中には3輪のトライクや、4輪やそれ以上など特殊なものもありますが、大多数は前後同じ直径の2輪であるのが普通です。最近は小学校の授業などに取り入れられることがある1輪車も、人の力で進む車輪のついた乗り物には変わりありませんが、通常は自転車と呼ばないでしょう。
今、私たちは自転車が2輪なのは当たり前だと思っていますが、自転車が誕生した当時は、必ずしもそうではなかったようです。まだ自転車の概念がなかったわけですから、車輪を使って人力で進む乗り物を作ろうとした場合、最初から2輪ではなく、まず1つの車輪を使うことを考えるのが、むしろ自然かも知れません。
でも、1輪だとどうしても不安定なので、2輪にすることを考えるようになったのでしょう。ただし、黎明期の自転車として有名なオーディナリー型などは、大きな前輪に乗るために、補助で後輪がついているように見えます。見方を変えれば、1輪車に補助輪をつけているとも言えます。
チェーンがないこの時代、ペダルのついた前輪が大きな役割を果たします。ペダルが固定された前輪を回して進むので、言ってみれば今の一輪車と同じです。サドルも前輪上にあり、後輪はほとんど補助輪と言っても過言ではないでしょう。前後輪の間にサドルがある今の形と違って、1輪車にうまく乗るための形と見ることも出来ます。
子供が乗っているのを見てもわかりますが、1輪車はペダル1回転につき、車輪も1回転です。車輪が小さいのでスピードも出ません。オーディナリーも同じなので、スピードを出すためには前輪を大きくせざるを得ないのです。前輪の半径を足の長さギリギリまで大きくした結果、このような形になったわけです。
なおさら乗るのに不安定になったので、後輪で支える必要があるわけですが、オーディナリー型は、サドルの位置が高いこともあって、実際かなり乗るのが大変だったようです。必然的に重心も高くなりますし、カーブが曲がりにくかったり、走行安定性も高いとは言えなかったでしょう。
それなら1輪車にして、その大きな車輪の内側に乗るほうがいいと考える人が出てきても不思議ではありません。車輪の上にサドルがあるより重心が低く安定します。私は乗ったことがないので想像ですが、車輪の中に乗ったほうがバランスを取りやすいような気がします。後輪がなくても問題なさそうです。
この時代の自転車には、2輪車ではなく1輪車という選択肢も充分にあったのでしょう。そして、オーディナリー型2輪車にないメリットは、重心の低さだけではなかったはずです。例えば、タイヤをカプセルのようにすれば、雨天でも濡れない自転車をつくることも出来そうです。
そればかりか、水に浮かせて水陸両用車なんかも可能かもしれません。当時もいろいろ構想され、試作されたりしたようです。“
DARK ROASTED BLEND”を見ると、そんな一輪車がたくさん出てきます。今となっては、どれも風変りな乗り物に見えますが、当時の新進気鋭のデザイン、注目の構想でもあったのでしょう。
大きな車輪の中にギヤなどを使って小さな車輪を組み合わせ、スピードアップさせるという考えも当然出てきます。安定性に関しては、一輪車のタイヤを太くすれば、止まっていても倒れることはありません。横に二人並んで乗れるような一輪車も考えられ、車輪も巨大化していきます。
重さも重くなるので、当然、動力を使って動かそうと考えることになります。一輪のモーターサイクルです。自転車の誕生当時だけでなく、かなり後の時代まで一輪というカテゴリーは試行錯誤されたようです。しかし、次第にチェーン駆動が発明された2輪車と、それを動力で動かす2輪のモーターサイクルが席巻するようになります。
生物の進化、分化を表す系統樹のように、2輪と分かれて独自の進化を続けるかと思われた1輪車は、やがて作られなくなり、誰も見向きもしなくなり、消えていったわけです。結局サーカスや小学校の授業で使われるような、今の一輪車以外は、ほぼ絶滅してしまった形です。
しかし、生物であれば一度絶滅した種は永遠に失われますが、工業製品なら、再び蘇る場合もあります。特に最近のように素材の進歩や加工技術の発達によって、懸案や技術的困難が取り除かれれば、充分復活する可能性があります。まだ非常にマイナーではありますが、最近また車輪内に乗るような一輪車が作られています。
一例を挙げるなら、北京オリンピックの開会式に登場した1輪車です。私もずっとテレビで見ていましたので、上の写真のような1輪車がイルミネーションをつけて多数登場したのをよく覚えています。下の写真は、おそらくその北京の開会式のために練習している人民解放軍の兵士の様子だと思われます。
ペダルの力をギヤなどで外側の大きな車輪に伝えれば、充分速いスピードも出ます。小学生などが乗っている、いわゆる今の一輪車と違って、充分実用的な「自転車」として使える可能性があります。以前構想されたように、カプセル型とか、水陸両用などのものも出てこないとは限りません。
外側の車輪と、内側のペダルのついた駆動輪との2輪と見るか、輪内に乗るスタイルの1輪車と見るかはともかく、今の自転車の常識を打ち破る形です。新しい自転車のジャンルとして、あるいは自転車に対抗する乗り物になる可能性があります。
ものによっては、ハムスターやリスの檻の中にある回し車に見えなくもありませんが(笑)、この形によって、今までの自転車にない、あらたな可能性が開かれないとも限りません。個人的には密かに期待するのですが、200年の時を経て、一輪車が新たに進化し始めたら面白そうです。
いよいよ解散・総選挙ですか。自分が決断すると再三強調していた麻生総理ですが、決断と言うより追い込まれた感じです。この人、結局何も決断できない人なのは、衆目の一致するところでしょうね。
関連記事
自転車かそうでないかの違い
世界を見渡せば、なんと一輪車で野山を走破してしまうような人も。
ある日突然当たり前になる事
子供のころに経験したので一輪車に乗れる人は増えているのかも。
意味や理由やメリットでなく
車輪の数は1輪が最少かと思えば、探せば下には下があるものだ。
Posted by cycleroad at 23:30│
Comments(6)│
TrackBack(0)