October 02, 2009

反発するか前向きに行くのか

鳩山総理が温暖化ガス25%削減を打ち出しました。


2020年までに1990年比で25%削減するというものです。前の麻生総理が表明したのは、1990年比に換算すると8%であり、3倍以上という野心的な数字です。これについて、国際的には高く評価する声が上がっていますが、国内では産業界などに困惑が広がっています。

温室効果ガス25%削減を表明これを受けてテレビ各局では、国内の反応として大手企業のトップなどへのインタビュー場面を放送していました。目標の実現を疑問視する声や、産業界としてこれ以上の削減努力は厳しいとか、乾いたぞうきんを絞るようなものといった反発も多く聞かれたようです。

企業としての立場からすれば、経営を圧迫する要因には間違いありません。あまり厳しいノルマが課されるのは避けたいというのが本音でしょう。今まで、日本企業がオイルショックの時代から、一生懸命省エネに取り組んできたのも確かです。不満を言いたくなる気持ちもわからないではありません。

ただ、中には鳩山政権に対する反発や、苛立ち、恨み節とも言うべき感情的な意見もあります。充分な国民的議論を踏まえていないとの非難や、このままでは日本で製造現場を維持することは難しい、海外へ出て行くしかない、雇用が失われるだろうといった発言をする経営者まであります。

温室ガス25%削減で家計負担見直しへ今までの自民党だったら、こんなに産業界が嫌がることはしなかったのにという、一種の驚きがあるのかも知れません。いわゆる政官財のもたれ合い構造で来たこれまでであれば、経済成長優先の名のもとに、こんな数字が打ち出されるなんて有り得なかったと言えば、そうなのでしょう。

しかし、民主党政権だって国内経済を考えないはずはありません。また、当然のことながら、日本だけが突出した削減義務を負うことは避けなければなりません。米中をはじめ、すべての主要排出国の参加が前提であり、公平かつ実効性のある国際的な枠組みが構築されることを前提としています。

国際交渉ですから、こうした合意が得られるかはわかりません。ただ、世界中で取り組む課題ですから、もし実現するとなれば、日本の排出規制が厳しいから、途上国へ移転すればいいということにはならないはずです。そんな抜け道を許しては、実効が上がるはずがありません。

規制が経済活動を促進そもそもこの数字は、新興国も参加した枠組みにする為、まず先進国が2020年までに90年比で25%から40%の削減をすべきという、これまでも言われてきた数字です。その下限に過ぎません。新興国も含むすべての主要排出国の参加を促す為には必要最低限の数字と言えるでしょう。

つまり、仮にすべての主要排出国が参加する枠組みが出来て、公平かつ実効性のある国際的な取り組みとしてスタートするならば、当然求められる数字に過ぎません。もっと低く言っておけばよかった、ということにはならないはずです。これまでの国際交渉の流れを見ていれば、おのずと明らかでしょう。

京都議定書では、日本が不利な条件を飲まされた部分があると言われています。それは、国際的な枠組みを構築する過程で、当初積極的に関与して来なかったのが災いしたとされています。その教訓から、国際交渉の主導権を握るために先手を打つのは、必ずしも悪い戦略ではないと思います。

積極関与が日本の国益経済界の中でも、この鳩山首相の表明を評価する声があります。国際的なイニシアチブを取る手法として認めるべきと発言しているトップもいます。環境と経済の両立を目指す必要がありますが、むしろ世界をリードして技術革新を進め、国際競争力を強化すべきとの声もあがっています。

特に製造業にとっては逆境ですが、逆にこれをビジネスチャンスにつなげ、イノベーションを起こすべきと、トップが積極的に発言している企業もあります。温暖化ガス削減は世界的な課題なのですから、国際的に公平性が確保されるなら、文句を言っているより、さっさと切り替えて対応しようというほうが前向きなのは間違いないでしょう。

