埼玉から愛知まで走ると、およそ300キロあるそうです。
その300キロの行程を、盗んだ自転車で走行していた犯人が捕まりました。
盗んだ自転車で250キロ、実家の豊橋目指したが…
さいたま市で自転車を盗んだとして、静岡県警磐田署は23日、住所不定、無職の男(33)を窃盗容疑で緊急逮捕した。男は約300キロ離れた愛知県豊橋市の実家に向かっていたが、約250キロ走った磐田市で逮捕された。
発表によると、男は今月20日夜、さいたま市桜区のビデオ店前にとめてあった同区の女子大学生(18)の自転車(約1万円)を盗んだ疑い。同署によると、男はそのまま自転車に乗って東京都内に入ると、西に向かって国道1号を走行。神奈川県を経由して静岡県に入り、23日午後2時頃、JR磐田駅近くの路上で、パトロール中の磐田署員に職務質問を受け、事件が発覚した。
男は三重県や静岡県で土木作業員やパチンコ店の店員などとして働いていたが、人付き合いがうまくいかないことなどで長続きしなかった。仕事を探して各地を転々とするなかで、さいたま市に着いた。調べに対し、男は「親元に帰って人生をやり直そうと考えたが、帰る金がなかった」と供述しているという。男は公園のベンチなどで寝泊まりし、逮捕時の所持金は35円だった。(2009年10月25日 読売新聞)
窃盗が責められるべきことは疑う余地がありませんし、犯人の肩を持つつもりもありませんが、事情を聴くと、ちょっと気の毒な気がしないでもありません。ただ、せっかく地元で心機一転やり直そうとしたのに、自転車を盗んで帰るという判断が誤りであり、軽率の誹りは免れないでしょう。
お金をかけずに埼玉から愛知まで移動するなら、合法的かつ現実的な手段としてヒッチハイクなんかも考えられます。しかし、今どきヒッチハイクも簡単ではないでしょうし、巷にあふれる自転車を盗んだほうがラクと考えたのでしょうか。体力的には、ずっと大変だとは思いますが..。
盗んだ自転車で何百キロと走った末に捕まるというニュースは、時々目にします。何も最近に限った話ではなく、以前から起きています。おそらく報道されないケースも多いでしょうし、検挙される率から考えても、自転車を盗んで遠くへ移動しようとする人は、かなりの数に上るのかも知れません。
でも、例え記事にあるように一万円相当の自転車だったとしても、窃盗は犯罪です。盗まれた人は帰りの足を奪われて難儀したかも知れないですし、犯行は許されるものではありません。ただ一方で、持ち主のいない放置自転車が街にあふれ、撤去されても、所有者が引き取りに現れずに処分される自転車は年間膨大な数に上っています。
一部は途上国に送られたり、再利用されたりするものの、その割合は僅かであり、大部分は廃棄されます。しかも廃棄には莫大な経費がかかっています。どうせなら廃棄される自転車のごく一部でも、各地の役場などにプールしておいて、本当に必要な人にのみ、無償で譲渡するか貸与することは出来ないものかと思ってしまいます。
しかし、現実には窃盗として検挙され、犯罪として裁かれる人が後を絶ちません。犯人は軽い気持ちで盗んだのかも知れませんが、窃盗の前科は、せっかくの再起の障害にならないとも限りません。自転車盗は青少年の非行の入口になるケースも多いと言いますし、犯罪の増加はいろいろな面で社会の損失です。
自転車盗は、もちろん犯人が悪いに決まっていますが、仮に犯罪を助長するような状況があるとしたら、その部分は改善しなければなりません。各種の調査でも、自転車に無施錠の人の割合がかなり高いと言います。今回の事件はどうだったか知りませんが、自転車利用者は無施錠などで犯罪の発生を助長しないようにすべきでしょう。
仮に、犯罪として検挙されなくても、盗まれてどこかに乗り捨てられれば、放置自転車を増やすことになります。今どきママチャリは安いので、本人は使い捨て感覚かも知れませんが、放置自転車の撤去、移動、廃棄は莫大な行政経費につながっています。結局は市民税などとして自らの負担になるのも確かです。
