
たまに友人に誘われて山歩きに出かけることがあります。
何かの機会がなければ、あまり自分から山へ歩きに出かけることはないので、最後に行ったのは去年の秋です。その時はトレッキングと言うより、紅葉を見に行くハイキング程度のものでした。ルートは踏みならされおり、初心者向きの足元の良いコースだったので、歩くのはラクでした。
ところが翌日は、かなりの筋肉痛に見舞われてしまいました。私は普段から自転車に乗っていますし、運動不足ということはないのですが、さすがに使う足の筋肉が違うのでしょう。意外に高低差があったので、最後のほうは多少足にきていたのは確かですが、筋肉痛になるほど厳しい登りとは感じていなかったので意外でした。
山に登るとき、当然ながら上るほうが疲れます。上りは、足の筋肉を使って自分の体をより高い標高へ持ち上げるわけですから、山に登ることによって筋肉痛になると思いがちです。ところが、実は山を下ることによって筋肉痛になっているのだそうです。そう聞くと、ちょっと驚く方もあるのではないでしょうか。
筋肉は、基本的に縮むことで力を出します。しかし、下り坂での筋肉は、伸びながら使われるという通常の生活にはあまりない使われ方をします。さらに着地の衝撃は登りよりはるかに大きくなります。筋肉痛は、筋細胞が破壊されることで起きると言われますが、下りでは、まさに筋細胞が破壊されるのです。
以前、何かのテレビ番組で、高層ビルの階段を登るだけのグループと降りるだけのグループに分け、実験をしていたのを見た記憶があります。当然疲れるのは上りですが、後日ひどい筋肉痛になったのは、意外にも階段を降りる運動を行ったグループでした。筋肉痛になると、階段の下りが辛いのも同じ理由からなのでしょう。
山歩きでも、事故が起きるのは下りの時が多いと言います。下るうちに、筋肉が疲労し膝がガクガクした経験のある人も多いのではないでしょうか。下りはラクだからと気を抜くのもあるのでしょうが、なるほど転倒事故などにつながりかねないのも納得がいくところです。
せっかく週末を利用して山歩きに行っても、ひどい筋肉痛が残るようではうまくありません。週明けにオフィスで階段を下りるのも辛いようでは仕事にも影響します。ふだんマウンテンバイクに乗っている人なら、筋肉痛を避けるため、せめて下りはMTBで下れたらいいのに、なんて思うかも知れません。

そう考えて誕生したのかどうかは定かではありませんが、最近ドイツでは、新しい種類の自転車が相次いで登場しています。この“
Bergmonch”の“
The Folding Bike Bag”、バック型にして担いで山に登り、山から下るときに組み立てて使う、ダウンヒル専用のフォールディングバイクです。
折りたたむとリュックのような形状となり、コンパクトになって運びやすくなる、折りたたみMTBというわけです。マウンテンバイクと言っても下り専用なので、サドルもギヤもチェーンもありません。ペダルの代わりにステップが後輪寄りについています。後輪が小さいことと併せ、体重が後ろにかけやすくなっています。
Bergmonch from
Thomas Kaiser on
Vimeo.
部品を省いたこともあり、登る時を考え軽く出来ています。山歩きを楽しんだ後、帰りは自転車で、というスタイルです。さすがに「下山時の筋肉痛防止に。」とは書いてありませんが、自転車に乗って下れば、タイヤやショックが衝撃を和らげますので、結果的に足の筋肉痛防止にも役立つでしょう。

ハイキングで上り、車輪を使って下りる、トレッキングとMTBのダウンヒルを組み合わせた新しいスポーツ、新しい楽しみ方と見ることもできます。もう一つ、“
MountainSkyvers”と名付けられた、上の製品も全く別の会社のものですが、よく似たコンセプトで外観も似通っています。

マウンテンバイクでダウンヒルを楽しむ人は、ゴンドラリフトやロープウェーなど機動力の使える、夏場のスキー場などに行く場合が多いと思います。クロスカントリーならともかく、重いダウンヒル用のMTBを担いで上るのは現実的ではありません。しかし、これらの製品なら、機動力のない山でもダウンヒルが楽しめるわけです。
ダウンヒルをメインに考えると、登りは単なる移動です。リフト等がない場所では4輪駆動車などを使って輸送するか、諦めて担いで登るしかありません。でも、重量を軽くし、リュック状でラクに担げるようにしたことで、上りもトレッキングとして楽しむことが出来るようになったと考えることも出来ます。
そう考えると、なかなかのアイディアです。今までなかったのが不思議なくらいにも思えてきます。果たして日本にも上陸してブレイクするかは微妙な気もしますが、新しいジャンルを切り開く可能性があります。片道だけ自転車を使うという発想、意外に盲点なのかも知れません。
まだまだ寒い日も多いですが、立春も過ぎ、梅の便りも聞かれる頃になってきました。春の訪れが待ち遠しいですが、とうとう花粉の飛散も始まったそうです。花粉症の方には辛い季節も迫っていますね。
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Posted by cycleroad at 23:30│
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