
今月1日から、後席のシートベルトの取り締まりが始まりました。
クルマの後部座席のシートベルト着用は、今年六月の道路交通法の改正により義務化されました。これまでは周知期間として摘発が見送られてきましたが、今月から高速道路等で違反すると、ドライバーは一点減点です。これと同時に、あまり注目はされていませんが、自転車に対する取締りもスタートしました。
取締りの対象は、自転車に乗りながら携帯電話を使用したり、ヘッドホンで音楽を聴いたりするなどの行為です。悪質な違反には五万円以下の罰金が科されることになっています。実際に、メールを打ったり会話しながら、あるいはヘッドフォンをしながら自転車に乗っている人を見ることは少なくありません。
私は、これらの行為をしたことは一度もありませんが、している人のおかげで自転車同士の事故になりそうになったことがあります。ヒヤリとした経験も1度や2度ではありません。メールを打ちながらでは、前方を見ていない瞬間が出来ますし、どうしてもフラつきます。危険で周囲にも迷惑な行為であることは間違いありません。

イヤホンなどで音楽を聴く行為も、周囲の物音が遮断されることで危険が高まるのは確かです。クルマの接近などに気づかなくて危ないのもありますが、それだけではありません。周囲の人が、当然聞こえているはずと思っている音が聞こえないことで、対歩行者や自転車同士などでも、思ったより危険な状況を生む場合があります。
ただでさえ歩道を暴走する自転車と歩行者との事故が急増しており、自転車の側のマナーが問題となっています。見通しが悪いところでは歩行者や他の自転車の接近に気付きにくいなど、周囲の音が聞こえにくい状態で走行していては事故になる危険性が高まるのは間違いないでしょう。
中には、音楽を聴くのは個人の自由だとか、他人に迷惑をかけていないと主張する人もいますが、これは間違っていると思います。事故のリスクを高めているだけで、十分迷惑です。法律違反とされている以上、事故を起こさなければいいだろうとか、聴くだけでは迷惑になっていないというのは身勝手な論理です。
極端な例ですが、飲酒運転をしても事故を起こさなければ個人の勝手と言っているのと同じです。これが許されないことは言うまでもありません。公道という公の空間を通る以上、ルールを守らないのは反社会的行為と言われても仕方ありません。
歩きながら音楽を聴くのと同じ、あるいはその延長のような感覚で、音楽を聴きたくなる気持ちもわからないではないですが、法律で禁止されるからには、それなりの理由があります。歩行者として、実際に耳をふさいで走行している自転車を見れば、禁止されている理由も理解できるかも知れません。
個人的には、むしろ取締りの実効性に疑問を感じます。自転車の場合は、クルマのような反則金制度がありません。軽微な違反でも、いわゆる青切符にはならず、いきなり赤切符、つまり法律違反として前科になってしまいます。このため、よほど悪質でない限り検挙されません。
このことは違反者もわかっており、警察官に注意された時だけやめればいいとタカをくくっている違反者も少なくないはずです。時々取り締まりが行われ、全国レベルでは何人か検挙されることもありますが、実際にこれらの行為が減る兆しはありません。もう少し、実効性のある対策を実施すべき時に来ているのではないでしょうか。
ところで、最近各地で自転車通行レーンを設ける動きが出てきています。滋賀県では、歩道上に設けた自転車レーンでの歩行者との接触事故を防ごうと、県独自のマークを公募しています。
自転車と歩行者の接触事故防ごう 県独自の通行帯マーク公募
自転車と歩行者の接触事故を防ごうと、県警は、歩道上でそれぞれの通行帯を示す滋賀独自のマークを公募する。応募期間は31日まで。選考結果をホームページ上で11月下旬に公開する。大きさは、歩行者と自転車のいずれも33センチ四方を予定。色は5色までで、見やすいシンプルな図柄を採用する。破線で通行帯を二分し、それぞれ路面にマークを配置する。
公募のきっかけは今年6月に施行された改正道交法。自転車も一部の歩道を走れるようになったが、その際、車道寄りの走行が義務付けられた。マークには法律を浸透させる狙いもある。比較的通行量の多い歩道から実施する方針だ。交通規制課によると、自転車と歩行者の接触事故は県内では毎年10件前後発生しており、死者の出る重大事故は少ない。だが、全国では大都市を中心に増え続け、2006年は2770件と10年前の5倍に増えた。
県内でも9月初旬、湖南市石部南の通学路で通行帯を設定し、青色の破線で歩行者と自転車を分離した。結果的に、小学生が歩道いっぱいに広がることが減ったという。(後略)(2008年10月7日 中日新聞)
一方、岩手では青く色分けしています。
自転車専用「ブルーゾーン」完成 盛岡市中心部 駐輪場も新設