一方、施錠してあるのを盗む確信犯もいます。何十万円という単位のスポーツバイクに乗っている人も多いでしょうから、洒落になりません。最近はパーツに分解してネットオークションなどで売りさばくなど、換金の方法が増えているので、価格の高い自転車を選んで盗む犯行も増えているようです。
当然ママチャリのような鍵や、タイヤが回転しないように施錠するだけでは無意味なので、ワイヤー錠などでガードレールや電信柱など固定物と連結することになります。それも細いものでは簡単に切断されてしまうので、ある程度の太さのものを使っている人も多いと思います。
太いワイヤー錠はそこそこ重量がありますし、持ち歩くのにも不便なのですが、それでも切断されて盗まれる場合があるのが悩ましいところです。切断されて盗まれないために、U字型のロックを使っている人もあるでしょう。こちらはワイヤー錠より切断は困難です。
ただし、自転車のフレームと固定物を、直接U字型ロックで施錠するには、ある程度の大きさが必要となります。素材にもよりますが重くなりますし、携行するには、かさばるのも難点です。大きさ・重さと盗まれにくさとのジレンマを抱えているサイクリストは多いのではないでしょうか。
その点、こちらの自転車、“
Freelock”は良く出来ています。U字ロックの代わりに、自転車のフレームそのものをロックにしてしまおうという発想です。確かに、U字ロックを持ち歩かなくても、自転車のフレームを利用すれば、簡単には切断されないロックが出来ます。
このフレーム、シートチューブがない形なので、シートポストを上下させることで、ダウンチューブとトップチューブとの三角形の間に、柵などの固定物を通してロックすることが出来るわけです。電信柱のような直立する固定物に対しては、フレームを水平に回転させることで対応するというアィディアです。
実は、自転車のフレームを使ってロックにしようというアィディアは、これまでにもありました。トップチューブの一部を可動式にし、やはりフレームの三角形の間に固定物を通すものなども見たことがあります。でも“Freelock”は水平方向だけでなく、電柱のような垂直に立つ固定物へも対応出来る点が優れています。
これなら重くてかさばるロックは不要になりますし、見た目もスタイリッシュです。強度があって切断されにくい金属素材でフレームを構成する必要がありますが、盗難防止性能を重視するなら、特にシティサイクルには、こんな形もアリかも知れません。
今のママチャリの鍵は貧弱ですし、実は施錠してあっても簡単に開けることが出来るという話も聞いたことがあります。もう少し破られにくいロックの普及が必要でしょう。無施錠を無くすと共に、簡単には盗めないようなロックを普及させることで、ふとしたはずみで自転車盗を起こしてしまう人を減らしたいものです。
首都圏でJRが軒並み止まったのも記憶に新しいところですが、また、カゼ台風が来ているようです。明日は早起きしないと..。
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嘘つきは泥棒を始めさせない
犯人に盗む気をなくさせるというのも、有効な防止策かも知れない。
最強ロックの意外な落とし穴
より安全性が高いと思われていたU字ロックが、意外に脆い場合も。
Posted by cycleroad at 23:30│
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こんばんは。本当、最近時々、長距離を走った挙句逮捕されてしまった窃盗犯のニュースを良く耳にします。しかし、職質した警察官のほうも流石ですね。午後二時ですと、深夜ほど疑いにくいと思われますし、余程怪しかったのか、経験がモノをいったのでしょうか。
もちろん彼らも犯罪を犯してしまった事は事実ですが、額でいうと小さく、目的も「乗り捨て」で場当たり的犯行ですよね。そういう意味で、ロードやクロスなどのスポーツ車窃盗とはレベルが違うと思いますし、そっちの専門的で悪質な組織を壊滅するまで追って欲しいと思うのであります。
freelockは中々良さそうですね。デザインには再考の余地がありそうですが…。