特に中高生の制服がいっせいに夏服に変わり、白っぽくなるので、朝の駅のホームなどでは、なんだか急に明るくなった感じがします。最近はクールビズを取り入れる職場が増えているので、ノーネクタイや上着なし、半そで姿のビジネスマンも年々増えているようです。
ただ、職種や仕事の内容などによっては、ネクタイや上着が手放せない人もあるでしょう。夏でもネクタイをして、上着を持って歩いている人もいます。自転車通勤をしている人なら、ただでさえ汗を多くかく季節になっていくのに、夏服とは言え、スーツで通勤しなければならないとしたら、たいへんです。
ここのところ、自転車通勤を始める人が増えています。この需要を受けて自転車通勤用のスーツなどを売りだすメーカーも出てきているようです。既に数社から発売されています。私もまだ実物は見たことがないので、具体的にはコメント出来ませんが、さまざまな工夫が凝らされているようです。
自転車に乗りやすいようにジャージの素材などを使って動きやすくしたもの、シワになりにくくしたもの、通気性を良くしたものなど、いろいろ考えられています。袖口や背中にファスナーをつけ、走行時に解放して風を通すようになっているものもあります。襟を立てると襟の裏側が反射材になっていて視認性にも配慮しています。
ちなみに、細かいところにケチをつけるわけではありませんが、襟の裏だと乗車姿勢によっては、後方への視認性という意味では、あまり効果が高くないような気がします。安全を優先するならば、夜間の道路工事で誘導員が来ているような反射材で出来たベストでも着ればいいのでしょうが、面倒ですしスマートとは言えません。
その点、この動画の工夫は優れています。チェーンに巻き込まれたり、汚れたりしないようにパンツの裾をめくり上げると、裏側が反射材になっているのです。また、パンツの後ろのポケットを外に出すと、ポケットの生地も反射材になっています。後ろのポケットを出して乗ると言うのが、なんだかユーモラスで笑えます。(ボリューム注意!)
Bike to Work Pants from Cordarounds on Vimeo.
自転車本体にも反射材はついているでしょうが、やはり自転車のフレームはどこも細いので、イルミネーションの多い街中では特に力不足の感があります。足やお尻の部分のほうが大きな面積を取れます。足は動いていますし、ポケットも風になびいて、より注意をひきそうです。
さて、安全への配慮も重要ですが、やはり焦点は暑さと汗への対策です。勤務先か、その周辺の施設を使うなどしてシャワーを浴びたり、着がえたり出来ればいいですが、なかなかそうもいきません。いかに乗りやすい格好、汗をかきにくい格好が出来るかが問題です。
自転車通勤用スーツのような商品が、今後も充実していくといいと思いますが、やはり限界がありそうです。「自転車通勤用スーツ」より、「スーツ風サイクルジャージ」は出来ないものでしょうか。サイクルジャージと言うと、一般的に派手な色使いのものを想像すると思いますが、もっと落ち着いた色のものもあります。
一見、スーツのようなデザインにすることも充分可能なはずです。自転車通勤用スーツより、ずっと涼しくなるに違いありません。アパレルメーカーが消費者のニーズに素早く対応しているのを見習って、サイクルジャージなどを手掛けるメーカーも、もう少し柔軟に対応し、新しいコンセプトの商品を出すなどしてもらいたいものです。
ただ、逆に夏場にスーツを着用する必要が完全になくなってしまえば、スーツ風にする必要もなくなります。高温多湿な日本で、夏場にスーツは合理的ではありません。見た目にも暑くて野暮ですし、クールビズにも反しています。温暖化対策に積極的でない、時代に「遅れている」イメージも年々増していくのではないでしょうか。
政府も沖縄のかりゆしウェアを着るなどしてクールビズをアピールしています。かりゆしウェアも涼しげでいいですが、派手でない色のサイクルジャージなどを着て仕事をする職場がもっと増えても良さそうなものです。最近のサイクルウェアは、通気性に優れ、速乾性で汗もすぐ乾き、肌触りも良くて着心地のいいものが増えています。
