全く新しい発想のスポーツ、「スポーツゴミ拾い」です。普通は作業として仕方なくやる「ゴミ拾い」に、スポーツとしてルールを導入し、拾ったゴミの量をチームで競うというものです。ゴミ拾いがスポーツとは、そのミスマッチさに意表を突かれた感じがあります。産経新聞から引用します。
広がる「スポーツごみ拾い」 競技感覚で環境意識向上
ごみ拾いにスポーツ競技の要素を取り入れた「スポーツごみ拾い」の大会が、全国各地で開かれている。収集したごみの種類と重量に応じて得られる得点で順位が決まる競技。楽しみながらごみ拾いをすることで、環境意識を養うのが狙いだ。運営団体は日本発のスポーツとして海外での開催も目指している。
1時間で90キロ超
今月5日午前、横浜市都筑区の市営地下鉄センター北駅前の広場に約100人が詰めかけた。この日のスポーツごみ拾い大会の参加者だ。
主催者から、決められた競技エリアから出てはいけない▽車道に飛び出さない−などのルールの説明が終わると、「ごみ拾いはスポーツだ!」というかけ声とともに競技がスタート。ごみ袋を手に21チームがごみを探し始めた。
一見、ごみは少ないように見えるが、参加者たちは次々とごみを見つけ出す。ルール違反がないよう、1チームに審判1人が同行するあたりもスポーツ競技のようだ。
開始から1時間後、競技が終了。燃えるごみ=100グラム10ポイント▽燃えないごみ=同5ポイント▽たばこの吸い殻=同100ポイント−などの配点でチームごとに得点を計算。優勝チームが決まり、表彰式も行われた。
まさにスポーツ競技のような感覚だが、この日1時間で集まったごみは91・95キロ。参加した東京都市大学3年の中山亮太さんは「競技感覚で楽しかったし、駅の周辺にどんなごみが多いかということを意識させられた」と話した。
いずれは海外でも
今回で18回目となる大会を運営するのは「日本スポーツGOMI拾い連盟」(東京都渋谷区)。代表を務める馬見塚(まみつか)健一さんが自宅近くでランニングしている際、ごみの多さに気付いたのがきっかけだった。
ランニング途中にトレーニングを兼ねてごみ拾いをしているうちにスポーツ競技にする発想が浮かび、平成20年に知り合いの大学生らと連盟を結成。東京で第1回大会を開いた。
「ごみ拾いだけでは意識のある人しか参加しない。スポーツだとそういう意識がなくても気軽に参加できる」と馬見塚さんは話す。実際、大会の参加者に聞くと、これまでにボランティアでごみ拾いをしたことはなく、スポーツだから参加したという人が多かったという。
得点を競うといったスポーツのエンターテインメント性だけでなく、環境意識をはぐくむことも大会の目的。連盟のスタッフとして活動する武蔵野大学3年の井上翔太さんは「参加するまでごみ拾いに興味はなかった。今では普通に街を歩いていてもごみを探すようになった」と話す。
こうしたコンセプトが共感され、大会の開催地は全国に広がっている。首都圏以外にも大分県や静岡県、山形県などで開催。馬見塚さんは「いずれは日本発のスポーツとして国外でも開催したい」。楽しいだけでなく、社会性もあるスポーツとして普及を目指している。
■ごみの総排出量は年々減少
環境省の調査によると、平成20年度のごみの総排出量は4811万トン(東京ドーム約129杯分)で、前年度の5082万トンに比べ、5・3%減少している。1人1日当たりの排出量も20年度は1033グラムで、前年度の1089グラムから5・1%減っている。
20年度のごみを排出形態別で見ると、生活系ごみが3118万トン、事業系ごみは1400万トン。生活系のごみが約65%を占めており、生活での意識向上がごみ削減の鍵を握っているといえそうだ。(2010.6.15 産経新聞)
ゴミ拾いですから、子供から高齢者まで一緒に汗を流せます。楽しみながら環境への意識が高められ、地域への貢献にもなるということで、大会を誘致する自治体や商業施設なども増えているようです。近くで開催されたとか、タウン誌や自治体の広報などで見たことがあるとか、既にご存じの方も多いかも知れません。
細かいルールが決められていて、当然ながらゴミ箱から拾ったりするのはルール違反です。チームごとに審判員が帯同し、目を光らせることになります。子供の教育にもなりますし、街で大勢の人が一生懸命ゴミを拾っていたら、道行く人もゴミを捨てにくくなるのは間違いありません。
私も、普通のゴミ拾いには参加することがあります。ゴミ拾いですから、決して楽しいものではありません。ところが、黙々と拾っていると、そのうち何も考えずに無心になって拾っていたり、いつの間にか熱中していたりします。終わると充実感がありますし、街がきれいになって気持ちがいいものです。
ゴミ拾いが楽しくなるという感覚が、何となくわかる気がします。まして、チーム対抗で、協賛スポンサーから賞品が出るとなれば、力も入るでしょう。走ったりしないので体力差も関係なく、老若男女で競うことが出来るのも面白いところかも知れません。さすがにわざわざ遠くへ出かける気はしませんが、一度参加してみたいものです。
ゴミ拾いと言うと、町内会の行事として否応なくとか、参加を要請されて仕方なくやるもの、というのが普通でしょう。しかし、スポーツゴミ拾いの参加者からは、「またやりたい」という声も多いと言います。街をきれいにしよう、街にゴミが落ちているのがおかしい、といった市民としての意識も向上するようです。