トップが不満たらたらの企業も、逆に前向きに発言している企業も、今どきの常識として、ふだんは地球環境に対する配慮を前面に出して宣伝広告活動を行っているはずです。少しでも企業イメージをよくしようと、社員が日夜広報活動に励んでいるのに、下手をすると社長の一言で、その努力がぶち壊しになりかねません。

CO2削減アクセル踏む今回のような場面で、トップの発言に本音が見え隠れするのを注意深く見ている人たちもいます。最近では、機関投資家や投資ファンド、個人も含め、企業の環境への姿勢に注目が高まっています。企業の株価や、特に今後は企業の資金調達にまで影響することになると言われています。

その意味でも、真剣に温暖化対策に取り組もうとしていない企業は、今後淘汰されていく可能性があります。厳しい数字と恨みごとを言いたくなる気持ちもわからないではないですが、多くの人がトップの発言に、その企業の将来を注意深く見ていることも忘れるべきではないでしょう。

一般の消費者は、個々の発言にまでは注意していないかも知れませんが、トップの考え方や企業の姿勢は、さまざまなところにも表れるものです。最近はどんな企業でも環境への取り組みをアピールしていますが、その内容に真剣さの度合いが表れることもあります。

温暖化で連携強化例えば、製造業ではありませんが、ある大手流通企業が最近まで掲げていた取り組みに、「お客様にエコ製品をお勧めしています。」というのがありました。特にその会社が各社の製品を厳密に比較評価していたわけではありません。今どきは、どの社も環境対応をうたっていますから、必ずしも大差はないでしょう。

エコを基準に選ぶかどうかは消費者が決めることであり、実際には現場でも、お客が何を求めているかにより勧める製品が変わってくるはずです。あるいは一番利幅の大きいものを勧めていたでしょう。まさに口先だけの取り組みで、中身がありません。こんなことを堂々と環境対策として大きく掲げているセンスが疑われます。

鳩山イニシアチブも提唱ほかには、レジ袋を薄くしたことなどを大きく打ち出していましたが、その会社の扱う商品は、レジ袋で持ち帰るより、ほとんど主力は段ボールで持ち帰るか配送するような商品です。ここまで来ると笑うか呆れるかしかありません。さすがに最近は引っ込めたみたいですが、有名な上場企業が大々的に宣伝すみ取り組みにしてこの有様です。

今までは、本当に環境対策に取り組んでいる会社と、環境対策に熱心を装っている会社は、見ればわかってしまうことも少なくありませんでした。しかし、これからは、単にポーズをとっていればいい、消費者にアピール出来ればなんでもいい、というわけにはいかないはずです。

今後は、企業が口先だけでエコエコと言っているだけでは対応できない時代になっていくと思われます。真剣に取り組んでいない企業が、今までの対応の見直しを迫られるのは当然として、全ての企業に抜本的で実効性のある対策が求められることになっていくのでしょう。

地球温暖化を憂慮し、その抑止が喫緊の課題だと、本当に考えている企業であれば、今回の鳩山首相の表明は、むしろ歓迎すべき一歩なはずです。営利企業の本音の部分でも、今後世界的な枠組みが構築されるならば、新興国の企業にも環境コストの負担が求められ、むしろ公平な競争環境の構築につながる可能性もあります。

よく言われるように、環境技術やノウハウを持つ日本の企業にとっては、ビジネスチャンスが広がることも充分考えられます。オイルショックの時は、逆境をバネに変え、むしろそのことが日本企業の飛躍につながりました。今回も企業には前向きに捉えてもらい、むしろ日本経済が明るくなるような躍進を期待したいものです。


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日本の緊急援助隊がスマトラに入りました。隊員の方はご苦労なことですが、とっくにマスコミは現地から中継しているのですから、どうせなら、もっと早く派遣を決定出来ないものなのでしょうか。

