July 03, 2008

何か新しいものを求める人々

デザイナーにとっても、自転車は何か惹きつけられるものがあると言います。


例えば、私たちがふだん使う椅子も、すでに形や機能が研究し尽くされているにも関わらず、デザイナーは、また新たなデザインの椅子を生み出し続けています。同じように、ダイヤモンドフレームに車輪が2つといいう自転車の基本形には、これ以上改良の余地がないようにも見えますが、デザイナーの試行錯誤は止まりません。

クルマだと大がかりになり過ぎますが、自転車だと取っつき易いことも影響しているでしょう。やろうと思えば個人でハンドメイド出来る敷居の低さがあります。誰にも身近な存在ですし、ちょっと変わったデザイン、新しいスタイルだと人々の興味を惹きやすいことがあるかも知れません。

メジャーなメーカーであっても、今年の市販モデルと去年のモデルの違いについて、一般の人は全く興味ないでしょうが、目新しいデザインの自転車ならば、特に自転車に興味がなくても、ちょっとは目を惹かれるのではないでしょうか。実際、非自転車の一般のメディアでも、奇抜な自転車のデザインが取り上げられたりします。

“WIRED NEWS”というサイトにも先日、“Six Crazy Concept Bikes You'll Never Ride”という記事が載りました。crazyとなっていますが、狂気の沙汰というより風変わりな、クールな、あるいはマニアックなというニュアンスと受け取った方がいいでしょう。

A bike with square wheels

いきなり登場するのが、この四角い車輪の自転車です。これだけ見ると、確かにcrazyと言いたくなります(笑)。こんな自転車、3mも乗ったらイヤになること間違いなしです。ところが、上下動せずにスムーズに走行させることが出来ると言います。

ScienceNews”というサイトによれば、下の図のような逆懸垂線と呼ばれる形が連続した道なら、スムーズな走行が可能になるとあります。逆懸垂とは、両端を支持され、ゆるく掛ったロープなどが垂れ下がる形、そのカーブを逆にしたものです。言われてみれば、確かにそうなりそうです。

A square rolling on a bed of inverted catenaries

デザイナーというより、数学者か幾何学好きの学生あたりが考えそうなアイディアです。見た瞬間は、そんなナンセンスな!と思わせておいて、実はまともに走らせることが出来るというところがミソなのでしょう。人々の意表を突くというか、常識に凝り固まった頭や思い込みに気付かせるという点でも面白いと思います。

この自転車は、単にそうした面白さを狙っただけのようですが、考えようによっては、何かに使えるかも知れません。私の勝手な空想ですが、例えばこの逆懸垂線型の凸凹道路、ガードレールや縁石、歩道と車道の段差の代わりに使ったらどうでしょう。

square-wheeled trike四角いタイヤの自転車

つまり、歩道と車道の境界に全て、この形のレーンを造るわけです。クルマが乗り上げにくい高さにします。歩行者も歩きにくいですから、この上は通らないでしょう。そして、この部分は四角い車輪の自転車だけが通れる、自転車専用通行帯になるわけです。

交差点の形状などには工夫がいりますが、完全に歩道、車道、自転車道をセパレートすることが出来ます。自転車も、歩道や車道に侵入出来ません。あくまで仮定の話で、実際にこうなって欲しいわけではありません。ただ、この「道路の形状のほうを変える。」という逆転の発想は、案外、何かに使えるのではないでしょうか。

Pilen ConceptPilen Concept

続いてのデザイン“Pilen Concept”。こちらは純粋にフレームのデザインですが、1930年代のル・マンのレース用のオートバイをモチーフにしていると言います。オートバイのレースなら、ル・マンではなくマン島ではないのかと思えば、実はル・マンにも時期とサーキットは違いますが、オートバイレースがあるそうです。

古い時代のオートバイのシルエットと言われれば、そんな気もします。確かに洒落たデザインです。しかし、コンセプトデザインに難癖をつけても仕方ないのですが、実用上、サドルの高さが調整できないのは困るでしょう。このあたりは、自転車にふだん乗らないデザイナーの作品なのかも知れません。

