自転車の交通違反なんて、と軽く考えている人も多いに違いありません。
最近増えているクルマとの事故では、自転車側の交通違反に原因がある場合も少なくないと言います。自転車同士の事故も増えているそうです。自転車同士の場合は、警察に届けないケースも多いと思われるので、その実態は必ずしも明らかではありませんが、ルールを無視したことで事故になるケースも増えているのでしょう。
もちろん自転車であっても、道路交通法違反は罰せられます。自転車には免許制度がなく、クルマでの青切符にあたる反則金制度がないため、いきなり法律違反の赤切符になります。ただ、最近自転車に赤切符が切られているとは言え、全体から見れば僅かな件数に過ぎません。
自転車での違反なんて、みんなやっているし、警察も全部はとても取り締まれない、注意はされても捕まらないだろうとタカをくくっている人も多いことでしょう。無灯火や二人乗りなどが見つかれば警察官に注意されますが、その場で素直に従えば許されることが多いのも間違いありません。
つまり、知っていて違反している確信犯も多いわけですが、これが「逆走」となると、少し趣を異にしています。自転車の逆走、すなわち車道の右側を走ることですが、これを違反と認識している人は、無灯火や二人乗りと比べると、かなり少ないのではないかと思います。
クルマの免許を持っている人なら道路交通法について習いますから、当然知っているかと思えば、そうとも限らないようです。教則本には書いてありますが、自転車が軽車両でクルマの仲間であることや、当然左側通行を遵守しなければいけないなんて、免許を取ったらすっかり忘れている人も多いようです。
逆走に違反の意識が薄いのには、いろいろ理由が考えられます。日本では、自転車の歩道走行が当たり前になっている結果、自転車が軽車両であり車道走行が原則なのを、多くの人が知りません。歩道は両方向に走れるので、混雑を避ける時など、左右かまわず車道に降りて走行し、違反という意識が希薄になっているのでしょう。
おそらく交差点で二段階右折などしないでしょうから、右折は信号の手前で渡り、右側通行になってしまうはずです。左右を考えないのならば、そのほうが自然です。左折すれば戻ります。ずっと右側通行していれば、自分が逆走していることに気づき、走りにくさに気づくかも知れませんが、そうではないので気づかないのだと思われます。
もちろん気づかないとは言え、逆走が危険でないわけではありません。車道の左側を正しく通行しているサイクリストにとっては、きわめて危険で厄介ですし、腹の立つ存在と感じている人も多いのではないでしょうか。私も、おかげで何度か危険な目にあったことがあります。
左カーブの見通しの悪い道路や曲がり角などなら、自転車同士で出会い頭に衝突する危険があります。クルマが駐車場などから通りに出る場合、右側には注意しますが、左から車両が来るとは思っていません。T字路などでも同じで、特に出る道路が中央分離帯のある道路だと、右しか気にしませんから、左から来る自転車は危険です。
直線であっても、ただでさえ狭い空間で他の自転車やオートバイなどとすれ違うことになるので、危険が増します。また逆走すると、クルマとの相対速度が大幅に速くなります。何かの拍子に車道側にふくらむなどした場合、クルマも自転車も回避するのが、より困難になって危険が増すのは明らかです。
中には、「後ろからクルマが来るのは怖いし、前からクルマが見えた方が安心できるので、どちらかと言うと右側を通るほうが好き。」なんて人もいます。これは道交法を知らないばかりか、ルールを無視して自分勝手な都合で逆走しているわけで、周囲にとっては、迷惑もいいところです。
当たり前のことですが、私はもちろん左側しか通りません。オートバイに乗っていた時期もあるからか、車道を右側通行することに、強烈な違和感を感じます。何の気なしに逆走するという感覚が信じられません。ただ、友人などに聞いてみると違和感など無く、あまり左右を考えずに乗っているという人は少なくないようです。
長年、ママチャリで歩道走行してきた結果、歩行者の延長のような感覚の人が多いのは間違いないでしょう。言われてみれば、自転車は軽車両だろうし、軽車両も左側通行と習った気がする、といった程度の認識の人も多いのではないでしょうか。街でも、何ら悪びれずに逆走している人は少なくありません。
