July 19, 2009

日本に足りない自転車の種類

相変わらず、自転車販売は好調のようです。


私が時々のぞく自転車屋さんなどでも、以前に比べると、かなりお客が増えて賑わっています。実際、この自転車ブームで、自転車店の売り上げは相当増えているようです。ロードバイクやクロスバイクなど人気の車種の品揃えも充実し、いろいろなメーカーの多彩なモデルが店頭に並べられています。

マウンテンバイクやミニベロも多いですし、BMXやビーチクルーザー、リカンベントなども飾ってあります。ブームのおかげか、より多彩な車種やメーカーから選べるようになった感があります。全体では電動アシストを含めたママチャリが圧倒的に多いとは言え、スポーツバイクを選ぶ人が増えているのは間違いないでしょう。

ただ、これだけバラエティが増えてきている中でも、あまり見かけない車種があります。それは、CargoBikeと呼ばれるような、荷物を運ぶことを重視した自転車です。ネーミングや形はいろいろですが、海外では各社から販売されており、それぞれ荷物を運ぶための工夫にあふれています。

CargoBiketransport bicycle

私は、海外へ出かけた時も自転車店をのぞいてみるのですが、当然メインではないにせよ、大きな店舗なら荷物を運ぶ自転車も扱われていたりします。ところが日本では、ほとんど見たことがありません。もちろん店にもよるでしょうが、街で走っているのを見ることもないので、扱う店が少ないことは間違いないと思います。

“CargoBike”のように荷物を運搬できる自転車だったり、普通の自転車に連結して使うトレイラーだったりしますが、海外では何らかの荷物を運ぶために自転車を使う人があり、一定の需要があるということなのでしょう。それに比べ、日本では売れないので、どこも取り扱わないのだと思います。



ニワトリと卵の関係みたいですが、逆に売っていないから、こうした自転車の存在を知らず、普及しないという面もあるのではないでしょうか。多くの人は、ママチャリの前カゴや荷台に積んで運ぶくらいしか知らないので、自転車で大きな荷物を運ぶという発想すら湧かないのかも知れません。不思議なほど日本では見かけません。

スーパーなどへ買い物に行くのに自転車を利用している人は多いと思います。ママチャリの前後に荷物を満載し、さらにハンドルにまで荷物をぶら下げている人も見ます。お米とか飲料など、重いものならハンドルもふらつくでしょうし、重心が高くなるので危ない状態になることも多いに違いありません。



これが、カーゴバイクのような自転車であれば、より多くの荷物が積める一方で、重心は低く安定して走行することが出来ます。こうした自転車の存在が知られ、その使い勝手、優位性が理解されれば、日本でも一定の需要が出てくるのではないでしょうか。今のママチャリの積載能力に不満のある人も少なくないはずです。

趣味の場面などでも活躍します。例えば、サーフボードだって運べます。クルマがないと運べないとあきらめていた人でも、家から自転車でサーフィンに行けるようになるかも知れません。あるいは、近くに駐車場がないため、アクセス出来ないと考えていたポイントでも、自転車だったら可能になるかも知れません。

サーフボードもかさばる荷物も

釣りをするため、近くの港や防波堤などへ自転車で出かける人も多いようです。やはり駐車場の問題がクリア出来ますし、クルマが入れない場所でも入っていけます。でも、積載能力が低く、クーラーボックスや釣り竿や道具箱などをママチャリの前後に満載し、フラついて危ない人も見ます。カーゴバイクを使う効用は大きいと思います。

一部、宅配便業者は配達に自転車を使い始めています。リヤカーを電動アシスト自転車で牽引していますが、そこまで大掛かりではなくても、カーゴバイクなら、ちょっとした業務に使えそうという企業もあるでしょう。すでに自転車を営業などに使い始めている企業もありますが、携行出来る荷物の量が大幅に増えます。



都市部では、渋滞や駐車場の問題がありますし、営業用の車両の維持コストも馬鹿になりません。自転車の便利さ、利便性は理解しているものの、携行する荷物の量などから、移動にクルマを使わざるを得なかった会社でも、カーゴバイクなら、クルマを廃止できるかも知れません。

自転車通勤に使えば、例えば会社帰りにスーパーへ寄って買い物が出来て便利になったりもするでしょう。大きなカバンを持ち歩く必要があるため、あきらめていた人でも自転車で通勤出来るようになるかも知れません。行き帰りに保育園などへの送迎がある人の強い味方にもなります。

