電気やガス、上下水道、地下鉄建設に道路の補修と、工事の内容はいろいろなのでしょうが、何度も同じ場所を掘り返しているように見えます。最近、この時期の工事を自粛する方向とは聞きますが、相変わらず年末や年度末の忙しい時に限って道路工事が増え、渋滞がひどくなっているように感じるのは気のせいでしょうか。
自転車でも、工事個所が鉄板などで覆われ滑りやすくなっていたり、段差になっていたり、迂回する必要があったりなど、通りにくいことも少なくありません。ただ、一方で、舗装がきれいになり、ラインなどが引き直されれば、自転車で通る分には走りやすくなってありがたい面もあります。
ところで、道路の構造は道路関係の法令によって細かく定められています。当然ながらライン1本にも、全て意味があります。運転免許の試験でも出るわけですが、道路の構造やその意味するところ、道路交通法上の扱いなどは正確に覚えていない人も多いでしょう。例えば、路側帯などの定義も曖昧になっていたりします。
路側帯というのは、言わば歩道の代わりで、歩道のない道路の端に白い実線などで表示された部分のことです。つまり、車道より一段高くなった、いわゆる歩道が備わっている道路には、路側帯は無いことになります。でも、歩道のある道路でも、車道と歩道との間に白いペイントで実線がひかれているのをよく見ます。
そして、その白線と歩道の縁石の間にスペースがある場合もあります。これも路側帯だと思っていた人も多いのではないかと思います。しかし、これは路側帯ではありません。道路構造令などの法令上、この部分は路側帯ではなく「路肩」に分類されることになります。
見た目は同じですが、この場合の白線は路側帯の表示ではなく、「車道外側線」と呼ばれます。路側帯も路肩も似たような場所に見えますが、その取扱いは全く違います。路側帯は、いわゆる歩道のない道路での歩道にあたる部分ですから、歩道と同じ扱いを受けます。
歩道ですから、クルマは路側帯に進入できませんが、軽車両である自転車は、歩行者を妨げない限り通ることが出来ます。注意すべきなのは、路側帯部分は車道ではなく歩道と同じ扱いなので、路側帯の中を通っている限り、左側通行の原則が適用されないことです。
つまり、車道を逆行(右側通行)すると道交法違反ですが、歩道のない道路の路側帯内を通る限り、右側通行は違反ではないのです。(路側帯からはみ出れば違反となります。)自転車の右側通行は危険な行為ですが、路側帯内を通る限りは合法なのです。
一方、歩道のある道路の路肩も自転車で走行出来ますが、路肩を右側通行することは違反です。法令上、車道外側線の外側、すなわち路肩は車道ではないと解釈される場合もありますが、道路交通法の適用を免れるわけではないので、路肩を通るからと言って、右側通行することは許されないのです。
紛らわしいのは、歩道のない道路でも、白い破線だけで表示されていたら、それは路側帯ではありません。交差点などにひかれている場合が多いですが、単なる目安でしかありません。この部分は当然左側通行厳守です。おそらく意識していない人も多いと思われますが、道路の構造によって通れる場所が変わってくるのです。
ちなみに、路側帯の中にも種類があります。路側帯へは、原則としてクルマの進入は禁止ですが、白い実線で表示された路側帯の場合は、その中に入って駐停車することは出来ます。(もちろん駐停車禁止でない場所に限ります。)路側帯内に入っても、75センチ以上歩行者の通るスペースをあければ駐車出来ることになっています。
白い実線の路側帯側にもう一本破線がある路側帯は、「駐停車禁止路側帯」と呼ばれ、路側帯の中に入って駐停車してはいけないと法令で定められています。実際には守られていないことも多いですが、白い実線の車道側に沿って駐停車することになります。
もう一種類、白の実線2本(白の2重線)で仕切られている路側帯もあります。この場合も路側帯内に駐停車出来ませんが、注意しなければならないのは、軽車両も進入できない「歩行者専用路側帯」なのです。自転車もこの中を通ることはできないので注意が必要です。
ふだん自転車で車道を走行している人は、歩道のある道路の、車道と歩道の間、すなわち路肩部分を走行している人も多いと思います。もちろん、車道の左寄りを通る必要はありますが、必ずしも路肩部分を通らなければいけないわけではありません。
でも実際には、場所にもよりますが、路肩部分が広ければ、クルマとの間隔をとって安全を確保するためにも路肩部分を通る場合が多いのではないでしょうか。ただ、路肩が狭い道路も多く、広い道路でも交差点では右折レーンなどで幅をとられてしまうなどして、極端に狭くなったり、なくなったりするのが難点です。
