サイクルロード 〜自転車への道
世界の都市で自転車が選ばれ始めている。さまざまな角度から自転車の話題を。
June 20, 2010
一人で聴くか皆と楽しむのか
iPod が発売されたのは2001年の10月でした。
いつの間にか、もう9年近く経つわけです。今や、耳元からコードをぶら下げているのを見るのは珍しくもありません。もちろん、街では自転車に乗りながら音楽を聴いている人も大勢見ます。法律で禁止されているので、明らかに違法なのですが、全く気にも留めていない人は多いと思います。
ケータイを使いながらの自転車乗車もそうですが、れっきとした道路交通法違反で、罰則は「5万円以下の罰金」です。道路交通法71条6号では、各都道府県の公安委員会が安全のために定めた事項を守ることを義務付けています。この条文の適用なので、都道府県条例違反ではなく法律違反になります。
都道府県によって定め方に若干違いがあって、東京などイヤホンやヘッドホンの着用自体が即違反としているところと、耳をふさぐ形で音楽等を聴いていると違反になるところがあります。ただ、いずれの場合も、周囲の音が聞こえない状態が危険ということで禁止されているわけです。
以前から危険な行為とされてきたものの、明示する形で禁止されてからはまだ日が浅く、浸透していない部分もあるのでしょう。まず取締られることはありませんし、警察官が見かけても注意すらしない場合も多いので、事実上野放し状態です。あまりに数が多すぎて、注意しきれないというのが実際のところかも知れません。
法律違反を擁護するつもりはありませんが、小さい頃からiPodなど携帯音楽プレーヤーが身近にある環境で育った世代にしてみれば、移動しながら音楽を聴くのは当たり前で、ごく自然なことなのでしょう。なかなか習慣が抜けない部分があるのかも知れません。
しかし、危険なのは間違いなく、必ずしも原因としては報じられませんが、音が聞こえずに事故に遭ったり、歩行者に大怪我を負わせる事例は増えていると言います。iPodを生んだアメリカでも、クルマに気づかず事故で死亡する人が増えていることから、各地で法律を制定しようという動きなども出ています。
ところで、それとは全く逆行するスタイルが新鮮と注目を浴びる人達もいます。ニューヨークのクィーンズ地区に住むトリニダード・トバゴ出身の10代の若者たちです。彼らが持ち歩くプレーヤーは、15キロワットという大出力のスピーカーやアンプです。BMXにこれらの音響機器を搭載した、言わば走る音楽プレーヤーです。
もちろん、彼らの手作りの作品です。今から3年ほど前、彼らはクィーンズ地区の窮屈な貸しガレージで、夜遅くまで作業して、これらのステレオ搭載自転車を作り上げました。単に、これまでに無かった新しいモノを創ろうとしていたわけではないと言います。彼らにとって、音楽は自転車に乗りながら聴くものではありません。
この自転車に乗って街に繰り出し、音楽は仲間と一緒に集まって路上で楽しむためのものというわけです。一人でイヤホンで聞くものではなく、音楽は浴びて、踊って、みんなで楽しむものという感じでしょうか。このあたりは、ラテン系の人たちならではの部分かも知れません。
それだけなら、ガレージの前でやればいいようなものですが、彼らは仲間と一緒に移動し、近所の人たちも巻き込んで即席のダンスパーティーをするために、わざわざ自転車に取り付けて移動出来るようにしているのです。どこでも歌って踊りたいということなのでしょう。
日本だったら近所迷惑ということになりかねませんが、ニューヨークは人種のるつぼですから、特にブロンクスやブルックリンなどへ行くと、各出身地それぞれのダンスミュージックを屋外で流して楽しんでいる人たちは少なくないようです。各国それぞれの文化を許容する空気もあります。
同じ出身国の人たちが集まって居住するのは、別にニューヨークに限ったことではありません。各地区で、それぞれ出身の国や地域のコミュニティがあるのでしょうが、彼らはいつも同じ場所で、いつも決まった人たちとだけでは、面白くないということなのかも知れません。
せいぜいラジカセを持ち歩くのが普通の発想だと思いますが、この自転車、見た目にもインパクトがあります。さすがのニューヨーカーも驚くようで、彼らの様子はドキュメンタリー映画にもなりました。アンダーグランドなカルチャー、アートな表現とそれを生んだ創造性あふれる若者たちとして紹介されています。
トリニダード・トバゴ出身のティーンに限らず、海外では自転車にステレオを載せてしまおうと考える人は少なくないようです。大きなスピーカーで音楽を流すことを必ずしも愉快に感じる人ばかりではないと思いますが、危険だとして法律で禁止されているわけではありません。
