
自転車をもっと多くの人に活用してもらうためには、どうしたらいいでしょうか。
そんなテーマで、“
Power To The Pedal”と題されたコンペが“
DESIGN 21”というサイトで行われました。もっと多くの人が自転車に乗り、より活用することを促進するため、自転車のアクセサリーや関連部品、プロダクツのデザインを募集するものです。コンペのサマリーから引用します。
自転車活用の推進は、単なる娯楽としてではなく、公害、渋滞、原油価格の高騰、または地域医療を取り巻く問題などの解決策として、地球規模で関心が高まってきています。特に世界中の都市部では、活動グループが自転車の権利を主張し、移動手段、フィットネス、そして楽しみの手段としての自転車の利点を広く認識してもらおうとしています。
自転車の使用を奨励することはまた、自転車を利用できる環境を整備することも意味します。地方政府は自転車が利用できるように、より便利で安全な道路の建設といった基本的な施設の整備を行っています。また一部の地域では「自転車通勤の日」を設けたり、自転車を共用するという概念を促進するなど、自転車の利用が、身体の健康や環境にプラスの効果を及ぼすという認識を広めようとしています。
このコンペティションは、自転車の利用体験を向上させ、多くの人々が自転車を主な交通手段として利用することを促すための、自転車のアクセサリー用品や補完部品のデザインを募集します(より便利で楽しく、そして安全であり、通勤、仕事、買い物、レジャーなど、あらゆる日常生活の場面に融け込むもの)。
審査は、応募作品を使うシーンを想定し、「そのデザインによって解決しようとする課題に有効な解決策であるか。」「デザインが製品化できるか、もしくは実用的であるか。」「自転車の利用者の安全性の向上に貢献できるか。」「デザインがどれだけ革新的で、費用効率が良いか。」といった点が基準となります。
そのほか、「デザイン全体のフォームと表現の優秀性。」や「製品の素材、製造方法、寿命、耐久性、重量、リサイクルやリユースなどの点で、どれだけ環境に配慮しているか。」といった要素も考慮されます。最終選考に残った作品の中から、優れたもの、ユニークなものをいくつか見てみたいと思います。

LEDをタイヤのスポーク部分に取り付けることで、目の残像を利用するイルミネーションは
既にあります。が、この“Speedometer”は、タイヤに速度を表示させてしまおうというものです。見せるメーターというわけですが、面白いアイディアです。

“Velocity: The Urban Shopping Cart for the Environmental Revolution”、こんな洒落たトレイラー、もしくはショッピングカートが普及すれば、買い物に行くにもクルマが必要な回数は減るでしょう。もちろん取り外して、転がして歩くこともできます。
日本では傘をさして自転車に乗る人が多いですが、海外では、自転車乗車用のレインポンチョやケープが一般的です。この“Bikebrella”は、スプレースカートの裾が伸びたような形状て、雨から足もとが濡れるのを防ぐ雨具です。ポンチョやケープより空気力学的に優れています。

不要な時は荷台、いざとなればトレイラーになるというアイディアです。“Transformable Trailor”、これはユニークです。空のトレイラーを引きずる必要がありません。タイヤが小さいので悪路に弱い気もしますが、途上国などでも活躍するでしょう。

学生さんの作品ですが、いつもの不便を解消するアイディアなのでしょう。“LUTI / Live cities in bicycle”は、通勤通学に便利な、本や書類が収納できる自転車です。前カゴに横にして積むより風の抵抗も少なく、ハンドルをとられる心配もありません。
ハンドルをたためる自転車です。私も以前、ママチャリのハンドルが全てたためるようになれば、駐輪場に留められる自転車の台数を増やすことが出来るだろうと書いたことがあります。左の“Retrofit Folding Handlebars”が多くの自転車に採用されれば、大きな意味を持ちます。
もちろん、個人で廊下などに保管する人にとっても便利です。壁に掛けて保管するにも幅をとらないので邪魔になりません。“Fold Down Handle Bar Locking System”と名付けられた、右のものも似ていますが、こちらはハンドルをたたむとロックされるようにもなっています。

“Bike To Bike Transport Vehicle”は、大きな荷物、重い荷物を運ぶ必要がある時に、2台の自転車を連結して、安定する4輪にしてしまおうというアイディアです。片方のハンドルを固定することで、一人でも運転できます。途上国で、水や薪、農産物などを運ぶのにも大いに威力を発揮するでしょう。

“work bike bag”は、サドル一体型バッグです。サドルが盗まれたり、雨で濡れるのを防ぎます。サドルを持ち歩くことで、自転車本体が盗まれるリスクも軽減されるかも知れません。ヘルメットなども入れておくことが出来るようになっています。

