何とかの法則ではありませんが、そんな気がする方も多いのではないでしょうか。そう言えば、しばらくトラブルが起きていないなと思った途端、アクシデントに見舞われたりします。そうした事態に陥らないためには、定期的なメンテナンスやチェックが欠かせません。
もちろん、予期せぬアクシデントもありますが、例えばチェーン関係のトラブルのように、定期的なメンテによってかなりの確率で防げるものもあります。チェーンが錆び放題になっているような人は論外ですが、注油して手入れをしている人でも、チェーンの伸びに気づかなかったり、走行距離ごとの交換を忘れていることもあるでしょう。
(追記:下のコメント欄にも書きましたが、走行距離は、あくまでもチェーン交換の一つの目安です。使用状況などによっても変わってきます。)
最近スポーツバイクに乗り始めた友人は、チェーンが伸びると聞いて驚いていました。正確に言うと、チェーンそのものは伸びませんが、チェーンを繋いでいるピンとピン穴が摩耗して、隙間が大きくなります。その僅かな隙間の拡大が合わさって、全体が伸びたような形になるわけです。
チェーンが伸びるとギアとの噛み合いが悪くなり、スプロケットも摩耗します。ディレイラーなどのトラブルも起きやすくなります。パワーのロスやチェーンの変形なども起こりやすくなり、無理な力が加わって、最悪チェーン切れにつなる可能性もあります。やはりチェーンは消耗品と割り切って、定期的な交換が必要です。



中には、切れない限り大丈夫と使い続ける人もいますが、思わぬトラブルにつながりかねません。チェーン切れなど滅多に起きるものではありませんが、起きる時には起きます。遠出した時などにチェーンが切れでもしたら最悪です。チェーンのない自転車は、途端にお荷物になってしまいます。
そりゃ確かに、自転車の始祖と言われているドライジーネにはチェーンもギアもなく、地面を足で蹴って進む乗り物でした。しかし、現代日本の道路でそれをやりたくありません(笑)。かなり情けなく、恥ずかしいものがあります。家に帰り着くだけでも相当大変になりそうです。
チェーンカッターや予備のピンなどを持っていれば、1コマくらい減らしてでも修理して走れますが、そこまで準備していない人も多いでしょう。チェーンやそれを連結するピンなんて小さなパーツですし、ふだんあまり意識もしていないと思いますが、壊れると非常に困る部品なのは間違いありません。
近年、ギアは多段化する傾向にありますから、そのぶんチェーンやギアも薄く精密になり、微妙な調整が必要となってきています。調整が十分でないと、干渉したり、偏った摩耗がおきたり、チェーンに異常な力がかかったりします。調整が微妙になった分、トラブルは起きやすくなっているとも言えるでしょう。



ちなみに、前のギアを一番インナー側にし、後ろのギアを一番アウター側にするような(あるいは逆)、いわゆるたすき掛けが最大になるような組み合わせは禁忌ですが、知らずに使っている人もあるようです。これはチェーンに大きな負荷がかかり、トラブルの元になるので避けるべきです。
足で蹴って進むドライジーネ・スタイルは避けたいですが、自転車の歴史では、その後クランクとペダルを車軸に付けたミショー型へと進化し、地面から足が離れることになります。ただ、直接車輪をペダルで回す形なので、スピードは出ませんでした。そのため、有名なオーディナリー型、前輪が極端に大きな自転車に進化していきます。
つまり、直接ペダルで車輪を回す以上、車輪の直径を大きくするしかスピードを上げる方法がなかったのです。しかし、あまりに車輪が大きくなった結果、重心が高く不安定で、前輪の真上に乗るような形で当然足も地面に届かないので、乗り降りも難しく、急ブレーキをかけると頭から前転してしまう危険なものでした。
その後、ビシクレットと名付けられた自転車で、初めてチェーンで駆動する方法が発明されました。これにより、ギア比によってスピードも出るようになり、安定し、安全に誰でも乗れるようになったわけです。このビシクレットこそがバイシクルの語源であり、チェーンのついた今の自転車へつながる画期的発明だったわけです。
まさに、チェーンこそ、自転車としての機能を決定づけ、その後の普及をもたらした重要な部品だったと言えるでしょう。最近でこそ、シャフトドライブやベルトドライブなど、チェーンを使わない自転車もありますが、いまだにチェーンによる駆動が主流です。それくらい合理的でもあるからでしょう。


