April 18, 2010

本来は自由に乗れて当たり前

日本では、あまり2人乗り自転車を見かけません。


「自転車の2人乗り」のことではありません。「2人乗りの自転車」、つまりタンデム自転車が走っているのを見ることは、ほとんどないと思います。それもそのはず、一部の地域を除きタンデム自転車は公道の走行を禁止されているからですが、そのタンデム自転車についてのニュースが読売新聞に載りました。


2人乗り用「タンデム自転車」 公道走らせて…協会、近く国に要望 

二つのサドルとペダルがある2人乗り用「タンデム自転車」の愛好家らが、運転を禁じられている一般公道も走れるよう規制の緩和を求めている。親子や夫婦で楽しめ、視覚障害者や高齢者も一緒に乗れるのが特徴だが、公道は危険との懸念があり、現在、全面的に認めているのは兵庫、山形、長野の3県だけという。財団法人「日本サイクリング協会」(東京)は近く、快適さや安全性に関する報告書を国などに提出する予定で、全国解禁を目指す動きが活発化しそうだ。

自転車の2人乗りは、都道府県の各公安委員会が道路交通法の細則などで原則禁止。タンデムは長さが約2・3メートルと通常の1・4倍で、公道は危険との意見もあり、愛好家らは公園や河川敷などで楽しんでいる。

タンデム自転車試乗会こうした規制に対し、兵庫県障害者タンデムサイクリング協会などが公道利用を要望し、同県は一昨年7月、細則を改正して全面解禁した。観光活用を望む声を受け、山形県も昨年7月に認め、愛媛県も「サイクリングの聖地」と呼ばれる「瀬戸内しまなみ海道」での走行を検討しているという。

公道解禁の機運を高めようと、試乗会も盛んに行われている。平城遷都1300年祭の主会場の平城宮跡(奈良市)大極殿前。奈良県サイクリング協会などが11日に試乗会を開き、約300人が約50台を走らせた。

夫と乗った同県生駒市の村松千鶴さん(30)は「意外と簡単。おしゃべりしながら風景も楽しめた」と笑顔。目の不自由な同県橿原市の槙山信篤さん(61)は数十年ぶりに自転車に乗ったといい、「視力が良かった幼い頃を思い出し、風を感じて気持ちがよかった。公道でも走りたい」と期待した。

大阪府でも、「自転車文化タウンづくりの会」が視覚障害者らを対象に、公園で体験試乗会を開いている。

兵庫県障害者タンデムサイクリング協会は解禁後の昨年7月、約30キロをテスト走行。視覚障害のある今井裕二会長(42)は「自力で動かすことができ、爽快(そうかい)感と達成感がある。行動範囲も広がる」と話す。

日本サイクリング協会は昨年4月、大学教授ら8人の研究会を設置し、安全な走行方法などを調査。これまで全国で6回、講習会も開いた。これらの活動を報告書にまとめ、警察庁や国土交通省、各自治体に提出する予定。長沢恵一事務局長は「視覚障害者や高齢者、観光に有益。マイカー代わりに使えば地球温暖化の防止にもつながる」と魅力を訴えている。

タンデム自転車:2人が前後に乗り、前の先導役がハンドルを操作。視覚障害者も後ろに乗ってサイクリングを楽しめ、パラリンピックの競技になっている。(2010年4月17日 読売新聞)


記事にもあるように、今のところ公道をタンデム自転車で走行できるのは、長野、兵庫 、山形の3県だけです。群馬と栃木の両県がエリアを限って許可しています。そのほかの都道府県では一部を除き、タンデム車の走行が許可されている自転車専用道に限って認められているのが現状です。

ただ、大阪、静岡、千葉、和歌山、鳥取の5府県は自転車専用道も含め全面的に不可ですし、ベロタクシーなど旅客業務に限って許可している県もあります。また、禁止が2輪のタンデムに限られている為、3輪や4輪のタンデムであれば事実上走行できる県もあるなど、都道府県によって規制がバラバラなのが実態です。

タンデム自転車国としては、道路交通法でタンデム自転車の走行を認めています。ただし、各都道府県の公安委員会に、軽車両の乗車人員を決める権限を与えています。これによって、都道府県によって対応がバラバラという事態が起きるわけです。それにしても、全面可能と全面不可能では差があり過ぎです。


