April 23, 2009

消費者を欺いてタダで済むか

食品や紙などに続き、家電です。


菓子や食肉、うなぎなどの食品、再生紙など、商品を偽装する企業が相次いでいますが、今度は日立の冷蔵庫に、「エコ偽装」がありました。読売新聞の記事から引用します。



日立冷蔵庫で“エコ”不当表示、省エネ大賞も返上 商品偽装

廃棄された冷蔵庫の樹脂を断熱材に使い、製造工程での二酸化炭素(CO2)排出量を48%削減したなどとうたいながら、実際にはリサイクル材をごくわずかしか使っていなかったとして、公正取引委員会は20日、日立製作所の子会社「日立アプライアンス」(東京都港区)に対し、景品表示法違反(優良誤認)で排除命令を出した。

日立子会社に排除命令、冷蔵庫で不当表示問題の冷蔵庫は昨年度、経済産業省の「省エネ大賞」を受賞したが、同社は命令を受けて大賞を返上、同省もこの日、受賞を取り消した。

公取委によると、同社は昨年9月以降に発売した冷蔵庫9機種について、ポスターや新聞広告で「使用済み冷蔵庫の樹脂を極細繊維化し、真空断熱材の芯材として活用」などと表示。しかし、このうち6機種ではリサイクル材は使っておらず、残る3機種も、わずかな量しか使っていなかった。また、9機種の中の1機種では、カタログや自社サイトで「真空断熱材製造工程でのCO2排出量 約48%削減」と表示していたが、実際の削減量は48%を大きく下回っていた。

同社では昨年、リサイクル材を活用した冷蔵庫の開発を目指していたが、夏頃になって効果的な断熱効果が得られないことが判明。ところが、開発を担当する設計部と、カタログやポスター製作を担当する商品企画グループとの連絡に不備があり、結果的に不当表示になったという。

また、昨年9月に行われた省エネ大賞選考のためのヒアリングでも、同社は、当時はリサイクル材を使っていない機種しか販売していなかったのに、経産省の担当者に「既に発売済み」と説明していた。省エネ大賞は、消費電力などエネルギー効率だけでなく、製品自体の「省資源性」も考慮して決めるといい、担当課では「省エネ大賞を始めて19年だが、受賞取り消しは初めて」としている。

同社は「お客様に誤解を与え、深くおわびします」とコメントしているが、製品の性能には問題がないとして、返品や交換は受け付けない方針。(2009年4月21日 読売新聞)


正確に言うと日立製作所の子会社ですが、製品には“HITACHI”のロゴが光っているわけで、多くの人は日立そのものと認識していると思います。日立アプライアンスなんて会社名は初めて聞いた人も多いと思いますが、日立は、「日立コンプライアンス(法令遵守)」という子会社もつくるべきでしょう。

省エネ賞の冷蔵庫、実は不当表示 日立子会社に排除命令公正取引委員会も会見で「これだけの大きな会社が、われわれの調べた限りでは、確認が行われていない。どう見ても問題は大きい」と語っています。結果として消費者を欺いたにもかかわらず、正式な謝罪会見も開いていません。まさしく企業のコンプライアンスへの姿勢が問われます。

48%削減とうたっておきながら、実はほとんど使っていなかったとは、悪質な偽装と言っていいでしょう。とんでもない話です。日本を代表するような企業が、こんなケチな偽装をすることに、あきれてものが言えないという人も多いのではないでしょうか。信じられないような不祥事です。

しかも、設計と宣伝担当の部署との連絡に齟齬があったと、まるで単なるケアレスミスだったかのように言い訳している態度が更に問題だと思います。カタログの小さな誤植ならともかく、これだけ大々的に宣伝しておいて、それはないでしょう。担当者が半年以上も気づかなかったはずがありません。信じろと言うほうが無理です。

「お客様に誤解を与え、..」とコメントしていますが、これは「お客様を騙し、..」と言うべきでしょう。いくつかのマスコミも指摘していますが、誰が見ても、担当者が確信犯としてやったと見るのが自然でしょう。単なるミスだったと言うのは面の皮が厚すぎです。二重に消費者をなめた態度です。