自転車走行帯として道路の路肩部分を青く塗装した「ブルーゾーン」が、盛岡市中心部に完成した。これに合わせ、近くの大通商店街に駐輪場も3か所新設され、25日には関係者による記念式典が行われた。ブルーゾーンは、市中心部の「下の橋」から県産業会館までの市道の450メートルと、東北銀行本店前から岩手公園前までの東大通り290メートル。
このうち、東大通りの岩手公園側の240メートルについては、道路交通法に基づく「自転車専用通行帯」に指定され、自転車は塗装部分を走らなければならない。この部分以外については、車道の通行が危険な場合は、従来通り歩道を走ることができる。
ブルーゾーンの整備に先駆け、昨年には下ノ橋町から清水町にかけて市道390メートルの路肩を赤く塗り、自動車の走行部分と、歩行者や自転車が利用する部分とを色分けする社会実験を実施したところ、多くの市民から「通りやすい」との意見が寄せられていた。(後略)(2008年9月26日 読売新聞)
私は、これまでも再三述べてきたように、自転車レーンは車道に設けるべきだと思います。本来、車道を走行すべき自転車と、歩行者ではスピードが違い過ぎます。歩道上で通行レーンを色分けしても、歩行者と自転車が完全には分離されるとは思えず、接触や衝突などの事故も無くならないでしょう。
最初はよくても、いずれ場所によって自転車レーンが「駐輪場所」と化すなどして無意味になることが少なくありません。実際そんな場所は無数にあります。逆に歩行者も無意識に自転車レーン側を歩いていたりします。クッキリと色分けされているにも関わらず、その意味が曖昧になっていくのは必至です。
香川県高松市では、歩道上に「柵」を設けて分離しようとしています。
高松市中央通り:自転車と歩行者、通行分離する柵設置 事故減らし狙う /香川
高松市の中央通りの歩道で、四国地方整備局香川河川国道事務所が進めていた自転車と歩行者の通行を分離するための柵(さく)の設置工事が3日、終了した。歩行者の安全性向上を図るのが狙いで、自転車が絡む事故の減少に期待が寄せられている。対象区間は、寿町交差点から中新町交差点まで約1・4キロの東西両側の歩道。同事務所は昨年末に行ったアンケートなどで設置の有効性を確認したとして、7月中旬から工事していた。
自転車と歩行者の通行区間を分ける分離柵(高さ約70センチ)は計180基で、5メートル間隔に設置。鉄製だが、衝突してもけがをしにくいようクッション性を持たせている。歩道の切れ目には、図で区分を示す誘導標(高さ約1・2メートル)52基も設けられた。自転車は車道側の幅2・2メートルの区分を通行することになる。
県内の自転車保有率は全国6位(06年度)で、自転車が絡む事故(06年)は、人口1万人当たり22・2件と全国ワースト1となっている。同事務所交通対策課は「通行区分を守ってもらえれば、安全の確保に大きな効果がある」と期待している。一方、近くに買い物に来ていた同市牟礼町の金集敦子さん(61)は「歩道でスピードを出す自転車は危ない。まずは基本的なマナーの向上を徹底させてほしい」と話していた。(毎日新聞 2008年10月4日)
ただ、この方法は歩道の幅にもよりますから、どこでも使えるわけではありません。やはり迷惑駐輪などで通れなくなる可能性もあります。考えるに、そもそも歩道に自転車を上げたことが間違いであり、歩道上が暴走する自転車と迷惑駐輪する自転車で危険な状態になる根本的な原因ではないでしょうか。こんな記事もありました。
白杖:視覚障害者、街なかの自転車恐怖 子供たち、目隠しして体感−−北区 /京都
◇杖頼りの視覚障害者
視覚障害者が街なかで恐怖に感じる場合が少なくないという自転車の利用マナー向上を目指すイベントが5日、北区の京都市立楽只小であった。参加した子供らは、目の代わりになる白杖(はくじょう)を初めて手にし、視覚障害者と共生できる社会の実現に思いをはせた。
京都ライトハウスなどが毎年実施する「白杖安全デー」の一環。市内の小学生や保護者計約30人が参加した。まず恐怖を知ってもらおうと、全盲の今里弘美・府視覚障害者協会理事(64)が体験を披露。「自転車は音もなく急に現れ、心の準備ができない。駐輪中の自転車のペダルやハンドルがぶつかって痛いこともある」と訴えた。
参加者は白杖を突いて駐輪した自転車の脇を歩き、何気ない駐輪が障害物になるのを体感。目隠しして体近くを自転車が通り過ぎるのを感じる体験では、風圧に「めっちゃ怖い」と耳をふさいだ。市立御所南小4年の伊藤奈緒さん(9)は「目の見えない人にとってどんなに自転車が怖いか分かった。駐輪する時はきれいに寄せます」と話した。(毎日新聞 2008年10月6日)