全面可能な兵庫県と、全面不可の大阪府、それほど大きく道路事情が違うとも思えません。各都道府県ごとの考え方があり、それぞれの権限を否定するつもりはありませんが、形骸化した規制の典型だと感じるのは私だけではないでしょう。規制をきちんと見直している県と、ほったらかしにしている県に見えなくもありません。

今でも規制されている理由を問えば、おそらく安全上の為と答が返ってくるのでしょう。しかし、タンデムが果たして危険でしょうか。普通の自転車に二人乗りするのは危険ですが、きちんと乗車装置、つまりサドルが2つあって、ペダルやハンドルも2つ備わっているタンデム自転車の走行が、それだけで危険とは言えないと思います。

海外では普通に走っています。日本でだけ危険な理由は見当たりません。確かに慣れないと、最初は危なっかしいかも知れませんが、それは普通の自転車だって同じことです。慣れればきちんと安定して走行出来ますし、そのために作られているのですから、安全に走行出来るのが当然です。危険とされる根拠は薄弱です。

普通の自転車と比べて、機敏に動けないとか、急に止まれないとか、動きが鈍いとイメージする人も多いでしょう。しかし、結論から言うとそういうことはありません。普通の自転車と同等以上にコントロール出来ます。それを言うなら、普通の自転車に子供や荷物を乗せてフラついている人のほうが、よっぽど危ないはずです。

普通の自転車より強力なブレーキが装着されており、制動距離が長くなることもありません。むしろ普通の自転車のように、前のブレーキだけ急にかけることで、前転してしまうことがない(後輪が持ち上がらない)ぶん安全と言えるでしょう。横風に対しても、普通の自転車より安定していると言います。

折りたたみタンデム(2輪)折りたたみタンデム(2輪)

日本は道路が狭いからと言いますが、欧米にだって狭い道は少なくないですし、普通の自転車と比べて幅が広いわけでもありません。長さは多少長いものの、2輪ですし、危ないような長さではありません。無茶な走行をすれば危険でしょうが、それは普通の自転車でも同じで、タンデム自転車だけの問題ではありません。

結局、漠然とタンデムの自転車は危ないのではないかと感じているだけなのではないでしょうか。実際に、タンデムであることによって特に危険性が高まるということは無いと言います。今まで禁止されてきたがゆえに、危険と言うイメージになってしまっていると言えそうです。

2人乗りというだけで危ない気がするかも知れませんが、普通の自転車に2人乗りするのとは違って安定しています。また、街で2台の自転車で違法に並進する人を見ることがありますが、並進するよりはるかに安全なのは言うまでもありません。2台で前後に並んで走行するのと比べても危険は少ないと言えるのではないでしょうか。

タンデム自転車が歩道を走行すると危ないという懸念があるかも知れません。しかし、タンデム自転車は、普通の自転車が走行を許されている場所でも、一切歩道は走行出来ません。これは、タンデム自転車が解禁されようと変わりません。違反がないよう徹底する必要がありますが、それが解禁しない理由にはなりえないでしょう。

タンデム自転車が歩道を違法走行するかもしれないから禁止するというのであれば、普通の自転車だって、歩道を暴走するかも知れないから禁止すべきになってしまいます。クルマだって酒に酔って人をはねてひき逃げするかも知れないから全部禁止すべきということになってしまいます。

いろいろ考えても、タンデムを禁止にすべき説得力のある理由は見当たりません。ただ、おそらく多くの人にとっては、解禁されてもタンデムに乗る機会は少ないだろうし、どちらでもいいことかも知れません。だからと言って、無駄な規制をそのままにしておくことはありませんし、不当な規制を許しておくべきではないでしょう。

全面解禁されても、価格も安くないですし、誰もが購入するものではありません。すぐに街にタンデムがあふれるとは思えません。でも、観光地などにタンデムがあれば、乗ってみたいという人も多いのではないでしょうか。タンデムのレンタルは観光資源となる可能性があります。視覚障害者向け以外にもいろいろメリットはあります。

春風の中をタンデム車で駆け抜ける脚力の衰えた高齢者とも一緒に乗れますし、幼い子供に交通ルールを安全に教えるにも持って来いです。2人乗り出来ることで、今まで出来なかった場面で自転車が使えるようになり、恩恵を受ける人も少なくないはずです。一人ずつ乗るのとはまた違ったサイクリングが出来て、自転車の魅力がまた一つ広がることにもなるでしょう。