特に夏の自転車通勤は、汗をかくのが難点です。この“Absorbent Vest”と名付けられたベスト、シャツの下に着て汗を吸うように出来ています。職場に着いたら3箇所のフックを外し、背中から抜いてしまうことが出来るので、さわやかに仕事が始められます。

こちらは、自転車が走行する時に受ける風を利用して、笛のように音を鳴らす装置です。グリップ部にキーがついており、メロディーを奏でることもできます。自転車を楽器にしてしまおうというわけです。そのぶん空気抵抗が増えてしまうわけですが、遊び心タップリです。
サイクリングロードなどで、特にスポーツバイクは音がしないので、歩行者が自転車の接近に気付かないことがあります。驚かせてしまうこともありますが、だからといって、やたらにベルを鳴らすわけにもいきません。接近を知らせる笛のようなものでもつけたら、と私も前に書いたことがありますが、これなら、その役にも立ちそうです。
ベルは一つの音色で、せいぜい強弱をつけるしかありませんが、この“THE SOUND FROM WIND”なら、いくらでも違う音が出せます。追い越す時はドミソの和音、注意喚起はドファラの和音、お礼はシレソの和音、なんて具合に分けて合図するようになったら面白いかも知れません。

自転車の走行時に受ける風を、こちはシャボン玉を飛ばすのに使おうというものです。でも、“Bloom : peddling green”は、ただのシャボン玉を飛ばすのではありません。シャボン玉の液に植物の種子が入れてあるのです。コンクリートジャングルを緑に、街を花でいっぱいにすることができるわけです。
もちろん、その種が大根ならば、日本でたまに話題となる「ど根性大根」も量産出来ます(笑)。あまりどこでも発芽されたら、かえって街の美観を損ねたり、草むしりが必要になって困るような気がしないでもありません。花壇などに、直接播けば済むことですが、なんとも夢のある装置です。

“Zaina Bags”は、言わば自転車版のエコバッグです。必要な時に広げるので、ふだんから大きなカゴをつけたまま走る必要がないのもメリットです。小さく畳んで自転車に装着しておけば、急に買い物をした時などに便利ですし、レジ袋も必要ありません。


“eL: Elevated Cycleway: 2008”は、既存の電柱などを使って、高架の自転車専用通路をつくってしまおうという構想です。見た目は、ちょっと足元が心細くで怖い気もしますが(笑)、安全で高速に移動できる自転車道ネットワークです。土地を有効に使うことが出来、建設コストも低く抑えられます。

こちらは“Contrail”、タイヤに接するように取り付ける小さな部品です。中にはチョークが仕込まれています。自転車を走らせることで、タイヤについたチョークが線を描いていくことになります。それで、飛行機雲と名付けられているわけです。実用的なグッズとは言えませんが、ちょっとロマンチックです。
道路を占有するクルマに対する、ささやかな抵抗も含まれています。飛行機雲を路上に描く人が増えれば、クルマに対するアピールになります。カラフルなチョークの跡が重なっていけば、人々を自転車へとへ誘う「虹」になっていくことでしょう。

クルマに自転車を搭載するため、トランクにつけるラックは珍しくありません。ただ、クルマのほうに付いているのが当たり前です。“Portable Bike Rack”は、そのラックを持ち歩くという発想です。出先で突然雨に降られても、タクシーに自転車を積んで帰れるというわけです。簡単なことですが、発想の転換と言えるでしょう。
どれも、とてもユニークです。単に趣味やスポーツ、交通の手段としてだけ見ていると思いもよらないような活かし方、工夫、アイディアがあるものです。こうして見てくると、まだまだいろいろな自転車の活用法、ポテンシャルが埋もれているような気がしてきます。(してきませんか?)
もっと使いやすくしたり、楽しくする工夫もあるでしょう。自転車本体や部品の進歩もさることながら、その周辺商品、連携するようなプロダクツは、まだ開発の余地が多そうです。趣味やスポーツ、移動・運搬手段として、あるいはその域を越えた、自転車のさらなる進化が待っているのかも知れません。
沖縄の梅雨があけたこれからが、本州・四国・九州の梅雨本番です。傘さし運転は危険とされましたし、この時期に乗る人には、下の記事にあるようなレインポンチョがあってもいいかも知れませんね。
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遊び心から生まれてくる明日
何かを購入する時、デザインが決め手となることも少なくない。
今回も面白そうなグッズ満載ですね。以前紹介された、tarbo spokeですが、あの手この手で購入しようとしても出来ませんでした。同様に風を利用するTHE SOUND FROM WINDはこれは良いですね。市販化されたら即買いたいです。されますかね〜。