このまま忘れ去るには惜しい
自転車用のヘルメットです。
BMX用やトライアル用など、違うタイプのものもありますが、自転車用のヘルメットと聞けば、多くの人がこの形を思い浮かべるでしょう。メーカーによって、少しずつデザインは違いますが、おおよそ、こうした流線型をしています。しかし、こうしたヘルメット、そんなに歴史は古くありません。
1970年代の半ば頃までは、
カスクと呼ばれるものが主流でした。当時のレースの写真などで、選手がカスクをかぶっているのを見たことがある人も多いでしょう。もちろん、使っていた方もあると思います。しかし、今のタイプのヘルメットに取って代わられ、今ではほとんど見なくなってしまいました。
皮革とウレタンなどで出来ており、落車した時の擦り傷などは、ある程度保護してくれるとしても、その衝撃を緩和する能力は高いとは言えません。私は使ったことがなく、かろうじて現物を見たことがあるだけですが、今のような製品に比べれば、頭部を保護する性能が格段に劣るのは間違いないでしょう。
日本ではママチャリなどのシティサイクルに乗る人が圧倒的多数であり、そのほとんどはヘルメットをかぶっていません。でも、スポーツバイクに限れば、乗る人が増えたぶん、ヘルメットをかぶっている人も増えてきました。ヘルメットは、「転ばぬ先の杖」ですから、かぶったほうが安心なのは間違いないでしょう。
ただ、スポーツバイクに乗っていても、かぶらない人は少なくありません。親が子供にかぶせる努力義務があるほかは、法律でも規制されておらず、個人の判断に任されているわけですから、私も「ヘルメットをかぶりましょう」などと言うつもりはありません。自分で必要だと感じたら、かぶるようになるでしょう。
ロードバイクに、ジャージやレーパンなどを着て乗る人の場合は、かぶる人の割合が高いと思います。習慣になってしまうと、無いと何かしまらない感じがします。ただ、そういう人でも、普段着で街中をポタリングするような場合に、ヘルメットをかぶろうか迷う人もあるのではないでしょうか。
サイクルウェアにヘルメットは合いますが、普段着にかぶると、なぜか似合わない気がする人は多いと思います。街で、普段着にヘルメットをかぶっている人が少ないのも理由だと思いますが、なぜか間が抜けたスタイルに感じたりします。一方で、ヘルメットが習慣になっている場合、無いと何か落ち着かない感じもします。
そんな人に、密かにカスクの人気が復活しているのかも知れません。と、言っても、全体から見れば、ごく一部の人に限られると思いますが、最近、復刻版などとして、通販で数量限定で扱われていたり、ネットオークションなどに流通していたり、まれに自転車店で見かけたりします。
カスクを知らない世代にも受けているのでしょうか。レトロな感じが、逆にいいと感じる人もあるのでしょう。あるいは昔使っていた人が懐かしがって買っているのかも知れません。衝撃吸収力は低いものの、普通のヘルメットよりもカスクが勝る点は、何と言っても普段着に合わせやすいことだと思います。
かぶっても、あまり頭部の保護にはならないでしょうが、かぶらないよりはマシです。サイクルキャップと合わせてかぶれば、何かオシャレな感じもします。普段着でのポタリングや、近所に出かける時にヘルメットは大げさでも、カスクならさりげない感じで違和感も少ないというわけです。
もう一つ、大きな利点はたためることです。自転車をとめて歩く時など、ヘルメットは意外と邪魔だったりしますが、カスクは、たたんでカバンにしまえます。自転車通勤で使っても便利でしょうし、かさばらないというのは、案外大きなポイントかも知れません。
買う人も少ないので仕方がないと思いますが、やはり品薄で値段が高いのが難点でしょうか。過去の製品の復刻版という扱いだったり、限定生産だったりして、職人が手作りで少数作っているだけだとやむを得ないのでしょう。好きな人はいいのでしょうが、もう少し手軽な価格になると人気が出るかも知れません。
通販などでは、帽子の中に入れるヘルメットの代用品なども売っています。他にも、ヘルメットの代わりになるようなものはありますが、今一つという感じです。安全面からは通常のヘルメットが推奨されるとしても、時と場合によっては、カスクのような製品を使いたい人もいると思います。もっと販売されても良さそうなものです。
カスクに似た素材や構造のものに、ラグビーなどのスポーツで使うヘッドギアがあります。大手スポーツ用品メーカーからも発売されています。これを少し改良すれば、カスクも充分製造可能に見えます。あらためて、カスクのような商品を製品化してみても面白いのではないでしょうか。
海外でも、たためて気軽に使えるヘルメットが欲しいという需要はあるようです。“
TopUp”と名付けられた、たためるヘルメットのデザインが発表されています。これを、日本人がカッコいいと感じるかはともかく、こうした工夫の製品が、もっと出てきてもいいと思います。