もちろん確信犯もいると思います。知っていても面倒だからなどの理由で逆走する人もあるでしょう。正しく通行している人が来ると、あわてて歩道に上がる人もいます。中には、注意したら逆ギレされたという話も聞いたことがあります。知っているから逆ギレする人もあるのでしょう。
無灯火や二人乗りなどの場合、歩行者にとっても脅威に感じます。暗闇から無灯火の自転車が飛び出してくれば危ないと思いますし、二人乗りでフラフラしていてブレーキも効きにくく、ヒヤリとするような場面があるでしょう。それに比べて、逆走が危ないと感じるのは、車道を正しく走行しているサイクリストだけかも知れません。
クルマのドライバーも違反だと知っている人は知っているでしょうが、普通に見るので、あまり意識していない人も多いと思います。つまり、逆走が危険と感じている人が少ないため、例えば安全を呼び掛けるポスターなどでも、無灯火や二人乗り禁止はよく見ますが、右側通行禁止というのは少ないと思います。
二人乗りや無灯火などと違って、警察官が注意しているのも見たことがありません。警察官も自らは自転車で歩道を通行しているため、車道の逆走の危険性をあまり認識していないのではないでしょうか。結果として、逆走を咎められるような機会が少なく、逆走が違反だと意識していない人が多いのではないかという気がします。
最近事故が増えているからか、自転車の交通安全を呼び掛けたり、ルールを啓発するような文章を見る機会は増えています。それはポスターだったり、ネット上のサイトだったり、新聞記事やテレビの番組や広告だったりします。「自転車の無灯火は交通違反で、5万円以下の罰金です。」といった内容が書かれています。
ちなみに、二人乗り、並走、歩道での歩行者優先違反などは「2万円以下の罰金又は科料」、無灯火は「5万円以下」です。ところが逆走は、信号無視や一時不停止などと同じく、「3か月以下の懲役又は5万円以下の罰金」と、懲役もありうる、より重い罰則です。
ついでに、傘をさしたり、携帯電話の使用も「5万円以下の罰金」、歩道走行が許可されていない場所で歩道走行すると「3か月以下の懲役又は5万円以下の罰金」です。逆走や信号無視より重いのは、クルマなどと一緒で飲酒運転の場合で、5年以下の懲役又は100万円以下の罰金となっています。
最近、自転車が絡む事故が増えていて、こうした注意を呼びかけるものは多いのですが、その中にも逆走が抜けている場合が少なくありません。無灯火、二人乗りなどは必ず注意されていますが、逆走はマイナーなのか、抜けているのをよく見かけます。
逆走は、非常に危険で迷惑な行為にもかかわらず、比較的軽視されているように感じているサイクリストも多いのではないでしょうか。そこで、他の違反と違って歩行者や警察が危険と感じておらず、その啓発が進まないのであれば、サイクリスト自ら行動するしかないと考えた人たちがいます。
NPO法人の
自転車活用推進研究会です。その名も「チーム・キープレフト」、自転車は車道の左を走ろうと呼びかけています。「自転車を愛する人からマナー向上をムーブメントに。」というコンセプトです。自転車好きの著名人をまきこんで、自転車の正しい左側通行をアピールする運動を広く呼びかけていくとしています。
自転車マナーアップのため、オリジナルデザインのTシャツを製作し、サイクルモードの会場などでも販売するそうです。自活研バージョンのTシャツは、胸の部分に「自転車は左側走行だよ!」と書いてあり、逆走してきた相手に向かって胸を張り、アピールするように出来ています。なんともユニークです。
背中側には、「自転車も自動車の仲間です。」と小さく書いてあり、信号待ちしているクルマのドライバーに対して、自転車も軽車両として、車道を走る一員であるとのメッセージを伝えようとしています。このTシャツを着るなど、一人ひとりができることを、という自活研からの呼びかけです。
ロードレースの選手から、自転車好き芸人、自転車好き自民党総裁まで、多彩なメンバーもTシャツをデザインしています。このオリジナルTシャツのキャンペーンのキャッチフレーズは、「マナーを着なくちゃ、自転車はのれない。」というものです。わかりやすくストレートなコピーです。
このコンセプトには共感できます。もちろん無灯火や二人乗りも危険ですが、逆走も危険で迷惑で腹立たしいと感じていた身にとっては、わが意を得たりという感じがします。世の中的には、いまいち批難の度合いの低い逆走ですが、サイクリストは同じように考えている人も多いということに意を強くします。
