December 01, 2009

おもわず欲しくなるデザイン

今日から師走、街では歳末商戦が始まっています。


企業にとっては年末の書き入れ時ですが、世界的な金融危機以降、消費が冷え込んでいるところへ、デフレと円高が進行し、その業績は厳しいものとなっているようです。これから年末にかけて円高還元セールを打ち出すところも増えると見られますが、さらなるデフレを呼ぶことが懸念されています。

ただでさえモノが売れず、価格が下がる傾向は顕著です。千円を切るジーンズや200円台の弁当なども話題になりましたが、街に出ると、他にもさまざまな商品に驚くような激安価格が広がっています。家電などの耐久消費財も大幅に値段を下げるものが多くなっています。

分けるとすれば耐久消費財である自転車も例外ではありません。日本の自転車の大部分を占めるママチャリは、一万円をきるのが当たり前のようになっています。大型スーパーや量販店、ホームセンターなどのママチャリ売り場では、特売でなくても数千円の自転車が売られているのが、もはや珍しいことではないようです。

スポーツバイクの場合は趣味性も高く、機能やブランドで選ばれることも多いので、必ずしも価格競争になるとは限りません。しかし、ママチャリの場合は汎用品として、機能では他との差別化がしにくいので、どうしても安売りにならざるを得ないのでしょう。

自転車に限りませんが、モノを売るためにメーカーは、マーケティングや営業力、そして製品そのものの商品力を高めるために工夫をこらすことになります。素材やスペックなどの機能で勝負するか、価格競争力をつけるか、あるいはデザインを前面に打ち出す手もあります。

今の自転車のデザインが究極と言うつもりはありませんが、ある程度、成熟したものであるのは間違いないでしょう。そのため、自転車の場合なかなかデザインで差別化するのは難しく、機能か価格に偏りがちです。それでも、デザインを追求する人たちはいます。

Another Inner City BikeAnother Inner City Bike

デザインと言うと、ネット上ではデザイナーやデザイン事務所が新しいコンセプトを提案するものが目をひきます。これまでにもいろいろ取り上げてきましたが、例えばこの“Another Inner City Bike”などはその典型的な例でしょう。オーソドックスなダイヤモンドフレームではなく、直線が際立つ斬新なデザインです。

ペダルは後輪に直付けで、チェーンもディレイラーもないのが目をひきます。いらないものを削ぎ落とした、究極の都市での移動用バイクというコンセプトのようです。シートポストもなくて、サドルはトップチューブについています。都市の繁華街のような場所を移動するなら、スピードが出る必要はないということのようです。

確かに目をひく斬新なデザインには違いありません。しかし、ふだん自転車に乗らない人がデザインする典型で、ナンセンスなデザインと言わざるを得ません。普通に自転車に乗る人なら、誰もが失笑するのではないでしょうか。その意味で面白いと言えば面白いのですが、実用的でないのは明らかです。

Another Inner City BikeAnother Inner City Bike

百歩譲って、一輪車か子供用の三輪車と同じ、歩くような遅いスピードで移動するのでも良しとしましょう。しかし、このペダルの位置とクランクでは、ペダルを回すだけでも困難です。おまけにシートポストもないので、ペダルまでの長さも調節できません。人がまたがる写真を見ただけで、一目瞭然です。

こうしたデザインは、実際の商品設計ではなく、あくまでコンセプトモデルであり、いかに斬新なデザインを生み出せるかをアピールするための広告塔という位置づけなのでしょう。世の中の常識を打ち破る発想力があって、いかに新進気鋭のデザイン事務所であるか、ウェブ上で注目をひくのが目的としか考えられません。

だとするならば、作品の実用性云々を言うのも野暮ということになりそうです。ネット上でも、中には真に評価に値する新しいコンセプトや先進的なデザインもあるのですが、最初から生産するつもりのない(出来ない)アイキャッチ的なものも多く、玉石混交と言えます。むしろ、新しい自転車のデザインを考案する難しさがよくわかります。

