街乗りに使っている人から、本格的に山道でマウンテンバイク(MTB)を楽しむ人まで、あるいはダウンヒルなどの競技も含め、そのスタイルはいろいろだと思います。MTBの種類も、それに応じて様々なタイプがあります。最近は、シングルスピードのマウンテンバイクなども出てきています。
マウンテンバイクで山道を走る場合、それを山岳サイクリング、いわゆる山サイと呼ぶか、クロスカントリーと呼ぶか、MTBトレッキングと呼ぶか、MTBトレイルライドと呼ぶか、呼び名、あるいはスタイルはいろいろありますが、基本的にはオフロードを楽しむということになると思います。
そのオフロードの多くは、林道や登山道だったり、ハイキングコースだったり、その他の、いわゆるシングルトラックと呼ばれるようなコースだったりすると思います。しかし、「
山さ行がねが」というサイトを運営されている「ヨッキれん」こと平沼義之さんは少し違います。
平沼さんが愛用のMTBで走るのは「廃道」です。かつては使われていた道が何らかの理由で廃止され、通行止めとなり、人々の記憶から忘れ去られたまま打ち捨てられ、荒れ果ててしまった道、廃道です。平沼さんは、廃道探検家としてテレビに出演されたり、本を出版するなどされている、廃道マニアには有名な方です。
廃墟や(鉄道の)廃線は聞いたことがあるけど、廃道というのは初めて聞いたという人も多いかも知れません。実際の廃道は藪に埋もれたり、けもの道のようになっているところもあり、クルマやオートバイでは走れない場所も少なくありません。徒歩だけだと踏破するのに時間がかかりますから、MTBの機動力が生きるわけです。
自転車なら廃道の姿を壊すこともありませんし、マウンテンバイクなら、いざとなれば担いで歩けるのも利点です。ただ、場所によっては、自転車を乗り捨てて進まなければならないような場合もあるようです。サイトをご覧になるとわかりますが、非常に危険な場所もあり、死にそうになったこともあると言いますから、まさに探検です。
新しい道が開通しても使われている旧道とは違い、廃道は廃止された道です。地図からも削除されてしまっています。廃道を走ると言っても、まず廃道を探すところから始める必要があります。古地図や郷土史などの古い文献をあたり、地域の交通史の中に埋もれた道の存在を探し出さなければならないわけです。
平沼さんが、廃道に惹かれるきっかけとなったのも、中学生の時に手に入れたMTBだったそうです。子供のころから旅が好き、知らない場所へ行くのが好きだった平沼さんは、マウンテンバイクで住んでいた秋田県のあらゆる林道を走りまわったと言います。ちなみに、サイト名も秋田弁です。
平沼さんは、それを山チャリと呼び、「史上最高レベルの自由度を持った、遊びである」と書いています。峠を越え、道を究め、「走りたいように、走りたい場所を、走りたいだけサイクリングする、そのスタイルを、”山チャリ”と呼んでいる。」のだそうです。そのあたりには、共感する人も多いのではないでしょうか。
中学時代の平沼さんも、最初は純粋に走るのが目的でしたが、そのうち、使われなくなった道に入るのが楽しくなり、危険を冒して進んだ奥にある朽ち果てた標識や埋もれたトンネルなどを発見する喜びに魅せられました。いつしか、廃道探索にハマっていたと語っています。
自転車に乗っている人の中には、似たような思い出がある人も多いのではないでしょうか。さすがに廃道はないとしても、子供の頃に自転車を買ってもらい、今まで行ったことのない隣町まで行けたことに感動し、さらに遠くへ、知らない場所へと自転車を走らせた人も多いでしょう。
おそらく多くの人は、林道や廃道ではなく、ごく普通の道だったと思いますが、子ども心にはそれでも冒険だったはずです。自分の知らない道を開拓し、初めての場所に行くだけですが、自分の行動エリアが飛躍的に広がるのが楽しかったと思います。ついつい帰るのが遅くなって、親に怒られた人も多いに違いありません。
サイトのレポートを見ていると、そんな子供の頃の冒険心を思い出させる部分もあり、共感する人もあるのではないかと思います。行ってみたくなる人もあるでしょう。ただし、実際の廃道の多くには危険な場所があり、立ち入り禁止になっている場合も少なくありません。山深い場所ならば、下手をすると遭難する恐れもあります。
立ち入り禁止などの警告を無視して進めば、完全に自己責任になります。そのあたりにも充分に気をつけなければなりません。ただ、危なくなったら引き返すというスタンスなら、誰でも気軽に楽しめるものでもあります。もちろん、ゴミを捨てたり、沿道の住人に迷惑をかけないなど、アウトドアでの当然のマナーも忘れてはなりません。
考えてみると、私も何度か廃道に足を踏み入れたことがあります。ここは誰も入って行かないだろうなという道を偶然見つけて進んでみたこともあります。友人に、あまり一般に知られていない絶景ポイントを見せてやると言われて、山深く分け入った道も、後から考えれば廃道だったようです。静かで、何か隔絶されたような場所でした。
平沼さんは、これまで5百以上の廃道を探索、走破してきたそうですが、一説には1万以上の廃道が日本にあるとも言われており、まだまだ探索を続けるのだそうです。サイトには、そのほか旅先で見付けた笑える看板や変な標識の紹介などもあります。
山道でなくロードに乗っている人でも、最近、出かけるコースが決まってきて、マンネリ化しているなんて人も多いのではないでしょうか。「山さ行がねが」のレポートを読むと、未知の道を進むワクワク感が伝わってきます。廃道は別としても、今まで行っていない場所、新しいルートの開拓に出かけてみるのもいいかも知れません。
暦の上では立春を過ぎましたが、まだまだ寒い日が続きます。雪国では、早くフィールドに出たくてウズウズしている方も多いかも知れませんね。
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気づかずに通過している場所
もしかしたら気付かずに通過しているスポットもあるかも知れない。
万一起きた時どうするべきか
山深い場所の廃道に出かける場合には、不測の事態も起こりえる。
サイクルトレインが通る場所
廃道ではなく、鉄道の廃線を自転車で走れるようにした場所もある。
社会資本の再利用をすすめる
廃線を利用したサイクリングロードならば、ロードバイクでもOKだ。
Posted by cycleroad at 23:30│
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