リサイクル材を使っていないことを知っていた関係者はたくさんいたはずですが、長期間、見て見ぬふりをしていたはずです。もちろん、社内の人間がそれを指摘するのは、なかなか困難だと思いますが、消費者を騙してもバレなければいいという日立の体質、法令を軽んずる姿勢は問題とされるべきではないでしょうか。

日立の冷蔵庫、不当表示で排除命令同じような性能、同じような価格であれば、よりエコロジカルな商品という基準で選びたいというのは、今どきなら自然な感覚です。それを偽装したわけですから、極端に言えば詐欺商法と一緒です。確かに性能には問題ないでしょうが、騙して買わせたのだから、本当は返品に応じるのが当たり前です。

実際には、冷蔵庫を返品するのは大変な手間ですから返品する人はいないかも知れません。でも、騙したくせに返品にも応じないとは消費者をバカにするにも程があります。反省しているなら、消費者をダマして得た売り上げを全額、温暖化ガス削減のための事業か何かに寄付するくらいのことをしてもいいくらいでしょう。

これは氷山の一角ではないかとの疑念も浮かびます。再生紙の時は他社も相次いで白状しました。食品の産地偽装の時は、同業者から非難の声や不信感を持たれることへの怒りの声が聞かれましたが、今回は他の家電メーカーからそういった声は聞かれません。自社には偽装がないと言いきる自信がないのでしょうか。

野田消費者行政担当相は、「あってはならないことを大企業がした。反省していただかなければならない」と批判し、斉藤環境相も、「激しい憤りを感じている」と強い不快感を示しています。社会的な責任も大きい大企業にあるまじき行為ですから当然の怒りでしょう。二階経産相も遺憾の意と同社に対し原因の徹底究明を求めています。

ただ、食品偽装などと違って、直接被害があるわけではないためか、消費者の反発はあまり伝わっていません。マスコミも20日の発覚に伴ってなされた一連の報道の後は、ほとんど取り上げていないようです。このあたりの反応も、日立は織り込み済みということなのかも知れません。

確かに食品のように直接的な被害がすぐあるわけではありません。冷蔵庫としての性能に問題があるわけでもないし、騙されて買わされて不愉快という程度のことかも知れません。しかし、こういう不正によって何百億円も売り上げ、運悪くバレても適当に謝罪しておけば、ほとんど不利益も被らないというのでは大いに問題です。

日立、“総合”の看板下ろす 公的資金による資本注入も検討翌日の日立製作所の株価は下がりましたが、ちょうど同社社長が、政府の一般企業への公的資金注入の検討を明らかにしたのが大きな要因でしょう。「エコ冷蔵庫」の不当表示の発覚も材料としてはあると思いますが、大きなイメージダウンにはなっていないようです。

せっかく消費者が、少しでも環境に優しい行動をとろうとしているのに水を差す行為です。こうしたことが続くのであれば、消費者は環境負荷を考えて購買しても意味がありません。そのぶん二酸化炭素排出量も減らず、将来排出権の購入などで税金にも跳ね返るでしょうし、大きな意味で不利益を被るのは間違いありません。

家電業界だけではなく、この不況で大幅な輸出の減少に苦しむ日本の製造業にとって、「日本ブランド」全体の信用にかかわる問題でもあります。大企業が平気でウソの表示をするようでは教育上も問題ですし、真っ当な商売をしている人のやる気を削ぐことにもなり、社会のモラルも低下します。

極端なことを言えば、詐欺商法で簡単に儲かるのに真面目に働くなんてバカバカしいと若者のモラルを低下させるような風潮を助長しかねません。仮に日立一社のことだったとしても、市場の信頼が失墜することになれば、社会に余計なコストを強いることにもなるでしょう。

経済産業省は「省エネ大賞」でお墨付きを与えた形ですが、その責任も問われます。ただ、審査のずさんさは問題ですが、技術情報など企業秘密に関わるものなど、審査が難しい場合もあると思います。審査を厳格にするのも費用がかかりますし、おそらく現実的ではない部分もあるでしょう。

日立は原発でもデータ改ざんだとすれば、食品偽装などと同じように、やはり発覚した場合に被るペナルティーを大きくして、偽装をためらわさせるしかありません。過去にも、家電の省エネ効果を大幅に水増しして発表して問題になった事件がありましたが、万一バレても、大した損害がないのであれば、偽装は決してなくならないでしょう。