視覚障害者だけではありません。高齢者や小さな子供にとっても大きな脅威です。歩道上にレーンを設ければ、歩道への迷惑駐輪も呼び込みます。やはり歩道上のレーンは考え直すべきだと思います。各地で、自転車レーンの形態が違っているというのも問題だと思います。同じ域内でも違うのでは、混乱を招く元になります。
もう一つ、歩道に自転車レーンを設けることによる大きな弊害は、自転車の走行に秩序がなくなることです。歩道を歩行者と同じように自在に通れるので、左側通行の意識が希薄になってしまうのです。実際、歩道を歩いていると、前からでも後ろからでも自転車が来ますし、歩道上ですれ違っています。
そして、歩道上が混み合っていたり、通りにくいと判断したときには、車道の端を通る人もいます。左側ならいいですが、右側を逆走する人も少なくありません。つまり、歩道に無秩序に自転車を走らせたことが、車道の左側通行の原則をも「なし崩し」にしていると思うのです。
実際、車道を左側通行していると、前方から右側通行してくる自転車に行き会うのは日常茶飯事です。いきなり歩道から飛び出してくることもありますし、ただでさえ車道の端にスペースが少ないのに、すれ違いを強いられることもあります。非常に危険で、正しく走行する人に対して迷惑な行為であることは論を待ちません。
そうした人の中には、自転車の左側通行の原則を知らない人もいるかも知れません。特に高齢者などで運転免許を持っていない人なら、知らない可能性もあるでしょう。もちろん法律は、知らなかったで済まされる話ではありませんが、ある程度仕方がない部分があります。
しかし、老若男女にかかわらず、これだけ右側通行する人が多い以上、免許の保有率から考えても、知らない人ばかりとは思えません。確信犯も少なくないはずです。あるいは、歩道を使いながら走っているうちに、右側通行に対する違反の意識が薄れて、もはや悪いと思っていない人が多いということでしょう。
つまり、この車道の右側通行を助長しているのが、自転車の歩道走行であり、歩道上の自転車レーンではないかと思うのです。このことを問題にしている自治体もあります。
路側帯、歩道も左側を 自転車「盛岡マナー」啓発
自転車の利用促進を図る盛岡市は21日、自転車利用者に歩道や路側帯走行時の左側通行を求める「盛岡マナー」の啓発を始めた。道交法に歩道や路側帯の通行方向の規定はないが、歩行者にとっては前後から自転車が来て危ないため、市独自のマナーを呼びかける。ポスターコンテストなど若者の感性を生かした啓発活動で事故防止を図る。
「盛岡マナー」啓発は、21日からの秋の全国交通安全運動に合わせてスタート。▽路側帯の左側通行▽車道の左側通行を原則としつつ、やむを得ず歩道走行可能区間を走行する場合の左側歩道の走行―を呼びかける。渋滞解消や地球温暖化防止のため、城下町の道路事情に合った自転車の利用促進を図っている盛岡市は、市街地の車道を狭め、自転車や歩行者が通る路側帯の拡幅を進める。
しかし、昨年拡幅した下ノ橋町では、広くなった路側帯の右側を走る自転車が目立つようになり、歩行者らから危険を訴える声が上がっている。市は左側通行の条例化など独自ルールの策定も検討したが、同様の社会実験を行った東京都世田谷区では、反対車線への遠回りが必要な自転車利用者らからの不満が多かった。
そこで「ルール」による強制は市民の合意形成に課題があるとして、市民一人一人の「マナーアップ」を訴えることにした。(中略)自転車の通行方向とは 自転車は車道の左端を走るのが原則だが、6月の道交法改正で「自転車通行可」の標識などがなくても、交通量が多く危険な場合などは歩道を走行してよいことになった。同法では、路側帯や歩道上の自転車通行について通行方向の規定がなく、対面通行が可能となっている。(岩手日報 2008/09/22)
これはローカルマナーにせず、全国で取り入れるべきです。少なくとも車道の左側走行は道路交通法違反ですから、厳しく順守を促していくべきでしょう。個人的には、多少不便であっても歩道上の自転車レーンも一方通行にすべきだと思います。
今まで歩道上なら両方向に通行出来たので、記事にあるように利用者からは不満がでるでしょう。盛岡ではルールによる強制より市民のマナーアップを期待する手法で、左側歩道の通行を呼びかけています。ただ、歩道では右側通行が出来てしまう以上、なかなか左側通行の習慣が身につかない可能性があります。
今まで出来たのが間違い、そもそも歩道を通るのが間違いなのであって、諸外国、特に先進国では歩道を走行出来ないのが当たり前です。そうした国では、左側通行(クルマが右側通行の国では右側通行)に不満など出ません。慣れて習慣になれば、無意識に通るようになります。左側通行の励行なんて何の問題もなくなるはずです。