FIELD AND STREAM

それだけ自転車は成熟したデザイン、合理的な形ということになると思いますが、普通のダイヤモンドフレームを踏襲した上で、全体的なフレームデザインではなく、細かい部分でデザイン性やセンス、コンセプトをアピールする現実的な路線もあります。ファッション性や個性を強調して、オシャレさをアピールするものも見かけます。

FIELD AND STREAM

自転車とお揃いのファッションに身を包むことについて、どう感じるかは人それぞれですが、ペットと同じ格好をするのが嬉しい人もいるわけですから、こういうのもアリでしょう。自転車も「着せ替え」ることで、日によって違った印象を持たせることが出来るという風にみれば、なるほどファッショナブルかも知れません。

Buddha to Buddha

クルマから洋服やバッグ、アクセサリーまで、そのブランドイメージを反映させたデザイン自転車というのは、古今東西少なくありません。こちらの“Studio Raar”による“Buddha to Buddha”というブランドのフィクシー(ピストバイク)もその一つです。銀メッキと革を使いつつ、全体はシンプルな印象です。

republic bike

色使いというのも大事な要素です。“Republic bike”は、フレームに派手な原色を選んだり、前輪と後輪を違う色で注文をすることも出来ます。シートやグリップ、チェーンに至るまで、細かいパーツの色を自分で好きな色に指定して購入することが出来る自転車というわけです。

Republic bikeRepublic bike

ここに挙げたのはごく一例ですが、やはり、いたずらに奇をてらうのではなく、自転車のフレームや全体のシンプルな機能美を損なわない、オーソドックスなものが少なくない気がします。その中で、いかにファッション性をアピールし、他と差別化した個性、オリジナリティを際立たせられるかという点がポイントと言えそうです。

自転車のパーツについても、全体のシルエットを邪魔しないオーソドックスなデザインに好感が持てるという人は少なくないでしょう。自転車に同化して、そのままでは目立たないくらいのものが、どの自転車にもマッチして、かえってデザイン性が高いと言えるのではないでしょうか。

Republic bikeRepublic bike

こちらのライト、何の変哲もない懐中電灯型の自転車用ライトですが、なんとインフレーター、空気入れ用のポンプも兼ねています。シンプルでなるべく風の抵抗を増やさず、さりげないのに荷物を減らすことにも役立っています。ユニークでスタイリッシュな製品です。

夜間の安全のためには、前方を照らすライトだけでなく、後ろにアピールするテールライトも欲しいところです。しかし、あまり小さいと周囲からよく見えず、視認性の向上に貢献しません。逆に大きいものは邪魔ですし、荷物になります。デザイン的にも好ましくないでしょう。

Fibre FlareFibre Flare

そこへ行くと、この“Fibre Flare”のポイントは高いと思います。点ではなく線にすることで、視認性をあげつつ、昼間に装着したままでもデザインを損ないません。後方だけでなく、横からの視認性アップのために使うことも出来ます。LEDなので消費電力も小さく、各色選べて、身体にも装着できます。

Fibre FlareFibre Flare



こうして見てくると、やはり商品の選択において、デザインは重要な位置を占めていることがわかります。自転車を買うのに、デザイン性を最優先にする人も実際に少なくありません。パーツや用具などにしても、秀逸なデザインのものを見つけると、既に持っていても欲しくなる人は多いと思います。

世の中不景気で、消費者が財布のヒモを固くしているのは間違いありません。ただ、買ってもいいが、今ひとつ買いたくなるようなものがないという人も少なくないはずです。企業やデザイナーの人には、ぜひ消費者が欲しくなるような製品をプロデュースしてもらい、デフレを止め、景気を浮揚させるためにも頑張ってほしいものです。


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いろいろと安くなるのは嬉しい半面、景気や雇用を考えると手放しでは喜べませんね。2次補正も大幅に増えそうです。