子供を乗せるにも趣味の運搬手段に

もちろん、日本でも安全性が認定されれば、子供を2人乗せて走る3人乗り自転車としても使えます。ハンドルや荷台にチャイルドシートを取り付けるより、重心が低い分走行が安定し、相対的に安全性も高くなります。子供が大きくなった後もカーゴバイクなら有効に利用できます。

買い物難民最近、不況や過当競争などの結果、住宅街などからスーパーが撤退し、日々の買い物にも困ってしまう、いわゆる「買い物難民」が発生する地域が増えていると言います。クルマを使える人なら、郊外の大型商業施設に行ってまとめ買いも出来ますが、それが難しい高齢者などの場合、毎日の食生活にも困る人があると言います。

先日もテレビの報道番組で、スーパーの撤退で買い物難民となり、自転車で遠くまで買い物に行かなければならなくなった高齢者が紹介されていました。自転車で運べる量が限られるため、買い物は重さを吟味して厳選せざるを得ず、食料ですら満足な量を買えないという実態がレポートされていました。

自転車が足毎日通えるような距離ではないため、重量的に最低限の食料を買うのが精一杯、ビールなども飲みたいが、とても運べないという話でした。カーゴバイクなどの荷物運搬自転車が、こうした問題を全て解決するなどと言うつもりはありません。ただ、中には問題の改善に役立つ場合もあるのではないでしょうか。

荷物の運搬に優れた自転車は、生活のあらゆる場面で活躍する可能性があります。ゴルフ練習場に行く時のゴルフバッグとか、テニスに行く時、ラケットや靴やボールなど荷物か多いため、クルマを使わざるを得なかった人でも自転車で済ませられるようになり、便利になったり、出費が減らせたりするかも知れません。

キャンプやバーベキューにも使えるでしょうし、多くの機材をもって写真撮影にも出かけられるでしょう。飲食店なら出前などに使うことも出来ます。自転車を趣味としない人でも、いろいろな趣味に、あるいは仕事や生活のシーンに自転車を活用する人が増えることになるはずです。

cargo bikesこの自転車ブームで、趣味で自転車に乗る人が増えています。このことは、世間一般の自転車に対する理解を深め、もっと自転車で移動しやすい街にすべきとのコンセンサスの醸成にも役立っていくでしょう。もちろん温暖化ガスを減らし、人々の健康にもいい結果をもたらすに違いありません。

しかし、スポーツとしての自転車や、趣味としてのサイクリングが流行るというだけでは、ブームも限られた範囲にとどまらざるを得ません。カーゴバイクのような自転車がもっと普及するなら、自転車を趣味として楽しもうという人以外にも、自転車ブームが広がっていく可能性があります。

自転車だと、わずかな量の荷物しか運べないという先入観を持っている人は多いはずです。しかし、カーゴバイクなどを使えば、驚くほど多くの、そして重い荷物を運べるものです。自転車は、「移動」できるだけでなく、多くの「輸送」も出来る大きな潜在能力を持っていることは、もっと知られるべきだと思います。








私は本格的にはやったことがありませんが、一歩間違うと夏山でも登山は怖いですね。夏休みで水の事故も相次いでいます。熱中症も含め、レジャーや趣味で出かける際は、くれぐれも気をつけたいところです。

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流行するモノなじみがない物
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何が出来て何が出来ないのか
やろうと思えば、引っ越しだって自転車を使って出来るという事実。

大多数の人が過小に評価する
日本人ほどではないが、人力での輸送は過小に評価されている。


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この記事へのコメント
こんばんは。
このタイプの自転車、確かに仰るとおりにもっと大勢の人が使うようになったら、色々な面で良い事づくしなんだろうなぁと、私も思っていました。
で、「なんで普及しないのか?」とも考えたのですが、
まずは製造メーカー側の理由で考えられる点として、
『JIS規格外だから』という問題があると思います。確か自転車の全長は1900mmぐらいと定められてたと思います。メーカーとしては、JIS規格内で商品を作る方が何かと便利で言い訳もしやすいというのがあるのでしょう。
一方で消費者側の理由で考えられるのが、
『置き場所がない』ということでしょう。
幼稚園・保育園の送り迎えから日常の買い物、果ては引越しまで出来そうな積載性があるにも関わらず普及しないのは、ズバリ、置き場所の問題だと思います。マンションやアパートの駐輪場はまず無理。一軒屋でもこのタイプの自転車を置ける家はどのくらいあるのか…。
というわけで、なんか様々な『環境』を改善していかないと、『とりあえず自転車で…』という理想的な社会は難しいのかもしれませんね〜。
Posted by ruirui31 at July 20, 2009 23:15
ロードバイクとかでは荷物を運ぶという意味では車の代わりにならないから環境さえ整えばこういう自転車は便利ですね