Cube Urban Street Concept

ドイツCube社の“Urban Concept Bike”も未来を感じさせる斬新なデザインです。こちらはフレームの角度でサドルも多少は調整できそうです。実はこのタイプのデザインは他にもいくつかあるのですが、このフレーム、折りたためるようになっているのが特徴です。都市での使用を考え、収納や運搬などに配慮しての仕様ということでしょう。

フレーム部分は、たたんでバッグに収まるくらいに小さくなります。欧米の都市の多くでは、盗難対策として自転車本体の2倍も重い丈夫なロックや太いチェーンを持ち歩く人が少なくありません。そのくらい深刻なわけですが、折りたたんで持って行けば盗難対策にもなると言います。ただ、タイヤ部分については未解決なのが残念です。

Cardboard bikeCardboard bike

こちら“Cardboard bike”も盗難対策を目的として設計されましたが、ユニークなのは素材です。フレーム部分がダンボール紙で出来ています。つまり、ダンボールで出来た自転車を盗む人はいないだろうというわけです。仮に盗まれたとしても30ドルで新しいものを購入できます。普通のものより丈夫なダンボールだそうです。

発想はユニークですが、私は例えダンボールであっても、それが一般的になれば盗まれるような気がします。高いスポーツバイクでなく、安い自転車、それも古くなったものでも盗まれています。その場限りのアシとして盗んで使い、乗り捨てる人もいるわけです。

確かに、欲しいから盗む、換金するために盗むということは無いとしても、安いから、ダンボール製だから盗んでも仕方がないだろうという考えは、少なくとも日本では当てはまらないでしょう。最近のママチャリは30ドルに近いような安い値段で売られていることもありますが盗まれています。

むしろ、違った用途がありそうです。例えばイベントなどで、期間限定、場所限定での構内移動手段として使うのはどうでしょう。スポンサー企業などの広告を印刷する手もあります。臨時に利用するだけなら、ダンボールのフレームでも十分ですし、その後に処分するにしろ保管するにしろ有利でしょう。

Puma BikeThe Ride

残りの2つ、“Puma Bike”と“The Ride”は私も以前に取り上げたことがあります。前者の盗難防止機構の考え方は優れたものですし、後者の無段変速ドライブは1490年代に、すでにレオナルド・ダ・ビンチによって考案されていたそうですが、それを搭載した世界初の自転車です。(詳しくは下の関連記事を参照のこと。)

この2つは市販されており、実際に手に入れることが出来ますが、最初の4つはコンセプトモデルなので市販されているわけではありません。偉そうに意見を書いてしまいましたが、どれもユニークです。人の目を惹くデザインであることには間違いありません。

逆に一般の人や、普通のシティサイクルに乗る人の目は惹いても、ロードなどのスポーツバイクに乗っている人にとっては、どれも奇をてらった自転車でしかなく、興味の対象ではないかも知れません。かく言う私も、今乗っている自転車に不満があるとか、必ずしもこれらの自転車の実現を期待するわけではありません。

でも、こうした自転車を見るのは好きです。それは、自分が乗りたい自転車と言うより、新しいデザイン、新しいアイディア、常に「何か新しいもの」を求めてやまないデザイナーや開発者の意欲に魅せられるのでしょう。その発想に興味を覚えるのであり、そうした人々に触発されるということなのかも知れません。



今度はうなぎですか。しかもかなり悪質な偽装のようです。これだけ出てくると、推して知るべしで、これ以上ほかに無いと考える方が無理です。まだいろいろあるのではと疑心暗鬼になりますね。

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こちらのコンセプトバイクも、The Rideと似たデザインと言えよう。

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もちろん自転車メーカーも新しいデザインを求めて試行錯誤する。


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この記事へのコメント
これですねhttp://wiredvision.jp/news/200807/2008070221.html
Posted by yuji at September 16, 2008 00:59
yujiさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
本文中にも書きましたように、この記事の元となったのは“WIRED NEWS”なのですが、その日本語訳版のようですね。
その親記事である“WIRED NEWS”も、元々は別のサイト、さらにはその先の別のサイトに載った記事から転載、言及しているわけですから、ずっとたどっていくと大元の記事に対して、たくさんの子記事や孫記事があるのでしょうね。
Posted by cycleroad at September 16, 2008 12:57
 
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