これは面白い発想です。運動になるだけでなく、楽しく街をきれいに出来て、地域住民のコミュニケーションが促進されたり、マナーアップにも貢献するなど、一石何鳥にもなりそうです。協賛する企業にとっても宣伝になりますし、地元への貢献として企業イメージがアップします。
ただ、スポーツと言っても、ふだんから練習するとか、個人的に楽しむといった性質のものではありません。大会が開かれないことには出来ません。今のところ、自治体や観光協会などが誘致するケースが多いようですが、今後は、連盟が主催する大会以外にも、もっと試合の機会を増やすことが、普及へのカギになりそうです。
例えば、お祭りや花火大会、あるいは野外イベントといった地域の行事の後、セットで開くことも考えられます。もちろん会場の後片付けは主催者の責任としても、行事の規模によっては多くの見物客が集まるので、イベント会場以外、街全体のゴミが増えたりします。後片付けを兼ねて行われるようになれば、街もきれいになります。
地元企業だけでなく、ゴミになっていることの多い、飲料メーカーやタバコメーカーなどは、罪滅ぼしの意味からも、積極的に関与してもいいのではないでしょうか。それこそ、全国大会を主催してもいいくらいです。各都道府県で地区予選をやって、甲子園のような感じで全国大会を開けば盛り上がるかも知れません。
いろいろ可能性がありそうなスポーツゴミ拾いですが、考えてみると、ゴミ拾いだけでなく他のことへの応用も可能かも知れません。例えば、スポーツ草むしり、スポーツドブ掃除なんてのも考えられます。落書きに困っている街なら、スポーツ落書き消しなんてどうでしょう。
すでに一部で似たような行事があるかも知れませんが、スポーツ外来生物駆除なんていうのも有益でしょう。外来魚などの外来生物によって、もともとの固有種が脅かされている例は少なくありません。ボランティアの協力を求めるのもいいのですが、スポーツの要素を取り入れれば、もっと参加者が増え、効果も期待できそうです。
ほかにも、いくらでも考えられそうですが、個人的にあるといいなと思うのは、スポーツ・マナー啓発です。自転車のマナーを向上させるための大会です。チームで街に繰り出し、自転車の違法行為に対して啓発活動を行うのをスポーツとして競うわけです。
例えば、違法行為の内容によって、ケータイ使用走行は1点、並走や歩道の暴走は2点、車道の右側通行は3点などと決めます。違反者を発見したら注意を促すため、声をかけます。止まってもらえたら1点、啓発用のチラシを受け取って話を聞いてもらえたら2点、その場で違反を解消してもらえたら3点などとしてもいいでしょう。
街の自転車マナーが向上すると共に、参加者の交通ルールの知識も向上します。ただし、大会の開催には、何らかの形で警察の関与が必要かも知れません。トラブル対策も兼ねて、審判をやってもらえたらベストですが、少なくとも大会中は、参加者に啓発活動員を委嘱することにするなど、何らかのお墨付きが欲しいところです。
トラブルを避けるためにも、笑顔で話しかけ、優しくルールの順守をお願いし、理解を求めることが必要でしょう。コミュニケーション・スキルの向上にも役立ちそうです。自分たちの街のマナーが向上して、お互い気持よく自転車が利用できるようになりますし、事故を未然に防ぐことにもなって有意義です。
ただ、ゴミ拾いと違って人に注意を促すというのは、誰もがやったことのある行動でないところが難点です。やっていて楽しくならないかも知れません。でも、スポーツゴミ拾いが広がって、そのバリエーションとして、いろいろな社会活動がスポーツとして行われるようになれば、可能性がないとは言い切れないような気がします。
自転車のマナーに限る必要はありません。社会にとって有益な活動をスポーツにして、多くの市民が参加するようになれば、もっと住みよい街が実現するに違いありません。願わくば、こうした活動が広がることで、落ちているゴミがなくなり、自転車のマナーもよくなり、スポーツにするネタがなくて困るくらいになって欲しいものです。
多くの地域で梅雨が明けました。雨の心配なしに出かけられそうですが、途端に暑くなっていますね。熱中症対策をお忘れなく。
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目をそむけてはいけない部分
日常生活でも家庭ごみを出しているが、ゴミから目をそむけがち。
地球の内外を汚しているのは
ゴミ拾いもいいのだが、まずゴミを出さないことを考えたいものだ。
見えないところに溜まるゴミ
ゴミを拾うことも大切なのだが、ゴミを簡単に拾えない場所もある。
家の外でも分別のある行動を
ゴミをゴミ箱に捨てたとしても、それは回収されなければならない。
ある国では、ゴミを決められた場所以外に捨てると罰金が科せられます。それくらいしないと、ゴミは減らないでしょう。スポーツゴミ拾いで懸命にゴミを拾ってくれる人達がいても、それを嘲笑うかのようにゴミを捨てるアホがいるのも事実であり悲しいがそれが現実。日本も厳しい罰則が必要かもしれません。
自転車の交通ルールに関しては、知らない人が殆どだと思われます。四輪や二輪の免許を持ってる人達でさえ、自転車は歩道を走行すると思っている場合があるくらいですから。免許を持ってない人なら尚更の事でしょう。管理人さんの言われている啓発活動は良いアイデアだと思います。ただ、全ての人間が黙って聞く耳を持つとは到底思えません。やはり、これも管理人の言われている通りお墨付きは絶対に必要でしょう。口で言っても聞かない人間は国家権力を翳さざるを得ません。
私も、こんな事がスポーツにならない事を願ってます。