パリなどの例に刺激されて、世界の都市で都市型レンタル自転車を導入する動きが広がっています。日本でも徐々に導入や導入に向けての実験が行われるなど、注目が高まりつつあります。これは、今までのように観光地の駅前に配備されるような、単なる貸し自転車とは違います。
街の随所に、レンタル自転車の無人貸し出しステーションを多数設置し、自由に借りたり返したり出来るようにすることで、都市交通の手段として整備されるものです。公共の交通インフラとして位置づけられています。レンタル自転車を配備することで、自転車のシェア、多くの人で自転車を共有する試みでもあります。
他の公共の交通機関とも連携して、人々の移動手段をクルマから自転車に置き換えることで、渋滞や排気ガスによる公害などの解消を狙っています。もちろん、化石燃料への依存を減らし、地球温暖化ガスの削減する効果も見込めます。人々の健康志向とも相まって、医療費などの削減効果も期待されています。

ただ、どの都市もが導入を目指しているわけではありません。都市によって環境や成り立ち、地形や人口動態、そして交通事情など、一つ一つ条件が違うわけですから、一概にこうしたシステムが効果を上げるとは言い切れません。例えば、坂が多い街であれば、なかなか人々に受け入れられないかも知れません。
クルマの利用率が高い一方で、渋滞などの不都合があまり起きていない都市であれば、そもそも導入の機運が盛り上がらないこともあるでしょう。既に自転車に乗る市民が多く、皆が自分の自転車に乗っている都市でも、あまりレンタル自転車が必要とされないかも知れません。
デンマークのコペンハーゲンは、世界的に見ても、自転車の利用が非常に進んでいる都市です。私も何度か取り上げましたが、自転車先進都市として知られ、多くの市民が自転車を活用しています。当然、自分の自転車に乗る人が多い都市でもありますが、以前から自転車シェアシステムにも力が入れられてきた都市でもあるのです。
それ以前から貸し自転車はありましたが、1995年に最新の自転車シェアシステムを取り入れた最初の都市でもあります。その後10年以上遅れて、世界各国の都市でも自転車シェアシステムが導入され、追い付いてきたわけですが、コペンハーゲンは、更にその先を見据えています。
市長の言葉を借りると、「自転車が現代の都市で、最も望ましく好ましい交通手段であることを体現する最高の例」がコペンハーゲンです。今までより魅力的で、今までにない新しい自転車シェアシステムを開発し、導入することで、さらにコペンハーゲンの自転車文化を強化しようとしているのです。
その一つの試みとして、次の世代の新しい自転車シェアシステムの
アイディアやデザインを募集するコンペが開かれました。多くの優れた作品が応募され、そのアイディアがネット上でも公開されています。どれも力作で、レベルが高いことに驚きます。
都市型レンタル自転車システムと言っても、それを上手く稼働させ、都市交通として機能させるのは、そう簡単なことではありません。運用していく上で多くの問題が持ちあがります。一見うまくいっているように見えるパリの例などでも、実はさまざまな問題を抱えていると言います。
料金の収受と利用客の利便性の向上、自転車配置の偏りにメンテナンスの維持、破損やいたずら、展開エリアの拡大とステーションの拡充、その設置場所の確保など問題はたくさんあります。歩行者の邪魔となったり、地元住民とのトラブル、事故や交通マナーの問題などもあります。もちろんコストや採算の問題も出てきます。
こうした問題を解決するためのアイディアやデザインが、コンペではいろいろと提案されています。最新のIT技術やGPSなどの活用、ネットサービスと連動させるなどのアイディアが満載です。非接触型のICカードや携帯端末を活用して、料金収受や空き状況の確認に使うなどの提案も多いようです。
一つ一つの作品のコンセプトからシステムの概要まで取り上げるには、さすがに紙幅が足りないので、興味のある方は、ぜひサイトをご覧になってみてください。ここでは、面白いアイディア、ユニークなデザインのほんの一部をピックアップしてみました。

観光客など、その街の地理に明るくない人へは、地図情報があると親切です。GPSを利用してその情報がハンドル内臓のディスプレイに表示される最新のシステムから、ハンドルバーに地図を載せる台を取り付けた素朴でアナログなものまで、幅広いのも面白いところです。