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この記事へのコメント
政治からめが放せません。
先日はトヨタの代表エコカー「プリウス」に
リコールがあったと聞きました。
これも・・・。
Posted by みみ〜 at October 06, 2009 10:00
25%削減するには企業だけでなく、やはり国民一人一人が意識しなければ達成できないと思っています。企業が努力してもそれには限度があり、私達の自然環境に対する配慮がなければ、エコ製品も使えば少なからずCO2を排出しますし。意識改革が起こらない限り25%削減は厳しいと思っています。
Posted by moto at October 06, 2009 17:16
みみ〜さん、こんにちは。コメントありがとうございます。
本格的な政権交代という憲政史上歴史的な出来事が起きたということで、おっしゃるように政治に関する関心は高まっていますね。
エコカー割引でハイブリッドカーが急激に売り上げを伸ばしたことの影響なのでしょうか。
Posted by cycleroad at October 07, 2009 22:53
motoさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
確かに、企業部門だけでなく、家庭やオフィスなどでの削減も必要ですね。比較的努力がなされている企業部門に比べ、家庭部門はむしろ増加が著しいと言われています。
家庭部門で一人一人の努力に頼らざるを得ない部分については、おっしゃる通り、意識が大きく変わらなければならないでしょう。そのあたりを促す仕組みも考えていく必要がありそうですね。
Posted by cycleroad at October 07, 2009 23:01
自動車や飛行機を減らさないとゲテモノ化もピークも根本的に乗り越えることはできないような気がします。
今、自動車に頼りっきりの輸送も自転車でかなりなことができること、あらためて確認しました。
http://www.lowtechmagazine.com/2009/10/get-rid-of-cars-ride-a-bicycle.html#more

http://www.longjohn.org/galerie/galerie_en.html
こういうチャリが広がることで、本物の骨太社会が産まれるんじゃないかと思います。運動不足も解消され、大気の汚染も解消され、アブラの消費も減る。しかも経済効果もあり。そう言う意味では自転車はこれからの社会が向かう方向を指し示すシンボルではないか。そんな気がますますします。
Posted by rita at October 30, 2009 17:58
ritaさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
面白いサイトのご紹介、ありがとうございます。自転車でかなりのものが運べるという点については、全くもって同感です。
私も、荷物運搬に関する記事は、これまでにもいろいろ取り上げていますので、よろしければ下のURLを見てみてください。ますますその意を強くされるものがあるかも知れません。
http://blog.cycleroad.com/archives/51527647.html
http://blog.cycleroad.com/archives/51342429.html
http://blog.cycleroad.com/archives/50637299.html
http://blog.cycleroad.com/archives/51110755.html
http://blog.cycleroad.com/archives/51345920.html
http://blog.cycleroad.com/archives/50847536.html

自転車が、これからの社会が向かう方向を指し示す象徴的存在という点については、私もかねてからそう感じてきました。
運動不足解消だけでなく、実は医療費の節減にも貢献し、平均余命を伸ばすという意味でも、国民の福祉に大きく貢献する可能性があると思います。
日本では、たかが自転車と見下されていますが、世界では、その意義が、もっと高く評価されているような気がします。
Posted by cycleroad at October 31, 2009 22:57
やっぱり、これまでにもたくさん取り上げていたんですね。勉強不足でした。
移動の手段だけではなく、輸送の手段にもなりうるという点、そして自転車が裕福社会のかかえる様々な病の解決になるという点、まったく同感です。
さて、うちはというと近隣の薪輸送の手段としてラマの導入を検討し、いろいろ見に行きましたがどうもぴったりとはまりそうもなく、動物ではロバが再び俎上に上る一方で、自転車/人力輸送を考えるこのごろです。
Posted by rita at November 01, 2009 10:05
ritaさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
いえいえ、勉強不足なんて。ただ、一般的には、あまり知られていないタイプの自転車もありますね。特に日本では自転車と言えば、ほとんどママチャリ一色ですから、自転車の積載能力について、かなり過小評価されているのは間違いないと思います。
最近は、宅配便でも自転車とトレイラーで荷物を運んでいたりしますね。現代は、生活の身近なところにまで、いろいろな形で動力が入り込み、必要以上のパワーやスピードのためにエネルギーが使われていますが、人力でも十分な部分は多い気がします。
Posted by cycleroad at November 01, 2009 23:47
 
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