日本のハイテク技術を使った製品などは出来ないでしょうか。例えば形状記憶合金を使って、かぶると体温でヘルメットの形状になり、脱ぐと平面になる素材なんて出来たら、世界的にも注目されるのは間違いありません。そこまでは無理としても、機能とデザインを融合させたカジュアルな感じのヘルメットがあっても良さそうです。
カスクの安全性を高めることも、現在の技術なら可能かも知れません。生卵を数メートルの高さから落としても割れない衝撃吸収材を何かで見たことがあります。そんなハイテク素材を使えば、カスクの衝撃吸収力も高まり、安全性も増すはずです。“TopUp”のような構造でも安全性の高いヘルメットが出来るかも知れません。
いずれにせよ、カジュアルな感じのヘルメットに、一定の潜在的な需要はあるような気がします。新しく開発するメーカーが出てこないものでしょうか。もちろん、発売されてすぐブレークしたり、必ずヒットするとは限らないので、企業にはリスクがあります。特に日本は、それほど魅力的な市場ではないかも知れません。
思い浮かぶのは、よく例えに出てくる営業マンの話です。ある未開の国へ2社から靴メーカーの営業マンがやって来ます。そして、現地の人が裸足で歩いているのを見て驚きます。一人は「この国には靴を履く習慣がない!すぐに帰る。」と本国に打電します。これに対し、もう一人の本国への連絡は違いました。
「この国の人はまだ誰も靴を履いていない!無限の市場が広がっている。大至急、送れるだけ商品を送れ!.。」日本でヘルメットをかぶっている人はごく一部ですが、これを需要が無いと見るか、無限のビジネスチャンスと見るかが分かれ道です。後者に考える運動用具メーカーの出現を期待したいところです。
バンクーバー・オリンピックが終わり、やっと、“肩に力の入る”期間から開放されると言う人も多いかも知れません(笑)。終わってみると、あっと言う間だった気がしますね。
関連記事
自転車に道があれば事足れり
ヘルメットは違った意味で進化が求められているのかも知れない。
ヘルメットはクールで魅力的
ヘルメットをかぶるべきかどうかについて、一度考えてみてもいい。
いかに危なっかしく見せるか
しかしヘルメットをかぶった方が危険だという研究結果も存在する。
ヘルメットに何を期待するか
自転車用のヘルメットも変化する時期に来ているのかも知れない。
Amazonの自転車関連グッズ
Amazonで自転車関連のグッズを見たり注文することが出来ます。
Posted by cycleroad at 05:00│
Comments(23)│
TrackBack(0)
この記事へのトラックバックURL
確かにジャストデザインのヘルメットがなくて困ります。
カヌー用ヘルメットなど他のスポーツのものも探したのですがいまいち。
僕は帽子の中に入れる保護具(バンビーノ)をポタリング用に使っています。
才倉黄土さんのブログの写真の白いプラスチックがそうですね。
http://tonsan.boo.jp/tonsan/cycle/sobi4.html
でも頭にはなじみません。少しでも頭になじむようコルクを張って使っています。
まぁ帽子だけよりはましかなという感じです。
デザイン的には幼児用ヘルメットの形が好みです。どこかで売り出してくれないかな。
本当に!自転車ヘルメットのデザインには引きます。
僕はずっとノーヘルでしたが、やはり頭部の保護は必要だと思い自転車用ヘルメットをを調べてみたのですが、まあ、どれもこれも派手でしかも同じようなデザインですね。
普段着ではとても合わせられません。
この分野はまだ未開拓のフロンティアなのですね。
カスクも良いのですが、乗馬用のヘルメットがなかなかにシックで良いかなと思っています。
オリガミの国ですから、コンパクトに畳めてしかもスタイリッシュ(派手すぎない!)な自転車用ヘルメットを開発して欲しいですね。
私はカスク派です。
ヘルメットに比べればさりげないし、なにより、たたんでビジネスバッグに入るのがいいですね。
以前はノーヘルだったのですが、事故って以来、頭部の保護を考えるようになりました。
カスクを探したものの、なかなか発見できず、最近はほとんど作られていないとも聞きました。
復活させて販売している会社に感謝です。
確かに、もうちょっと保護性が高いと安心なのですが。
娘が保育園に通っていた頃は未だ自転車の子供用ヘルメットが一般的では有りませんでした。ピカチュウとドラえもんとアンパンマンの顔が大きく描かれたのが売っていました。ピカチュウとドラえもんはヘルメットなのにデッカイ角が生えていて、危険な感じがしました。アンパンマンだけがまん丸なのでそれを娘に買い与えました。保育園の友達からはアンパンマンと呼ばれていました。自転車用ヘルメットからアンパンマンのファンになりました。そのアンパンマンのヘルメットには風通しの穴がついていなかったので雨の日には便利でした。
その後、娘と息子も成長してヘルメットを被らなくなりました。今回の記事を見ていましたが、改めてヘルメットの必要性を感じました。
テレビニュースでカジュアルな女性でも似合う自転車用ヘルメットの特集していました。のんびり自転車に乗る人にも似合うのがあれば買いたいと思います。
トンサンさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
帽子の中に入れるタイプをお使いですか。私も似たものを店頭で見つけて試したことがあるのですが、やはりフィット感はイマイチでした。
ただ、野球帽のようなキャップが好きな方は選択肢になりそうです。
以前何かの調査で、日本人の97%が、自分のヘルメット姿を似合わないと回答していると見たことがあります。なかなか、満足いくデザインのヘルメットに出会うのは難しそうですね。
ひろにゃんof風琴屋さん、こんにちは。コメントありがとうございます。
そうですね、私は普通のヘルメットしか持っていませんが、さすがに普段着にあわせるのは難しいものがあります。
もともと欧米から入ってきたデザインなので、日本人の感性には合わないのかも知れません。
なるほどオリガミの国ですか。日本人に受け入れられるデザインだって、工夫すればできてもおかしくありませんよね。このフロンティアに挑む日本企業に出てきて欲しいものです。
お茶星人 やがたさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
カスク使ってらっしゃいますか。さりげなくて、オシャレな感じがありますよね。
事故から無事復活されて何よりです。なかなかそういう機会がないと、ヘルメットをかぶろうと思わないことも多いかも知れませんね。
やはり、安全性ではヘルメットに及びませんから、なかなか広く流通するのは望めないのも確かなのでしょう。
安全性のアップしたカスクが出てくることを期待したいものです。
ジャムおばさんさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
確かに、幼児のヘルメット着用は親の努力義務になっていますし、小中学校でのヘルメットを義務づけている地域もあります。
せっかく長年習慣になっていたのに、高校になった途端、かぶらなくなってしまいます。ある意味もったいない話です。
自らかぶりたくなるようなデザインのヘルメットがあれば、そのまま習慣でかぶるでしょうし、周りがみなかぶっていれば、かぶらないとカッコ悪いということになり、着用も進むでしょう。
その意味で、子供もかぶりたくなるようなデザインのものが出てくるといいですね。
私の場合、子供が自転車の練習をはじめた時から、必ずかぶるようになりました。子供はよく見ていますので。結果、子供も私も、ヘルメットなしでは自転車に乗れないようになりました(かぶらないと気持ちが悪い)。習慣とは恐ろしいものです。
ひでさんさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
なるほど、そういうきっかけもあるわけですね。子は親の鏡とは、よくいったものです。
習慣になって、かぶらないと気持ちが悪いという人は多いでしょうね。
こんにちは。そうですね、フレーム本体やその他パーツ類の多様性を考えると、ヘルメットも色々出てきて良いはずなんですが、どうも無難路線をひた走っているように見えます。勝間さんのカツケン研究所でも取りあげられていましたが、rin projectのヘルメットカバーは良い例ですよね。こちらでも以前取りあげられて、私も長く愛用したリアビューも生産中止となってしまいましたし、もっと挑戦的企業の出現を望みます。
先日、豪雨のため会社に自転車とヘルメットをおきっぱなしにした翌日(土曜日)、どうしても自転車で出る用事がありました。仕方なくロードにヘルメット無しで出掛けましたが、強い違和感(サイクルロードさんがおっしゃる、右側通行の違和感くらい)があり、何か落ち着きませんでした。自分を誤摩化そうと、MTB系カジュアル系ライドウェアで出掛けたのですが、、、意味はありませんでした(笑)私にとって、スポーツ自転車にヘルメットは、もはや欠かせない存在のようです。
ヘルメットが普及は意外と早いかもしれません
数年前のラジオで幼児にヘルメットをかぶせるべきか討論したとき過保護だと思われるからかぶせないって意見がありましたが今では普通にヘルメットかぶってる子供を見かけます
noriさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
おっしゃるとおり、パーツや用具のバラエティさに比べると、ヘルメットは未開の分野と言えそうです。
そう言えば、リアビューヘルメットをお使いでしたね。ユニークなヘルメットだと思いますが、あまり支持されなかったということなのでしょうか。まだまだ機能的にも、いろいろ工夫の余地はありそうです。
やはり、習慣ですね。逆に言うと、圧倒的多数の人がママチャリに乗るのにヘルメットをかぶらないのも習慣ということでしょう。ヘルメットの需要が高まらず、商品としても多様化しないのも、やはり習慣の壁なのでしょうね。
職人気取りさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