自転車は本来、車道を通るものであることが広く理解されるきっかけにもなるかも知れません。少なくとも自転車のポテンシャルの一つを抑制してきた規制がなくなったぶん、自転車活用の幅が広がり、正常な自転車文化の発展にも寄与するはずです。世界と比べると特殊な日本の自転車環境が、また一つ改善されることは間違いありません。

タンデムやトレイラー、カーゴバイクなど、自転車の使い方が広がれば、クルマを代替する可能性も広がります。温暖化ガスの削減や人々の健康増進に、さらに自転車が貢献することにつながっていくでしょう。世界のトレンドに合致する方向でもあります。自転車に関心が高まっている今こそ、タンデムを解禁してもいいと思います。

一説には、世界でタンデム自転車に乗れない国は日本以外に無いと言います。確かに海外で規制されているという話は聞いたことがありません。自治体ごとに裁量を発揮して個性を競うような分野ではないと思います。なんと言っても、道路はつながっているのですから、全国一律に解禁してもいいのではないでしょうか。


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世界各地で大きな地震が続くなと思っていたら、今度は噴火です。航空機への影響が、これほど広がるというのも意外でした。空港で足止めされ、いつ帰れるかわからない人もたいへんですね。

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この記事へのコメント
普通の自転車での二人乗りには反対ですが本来二人乗りが出来るように設計されているロングテールバイクでの二人乗りも解禁して欲しいものです。
自転車の可能性を無駄にスポイルしている規則が多い気がしますね。
Posted by HANZI at April 19, 2010 12:40
車道を走るタンデム自転車見たことありませんが
車道を走る自転車オマワリさんも見たことありません。
逆走する自転車オマワリさんならよく見かけます^^;
つくづくニッポンて不思議な国だと思いますネェ〜!
Posted by ホリゾン樽 at April 19, 2010 23:44
3月末にサイクリングコースの一部である陸橋の工事が終わって開通した東京の駒沢公園でも大分の写真のと同様な小径タンデム車の貸し出しが再開されました。スポーツタンデムバイクと比べて重そうですけど。

こんどの土曜は府中で雨が降らないといいですね。
Posted by 横着サイクリスト at April 20, 2010 10:21
横に並んで走る人が少なくなるから逆に安全だったりして
Posted by 職人気取 at April 20, 2010 20:12
HANZIさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
法律では、サドルやシートが2人分備わったロングテールの自転車は、軽車両として乗車定員まで、つまり二人乗りが許されているはずです。でも、これも都道府県ごとの細則などで乗車定員が定められているので乗れません。
タンデムが解禁されるとしたら、乗車人員の規制が緩和されるということなので、同じように乗れるようになるのではないでしょうか。
Posted by cycleroad at April 20, 2010 21:16
ホリゾン樽さん、こんにちは。コメントありがとうございます。
確かに、自転車の警察官は歩道を走っていますし、一般の人がママチャリに乗るのと同じ感覚のようですね。
自転車に関係する交通ルールの理解度に関しては、お寒い状態と言えるのかも知れません。
Posted by cycleroad at April 20, 2010 21:20
横着サイクリストさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
そうですか、ときどき大きな公園とか観光地の遊園地に備え付けられているのを見ますが、東京の駒沢公園で貸し出ししてるのは知りませんでした。
土曜日の府中とは、フリマのことですか?それは先週でしたよね。
Posted by cycleroad at April 20, 2010 21:25
職人気取さん、こんにちは。コメントありがとうございます。
すぐには並走は無くならないと思いますが、二人乗りするならタンデムに乗りなさいと言えるようになるかも知れませんね。
Posted by cycleroad at April 20, 2010 21:27
そうです、関戸橋フリマです。でも当日午前中は雨で、一部の好き者さんが当日や翌日に行ったらしいですが、大半の出店者や見物衆は次の土曜に来るはずです、またもや降られなければですが。

ロングテールって米国のXtraCycleみたいなやつのことですか?
Posted by 横着サイクリスト at April 21, 2010 11:40
タンデム車は修善寺のサイクルセンターとパレスサイクリングで乗りました。修善寺のタンデム車にはストカー用とは別に幼児椅子もついて、そこに子どもを乗せました。ほぼ普通自転車と同じ感覚でした。パレスサイクリングのタンデム車に乗る時も同じ感覚でいたら、失敗しました。タンデム車についてよく分からないのですが、パイロットとストカーは同じ速さでペダルを漕ぐ必要が有るのですか?別々に漕いでも大丈夫なタンデム車は有りますか?

