July 31, 2009

自転車の価値に気がつく機会

当然のことながら、自転車に興味のない人は大勢います。


最近でこそ自転車ブームで、世間から注目もされていますが、全体からすればスポーツバイクに乗るような人は圧倒的に少数派なのは間違いありません。健康のため自転車に乗り始める人も増えていますが、スポーツとしての自転車も、やはり他のスポーツに比べてマイナーと言わざるを得ません。

趣味として自転車に乗っている人など、少し前なら自転車オタクと呼ばれたり、何が楽しくて自転車に乗っているんだと、あまり理解されていなかったと思います。最近でこそ、環境面や健康面、あるいは経済性などから見直されていますが、依然として自転車など子供の乗る乗り物だと思っている人もいます。

これだけ話題になったり、関心を集めたりしているのですから、そういう人でも一度乗ってみればいいと思うのですが、興味がない人にはその気も起きないのでしょう。乗れば印象も変わるかも知れませんし、楽しさも感じるのではないかと思いますが、どうしても疲れるとか、汗をかくとか、坂がイヤだなどと考えてしまうようです。

私の友人の中にも、そういう人は少なくありません。彼らにしてみれば、クルマもオートバイもあるのに、わざわざ自転車に乗る必要を感じないということのようです。スポーツということなら、野球やサッカー、ゴルフやテニスなど球技をした方がよっぽど楽しいと思っているわけです。

100万円の愛用自転車私も別に、そうした人を無理に誘うつもりはありませんし、自分から自転車の話題を振ることもしません。ただ、時に、いろいろな疑問をぶつけられることがあります。ママチャリにしか乗ったことのない人は、例えばスポーツバイクのタイヤが簡単に外れることすら知りませんから、説明すると驚くことも少なくありません。

いろいろありますが、中でも彼らが一番驚くのは、スポーツバイクの値段です。ある程度のキャリアのある人なら、軽自動車が買えるくらいの自転車に乗っている人も少なくないと思います。スポーツバイクと言っても幅がありますので、軽自動車と言っても中古から新車まで差がありますが数十万円台の自転車は珍しくありません。

もう一桁上と言う人もいるでしょう。趣味の世界ですから、どのくらいお金をかけるかは人それぞれです。パーツやスペックなどにこだわり始めたらキリがありません。知っている人なら当たり前のことですが、ふだん量販店で一万円もしないママチャリが普通だと思っている人にすれば、驚くのも無理はないかも知れません。

ゴルフをやらない人にすれば、高級なゴルフクラブの値段を知らないのと同じですし、興味のない人にとって鉄道模型の収集に大金をかける人の気が知れないのと同じでしょう。確かに高いと言われれば、高い気がしないでもありませんが、自転車が趣味の人にしてみれば、そんなものだと思っている人が多いのではないでしょうか。

同じ工業製品ではありますが、現代の工業技術や電子制御技術の結晶であり、数多くの機械部品からなるクルマと同じような値段と言うのも、行き過ぎと言われればそうなのかも知れません。ただ、その価格と価値に納得して買う人がいるから価格が成り立つわけで、クルマと価値を比較すること自体無意味かも知れません。

Gold BikeAurumania

ところで、そんなスポーツバイクに乗る人も驚くような自転車があります。上には上があるものです。写真のロードバイクは、デンマークの自転車メーカー“Aurumania”のピスト(シングルギヤの自転車)、その名も“Gold Bike”です。スワロフスキーのクリスタルが600個以上使用された“Crystal Edition”もあります。

“Aurumania”とは金のマニアという意味らしいですが、その名の通り24金がふんだんに使われています。値段は、クリスタルエディションで8万ユーロ、1ユーロ135円とすれば、なんと1千80万円です。限定10台ですが、ちゃんと実際に購入できます。

最近、自転車に乗っていて、ひったくりの被害に遭う人が後を絶ちませんが、これに乗っていてカバンをひったくられても、自転車が無事なら気にならないかも知れません(笑)。と言うより、1千万の自転車に乗って出かけられるものでしょうか。もちろん、駐輪場に止める気も起きないでしょう。

富裕層の自転車乗り、しかもピストの愛好者が買うバイクと言うより、やはり家の中に飾っておくものなのでしょう。壁に掛けるラックも売られていますが、ラックだけで67万円もします。これを普通のロードバイクと比べる意味はないと思いますが、普通のバイクが実用的でリーズナブルな価格に見えてきます(笑)。

Gold BikeAurumania

今までは格安のママチャリを買う人があまりにも多かったので、最近はスポーツバイクが売れているぶん、自転車の平均購買単価が上がっていると言います。統計でも出荷台数より出荷額が上がっています。電動アシスト自転車の普及もありますが、自転車が決して1万円そこそこの商品ばかりでないことも知られつつあります。