確かに、子供にヘルメットをかぶせる努力義務が保護者に課せられることになったので、ヘルメットをかぶっている子供を見るようになりました。
ただ、今でも、せっかく小中学生の時分までかぶっていても、高校になるとかぶらなくなってしまっています。そのままヘルメットが習慣になっていないわけで、必ずしも、普及が進むか予断を許さない気がします。
スポーツ自転車は絶対被るべき、と主張してるひとに「ママチャリは?」と聞くと、そんなにスピードを出さないから必要無いかな・・みたいな歯切れの悪い答え。
ママチャリだって下り坂で40km/hくらい出ることもあるだろうし・・
ちなみに私は帽子派です、大きめのツバが無いとちょっといやなもので。
kyさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
ママチャリであろうが、スポーツバイクであろうが、自転車に乗る人全てにヘルメットを義務付けるというのも現実的ではないですし、自転車の自由度が奪われてしまいます。時と場所によっても必要度は違ってきそうです。
やはり、スピードや道路道状況など必要だと感じる人はかぶると思いますし、それでいいんじゃないかと思います。
ブログなどでヘルメットに限らず安全に関わることには妙にムキになるひとや、「ヘルメットを被りましょう」みたいに気軽に啓蒙?するひとなどが苦手なんです。
なんか常に上から目線な感じが・・
kyさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
上から目線ですか。それぞれに思いや主張があっても、それが他の人にとって押し付けがましく聞こえてしまうと、真意が理解されませんからね。
私もそうならないよう気をつけたいと思います。
自転車のヘルメットは被るに越したことはないのですが、レースと街乗りでは起きる事故の種類も要求されるスペックも全く違いますから、METのParachuteのように顔面や側頭部をしっかりガード出来る製品を、日本でも開発すべきだと思うのです。(METの製品は形状的に日本人に合わないし)
自転車のシティユースで一番起きる「横転」「衝突」これでダメージを受けるのはやはり顔面と側頭部です。頭頂部だけを神経質に守っても意味は無い。
これは科学者による実験によって、実際に検証もされています。
あと自転車のメットは頭に被って「しなり」を抑えると、軽くぶつけただけで簡単に割れます。メットが割れる=死ぬような事故、では無いです。
皆カルト信者の「ご利益」みたく大袈裟に騒ぐけど。
あと書き忘れましたが、ダイラタント流体D3oの入った帽子は下手なヘルメットより頑丈です。
鉄製のハンマーで思い切り殴られても軽い脳震とうで済むそうです。(ただ通気性が悪いので、現状ウィンタースポーツ以外には使われない)
自分はロードに乗るときダイラタント流体のエルボーパッドを付けていますが、立ちゴケや落車時に肘で身体を支えられるので助かってます。
一応ヘルメットは被ってますがさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
なるほど、シティユース用ですか。機能もそうですが、デザイン的にも、もっと受け入れやすいものになれば、かぶる人も増えるかも知れません。
ただ、街では大多数がママチャリですから、顔面を保護したヘルメットが、かえって事故の時に凶器となってしまう可能性もあるような気がします。
そのあたりも含め、機能とデザイン、あるいは手軽さとカッコよさを備えた、新しいコンセプトのヘルメットが出てきても良さそうです。
ダイラタント流体ですか。新素材の採用で、全く新しいタイプのヘルメット、あるいは頭部緩衝材が出てくる可能性もありますね。カスクにしてもいいですし..。
いずれにせよ、需要がないとどうにもなりませんが、いったんヒットすれば、一気に普及することだってないとは言えません。どこか製品化に挑戦するところに出てきてほしいものです。
いろいろ興味深いご指摘、ありがとうございます。
前の会社の上司のおっちゃんが、
競輪好きが高じて、同好会に入り、
バンクをピストで走ってた方なんですが、
「メットあるのか」
と聞かれ、
「いえ、原チャリと違って、
メットインじゃないじゃないですか・・・」
と答えたとき、
「カスクならリュックに入るぞ」
と薦められたのですが
数年前は見つけることができなかったんです。
やっと最近復活したんですね。
競合製品も出て、
選択肢が広がるとよいですよね。
rageさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
ヘルメットをかぶろうとは思っていない人が圧倒的に多いと思いますが、徐々にヘルメットを考える人も増えているのでしょう。
まだまだ僅かですが、カスクも、少しずつ息を吹き返しているのかも知れません。
こうした動きが、新たなスタイルのヘルメットを生んで、選択肢も増えていくかも知れませんね。
※全角800字を越える場合は2回以上に分けて下さい。(書込ボタンを押す前に念のためコピーを)