ビジネスに自転車を活用する
最近、不動産業のテレビCMが増えたように感じるのは気のせいでしょうか。
住宅メーカーや建設会社、デベロッパーなどは別にして、不動産の仲介をするような、いわゆる不動産屋さんのCMを、以前と比べてよく目にするようになった気がします。その数も1社や2社ではないと思いますが、テレビを見ていて、ふとそう感じただけなので、本当のところはどうかわかりません。
たまたま、不動産仲介業者が新サービスの周知をはかるキャンペーン中だったのかも知れませんし、あるいは例年、不動産屋さんの書き入れ時でCMが強化される時期なのかも知れません。私はあまりテレビを見るほうではないので、単なる偶然だった可能性もあります。
転勤や入学、就職といった春からの新生活のため、毎年3月頃は引っ越しが多くなるのは間違いないでしょう。準備などの余裕を考えれば、今くらいの時期から物件探しを始める人が増えても不思議ではありません。仲介業者としては、ハイシーズンを前に名前を覚えてもらうため、年末あたりからCMを増やしているのかも知れません。
私は業界に詳しいわけではありませんが、自社の商品を売る住宅メーカーやデベロッパーと違い、物件を仲介するだけの仲介業者の場合、他との差別化を図るのは難しそうです。仲介手数料の料率を下げたり、物件情報の豊富さをアピールしたり、知名度を上げるなど、どこも似たような戦略をとらざるを得ないのでしょう。
そこへいくと、コロラド州のボルダーにある不動産屋さんはユニークです。その名も、“
Pedal to Properties”、つまり自転車で物件を見に行くということを前面に打ち出しています。これがアメリカでなかったとしても、不動産屋が「自転車で物件へ。」とは意外な感じがするのは否めないでしょう。
アメリカと日本では商習慣や交通事情なども違いますが、普通だったらクルマで送迎すると思います。お客様をご案内し、物件を見てもらうわけですから当然です。それをお客に、「自分の足でペダルをこいで、物件を見に行ってくれ」というのですから、思い切った方法です。
何も説明がなければ、なんと不親切で横柄なと思われても仕方ないでしょう。しかし、そうではありません。自転車で行くことによって、近所の環境を確かめたり、街の様子をじかに確認することが出来ます。買い手や借り手にとって重要な情報を把握してもらう手段というわけです。
クルマで送迎されてしまえば、車窓と物件の周囲の環境しか確認できません。しかし、自転車でまわれば、もっと広範囲に街の様子や環境が把握できます。クルマで素早く送ってもらうのではなく、実際に自分の足で向かえば起伏も実感しますし、地図上でみる距離より意外に遠いとか、感じる距離感も違ってくるかも知れません。
途中にも、クルマでは得られない情報は多いはずです。クルマの中からでは感じないこと、例えば、空気がおいしいとか、意外に風通しがいいとか、子供の声が聞こえるとか、ゴミの出し方や掃除が行き届いているとか、住人の感じがいいなんてことまで感じられるかも知れません。居住する上で重要な情報も少なくないでしょう。
このあたり、趣味で自転車に乗っている方なら頷ける部分だと思います。例えば、いつもクルマで通っている道でも、自転車で行くと全く印象が違うといったことはよくあります。こんなところに、こんな店があったのかといった、思わぬ発見があるかも知れません。クルマで通り過ぎたのでは気づかないものは、たくさんあるはずです。
物件そのもの以外にも、そこに住むか判断する材料はいろいろあると思いますが、それらを収集するには持って来いの手段というわけです。ちなみに、自転車に乗る人ならば、あらかじめ周辺の自転車の走行環境について実感できるというメリットもありそうです。
いずれにせよ、下手をすると見逃しがちな立地や周辺環境などを、自転車で物件を見に行ってもらうことで、十分に把握してもらえます。往々にして、物件そのものにばかり注意が向いてしまいがちですが、立地や環境などにも十分注意してもらった上で判断してもらおうという姿勢は好感が持てるのではないでしょうか。
その地域は初めてで、不案内な人もいるでしょう。その場合には、係員が同行して、近隣のスポットを紹介するツアーも実施してくれます。勝手に自転車で行って見てくれという投げやりなものではなく、自転車を使うことのメリットに気づいてもらおうというわけです。
もちろん、ネットでのデータ照会など、最新の物件探しの方法も提供しています。写真を見ると、まるでレンタサイクル店ですが、自転車しか置いていないわけではありません。しかし、自転車という手段をアピールすることで環境に配慮する、エコでクリーンな企業という印象を与えることが出来るのもメリットと言えそうです。
環境に対する関心の高い人だけではなく、健康にもいいという点も顧客にアピールする部分があるでしょう。この“Pedal to Properties ”は、自転車を前面に押し出した不動産会社のブランドとして、全米にフランチャイズ展開しようと目論んでいるようです。
この手法、日本でも使えそうです。日本でも普通はクルマでの送迎だと思いますが、あえて自転車という選択肢を設ける手はあると思います。物件を案内している間、路上駐車して近隣の迷惑になることも避けられます。駅前などの店舗なら、送迎用車両の駐車場などの維持費もばかにならないでしょう。
経費節減しつつイメージアップが図れ、お客にも上で述べたような利点があります。自転車で勝手に行くほうが自由に見られていいという人もあると思いますし、女性一人で物件を探す人なら、初対面の係員と二人きりでクルマに乗ったりするのには抵抗があるという人もあるでしょう。
もしかしたら、これをご覧の方の中にも、不動産仲介業の会社に勤めている方があるかも知れません。しかし、個人では自転車に乗る方でも、仕事に自転車を取り入れるなんて考えもしなかったのではないでしょうか。自転車を用意している会社はあるかも知れませんが、それを前面に出している業者は聞いたことがありません。
あえて自転車を前面に押し出すことで他と差別化し、企業イメージを向上させ、お客のメリットを強調して付加価値を加えられるなら、これは上手い方法です。もちろん、意外なところに自転車を使う、それを前面に出すという手は、不動産業に限らず、ほかにもいろいろなビジネスへ応用出来るのではないでしょうか。
しかし、シェパードだかチワワだか知りませんが、ひどい話ですね。
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Amazonで自転車関連のグッズを見たり注文することが出来ます。
Posted by cycleroad at 23:30│
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いつも参考になる記事ありがとうございます。
私は不動産業ではありませんが、この方法にはとても感心しました。
ビジネスには、アイデアが必要ですね!