 市販のタンデム車はスポーツタイプで荷物入れが少く、車体フレームの位置が高いので短足の私にはイマイチ好きになれません。サドルにまたがり易くて、ママチャリみたいに荷物が乗せられて、ストカーが疲れて寝てしまっても大丈夫な背もたれとシートベルト付きのタンデム自転車が欲しいです。
 合法的二人乗り自転車が欲しいとは思いつつも、未だタンデム車の魅力が分かっていません。普通に車や自転車に乗れる人には、タンデム自転車で無いと移動が困難な人の気持ちを理解するのは難しいでしょうね。


 駒沢公園には普通自転車を横に2台繋げた変形自転車も有りました。
Posted by ジャムおばさん at April 21, 2010 12:40
横着サイクリストさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
そうですか、先週は雨でしたっけ。翌週に延期ということですか。ただ今度の土曜日も微妙かも知れませんね。
そうです。そのうち、サドルやシートの形で、二人以上の乗車装置が取り付けられているものです。
Posted by cycleroad at April 21, 2010 23:41
ジャムおばさんさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
修善寺では私も乗ったことがあります。確かに皇居前にもありましたね。場所限定であれば、意外に乗れる場所はありそうです。
ギヤが直接つなげられているものは、連動しますから同じタイミングでこぐ必要があります。前後両輪駆動になっていて、直接連動しないものもあります。前後別々にこぐ形になりますが、前後の車輪が全く違う速度というわけにはいきませんから、全くバラバラにこげることにはならないはずです。
タンデム自体少ないですが、探せばいろいろなタイプがあると思います。寝そべった姿勢ということであれば、リカンベントのタンデムもあります。このブログでも2006年2月5日の記事で取り上げています。
タンデムの魅力のうちの一つは、まさに合法的に二人乗り出来ることでしょうね。
駒沢公園の近くを通ることはあるのですが、そう言えば中には久しく入っていません。並列型までありましたか。知りませんでした。
Posted by cycleroad at April 21, 2010 23:52
参考までに

http://hasebikes.com/147-1-tandem-pino-allround-flash.html

あるいは前後独立駆動の

http://www.twbents.com.tw/HTM/2010new.htm

ジャムおばさんのご要望に沿うとしたら、これなんかどうでしょう?
Posted by hikasa at April 22, 2010 08:19
hikasaさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
これは、いろいろと情報をありがとうございます。日本では見ませんが、両輪駆動というスタイルは、けっこうあるようですね。
ほかに、前後ともリカンベントのタイプなんかもありますし、日本でもこうしたいろいろなタンデム自転車に乗れるようになると面白いと思いますね。
Posted by cycleroad at April 22, 2010 12:13
「自転車は一人で乗る物だ」という認識から変えて
「親子や夫婦等で一緒に楽しめる軽い運動」として認識されたら、どれだけいいものでしょうね

よかったら私のホームページを見てくださいな
Posted by ルイヴィトン スーパーコピー at April 23, 2010 17:59
ルイヴィトン スーパーコピーさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
そうですね、スポーツとして認識している人も増えてましたが、二人でやるスポーツとなれば、また違った楽しさが広がるでしょうね。
Posted by cycleroad at April 23, 2010 23:32
日本では意味のない禁止事項が多すぎますね。
何か事故があるとすぐに規制を求める世論が出来上がる風土があったのかもしれません。
解禁して事故があったときに、攻められる役人にしてみれば、リスクをとって解禁という仕事をする必要はありません。
おかしな規制はみんなで無視するのが現状を変える近道では?
リカンベントに乗っていると、「違反だろう」といわれる事があります。
新しい試みや、変化が内心では大嫌いな人が多いようです。
Posted by クラウド at April 28, 2010 22:46
クラウドさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
私も、それはあると思います。日本の場合は、歴史的に「お上」意識が強いからか、政府や自治体の管理を要求する一方で、何かあると管理責任を問う声が上がります。
事故があれば、危険を知りながら放置していたということになります。日本のやり方だと、グランドキャニオンにも全部、柵を設ける必要が出てくるという例えがありますが、実際そういうところがあるので、笑えない話です。
おっしゃるように、これでは解禁するだけ損ということになります。こうした日本人の体質が、余計な規制を増やしているという点は否めないと思いますね。
Posted by cycleroad at April 28, 2010 23:43
 
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