買い物難民の番組見ましたよ
クルマ文化は経済を豊かにした半面クルマの運転ができないとまともに生活できない状況を作ってしまいましたね
これからお年寄りが増えてくるので早いうちに脱クルマ社会にしないと。
Posted by 職人気取り at July 22, 2009 09:41
ruirui31さん、こんにちは。コメントありがとうございます。
確かに国産メーカーにしてみれば、少なくとも現状では需要も少ないですから、規格と違うものをつくるのはコストもかかるし、見合わないというのはあるかも知れませんね。
ただ、店頭に並ぶのは、ママチャリも含めて輸入品の割合が大きいはずです。ほかにも輸入している自転車はいろいろあるのですから、CargoBikeの類も輸入してみてもいいと思うのですが..。特に今は3人乗り自転車などの注目もありますし。
置き場所的に難しいのも間違いないでしょうね。でも、多くのものは、荷台部分が着脱式であり、意外と収納や駐輪にも配慮されていたりします。結局、知られていないのが大きいような気がします。
Posted by cycleroad at July 22, 2009 21:45
職人気取りさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
用途によって、複数の自転車が揃えられたら便利ですね。置き場所なんかの問題はありますが。
ご覧になりましたか。私も最近、偶然なのか複数の局で取り上げられているのを、連続して見かけました。
過疎の問題もありますし、人口減で広域のインフラが非効率になっている問題もあります。コンパクトシティにして、市街地へ住居や商業施設を集中させることを考える自治体も出始めています。都市交通も考え直す時期にきてますね。
(重複のようですので、一件削除させていただきました。)
Posted by cycleroad at July 22, 2009 21:51
世界中には、おもしろくて実用的な自転車があるんですね。

思わず引き込まれてしまいました^^

日本の自転車人口も増えつつあるので、

便利な自転車に期待です。

また、お邪魔します☆
Posted by キャンプ道具マニア@五百蔵 at July 23, 2009 12:29
キャンプ道具マニア@五百蔵さん、こんにちは。コメントありがとうございます。
日本ではなじみのないものも、いろいろありますね。CargoBikeも、海外ではアウトドアシーン、キャンプなどでの運搬にも活躍しているようです。
日本でも少しずつ多様な車種が輸入されるようになるかも知れません。
またお越しください。
Posted by cycleroad at July 23, 2009 18:56
数年も前の記事にお邪魔します。

こういう自転車を知っていて欲しくても買えません。何故か。
そもそも走れる道がありません。
昨今の間違えた整備のされ方をした自転車道はなおさら走り辛いです。車止めにひっかかりますよ、たぶん(笑)

でも日本でもないわけではないですよ。田舎の年配の方が乗ってる三輪車。安定性もあるし、荷物も乗りますよ。
Posted by 通りすがり at January 20, 2012 11:29
通りすがりさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
いえいえ、過去の記事でも一向に構いませんよ。

川沿いのサイクリングロードなどにある、自転車も通りにくいような過剰なクルマ止めには、ひっかかるかも知れませんね。
ただ、そうした道路や歩道は無理ですが、車道を走行すれば、通れないことはないと思います。
こうした自転車は、日本の法律でいう普通自転車には分類されないものが多いので、そもそも法律上、歩道走行は出来ません。
走れる道がないのではなく、日本の道路行政、自転車を歩道走行させるような交通体系が間違っているのだと思います。
日本でよく見る三輪車については、過去に何度か取り上げています。
Posted by cycleroad at January 20, 2012 23:57
お米や野菜などをまとめて買うのに便利な自転車が欲しいです。
車を置けるほどのスペースが無い場所で作業をする資材や道具を運べるともっと良いです。
Posted by 日本産自転車復活祈願 at July 26, 2012 13:21
日本産自転車復活祈願さん、こんにちは。コメントありがとうございます。
カーゴバイクにはいろいろなタイプがありますが、どれもかなりの荷物が運べると思います。
海外では、買い物だけでなく、例えば宅配などのデリバリーに自転車を使うところがあるほど、活用されていますね。
Posted by cycleroad at July 26, 2012 23:39
 
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