先週、夏季五輪招致のプレゼン活動が報道されていました。
2016年の夏季オリンピック開催候補都市に立候補している東京都は、石原都知事自らスイス・ローザンヌに乗りこみ、IOC委員へのプレゼンテーションや個別説明などを行いました。知事は一連の招致活動には満足したようですが、果たして開催確定にこぎつけられるか、厳しい戦いであることは間違いないようです。
コンパクトな計画をアピールしているのは東京だけではありませんし、IOCが独自に実施した世論調査の結果では市民の支持率で東京が4都市中で最下位だと言います。他の3都市の評価も高く、開催地が決定する10月のIOC総会にはオバマ大統領が出馬する予定とも言われ、東京は苦戦が予想されています。
ところで、その2016年の前、2012年の夏季五輪が開催されるのがロンドンです。現在着々と準備が進んでいます。先日は、五輪会場への足として期待されている日本製の高速列車が試験走行しました。鉄道発祥の地で、初めて日本製の列車が走ったのですから、関係者の感慨もひとしおだったことでしょう。
鉄道以外にも、さまざまなインフラ整備が進む中、なんと自転車の高速道路をつくる計画も持ち上がっています。五輪までにロンドン郊外から中心部へ向かう12本の“
Cycle Superhighways”の整備が予定されており、そのうち2本は来年5月にも完成予定です。
ただし、クルマの高速道路のような高規格道路が新たに建設されるわけではありません。規格の詳細はまだ固まっていませんが、基本的には既存の車道にレーンが設けられ、その部分の駐車禁止などを徹底し、自転車を安全で高速に走行させるものになりそうです。
自転車がクルマをよけながら走らなければならない状態から、化石燃料を使う乗り物のほうがよけることになります。自転車の走行を優先させるという考え方です。自転車は市民の足として、現実的な都市交通として充実することになります。当然、温暖化対策の観点からも、自転車のほうが有益という考え方が明確に打ち出されています。
ロンドンは中心部の酷い渋滞に悩まされ続けてきた結果、近年取り入れられた、中心部へ乗り入れるクルマに課金するロードプライシング制度が好評と言います。都市部でクルマの通行を制限することに、市民のコンセンサスがとれているという背景もあるのでしょう。
長さは10キロないし15キロ程度ですが、中心部から放射状に計画されています。東京などでも、こんな専用道が出来たら、より自転車通勤がしやすくなるのは間違いありません。自転車通勤が可能になる範囲が広がり、都県境を越えて、隣接県から自転車通勤する人も増えそうです。うらやましい話です。
ただ、異論もあって、このままの形で実現するかはわかりません。しかし、今年だけで自転車関係の予算は約170億円にものぼります。駐輪場などの設備も市内6万6千箇所に整備される計画です。ロンドン市長は、サイクリング革命を表明し、本気で自転車環境の整備に取り組んでいるのです。
実際、イギリスでも自転車はブームとなっており、市民が自転車を利用する総距離数が昨年より9%も伸びています。自転車関連のさまざまなイベントが多数開催され、サイクリストの安全を向上させるためのトレーニングプログラムなども実施されています。レンタル自転車などが整備される計画もあります。
今月9日には、ロンドンの地下鉄で48時間のストライキがおこなわれたのですが、当局はこのストライキさえも自転車通勤普及の好機と捉え、“
BIKE TUBES”キャンペーンを行っています。地下鉄の代わりに自転車を使おうというわけです。ストライキは、今まで乗っていなかった人が、自転車を試すチャンスととらえているのです。
都心への経路に迷ったり、時間が読めなかったりする未経験者の為に、各地に集合し経験者が先導して都心まで集団で走行します。結果、地下鉄よりも効率が良い、信頼出来る、楽しい、気持ちいい、健康にもいい、ストに振り回されずに済むなどのメリットに気づく機会を得ることになります。
実際、このキャンペーンは大成功をおさめ、自転車通勤者の増加にも大きく貢献するだろうと目されています。地下鉄の代わりにクルマではなく自転車を、ということもありますが、地下鉄通勤から自転車通勤にする人も出てくるでしょう。地下鉄の混雑緩和や、ストを打つ地下鉄の労組に対し牽制する効果もありそうです。
こうした動きは、近年の温暖化ガス排出削減の取り組みの延長にあるもので、ヨーロッパ全体の傾向でもあります。必ずしもロンドン五輪のためだけではありませんが、オリンピックの開催に向けて渋滞の緩和を推進すると同時に、環境への取り組みを世界にアピールする姿勢もあらわれていると言えそうです。
かつて東京五輪の時は、開催に向けて首都高速道路が建設されましたが、今ロンドン五輪へは、自転車用スーパーハイウェイが整備されているわけです。時代の隔たりと共に、化石燃料に支えられてきた文明が大きくシフトしつつあることを感じずにはいられません。
ちなみに、ロンドンでは自転車利用者に対し、歩行者の安全に配慮する必要がある場所では、スピードを落とすよう促すキャンペーンも行われています。そのキャンペーンの一環で、運河沿いの道路では3Dのトリックアートが描かれています。日本でやったら、驚いて転倒する人も出るかも知れません(笑)。ユニークな手法です。
東京に2016年のオリンピックが来るかどうかは別として、自転車ブームを利用して計画を進めるロンドンのこうしたやり方には、日本も見習うべき部分があると思います。日本政府は2020年に05年比で温暖化ガスを15%減らす中期目標を掲げました。ハイブリッドなどのエコカー普及促進もいいですが、それだけでは足りません。
確かに自動車産業への配慮も必要でしょうが、渋滞する都市中心部では、クルマの利用抑制は合理的な選択肢です。そのぶん自転車の走行環境を整備し、その利用を促進すれば、温暖化ガス削減にも貢献します。渋滞が減れば、クルマのドライバーにとってもメリットが出てきます。
自転車スーパーハイウェイが導入可能かどうかはともかく、自転車の利用促進は、もはや世界の趨勢となってきています。クルマを全て締め出せというのではありません。公共交通の利用も必要です。その意味でも、地下鉄が発達するロンドンのスタイルは、東京などでも参考になる部分が多いと思います。
どうしても日本ではママチャリのイメージが強く、自転車を都市交通の手段と認識する傾向に乏しいものがあります。しかし、海外に目を向ければ、ロンドンのような大都市でもサイクリング革命が唱えられる時代です。歩行者との事故の増加への対策も必要ですし、いまこそ自転車走行環境の整備に踏み出すべき時ではないでしょうか。
イランでは混乱が拡大していますね。イスラム教の最高指導者ハメネイ師へ反抗する形にまで発展するとは驚きました。
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11-13のつぶやき(サイクルスーパーハイウェイ他)【我が人生に悔いなし……と言いたい】at November 14, 2009 11:46