週末サイクリングに出かけようにも、天気に恵まれない場面が少なくありません。今年は例年に比べて降水量が極端に多い地域と極端に少ない地域との差が大きいそうです。降らなさ過ぎるのも、農作物の出来や夏場の水不足などの懸念がありますが、サイクリストにとっては少雨のほうがいいのは間違いありません。
その梅雨も後半に入り、野外の活動はもうしばらくの我慢ですが、梅雨開けをひかえたこの時期、夏の行楽の計画をたてている方も多いのではないでしょうか。旅行にレジャー、そして最近の自転車ブームもあって、ツーリングやサイクリング旅行を計画している人も増えているかも知れません。
日帰りのツーリングもいいですが、日にちがとれるなら泊りがけで出かけてみるのも面白いと思います。自宅から自転車で走りだしてもいいですし、輪行(自転車を分解して鉄道などで持ち運ぶこと)すれば、ふだんは走れない、自宅から離れた地域を自転車で旅行することも可能です。
宿泊施設については、温泉や味覚、景観など、人によって重視するポイントがあると思います。保養所とか公共の宿などならリーズナブルな料金で泊まれるかも知れません。意外と知られていませんが、サイクリストなら、
サイクリングターミナルに泊まるという選択肢もあります。
サイクリングターミナルは、全国各地にあって地方自治体、またはその委託を受けた団体などが運営する公共の宿です。別に自転車で訪れなくても構いませんし、誰でも利用できます。ただ、必ずしも一般的な観光地、有名な温泉地などに立地しているわけではありません。
サイクリングターミナルというだけあって、自転車旅行の拠点としての利便性が高いサイクリスト用の宿で、いわゆる観光地のホテルとはちょっと違います。でも、そのぶん料金はリーズナブルで、標準的な料金は、大人一名1泊2食付きで、5,250円からとなっています。
各サイクリングターミナルには、レンタサイクルが用意されていますので、自分の自転車を運ばずに借りる手もあります。輪行せずに鉄道などで出かけ、サイクリングターミナルを拠点にしてレンタサイクルで走りまわることも出来ます。ただ、どんな自転車が借りられるのか、あらかじめ確認したほうが良さそうです。
また、必ずしもサイクリングだけではなく、テニスコートやプールをはじめ、さまざまなスポーツ施設や野外活動が出来る施設が備わっている場所もあるので、いろいろと組み合わせて楽しむことも出来ます。そのあたりの情報は日本サイクリング協会のサイトに載っています。
この「
日本サイクリング協会」(略称JCA = JAPAN CYCLING ASSOCIATION)というのも、意外と知られていないようです。名前を聞いて、あるだろうなとは思うものの、文部省や経済産業省が管轄する公的な団体ということで、あまり興味を持たない人が多いということかも知れません。
サイクリングの普及奨励や、サイクリング指導者の養成、サイクリングによる青少年の健全育成、サイクリング及びサイクリング用自転車に関する調査・研究などの公益事業を行う財団法人、と言うと、あまり興味がわかないのも無理はありません。
私も今まで部分的に関連事項を書いただけで、特に取り上げたことはありませんでした。ヒルクライムやロングライドなどの大会に出る方なら、その主催団体としてご存じの方もあると思いますが、聞いたことがあるくらいかも知れません。ただ、知っておくと意外と便利なものもあります。
その一つは保険です。民間の損害保険会社などの自転車保険に加入している人もあると思いますが、保険金請求が増えているのか、最近は保険会社があまり扱いたがらないというような話も聞きます。自転車保険自体がなくなってしまった保険会社や共済組合などもあるようです。
自身の怪我については、他の保険でカバー出来るとしても、相手に怪我をさせるなど損害賠償責任が発生することもありえます。自動車や火災、ファミリー保険など他の損害保険の特約などで担保されるものもあると思いますが、自転車乗車中の事故の賠償責任を保障するような保険は少なくなっているようです。
日本サイクリング協会は、年会費4千円を支払って会員になると、特典として自転車総合保険がつきます。傷害の場合の死亡後遺障害と入院、通院費用のほかに、賠償責任としては一事故最高限度額1千万円まで保障されます。JCA主催イベントの割引など、他にも特典がありますから、場合によっては検討の余地があると思います。
もう一つは「サイクリングタッグ」です。JCAに千円を払うだけで、JCA会員限定の「サイクリングヤマト便」が利用できます。千円はタッグの料金で、自転車を宅配便で送る料金は別ですが、このタッグは何度でも利用できるので、2度目以降は必要ありません。
スキーでもゴルフでも、最近は道具を宅配便で利用する場所まで送るのが当たり前のようになっています。クルマの場合はともかく、鉄道などを利用する場合、大きな荷物を持ち運ばなくて済むのでたいへん助かります。自転車だって分解すれば小さくなりますので、宅配便で送ってもよさそうなものです。
ところが、自転車を送る人は少ないらしく、宅配便で特に自転車向けをうたっているところはないようです。ヤマト運輸ですら、一般のホームページではサイクリングヤマト便について記載されておらず、自転車を送るのは家財宅急便、つまり引っ越し扱いになってしまいます。料金も当然高いものとなります。
しかし、このサイクリングタッグでサイクリングヤマト便を使えば、宅急便で自転車が送れます。ヤマト運輸の営業所ですら、「サイクリングヤマト便」を初めて扱うため、この制度が分からない営業所もあるというのが実態のようですが、自転車を送りたい時に知っておいて損はありません。
旅先でレンタサイクルでなく自分の自転車を使いたい時は輪行するのが一般的でしょうが、場合によっては、この「サイクリングヤマト便」を使う手もあります。サイクリングターミナル宛に自転車を送っておいて、手ぶらで出かけるなんてことも出来そうです。
そのほか、JCAのサイトには、サイクリングターミナル滞在記や、各地のサイクリングロード走行体験記などが載っていますので、参考になるでしょう。JCAの主宰するレースやサイクリングイベントのスケジュールも7月以降は目白押しです。
走り慣れた地元も悪くはありませんが、たまには遠征してみるのもいいと思います。旅行に行ったことがある場所でも、バスなどで訪れるのと、自転車で巡るのでは、見える景色も大いに違ってくるに違いありません。場合によってはJCAやサイクリングターミナルなど、うまく利用したいものです。
ツーリングの計画や走行ルートを机上でシミュレーションしてみるのも、意外に楽しいものです。梅雨明けが待ち遠しい時期ですが、雨で自転車で出かけられない日は、サイクリング旅行の計画や夏のツーリングのルート、立ち寄りポイントなど、じっくり練っておくのもいいかも知れません。
サイクリングターミナルやJCAについては、ご存じの方もあるとは思います。私も過去に書いたような気がしていましたが、調べてみるとサイクリングタッグ以外なかったので、今回取りあげてみました。
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