こうした混乱や弊害を防ぐ意味でも、自転車レーンのスタイルを原則全国で統一することが求められます。それも、歩道を削ってでも車道に設置していくことで歩道と分離され、歩行者との事故が防げるでしょう。自転車の左側通行を徹底することも出来ます。左側通行の習慣が出来れば、自転車同士が対向する危険も大幅に減ります。
車道を走行したり、車道に設けられた自転車通行レーンを通るようになればスピードも出ます。そうなれば、ケータイを使いながら自転車に乗る人も、ある程度減るかも知れません。現在も交通量の多い車道上で使っている人を見ることは相対的に少ないと思います。
自転車はまだまだ歩道を走行するものだと誤って思い込んでいる人も多いですが、徐々に変わりつつあります。
自工会:車と自転車車道仲間です 業界団体、事故防止へ初のコラボ
「自転車も車道を走る仲間です」−−。自動車に占領されがちな日本の車道通行を見直そうと、自動車業界と自転車業界が、互いの安全走行を呼びかける統一ポスターを作製。事故防止に向けた初の共同キャンペーンに乗り出した。
専ら自動車の普及を手掛けてきた「日本自動車工業会」は今年4月、初めて自転車対策を検討する研究部会を発足。自転車販売店やメーカーを支援する「自転車産業振興協会」職員らから講義を受けるなどしながら車と自転車の事故防止に向けて研究を重ねてきた。
こうした中、6月には、自転車の原則車道通行の徹底を求める改正道路交通法も施行され、「自転車が安全でないかぎり、ドライバーも安全とはいえない。まずは自転車利用者に向けて何かメッセージを出そう」(自工会)と共同キャンペーンを始めることになった。
両団体と「日本自転車普及協会」の3団体が計約5万枚のポスターとチラシを作製。秋の交通安全運動から12月までのキャンペーンとして、ポスターは自転車販売店などに掲示し、チラシは自転車の交通安全教室などのイベントで配る。
荒川区町屋で自転車店を営む東京都自転車商協同組合の新井茂理事長(70)は「自転車の正しい乗り方とマナーを説いてきたが、自転車だけがいくら気を付けても事故は防げない。車のメーカーさんも一緒にやってくれるというのは心強いかぎり」と話している。
警察庁によると、97年に4251人だった自動車乗車中の交通事故死者は07年に2013人と半減したが、97年に1065人だった自転車乗車中の交通事故死者数は07年に745人と減り方は鈍く死者割合が増えている。07年の自転車による死傷事故約17万件のうち約8割が自動車と衝突している。
改正道交法では、13歳未満と70歳以上の人、体が不自由な人など、歩道を自転車で走ることが認められている人以外が、自転車通行が認められていない歩道などを走ると、原則として交通違反(赤切符)の対象となり、3カ月以下の懲役、または5万円以下の罰金が科される。
警察は、自転車の悪質運転取り締まりを強化しており、最近は赤切符での摘発や指導警告票の交付が増えている。(毎日新聞 2008年10月6日)
自転車乗りのくせに、自転車の自由度を減じ、規制の強化で自転車の良さを損なうようなことを言うようですが、一方で事故に遭うリスクも見逃せません。自転車や歩行者の通ることが稀な場所ならともかく、人口密度の高い都市部では、社会生活を営む以上避けて通れない部分でもあります。
私も、出来れば自転車に乗る人が自ら律し、高いモラルとマナーを持って走行するのが理想だと思います。しかし、日本では、これだけ自転車に乗る人が多い上に、そのマナーの低下は進むばかりです。実際に事故も増加している以上、法律で取り締まるのもやむを得ません。
携帯電話や携帯音楽プレーヤーの普及で、それらに対する規制も必要になってきました。マナー向上が期待出来ない以上仕方ありません。しかし、自転車が野放図に歩道を通れることも、歩行者感覚でこれらの機器を使用する人が増える背景にあると思います。
ケータイやヘッドフォンの取り締まりを行う現場の警察官はご苦労なことですが、なかなか実効は期待できません。私は、自転車の右側走行も含め、まず根本的な自転車の通行ルール、あるいは今までの道路行政、自転車レーンの設置の仕方などを見直してみるのも必要ではないかと思うのです。
私は偉そうなことを書いている手前(笑)、こうした違反行為をすることはありませんが、ケータイにしても音楽にしても左側通行にしても、単なる習慣の問題だと思うんですよね。電話やメールだって止まってすればいいことですし、慣れれば苦にならないと思うのですが..。
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秩序と安全を取り戻すために
ケータイやヘッドホンの使用も、道路交通法の改正で禁止された。
習慣やスタイルを見直す契機
今回の道路交通法の改正では、他にも自転車関連のものがある。
ケータイ使いながら運転撲滅
ケータイを使いながら自転車に乗る人が増え、事故も予想される。