この路肩部分を、もう少し融通をきかせ、今より余裕を持たせることは出来ないものでしょうか。クルマ中心に考えられている車道ですが、車道部分の幅の余裕を少し路肩のほうへまわすなどして、全体として、もう少し路肩の幅を広く出来れば、自転車専用レーンがなくても、今より自転車の車道走行の安全性が高まるでしょう。
この30年、一貫して自転車を歩道に上げるという方針で道路行政が進んできました。歩道で歩行者と自転車が混在し、事故が増えてしまった原因でもあります。言い換えれば、今までは自転車に歩道を通らせるため、歩道を広げようとしてきたわけです。結果的に不必要に広い歩道も少なくありません。
都市の中心部では、広い歩道も必要ですが、駅などから少し離れると、実際問題としてほとんど歩行者が歩いていない歩道もたくさんあります。歩道をなくせとは言うつもりはありませんが、今までの道路行政の過ちを正す意味でも、不必要に広い歩道は幅を削減して、車道に路肩を増やしてはどうでしょうか。
現在は路肩が狭い場所も多いでしょうけど、道路の中央や外側に安全地帯が設けられていたり、中央分離帯があったり、車道と歩道の間に緩衝地帯があるなど、路肩に回せる余地はまだまだあるに違いありません。現在は狭くて不十分な路肩でも、折を見て少しずつ幅を広げていける場所も多いはずです。
路肩は、自転車通行帯ではありませんが、現実問題として通っている人は多いでしょう。新たに自転車専用レーンを設置するのは費用がかかります。車道を1車線つぶして自転車レーンにするのは、社会的なコンセンサスを得るのも大変でしょう。ならば路肩部分を広げ、法を改正して自転車に優先的に通らせるという手はないでしょうか。
前回取り上げた富山の例のように、モデル地区の車道を1車線つぶして自転車専用にするのもいいですが、その一区間だけ整備しても、大した意味はないばかりか、むしろ混乱や事故の誘発も懸念されています。理想ではありますが、すべての道路で1車線を割くのは実際問題として難しいでしょう。
ならば、立派なレーンを少しだけ作るより、全国的に路肩部分を広げて、その運用を工夫したほうが実用的な気がします。全国的に路肩部分を青く塗って、自転車用にしたらどうでしょう。すぐには満足出来るものにはならないとしても、今後も路肩を少しずつ広げていき、クルマや歩行者とも分離していけば、どちらとの事故も減るはずです。
車道の幅に多少余裕があったとしても、クルマ、特に大型車にすれすれを通られてヒヤリとした経験は多くのサイクリストにあると思います。多少幅は狭くても、その部分は自転車専用だとクルマが認識する部分をつくり、そこを通ったほうが安全になるのは間違いありません。
地域によって、道路の形状や事情は違うかも知れません。路肩なんて、実質ほとんどないという道路も全国にあるでしょう。実現にはいろいろ問題もあると思います。ただ、いつ実用的なネットワークになるかわからない、理想的なモデル地区の拡大を待つより、既にある部分を上手く利用するほうが、ずっと現実的でしょう。
今まで、歩道と車道の間にある路肩は、言ってみれば車道の余白のような役割でした。車道の余った部分、もしくは側溝部分との境界線でしかなかったかも知れません。多少広い部分では、無意識に自転車に利用されてきましたが、これを正式に自転車用にする方向で整備を進めていったらどうでしょうか。
幸か不幸か、道路工事は頻繁に行われています。次に道路を掘り返す時、歩道が必要以上に広い部分を、ついでに少し削ることも可能でしょう。掘り返さなくても、定期的に道路のラインは引きなおされています。次に車道外側線を引き直す時、少しずつでも路肩を増やすことは出来るのではないでしょうか。
法律で規定している路肩の要件から言って、あるいは自転車用にすることは出来ないかも知れません。自転車用と決めないまでも、路肩の幅を広げていくならば、その分、自転車の車道走行の危険度が減るのは間違いありません。せっかく工事がこれだけ行われているのですから、これを利用しない手もないと思うのですが..。
年末というと何かとあわただしいですね。私はまだ1枚も年賀状がかけていません。ふだん手紙なんて滅多に書かないのに、この忙しい時期に限って手紙を書かなければいけないなんて..(笑)。
関連記事
こんな少しでは評価できない
国土交通省は全国にモデル地区をつくり、広げていこうとしている。
広がりつつある気づきの記号
アメリカでは自転車レーンが確保できない時には道路を共有する。
主張しなければ良くならない
自転車レーンがあっても、クルマに迷惑駐車されては意味がない。