前回、Googleマップのアメリカ版に自転車用ルート機能が追加されたことを取り上げましたが、日本では今月11日、Googleマップのストリートビューの対象範囲に新たな21県が加わえられ、38都道府県に拡大されました。従来から対象だった都道府県でも収録範囲が広げられたようです。

場所によっては、高速道路のストリートビューだけという地域もありますが、大幅に範囲が広がっていますから、今まで対象でなかった地域の方でも、知らないうちに、自宅の画像が取り込まれていたりするのではないでしょうか。もしかしたら、本人が映り込んでしまっているかも知れません。
2008年の公開直後には、プライバシーの侵害や犯罪への悪用の懸念など、いろいろと物議を醸したサービスですが、Google社では、クルマのナンバーなどにぼかし処理を施し、不満のある画像には削除依頼を受けつける仕組みを作るなどの対応をとってきました。今ではすっかり市民権を得た感があります。

総務省も個人情報保護法違反には該当しないとの見解を示しており、Google社によれば、最近では苦情や問い合わせもないと言います。その便利さ、有用性が認められた部分があるのは間違いないでしょう。私も時々利用しますが、地図に実際の街並みの情報まで保持されているというのは、確かに便利です。
自転車で出かける時の情報収集に使っている人もあると思います。あらかじめ通る道路を地図で検討する時に、実際の画像情報があると便利な場合があります。地図だけだとわかりにくい情報、例えば、道が途切れているのか続いているのか、階段なのか坂なのか、柵なのか通り抜けられる車止めなのか、といったような情報です。
舗装路なのか、砂利道なのか、あらかじめわかればルートを選択するのに助かります。川を渡れる橋なのか、通れない堰や水門なのか見ておけば、大きく回り道しなくて済みます。途中に飲料などを買えそうな店や、休憩に適したポイント、間違えやすい分岐点の目印を見ておくなど、活用の仕方はいろいろあるに違いありません。

行ったことのない場所の景色を見ることが出来るのは、国内に限りません。ストリートビューは、世界19カ国で展開されています。今回対象地域が増えたのは日本だけではなく、香港・マカオ・北アイルランド・オランダなどのエリアも拡大されました。海外旅行の下見が出来たり、居ながらにして海外旅行の気分を味わうことも出来ます。
さらにGoogleマップのストリートビュー機能は、ツーリングの計画などにも役立つ道路沿いの情報だけでなく、城だとかお寺のといった施設の内部の情報にまで広がりつつあります。ストリートビューで見られる施設に今回、京都の二条城や高台寺、熊本城など
国内32施設が追加されました。
グーグルは、通称ストリートビュー・カーと呼ばれるクルマを走らせて、沿道の画像の撮影をしています。お寺や城などの施設の中は、ストリートビュー・トライクと呼ばれる、3輪の自転車を走らせて撮影しているのです。なるほど、自転車だったら小回りもききます。
クルマでは入れない施設の内部の通路も、自転車であれば通れる場合がほとんどでしょう。グーグル社は自転車を使うことで、ストリートビューを新たな領域に広げました。グーグルマップは自転車にも役立ちますが、自転車もグーグルマップの役に立っているわけです。
ストリートビューで施設の中を公開している施設の中には、動物園や遊園地、野外美術館なども含まれています。入場料もとらずにタダで見せてしまうえば、来場客が減ってしまうような気もします。しかし実際は、むしろ知名度が上がり、映像を見た人が行ってみたくなるなど観光客を増やすことが期待されているわけです。
(
注:以下の画像、ストリートビューのリンクを埋め込むと重たくなってしまうため、画像のコピーです。それぞれの下の「大きな地図で見る」をクリックすると実際のストリートビューの画面を見ることが出来ます。)
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施設内を公開することに合意した中には、大学やゴルフコースなどもあります。確かにこうした施設には、見る人にとっても、入学志願者やゴルファーを増やしたい施設にもメリットがありそうです。もちろん掲載されたからと言って、特別にお金を取られるわけではありません。今後も、内部を公開する施設は増えていくでしょう。
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一説には、売り上げ不振に悩む百貨店業界がGoogleと提携し、デパートの建物内部を立体的な画像で閲覧できるサービスを立ち上げる計画があるそうです。どんなものになるのか不明ですが、デパート内を自転車が走り回ることになるのでしょうか。OSによっては、これがホントの「ウィンドウ(ズ)・ショッピング」です(笑)。
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もちろん、海外の施設も含まれています。世界の名所やビーチに遊園地、シーワールドではショーの光景まで映っています。冬季オリンピックの会場だった、ウィスラーのスキー場のゲレンデまで見ることが出来ますし、世界遺産の古都トレドやポンペイの遺跡、イギリスのストーンヘンジに「行く」ことも出来ます。
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ユネスコ(国際連合教育科学文化機関)とGoogle社は、世界遺産、特に一般の人がなかなか訪問できない場所を優先して、ストリートビューで公開するプロジェクトを進めています。ますます、居ながらにして世界の隅々まで見ることが出来るようになっていきそうです。

このストリートビュー、最初は何に使うのだろうという疑問をもった人も多かったと思います。しかし、見てみれば実際に行ったかのような風景を見ることが出来て便利ですし、画像に映り込んだ面白いものが話題になるなど、多くの人の関心を集めています。当初は想定されなかったような、いろいろな使い方もされています。
例えば、イベントなどで、Googleストリートビューの画面を大写しにし、出演者の出身地や思い出の地を映し出して、その地にまつわるエピソードを披露するなんて使い方もあるようです。結婚式などにも使えそうです。あらかじめビデオで撮影しておかなくても、似た状況を簡単に再現できるというわけです。
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(イギリスではカモメが映り込んでしまった。)
個人の生活の中でも、いろいろな活用法が考えられます。聞いたことのない会社から通販で品物を購入する時、その住所をストリートビューで見て、ショップの外観を参照して実在するか確かめる人もあるようです。将来、企業はストリートビューに映りこんでいることが必須となったりするのかも知れません。

そうなると、実際の社屋よりも見栄えを良くしたり、目立つよう画像加工するサービスとか、ストリートビューの画像の中に、画像処理でバーチャルな看板を出すなんて広告も登場するかも知れません。将来は、一種のインフラのようなって行く可能性がありそうです。
ストリートビューの画像を利用し、ローラー台やトレーナーと連動させて、バーチャルな走行環境を実現する装置なんかも出てきそうです。風を吹かせたり、坂などに応じて負荷を変えるなどすれば、更にリアルになります。実在する場所の走行を室内で疑似体験したり、トレーニング出来るようになるかも知れません。
いろいろと想像は広がります。実際にどう発展するかは別として、さらに便利になっていくことは間違いなさそうです。個人的には、せっかくストリートビュー・トライク、自転車が使えるのですから、グーグル日本支社の方には、まず全国各地のサイクリングロードの撮影、収録をお願いしたいものです。




東京などでも桜が開花しました。上野公園とか千鳥ヶ淵の桜の木の下をストリートビューの画面から、「場所取り」が出来るサービスなんて出来たら便利かも知れませんね(笑)。
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