CMに自転車が映ってることありますね
この前はCMで家の中に自転車が置いてありました
クルマでは便利な場所でも風邪ひいたり怪我したりして運転できないと意外に不便と感じることもありそうですからこういうのは効果がありそうです
「自転車はクルマと違って経済効果がないから自転車を普及されると困る」という人もいるみたいですが意外な効果があるんですね
TVめっきり見なくなったので不動産関連CMの件も判りませんので
あくまで憶測ですが、日本は現在デフレスパイラルの渦中にありあらゆる業種が
値下げ断行を行っている中で唯一高止まり状態なのが『家賃』でして
他の業種にみならい値下げ断行しようものなら既得権益者からの猛烈な反発を食らい
日本経済を牛耳る銀行は担保である土地が下落し担保割れ起こしますので
恐らく未来永劫に『家賃』がデフレを起こすことは有り得ないのではと思います。
他の業種が広告費やら何やらと経費削減する中で莫大な広告費をあてがえるのは
ほんの一握りの業種でその中でも不動産関連業というのはやや特殊な業種ですので
そういった現象が余計に目立つのかもしれませんね。まあ要するに不動産屋と銀行は
一蓮托生な間柄なので親亀に乗った小亀は今日もノンビリ日向ぼっこなんですかね。
海の番犬事件に関して一言で表すならば自然保護にかこつけた『人種差別』ですね。
同じ白人同士ならこういう事態にはなりませんし そもそも乱獲によって北大西洋の@を
絶滅寸前にまで追い込んだのはオタクラ白人じゃないかと......百年前ですが(笑
それよりもテロ撲滅だハチの頭だとイラクで無抵抗の子供達を校庭に集めて
一斉@@しようとアングロサクソン様だから許されるのかと.....元旦の日ですが
暗い話になってしまいました。御免なさいまし。
初めまして♪
私は自転車通販サイトをやっておりますが、自転車に対してとても深い内容の記事を楽しくよませてもらい、かつ勉強にとてもなりました♪
また記事を読みにきます^^
こんにちは。「自分探しのブログ 禁パチ路禁スロ鬱病日記」のシンと申します。。今日は相互リンクのお願いに参りました。私には境界性人格障害という精神病と4年近く付き合ってます。その時感じたのは人との繋がりでした。それを大事にしたいと感じております。開始間もない弱小ブログで大変恐縮ではございますが、相互リンクのお願いをさせて頂けませんでしょうか?ご検討頂ければ幸いです。
http://blog.livedoor.jp/dreamcatchshin-zibunsagashi/
応援ポチさせて頂きます。
失礼致します。
シン
ベロモさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
いえいえ、何かの参考にしていただけているのなら幸いです。
言われてみれば簡単なことですが、なかなか思いつかないかも知れませんね。
職人気取りさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
そうですか、自転車を部屋に入れるというのは、普通の人にとって、かなり違和感のあることだと思いますが、多少変化しつつあるのでしょうか。
鉄道網などが発達している都市部では、それと連携させた自転車の使い勝手も大きなポイントになるでしょう。
自転車は、既に充分普及してると思いますけどね(笑)。人々がクルマを不要とし始めると困る人は少なくないと思いますが、ライフスタイルや居住環境に関しては、人々がどう考えるかによるわけで、自転車の普及云々ということではないと思います。既に都市部などではクルマ離れも進んでいるわけですし..。
ホリゾン樽さん、こんにちは。コメントありがとうございます。
そうでしょうか。契約期間などの関係から、すぐに賃料に反映することはないとしても、やはり供給過剰になれば、賃料相場は下がりますし、実際に多くの地域で下がっています。
個々に見れば、既に住んでいる人の賃料は下がりにくいとしても、エリアの空室率が上がれば、賃借人を確保する競争がおき、家主も賃料も下げざるを得ません。
既存の契約の賃料はすぐに変わらないですが、不動産屋の店頭では、同じ物件でも、借り手がつかなければ、実際に下がることはザラにあります。理由はいろいろあるにせよ、地域全体で見れば、賃料相場が下がる現象は普通に起きています。
地価が下落したり、長期金利が下がれば、借りるより買おうという人が増えるなどして、一般的に賃貸物件の賃料にも影響します。例えば、バブルの頃に比べれば、賃料相場が下がった地域、物件はいくらでもあると思います。
地域的なバラツキはあるにせよ、雇用不安やデフレで全般的に家賃相場が下がるのも普通の話だと思います。
かの団体については、あまり詳しくありませんが、他の捕鯨国に対しても過激な行動をとっているようです。その部分が日本では報道されないだけで、白人同士であっても同じで、日本だけ、あるいは白人以外が被害を受けているわけではないと言います。人種差別と言うより、やはりテロでしょうね。
ハナサイクリングさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
何か、参考にしていただける記事があったとすれば幸いです。
またぜひお越しください。
シンさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
申し訳ありません。メールでもたくさん要望をいただくのですが、相互リンクはお受けしていません。悪しからずご了承ください。
応援ありがとうございます。
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