ところで、このチェーンを使わずに作った自転車で、その速さを競おうという大会が昨日と一昨日、アメリカ・オハイオ州のクリーブランドで開かれました。“
Parker Hannifin Chainless Challenge ”です。チェーンを使う代わりに、油圧や水圧などの液圧を使った装置で駆動力を伝達しようというものです。
全米の大学から集まった技術系の大学生5人1組のチームがこの課題に挑戦しています。それぞれ創意工夫をこらし、アイディアと技術を競って自転車を製作するわけですが、信頼性やコスト、製造の容易さなど様々なレギュレーションがある中、一番の制約は、やはり油圧や水圧などの液圧を使った動力の伝達です。
つまり、チェーンホイールとフリーホイールの間はチェーンで接続されないことを意味します。このことによって、さまざまな形の自転車が出来上がりますが、作って終わりではなくスプリントレースとタイムトライアルで速さを競わなければなりません。ちなみに賞金の総額は2万5千ドルです。
自転車にとってのチェーンのように、何かにとって不可欠の要素を使わないで同じことを実現出来ないか考えることには、一定の意義があります。もはや誰もが常識と考え、当たり前のように使う仕組みが無かったらと仮定することで、今まで考えなかったような展開、新たな独創が生まれる可能性があります。


もちろん学生にとっては、やりがいのある挑戦でもあるでしょう。発想を鍛え、アイディアを巡らし、技術を磨くいい機会となります。自転車のデザインや製造、速さなどを競うコンテストは多々ありますが、その中でもユニークなチャレンジと言えるかも知れません。
ただ、この大会に名前を冠するスポンサー、Parker Hannifin社は、建設機械をはじめとする各種油圧機械、ポンプやモーターなどの機器を世界で製造販売する企業です。つまり同社にとって、チェーンでなく液圧を使わせることが宣伝にもなるのでしょう。ちょっと手前味噌な感じがしないでもありません。
学生たちの創造力や可能性を否定するつもりはありませんが、チェーンでない駆動伝達方法に液圧を用いるというのは、実際どうなのでしょう。油圧ジャッキなどのように、重いものを持ち上げたりするのには適しているのでしょうが、技術的には可能でも、チェーンの代わりに使うべき機構としては、やや無理やり感があります。

過去の参加作品を見ても、大きさや重さ、コスト、製造の容易さなど、どの点においても液圧装置でチェーンを上回るのは難しそうに見えます。そのぶん挑戦のしがいがあるとも言えますが、新たな可能性というより、むしろ、あらためてチェーンがシンプルで優れていることが強調される結果になっているような気もします。
やはり自転車にはチェーンが似合う気がするのは私だけではないでしょう。前輪の上に乗らずに済みますし(笑)、駆動だけでなく変速や登坂など、チェーンとギアのおかげでさまざまな恩恵も受けています。切れると厄介ですが、チェーンと自転車は切ってもきれない関係、長年使われてきただけあると言えそうです。
今年も猛暑になっています。この炎天下にトラブルというのもこたえますね。面倒でも、せめて基本的な部分くらいは、走り出す前にチェックしといたほうがよさそうです。
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こんばんは。なるほど、チェーンの重要さを改めて感じさせて頂きました。ロードは確か4000kmくらいで交換?と言われますが、実際使っていて調子が良いと、使いつづけてしまいますよね。また、チェーンクリーナーで汚れを落とした後のピカピカのチェーンほど、気持ちの良い輝きは無いような気が致します。
ところで、今年はホワイトが流行だそうですね。私は意識せずに白のロードを新調したのですが、肝心のウェアが在庫切れ多数で困っています。白を着たいという事は、流行だけでなく温暖化の影響もあると考えますが、どう思われますか?