一部の自治体がコンビニなどに対し、地球温暖化対策の一環として24時間営業自粛の要請を検討しています。槍玉にあがったコンビニ業界は、コンビニだけスケープゴートにするなと猛反発しており、世論も賛否両論、真っ二つに分かれているようです。
要請検討前向き9都府県市 コンビニの24時間営業自粛(2008/07/02 47NEWS)
9都府県市が自粛要請に前向き コンビニの24時間営業(08/7/3 中国新聞)
深夜営業 激論 県「自粛要請」引き金(2008年7月2日 読売新聞)
省エネのために、お客の少ない深夜は閉めたらどうかと考えるのは自然でしょう。一方で、特定の業者だけ狙い撃ちするのは疑問という意見も頷けます。深夜に働いている人が困ると言われればそうでしょう。防犯の拠点としても機能しているので、閉めるべきではにいないとする意見もあります。
昨年度だけで、犯罪などに巻き込まれそうになった女性らがコンビニに駆け込んだ事例が一万三千件以上あったと言います。そう聞くと、単純に閉めるべきとも言えません。そのほか、24時間稼働していることで防災拠点になると評価する声もあり、もはや24時間営業は現代の社会に組み込まれているとも言えそうです。
ただ、コンビニの24時間営業が一般に浸透した結果、深夜営業はコストに見合わないが今さらやめられないということであれば、この機会に見直すのも有意義でしょう。結局のところ、当該企業の判断が優先されるべきであり、あたかも魔女狩りのような形でコンビニ業界だけ責めるべきではない気がします。
考えてみれば、コンビニが24時間営業しているおかげで、随分と便利になりました。日本の場合、店先や道端に設置された自動販売機が24時間稼働しているのも当たり前になっていますが、これだって、国によってはあり得ないことです。治安の悪い国であれば、すぐに販売機ごと盗まれてしまうので、屋外設置は考えられません。
日本は国民一人当たりの自動販売機の数で世界一です。膨大な数の販売機が設置されています。およそ半数は飲料の販売機です。地球温暖化対策ということで言えば、夜間も道端でずっと冷蔵もしくは温蔵しておくのは電力の無駄という見方もありますが、一方で我々の生活を便利にしてくれているのは間違いありません。
いつでも飲料などが手に入るだけでなく、夜間の照明や防犯の効果も指摘されています。最近はAED内蔵とか、周辺の道案内や情報提供をしたり、災害時に無償で飲料を提供する機能をもったものなどもあります。全体としてみれば大幅に人件費を低減して、我々が安くものを手に入れられることにも貢献しているわけです。
自動販売機と言えば、飲料やたばこの販売機などが多いですが、ほかにも様々な品物を販売するものがあります。食品や下着、おもちゃ、生花などは当たり前、おでん、生きた釣りの餌、数珠やお守り、おみくじの販売機もあります。日本全国には、いろいろ珍しいものを売る販売機もたくさんあるはずです。
ところで、アメリカ・ウィスコンシン州のマディソンに先月末、試験的に設置されたのが、写真の販売機です。設置したのは有名な自転車メーカーのTrek社。そう、自転車用の補修部品などを販売する自動販売機です。日本でも、自転車部品の自動販売機というのは聞いたことがありません。
“Trek Stop”と名付けられたこのスポット、販売機とバイクスタンドで構成されています。その場で簡単な修理が出来るようになっているわけです。これを報告している
bicycle designのJames Thomasさんに言わせれば、自転車乗りのためのコンビニエンスストアです。もちろん24時間利用できます。
販売機1台ですので、いわゆるコンビニエンスストアの規模ではありませんが、文字通りの意味の便利な販売コーナーであることは間違いありません。向こうの言い方だと、“A Qwik-e Mart”、日本風に言うならサイクリスト用のKIOSKでしょうか。
自転車用のタイヤチューブやパッチキット、チェーンやオイルなどの補修用品やパーツのほかに、ボトルなどの自転車用品や消耗品などが売られています。空気入れが設置されているので、タイヤの空気を補充することが出来ますし、バイクスタンドに固定すれば、ラクな姿勢で修理や調整が出来ます。
その付近の地図や自転車修理のガイドブックなども売られるようです。ほかにエネルギーバー、いわゆる携帯用の栄養食なども売っています。まさにサイクリスト御用達、その場所を自転車で通る人にとっては有難い存在となるのではないでしょうか。
場所は、ウィスコンシン州のマディソンにある自転車店の店先ですが、この場所が選ばれたのは、Trek社の故郷ワーテルローに近い都会だったからのようです。同社は、このパイロットプランがうまくいけば、“Trek Stop”を各地に展開する構想を持っているようです。
自転車店の店先だけでなく、自転車通勤者がよく通る場所など、サイクリストの利便性の高い場所にも展開される予定と言います。Trek社にとっては、そのロゴを露出する広告スポットとしての効果も期待できます。この原油高の折り、アメリカでも急速に自転車で通勤する人が増えていることも背景にあるのでしょう。