確かに、このTシャツにどれほどの効果があるかと言われれば、首を傾げる部分がないとは言いません。果たして何人の人が着るか、着ていても逆走する人の目に止まるかという懸念もあります。Tシャツを買った人でも毎日は着れませんし、やがて意欲が薄れることもあるでしょう。
とは言え、こうした発信をすることには意義があると思います。逆走の危険やルール遵守の必要性を痛切に感じているサイクリストこそ、こうした取り組みに賛同し、マナー向上のムーブメントを起こす役割を担わなければならないというのは、その通りでしょう。
実際にTシャツを着てアピールする効果はともかくとしても、著名人が呼びかけることで、多くの人に注目されるかも知れません。賛同するサイクリストが増えれば、徐々に広がりを見せていく可能性もあります。こうしてブログに取り上げる人もいるでしょうし、それを読んで興味を持つ人もいるかも知れません。
マスコミが注目する可能性もありますし、ネットや口コミで広がるかも知れません。逆走が違反で危険ということが、世間に広く知られるきっかけにならないとも限らないわけです。サイクリスト一人ひとりの力には限界がありますが、こうしたムーブメントが世の中に広がっていけば、警察などの関係機関だって動くかも知れません。
警察は、事故防止の観点から、例えば道路の右側、つまり逆走する人の目につく位置に立て看板などを立て、逆走禁止をもっと呼び掛けたらどうだろうと思います。ポスターやテレビコマーシャルなどで、集中的に訴えてもいいでしょう。今は逆走の扱いは小さいですが、こうした対策が進むきっかけになる可能性もあります。
自転車の左側通行がルールと知らない人が多いとするならば、多くの人に知らせることで、状況が改善する可能性があります。逆走は危険で、自分だけが対向しているから走りにくいと気づけば、左側通行するようになる人も増えるに違いありません。何より事故を減らすためにも、広く知らせていきたいものです。
いや、三角波とは言え、フェリーがあんなに傾いてしまうとは驚きですね。波を受けて簡単に切れてしまう固定方法もまずい気はしますガ..。
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こんばんは。私もサイクルロードさんと同じく、毎日危険を感じながら通勤しております。特に憂慮しているのが、片側一車線道路での逆走です。この場合、車も前後にいて回避のしようがないのです。一応、警笛などで注意するようにはしていますが、車用のホーンと違い、すれ違い様ではそれ程効果もありません。また、何が悪いと逆切れされる事もしばしばです。ツーキニストの疋田さんのコラムではありませんが、一度思い切りぶつかってやろうかと思ったりもしますが、どうやっても過失は発生しますし、自分の怪我や大切なロードを破損させる訳にもいきませんから、対応には苦慮しています。
個人的には、車道での逆走というのは、ここ数年、マスコミや警察等が「軽車両は車道の左側を走行」というのをPRしだしてから、増えたように感じます。このルールのうち、「軽車両は車道」の部分だけを覚えている人が多いのではないでしょうか。
自活研の取り組みは大変良いものですね。サイクルモードではとりあえずブースをのぞいてみようと思っています。ただ、Tシャツですと活用できるのは少なくとも春先以降ですし、PRできるのも職場や友人に限定され、デザインも好みが分かれるように思いますね。反射素材でタスキなどを作成してはどうかと思うのですが…。
特に憂慮しているのが、片側一車線道路での逆走です。この場合、車も前後にいて回避のしようがないのです。←私、当たって鎖骨骨折しました。相手は小学2年生ですが、親の責任で示談しています。150万円ぐらいの新しいロードバイクを補償してもらう予定です。ですが、トラウマが残ってすごく怖いです。先日も逆走してくるオバハンを怒鳴りつけてしまい、逆切れされました。すごくイヤな気持ちです。また、テレビで自転車の違反取締の実態を放映していて、違反の多さにあきれていました。これが日本の実情ですよね。この対策としてやはり警察できっちり取り締まりしないとダメだと思います。自動車や自動2輪と同様に取り締まれば徐々に違反は減っていくと思います。