スポーツバイクの価値や価格をどう感じるかは人それぞれですが、やはり高い自転車には、それなりの理由があります。スポーツバイクと格安ママチャリの価格差は大きいですが、最近のブームで、中身も全く別のものだと理解出来た人も多いに違いありません。

日本では格安ママチャリがあまりに氾濫し、自転車の楽しみがスポイルされ、自転車本来の性能が発揮されていない状態であるのは否めません。ある程度以上の価格の自転車に乗って初めて、本来のパフォーマンス、ポテンシャルも理解出来ると思います。結果として、自転車の本来の価値を知らない人が増えてしまったわけです。

もちろん、数十万円もするスポーツバイクでなければならないわけではありません。入門者なら、名のあるメーカーの製品であれば、もっと安いものでも充分楽しめます。知れば知るほど高いモデルが欲しくなってしまうのも事実ですが、必ずしも最初から高いものを買う必要はありません。


10万円自転車のレンタルも10万円自転車”レンタルも!“自転車カフェ”が誕生

東京・渋谷区の北参道に、自転車とカフェのコラボショップ「サイクルスクエア 北参道」が2010年1/17(日)まで期間限定でオープン! 目玉はなんといっても人気メーカーの10万円以上のスポーツ自転車の“レンタサイクル”だ。

借りられるのは、トレックにジェイミス、ブリヂストンなど人気6メーカーのスポーツ自転車。デポジットとして3000円を払えば、4時間1000円で気軽にレンタルできるので、高級自転車に乗れるチャンス! また、購入を検討している人にもうれしいシステムだ。(後略)(2009年7月28日 東京ウォーカー)

(ご注意:この自転車カフェに前述の1080万の自転車が飾られているわけではありません。)


スポーツバイクの値段に驚いている人たちにとって、乗ったことがなければ、その価値が理解しがたいのも無理はありません。そこで記事にあるような、スポーツバイクをレンタルで体験してみることの出来る機会は有意義です。もっと増えるといいと思います。

本来の自転車を知れば、格安の自転車を買って使い捨てのように使う人も減り、放置自転車も少なくなっていくのではないかと思います。自転車走行空間の整備の必要性などへの理解も高まるでしょう。格安自転車を駆逐しろとは言いませんが、もっと自転車本来の価値を理解する人に増えて欲しいものです。







先日、ある河川敷を通ったら、自転車道に花火の残骸が散乱していました。今までも無かったわけではないですが、ここまでひどいのは..。モラルなんてカケラもない人が増えているのを実感する気がします。

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この記事へのコメント
1千80万円とはなんとも想像の域を超えた値段です。今週、北参道のカフェに行って見たいです。
Posted by じてんしゃ操太郎 at August 02, 2009 03:22
私の気持ちを代弁していただいているような文章にしじゅうウンウンと呟いてしまいました。

私もこだわりで交換した愛車のブレーキ等の値段を聞かれ、
安易に?答えた所、女子たるものそんなモンにお金を使うな
と叱られた苦い記憶があります。
そんなモンじゃないよー、大事よ、と言ってもなかなか分からないものですよね。残念。

自転車カフェのご紹介有難うございます。
当方大阪住まいなので決して近くないけど絶対行きます。
4時間も乗れるなんて夢のようですねえ。
ああ今から楽しみです。心は既に東京です。



Posted by 大阪のオバチャン at August 02, 2009 06:24
自転車カフェいいですね
店の試乗だとせいぜい数百メートルしか走れないから自転車の性能がたいして分からないですけど時間単位で借りられれば十分楽しさがわかりそう!

放置自転車対策に困ってる役所は多いですが撤去や廃棄処分するよりスポーツ自転車を増やしたほうが無駄な費用がかからなくていいと思います

それにしても自転車の値段の感覚は不思議なもので、
数年前まで5万円の自転車を見て値段の高さにびっくりしたんですが今では20万の自転車を見てもなんとも思わないです
Posted by 職人気取り at August 02, 2009 09:41
はじめまして。
嫁に読ませてやりたい!!
まさにママチャリが自転車のスタンダードな彼女にとって
自転車に何万もかけるのが信じられないよう。
僕の中では何万では足りないのだけれど(笑)