貸し出しや返却のためのステーションは、多ければ多いほど利便性が高まります。しかし、そうそうスペースがあるわけではありません。少しでも駐輪スペースを狭めようと、オリジナルデザインの自転車を開発し、自転車の長さを縮めようとするアイディアも目立ちます。

ステーションの駐輪機自体のデザイン、駐輪の仕方のアイディアもあります。木のように自転車を収納するツリー型駐輪機、自転車を縦に収納出来る、半円型の駐輪スタンド、ハンドルなどをたたんで幅を狭くして、薄いタワーに収納するものなど、どれもユニークです。

自転車を数珠つなぎに収納するアイディアもあります。スーパーのショッピングカートで、前のカートとつながっている一番後ろのカートにコインを入れて外して使うものがありますが、それにちょっと似ています。つながってる前の自転車と切り離して使うわけです。

このアイディアのユニークなところは、必要なら2台連結したまま使えるところでしょう。タンデム自転車としても使えるわけです。3台、4台とつなげられても困るでしょうが、タンデム自転車なら、観光客向けにもアピール出来ますし、ちょっとした名物になるかも知れません。

自転車だけでなく、トレイラーも貸してしまうというアイディアもあります。子供を乗せたり、大きな荷物を運ぶのに利用できます。自分の自転車に乗っている人でも、何かを運ぶ時だけ必要に応じてレンタルすることが出来るので、自分の自転車に乗る市民にも利便性を提供することになります。

スポンサーの広告が入れられれば、採算に大きく貢献するでしょう。広告スペースが大きい自転車のデザインというのも重要な要素です。中でもシマウマ模様の一台はユニークです。タイヤに足の絵が入っており、走行するとシマウマが走っているように見えるのでしょうか。こうした遊び心が人気を呼ぶ要因にならないとも限りません。


安全性の面では、サドルの下から出たライトが、利用客の背中にシグナルを点灯させるシステムもユニークです。夜間の視認性が高まるだけでなく、簡単なタッチ操作でウィンカーを出したりも出来ます。直接点灯するより、人の背中のほうが面積が広い分、見やすいのは間違いありません。
確かに、こうした大規模システムの場合、必ずしも既存の自転車を使う必要はないわけです。さまざまな機能をもったオリジナルの自転車を開発することも当然視野に入って来ます。オリジナルな形の駐輪機とともに、今までにない機能をもった自転車が開発されても不思議ではありません。
そう考えると、次世代の自転車シェアシステムは、都市交通の形を変えるだけには留まらない可能性があります。ユニークな機能をもった自転車や駐輪機が開発され、それが一般の自転車に普及することも充分考えられます。都市型自転車、シティサイクルの未来形は、案外レンタル自転車から生まれてくるのかも知れません。




ここのところ、暖かい日と寒い日の差が極端ですね。北日本では、この時期に吹雪です。体調的に私も、セキが出てちょっとまずいって感じです。
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コンビニ駐車場を利用した会員制レンタカーの案内が入っていました。携帯で予約取れるみたいで、自家用車よりも維持費がかからなくて便利と宣伝していました。だけど、自家用車と違って使いたい時に必ず予約取れる訳でも無いし、自分の前の予約者が渋滞に巻き込まれていて急に予約通りにいかなくなったらと思うし、第一コンビニまで借りに行くのも大変です。その点、レンタルサイクルの方が台数に余裕がある分だけ借りれない不安が無くて良いです。
東京都世田谷区みたいに東西の交通の便が良くても南北に不便です。田園都市線と小田急線を結ぶレンタルサイクルは便利です。一々電車で渋谷に出るよりも自転車の方が早いです。
もし自分が駐車場の無いマンションに住んでいたら、共有自転車として車椅子付き自転車欲しいです。紀洋産業社様の車椅子移動補助具(自転車)は身体障害者がいない家庭には普段は必要無いけど、家族が歩けない程具合の悪いの時にあれば助かります。自家用車を持っている理由の一つに家族が病気の時に運びたいのがあるからでしょう。