必ずしもサイクルジャージにこだわるわけではありませんが、自転車に乗らない人でも一度着てみれば、その快適さに納得するのではないでしょうか。サイクルジャージに限らず、最近のスポーツウェアは進化しています。新しい機能的素材で作られており、普通の綿や化繊のシャツより、さらに涼しく過ごせます。
クールビズも、そのコンセプトから言うならば、ネクタイを外しただけの普通のワイシャツより、最近の高機能のシャツを利用したほうが効果的でしょう。暑い中でも、より快適に仕事が出来ます。サイクルジャージなど遊びの格好で仕事をするなんて、と眉をひそめる人もありそうですが、要は考え方です。
今は、ビジネスシーンに欠かせないスーツ、すなわち「背広」ですが、これも元々はレジャー用のものだったと聞くと驚くのではないでしょうか。ビジネスや公式の場でのしきたりとして受け継がれ、あるいは伝統として長い間、ずっと不変のような気がしますが、わずか100年ほど前に登場したに過ぎません。
当初はレジャー用だったスーツを、19世紀末から20世紀の初頭にかけて、アメリカのビジネスマンがビジネスウェアとして着用し始めたのが最初だそうです。その後世界的に普及して、今では当たり前のように仕事に着て行きますが、本来は遊び着だったわけです。
それからすれば、サイクルジャージが次世代のスーツになることも、全くあり得ないことではありません。サイクルジャージじゃなくてもいいですが、そろそろスーツに取って代わるものが出てきてもおかしくないでしょう。環境への配慮から、日本だけでなく世界的にもノーネクタイなどを進める動きが強まりつつあります。
そうした背景からも機は熟していると言えます。ビジネスの道具にしても、電信や手紙から、電話やファックス、メールやケータイと進化しています。そろばんが電卓、コンピューターへと交代しました。ただでさえ流行り廃りの激しいファッション業界の中で、スーツだけ大枠が変わらないのが不思議なくらいです。
遊び着がスーツになった経緯を見ても、サイクルジャージなどのスポーツウェアは資格充分です。ビジネスマンがクールビズで着始めたことで、次の100年のビジネスウェアに進化してもおかしくありません。もちろん、次の100年もスーツが残る可能性はありますが、変わらないとする理由もないのです。
日本にいると気づきませんが、近年日本が注目され、世界では日本ブームになっています。日本のアニメやファッション、日本食なども人気です。日本の女子高生のファッションはアジアを席巻し、世界へ広がっていると言います。女子高生だけでなく、日本のビジネスマンから次世代スーツがブレークしても不思議ではありません。
もちろん仮定の域を出ず、可能性の話でしかありません。ただ、この時期、衣替えで上着を脱ぐと身が軽くなって、とてもラクに感じます。なぜ暑くて窮屈なスーツなんか着なければいけないんだろうと、ふと、そんな素朴な疑問が浮かんできたりします。
実際にどうなるかはわかりません。ビジネスの場でラクな格好なんて言語道断、不謹慎、不愉快に感じる感覚があるのも確かでしょう。でも、暑いのを我慢せず、みんなでラクになってしまえばいいのではないでしょうか。別にサイクルジャージでなくてもいいですが、願わくば次のビジネスウェアは、ラクで涼しい服装になってほしいものです。
100年続いてきたGMも、とうとう破産法適用に追い込まれました。時代の変わり目にある感じがしますね。
関連記事
自転車通勤の盛り上がり具合
テレビなどで自転車通勤が取り上げられる<ことも増えてきている。
雨でも自転車通勤するために
快適に自転車通勤するために、自転車本体も変わっていくのかも。
自転車通勤をより快適にする
自転車通勤を快適にするためのグッズも発売されるかも知れない。
一杯飲みながら自転車通勤を
もちろん自転車でも飲酒運転は違法なので、飲んだら乗れないが。