と言っても、筋トレの話ではなく本のタイトルの話です。書店のビジネス書などのコーナーへ行くと、さまざまな言葉に「力」をつけたタイトルの本が並んでいます。行動力とか表現力、決断力や話す力といった通常の言葉に加え、鈍感力、質問力、進路力、敬語力、地頭力など、本来、力とは結びつかないような言葉が並んでいます。
読書力とか数学力はそのものでしょうし、発見力、忘却力、察知力、人間関係力なども言いたいことは想像がつきます。しかし、体温力とか、現場力、品質力、そうじ力など微妙なものも少なくありません。何でも「力」をつければいいってものでもないだろうと思いますが、最近の本のタイトルの付け方の流行なのでしょう。
しかし、流行とは言うものの、「力」がついたタイトルが掃いて捨てるほど並んでいます。それぞれの言葉の表すものを、うまくやる能力が重要だと言いたいのでしょうが、それにしてもいろいろな能力があるものです。複雑な現代のビジネスシーンにおいては、さまざまな能力が必要ということでしょうか。
確かに、自分にもう少し何かの能力があればとか、何かの力を鍛えたいと感じることは多々あります。なかには経験を積むことで自然と実力がついていくものもありますが、なかなか得られないものも少なくありません。「発想力」なども、得にくいものの一つではないでしょうか。
仕事をする上で、何かアイディアが必要になる場面があります。新製品を開発するといった仕事だけでなく、新しい手法で日々の仕事の効率を上げたり、仕事の進め方を他と差別化して業績を伸ばしたり、創意工夫を加えて付加価値を高めたり、独自性を出すことで評価を高めたりなど、何かアイディアがほしい場面はたくさんあります。
従来と同じではなく、何か進歩、発展させ、成長していくためには、日々新しい工夫が欠かせません。何か独創的なアイディアが必要になる場面も少なくないでしょう。でも、そうそうクリエィティブでオリジナリティに溢れるアイディアを発想できるものではありません。
よく言われるのは、独創的なアイディアを発想するには、いかに常識や固定観念、思い込み、といった要素を捨てられるかが重要だということでしょう。しかし、言葉にすれば簡単でも、自分の思い込みや、いかに固定的な概念を持っているか、自分で見破るのは容易なことではありません。
新しいものは先入観なく見ることが出来ても、昔からあるものや身近なものには、知らず知らずに固定観念、思い込みが出来てしまっていることが少なくありません。最近、私が目にしたものの中で、自分からは出ない発想であり、自分の固定観念かなと思った例を2つ、ご紹介しましょう。
こちらの自転車、フレームが「ほうき」になっています。まさに童話に出てくるような魔女のほうきのイメージです。この自転車に長いスカートで乗れば、魔女がほうきにまたがる格好そのものです。自転車のデザインのモチーフに魔女のほうきとは、ちょっと思いつかないアイディアではないでしょうか。
自転車にはいろいろなデザインがありますが、多くは走行性や姿勢などの関係で、必然的にその形になったものでしょう。中には違うものもありますが、自転車と魔女のほうきというのは、意外な組み合わせです。これを作った人は単なる思いつきだったのかも知れませんが、自転車はこういう形という固定観念があると出て来ない発想です。
どうやってハンドルをきるのかと思いますが、よく見ると、ほうきはフレームというよりハンドルです。トップチューブの上にもう一本パイプが通っていて、ほうきと前輪が連動するようになっています。つまり、ほうきを左右に振ることでハンドリングする自転車なのです。
ハンドルにもフラットタイプやドロップハンドルなどいろいろありますが、こんな縦型のハンドルはなかなかありません。まさにほうきの柄を操って疾走することになるわけですが、そのへんも含めて、この魔女の自転車、ユニークな発想と言えるでしょう。魔女の宅急便やハリーポッターの流行時だったらブレイクしたかも知れません。
もう一つは、Youtubeにあった、こちらの動画です。再生してみてください。
自転車は便利な乗り物であり、スポーツであり、時には運搬具だったり、エクササイズやダイエットのメニューだったりしますが、武器になるとは思いませんでした(笑)。いろいろな流儀のカンフーがあると思いますが、これはさしずめ「輪拳」とでも呼ぶのでしょうか。
まあ、これは映画のワンシーンのようですので、あくまでフィクションでしょう。カンフー映画もありきたりの戦闘シーンばかりでは面白くありません。武器にいろいろな小道具を使うスタイルの延長で、今回は自転車が用いられたということなのだと思います。
これもカンフー映画関係者でない普通の人には出てこない発想と言えるでしょう。ただ、考えてみれば、自転車を使ったサイクルフィギュアとか、サイクルサッカーなどもありますし(下の関連記事参照)、サイクルカンフーとか、サイクル武術があっても不思議ではないのかも知れません。
思い込みや固定観念、そして常識は誰にでもあります。独創的な発想を得るために、それらが邪魔になるのであれば、まず自分が常識にとらわれていること、思い込みがあることに気づかなければなりません。こうして、独創的な発想や、自分では思いつかないアイディアを見ることは、それに気づかせてくれる機会でもあります。
そして、自分でも気づかなかった思い込みを気づかせてくれる経験、自分の中の常識が鮮やかに裏切られる経験は、意外に楽しいものです。他人の独創的なアイディア、型破りな発想に触れることで、自分のインスピレーションが刺激されることもあります。
魔女の自転車にしても、サイクルカンフーにしても、実用的ではない、自分には関係ないと言えばそれまでです。確かに自分の自転車生活の上では、何の役にも立たないでしょう。でも、そんな「くだらない」ものでも面白がったり、興味を持つような無駄な行動、もしくは好奇心が発想力を育てるのかも知れません。
おりしも読書週間です。能力を開発するテーマのビジネス書もいいですが、発想を刺激するような本を読んでみるのもいいかも知れませんね。
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