そういう人に限って
自転車に乗ってみようともしないんですよね。
興味がないのだから仕方ないけど。
Posted by maechan at August 03, 2009 00:00
はじめまして、黄金の自転車すごいですね。
自転車は乗ってなんぼだと思っておりましたがこれはさすがに…
Posted by じて通マン at August 03, 2009 06:09
じてんしゃ操太郎さん、こんにちは。コメントありがとうございます。
ご注意いただきたいのですが、1千80万円の自転車は北参道のカフェにはありません。わかりにくかったかも知れませんが、全く別の話です。
勘違いさせてしまったとしたら、申し訳ありません。
Posted by cycleroad at August 03, 2009 12:15
大阪のオバチャンさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
共感していただけたようで嬉しいです。「女子たるものそんなモンにお金を使うな」とはひどい話ですね(笑)。戦前や明治時代じゃないんですから..。
この北参道のカフェは、2010年1/17(日)までの期間限定ということのようですので、ご注意ください。また、ここ以外にも自転車カフェがいくつかオープンしているようです。全てでレンタルがあるわけではないと思いますが、チェックしてお出かけになるといいでしょう。他にもメーカーのアンテナショップなども増えているようです。
大阪にも出来て良さそうなものです。案外、そのうち出来るかも知れませんね。
Posted by cycleroad at August 03, 2009 12:18
職人気取りさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
サイクルショーなどでも試乗はありますが、集中して混雑しますし、普通の時に、気軽にいつでも借りられるのはいいですね。予約は込んでいるのかも知れませんが..。実際の道路も走れますし、時間も長いので、いろいろ試せるでしょう。
確かにスポーツバイクが普及すれば、相対的に放置自転車が減ることになると思います。ただ、値段の面もありますから、消費者がどれほどスポーツバイクへ乗り換えるかがポイントになるでしょうね。
〉20万の自転車を見てもなんとも思わない
それは、どっぷり浸かってしまったということですよ(笑)。
Posted by cycleroad at August 03, 2009 12:22
maechanさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
お嫁さんのように、読んで欲しい人に限って自転車プログなんて読みませんからね(笑)。こんなことを書いている私も同じ悩みです。金額については、全く理解されていません(泣)。
そんな、全く興味が無かった人に限って、何かに拍子にハマってしまうこともあるのが面白いところですけど..。
Posted by cycleroad at August 03, 2009 12:36
じて通マンさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
逆に飾るためなら、自転車でなくても良さそうなもんですよね(笑)。
売れたのでしょうか..。
Posted by cycleroad at August 03, 2009 12:39
1千80万円の自転車が北参道のCafeにあるとは思っていませんです。単純にCafeに行ってみたいだけです。つたないコメントで誤解を招いてしまい、申し訳ございませんでした。いつもブログを楽しく拝見しておりますので、今後ともどうぞよろしくお願いします。
Posted by じてんしゃ操太郎 at August 03, 2009 15:09
じてんしゃ操太郎さん、こんにちは。コメントありがとうございます。
そうですよね、いえ誤解されたのではないかとの、私の早とちりでもあったようです。こちらこそ失礼しました。
いつもご覧いただきありがとうございます。こちらこそよろしくお願いします。
Posted by cycleroad at August 04, 2009 12:08
スポーツバイクに乗り始めるまでは1万後半のママチャリを高いな〜と思ってましたが、気づけばスポーツ自転車2台所有して50万以上かけてます。でも上には上があるとわかって安心しましたw
Posted by 忍猫 at September 24, 2009 23:53
忍猫さん、こんにちは。コメントありがとうございます。
確かにスポーツバイクに乗るようになると、ママチャリの価格感覚とは大いに違ってきますね。
そこを家族に理解してもらえず苦労する人も少なくないと思いますが..。
Posted by cycleroad at September 26, 2009 00:10
レーシングカーのように機能、性能追求の為に
結果高額になるのは理解出来ますが
スワロフスキーのクリスタルが600個で
1000万円オーバーの自転車はやり過ぎだと思います。

走行には全く貢献しない(むしろ逆効果)
金持ちが何に金を使おうが勝手ではありますけど
悪趣味(成金趣味)。

しかし将来カーボンを遥かに超える性能、
(軽量、強度、耐摩耗性、耐熱性、熱伸縮性、耐酸性、電気伝導性等)が開発されたら1000万を超えても納得出来ます

あと2〜30年もしたらカーボンもチタンも製造、加工コストが大幅に下がって誰でも買える価格になり逆に鉄が見直され
熱処理や合金化によって性質を変えられる特性を活かし、画期的な超高強度鋼、超高耐食性鋼が登場するかもしれませんね


Posted by ロードバイク初心者 at May 22, 2013 23:11
ロードバイク初心者さん、こんにちは。コメントありがとうございます。
まあ、さすがにここまでくると、自転車のカタチはしていますが、もちろん実用ではなく宝飾品の世界ということでしょう。
宝石や貴金属で飾り立てられたクルマなども一部にあるようですが、宝飾品を何のカタチにするかという話で、もはや自転車とは言えない範疇でしょうね。
おっしゃるように、性能につけられた価格として、いい値段のものもありますから、そのスペックによっては、高価な自転車も考えられるでしょう。
むしろ、そういう自転車を見てみたいですね。
Posted by cycleroad at May 23, 2013 22:49
 
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