日本では、そろそろ季節ですが、少なくとも大音量で候補者の名前を延々と連呼する選挙カーよりはマシでしょう。それが当たり前と思っている人が多いので話題になりませんが、迷惑に感じている人は多いようです。欧米人は、この低俗な選挙を目の当たりにすると驚くと言います。
日本人は音には寛容な国民性なのでしょうか、街でもあちこちでアナウンスがあったり、音楽が流されたり、音があふれています。こんな迷惑な選挙手法も許されている国なのですから、日本でも、イヤホンがダメならスピーカーを鳴らしながら自転車に乗ろうという人が、もっと出てきてもいいのかも知れません(笑)。
オランダ戦は惜しかったですね。次は引き分けでも可などと言っていたらやられますので、スカッと勝って欲しいものです。
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Posted by cycleroad at 23:30│
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この記事へのコメント
自転車の運転中にイヤホンを付けるのはよくないのはわかるけど「車は運転中に音楽やラジオを聞いてもいいのに自転車だけダメだというのはおかしい」と言われると反論できません・・・
Posted by 職人気取 at June 22, 2010 07:44
職人気取さん 自転車は音楽聴いてはだめというのではなく、耳をふさぐと周囲の音が聞こえないからというのでしょう。その点では車も同じです。
耳をふさがずに音楽を聴くのはいいと思いますよ。
僕はサイクリング中は音楽を聞きません。自然の音が聞きたいから。
音楽は家の中か、外でも移動していないときに聞きます。
Posted by
トンサン
at June 22, 2010 11:20
弱虫ペダルと言う自転車?漫画で主人公の小野田坂道が
ママチャリで登校中にiPodに簡易スピーカー付けて
音楽聴いているのを見て
自転車で音楽いいのか?と気になって調べたら
上記の方法はいいそうでちょっと驚きました
話がそれますがiPodも最初見た時こんなのが売れるのか?
と思ったけど・・・売れてますねーw
iPodにしてもiPhoneにしても自分的には絶対売れないと思ってましたが大ヒット
そんな私も去年iPhoneを買いました(笑)
世の中何が流行るか分からないものです
Posted by toy at June 22, 2010 20:27
職人気取さん、こんにちは。コメントありがとうございます。
トンサンさんからもレスがついていますが、周囲の音が聞こえないのが危険だからということですね。クルマでも大音量で音楽をかけていると、違反となります。
ただ、クルマの場合は、わかりにくいので取り締まられにくいということはあると思います。
逆に言うと、自転車だけダメではなく、音量さえ問題なければ、自転車でもスピーカーから音楽を流すのは問題ないということになりますね。
Posted by
cycleroad
at June 22, 2010 23:42
トンサンさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
私も自転車では音楽を聴かない派です。法律で禁止されていなかったとしても、周囲の音が聞こえないのは怖いと感じますので聴きません。
仮にイヤホンの状態で聞こえたとしても、音楽に気を取られて注意力散漫になってしまうと、やはり危険だと思います。
自転車に乗っている時は、音楽よりも自転車を楽しみたいということもありますね。
Posted by
cycleroad
at June 22, 2010 23:51
toyさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
おっしゃる通り、イヤホンやヘッドホンで耳をふさがなければ、音楽を聴くことが直接禁止されてはいませんね。
もちろん、トリニダード・トバゴの若者たちみたいなスピーカーで大音量の音楽を流しながら走行していたら、止められるとは思いますか..(笑)。
ただ、イヤホンやヘッドホンを使いながら走行する人が増え、事故などが問題となったことで、都道府県の細則を変更する形で規制が強化されたわけですから、スピーカーも増えて問題が起きれば禁止になる可能性はあると思います。
iPodの発売が、アメリカ911の直後というのもありましたが、確かに、出た当時は、今のような状況は予想出来なかったですね。
Posted by
cycleroad
at June 23, 2010 00:07
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