正も手伝って、今後売れるかも知れません。
私は現在、通勤などに自転車を使っておらず、出来れば雨の中を走りたくないので積極的には使いたくありませんが、雨に降られそうな中を自転車に乗る必要がある場合などの為に、持っていてもいいかも知れません。これから梅雨に向かいますし、夏場の夕立対策にもなりそうです。
6月1日は、多くの地域で衣替えです。自転車に乗る時の服装も、そろそろ変わり目かも知れません。同じ日に今年は道路交通法と交通教則も改正されるので、この機会にヘルメットなどの安全対策や、雨の時の装備などを見直してみるのもいいのではないでしょうか。
九州四国は梅雨入りしてますし、関東や関西も来週末くらいには梅雨入りでしょうか。自転車乗りにとっては憂鬱な季節がやってきますね..。
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交通の安全に関する教則の原本閲覧をまだしておりませんが、聞き回ったところでは、ヘッドフォンの使用そのものは禁止ではなく、通交の妨げるような大きな音での使用について好ましくないとした、従来通りの取扱いとなっているとの話しになっております。
禁止と書かれた根拠は、教則原本の記載によるものなのでしょうか?
お教えください。