こんなスポット、日本にも欲しいと思うサイクリストは少なくないのではないでしょうか。ただ、果たしてTrek社が日本にまで展開することになるかはわかりません。正直言って、ちょっと望み薄のような気もします。日本も台数から言えば自転車大国ですが、その大部分がママチャリという独特の市場です。
街に自転車に乗る人はあふれていますが、自分で修理までする人、出来る人が、果たしてどれだけいるか考えると、このような自販機のニーズは残念ながら高くないと言えそうです。Trek社がターゲットにするような顧客層とは違う気もします。Trek社でなくても同じことでしょう。
ママチャリの部品メーカーにとってなら顧客数は莫大ですが、そもそもママチャリは修理しやすいように出来ていません。やってみればすぐ分かると思いますが、タイヤ1つ外すのも非常に困難です。スポーツバイクのチューブ交換なら朝飯前の私でも、ママチャリのタイヤやチューブの交換はやりたくありません。
つまり、日本のママチャリ向け修理用品の販売というニーズは高くないでしょう。もちろん、ホームセンターなどではママチャリ用の補修部品も売られていますし、修理する人もいるとは思います。ただ、街かどでママチャリをサッと修理する人、あるいはそうした需要は限りなく小さいと思われます。
一方、スポーツバイクに乗る人であっても、そんな自販機コーナーは意味がないと考える人もあるに違いありません。なぜならパンクやチェーンなどのトラブルは、いつどこで起きるか分からず、それが起きた時、近くに自転車版コンビニが無ければ意味がないというわけです。
だからこそ、サイクリストがパッチやタイヤ補修キットなどを携行するわけであり、地図や携帯食品なら一般のコンビニでも売っています。必要なパーツやツールなどは、あらかじめショップで購入しておき、必要に応じて携行するものなので、自転車用コンビニコーナーというアイデア、一見良さそうだけど意味がないと考えるわけです。
確かに一理あります。しかし、マーケティングという観点から言うとちょっと違うと思います。仮に、自転車通勤する人が、自分の通勤経路に自転車版コンビニが出来たとします。すると、通勤時にトラブルが起きた時、最悪歩く必要のある距離と、そのトラブルの起きる確率とを勘案することになるでしょう。
中には、滅多にない場面のために多くの荷物を持つより、ふだんは何も持たないかわり、トラブルが起きた時には多少歩くのも仕方がないと考える人も出てくるはずです。つまり、補修用品は、あらかじめショップで購入しておかずに、自販機コーナーで買うことになります。
一般のコンビニや自動販売機と同じことです。いつでも手に入ると思えば、わざわざ持ち運ぶ必要がなくなります。喉が乾いた時のため、家から飲料を持って出かけるかわりに、喉が乾いた時にコンビニで買おうと考える人をコンビニや自販機はターゲットとするわけです。それがコンビニのマーケティングです。
今まであらかじめ購入し携行していた人が、コンビニが出来たことで、必要な時にコンビニで買うというスタイルに変わるところに商機が発生するわけで、そう考えれば、自転車版コンビニも決してナンセンスではありません。ニーズがあるから設置するというより、設置するから需要が発生するわけです。
ただ実際問題としては、これだけ自動販売機があふれている日本でも、自転車用パーツの販売機というのは私の知る限りありません。日本のメーカーや流通企業なども、商機があると思えば、とっくに設置していることでしょう。そう考えると、日本での自転車コンビニのお目見えは期待薄です。
でも、今までなかったからと言って、今後も出て来ないとは限りません。最近、スポーツバイクがブームですし、通勤だけでなく、大規模サイクリングロードなどの沿道にあったら便利だと思う人も少なくないでしょう。こうしたスポットが出てくれば、自分で修理してみようとチャレンジする人が増えるかも知れません。
自転車を、より活用する助けにもなり、これからの時代の自転車インフラとしても有意義です。温・冷蔵するわけでもないので消費電力も小さくすみます。全国津々浦々までとは言いませんが、日本にも登場して、交通量の多いところなどを中心に設置が広がることを期待したいところです。
洞爺湖サミットが始まります。前回のロンドンでのテロを教訓にしているのでしょうけど、東京にもずいぶん警官が出ています。ただ、警官が出ていても防げるとは限らないような気がしますし、何も起きないことを祈りたいですね。
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景色の中に溶け込んでいる色
街にあるコンビニが、ランドマークとして機能していることも多い。
いつでもどこでも持って行く
環境のことを考えれば、飲料なども携行したほうがいいのも確か。
気づかずに通過している場所
郊外を走る場合は、当然どこにでもコンビニがあるわけではない。