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この記事へのコメント
学生時代から大型バイクを所有しておりますが
自転車に関して新参者の立場から思います事は

自転車に関する個々のパーツや素材の進化には
目を見張るものがありますが・・・こと安全面において
能動的安全策にはそれなりの進歩が見受けられますが
受動的安全策には未だ開発の余地が多々ありますね。

因みに受動的というのはいかにして事故を回避させるべきかが
能動的安全策であるのに対し生命の危機や危険な事態に直面した時に
いかにして身の安全を図るかが受動的安全策ということで

バイクウェアには脊髄パッド、ニーパッド、エルボーパッド等の
保護アイテムが装備されているのが常識なのですがサイクルウェアに関し
私が知る限りにおいては皆無です。自転車とオートバイでは速度領域が違う
という御意見もあるかとは思いますが体を保護するウェアのスペックを
比較すればオートバイで時速50kmで転倒した場合と自転車で時速25kmで
転倒した場合の損傷度は等しいのではと実証の無い個人的印象として
捉えたうえでの事です。

確かに自転車の場合はオートバイと比較し身体各部の動きが要求
されますので過剰な保護アイテムは本末転倒ではありますが
数々のオートバイ事故を目の当たりにした対場として
脊髄だけは何があろうとも保護すべき危険部位?だと断言します。

低速域であろうと脊髄を損傷すればほぼ間違いなく車椅子生活になります。
もし脊髄パッドが装備されたウェアが出たなら即効購入します。
Posted by ホリゾン樽 at December 03, 2009 16:35
自転車の安売り競争はすごいですね・・・
新三郷のショッピングセンターで折りたたみが5千円で売ってました・・・(すぐ壊れそう)
最近は一部のロードバイクメーカー同士で「カーボンを使ってるのに、この値段!」という安売り競争になってしまってるので安全性とか大丈夫なのか・・・?とロード歴一か月の僕でも心配になってきます。

空気入れライトいいですね
ロードバイク屋さんの中にはライトはカッコ悪いからつけないという人もいますがこれならそういう人でも受け入れてくれそう。
Posted by 職人気取り at December 04, 2009 17:39
ホリゾン樽さん、こんにちは。コメントありがとうございます。
あまり一般的、メジャーとは言えませんが、MTBのダウンヒルなどの競技向けにはプロテクターやインナー、パッドが使われたウェアなどもあります。剣道かホッケー用の防具かと思うようなゴツいプロテクターもあります。脊椎プロテクターや脊髄を守るバックガードなども市販されています。
ロード向けのパックガード付きのサイクルウェアは、確かに見ないですが、こうしたものをインナーとして利用する手はあるでしょう。
おっしゃる通り、身体の動きもありますし、なるべく風の抵抗をなくし、重量を少なくしたいという考えが主流で、サイクルジャージとしては商品化されていないのでしょう。売れないということもあると思います。
一般人が日常で使うウェアであれば、もう少し安全面にシフトしたものがあってもいいとは思います。ただ、他のスポーツと同じで、ロードレースのトップ選手の影響などもあって、ファッション的な要素からも、好まれないのでしょう。
必ずしもサイクルジャージを着る必要はないわけで、個人個人で工夫している人はいるかも知れませんね。
Posted by cycleroad at December 04, 2009 23:22
職人気取りさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
私もふだんは行かないのですが、先日、大型のホームセンターのママチャリ売り場をのぞいてみたら、安売りが益々進行しているのにおどろきました。
以前はカーボンと言えば、ある程度の相場がありましたが、最近は低価格のカーボン車など、カーボンと言っても、いろいろありますからね。
どこが違って、なんで安いのか、デメリットは、など知識がある人ならいいですが、そのあたりを知らないと戸惑う場合も多いでしょう。
空気入れライト、私もそう思います。奇をてらわず、さりげなくシンプル、オーソドックスなデザインがいいですね。
Posted by cycleroad at December 04, 2009 23:54
 
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