折しも政府の追加経済対策で、省エネ型の冷蔵庫などの家電を買うと、購入価格の5%分が次の買い物に使える「エコポイント制度」が盛り込まれました。景気浮揚にも水を差しかねない不祥事です。日立は、自ら辞退してもいいくらいですが、日立だけには、エコポイントを適用しないようには出来ないものでしょうか。

私は、日立に特に悪いイメージを持っていませんでした。むしろ好感を持っていたと言ってもいいでしょう。家にも日立の家電が少なからずあります。しかし、一連の不祥事とその対応にはガッカリです。これが日本を代表するような会社だとは寂しい限りです。このまま「ほとぼり」がさめれば何も問題ないと思っているのでしょう。

「技術の日立」が聞いてあきれます。これからの日本の産業の生命線でもある省エネ技術で日本の顧客を裏切り、世界の信用をなくすのであれば自殺行為です。今は金融危機で苦境にありますが、景気が回復した後でも、こんな詐欺的商法をしているようでは、その先行きは極めて暗いと言わざるを得ません。

食品偽装や耐震偽装では、つぶれた会社もあります。しかし、今回の偽装事件では、はやくも騒ぎが収まっているところを見ると、大きなダメージにはならないでしょう。そうなると、責任の所在や責任者の処分すら発表されない今回の日立の対応を見ても、この会社の体質が改まるか極めて怪しいものです。

日立は7000億円もの巨額の連結最終赤字に転落こんなことを言うと、日立の関係者は反感を感じるでしょう。社員や取引先にしてみれば、エコより生活のほうが大切ですから当然です。しかし、本当は批判に反発するより、このような不祥事を起こした部署や見逃した責任者、法令遵守をおろそかにする社内に反感の矛先を向けるべきでしょう。それが本当の挽回につながるはずです。

政府には、市民の声をくみ取って、偽装に対するペナルティーを大幅に強化することを望みたいですが、法律の強化は一朝一夕には進まないでしょう。また、相対的な%表示などではなく、明確で分かりやすく信頼性の高い省エネ製品の基準も出来ればいいと思うのですが、簡単ではなさそうです。

こんな不祥事を起こす日立に、エコを名乗る資格はないと思いますが、そんな批判すらあまり聞かれない状態でいいのでしょうか。当面法的な対応が間に合わないならば、現状では我々消費者ひとり一人が厳しい目で見ていくしかありません。公取委の排除勧告のニュースを聞き流すことなく、問題企業に厳しい目を向けるべきです。

そして消費行動によって、偽装をして消費者を欺けば手痛い目に遭うという教訓を与えることが必要だと思います。一人一人の行動は微々たるものでも、多くの人が動くならば企業も無視できません。そうした心がけが偽装の蔓延に歯止めをかけ、モラルの低下やコスト高を防ぎ、結局は我々みんなの利益につながっていくはずです。



すでにご存じの方も多いと思いますが、イギリスのスターを発掘するテレビ番組に出た無名の女性が、天使の歌声と一躍世界的な注目を浴び、日本でもNHKのニュースで報道されるまでなっています。YouTubeで4千万回以上視聴されたスーザンボイルさんの動画(日本語字幕版はこちら)ご覧になりました?すでにレコード会社から契約依頼が殺到していると言います。いろいろな意味ですごいですね。

追記:ちなみに、同じ番組で過去にも似た話があって、携帯電話のセールスマンからプロのオペラ歌手になった人がいます。日本のCMにも出演していますが、ポールポッツさんです。(日本語字幕版はこちら。この実話をもとにテレビで紹介された番組はこちら。その1その2その3.)まだ見てらっしゃらない方があれば。

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天使の歌声【悠々メモ日記。】at April 28, 2009 13:49
この記事へのコメント
 知人がKureと言う町で日立の子会社に勤めているが
職場苛めが酷いらしい。創業者の小平浪平が、天国で泣いている。
Posted by 正義の味方 at August 17, 2010 20:15
正義の味方さん、こんにちは。コメントありがとうございます。
日立グループ約1000社、従業員40万人からすれば、今回の事件など、小さな出来事ということなのかも知れません。
ただ、こうしたことへの危機感の欠如があるとするなら、アリの一穴とならないとは言い切れない気がします。
Posted by cycleroad at August 18, 2010 21:31
 
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