August 13, 2010

自転車にも吹き込む新たな風

自転車で出かけて帰ってきた後、どうしてますか。


ひと風呂浴びてビール..と、そういう話ではありません(笑)。帰宅後に、自転車の走行記録をつけているという方もあると思います。日にちや場所、走行距離、時間、コースなどを記録しておけば、後日、同じコースを走る時はもちろん、他にもいろいろと役に立つデータとなります。

サイクルコンピュータをつけている人は多いと思います。走破した距離に満足感、達成感を感じて、記録しておきたくなることもあるでしょう。累積していく数字が励みになるということもあります。サイコンのオドメーターで見るだけという人がいる一方で、きちんとトレーニング記録などとして管理する人もいます。

最近は、高機能なサイクルコンピュータもありますし、GPSによる走行軌跡やハートレートモニター(心拍計)などのデータまで記録してくれる機器もあります。こうしたデータをパソコンに保存したり、携帯電話などを使ってアップロードし、ネット上のストレージに保存してくれるサービスなどもあります。

以下の“iPod touch”や“iPhone”の画面の写真は、自転車用アプリの例です。その下の“App Store”のロゴをクリックすると、iTunesのそれぞれのアプリの画面にとびます。興味のある方は、そちらで詳細を確認してください。iTunesを使っていない場合は、iTunesのダウンロード画面になります。



BD-1×自転車散歩 - Creators Guild.,Ltd.            Cyclemeter GPS Cycling Computer for Road & Mountain Biking - Abvio LLC           Cal.Meter 2 - act2, Inc.

いろいろな機器を使い、細かなデータまで走行記録として保存している人もあるでしょう。参考資料としてばかりでなく、自分の脚力や心肺機能などの成長が見てとれますし、今後のトレーニングプランの参考にするなどの使い方をしている人もあるはずです。ブログなどで公開している人もいます。

ただ、記録の仕方や使う機器はそれぞれだと思います。サイクルコンピュータも各社から出ていますし、細かいデータをとる機器は、自転車用品メーカー以外からもいろいろ出ています。記録に使うソフトもさまざまです。走行軌跡から累積高低差を計算したり、体重管理などとリンクさせるようなソフトもあります。

要するにバラバラですが、ひょっとするとこうした状況が変わることになるかも知れません。それも自転車用品メーカーによってではなく、あのアメリカ・アップル社によって変わる可能性があります。アップル製品の情報ブログ“Patently Apple”が、アップルが「スマート自転車(the Smart Bike)」の特許を申請したと報じています。

The Smart Bike

Patently Apple”によれば、これは「スマート・バイシクル・システム」と呼ばれる特許だと言います。自転車の各部に取り付けたセンサーによって、速度、走行距離、走行時間、ケイデンス、標高、累積標高差、勾配、心拍数、パワー、ディレーラーのセッティング、風速などのデータを計測し、iPodに転送して集計するというものです。

アメリカ特許商標庁によって、2010年8月5日付で公開されています。同時に走行している仲間や、グループなどでデータを共有したりすることも出来ます。自転車の種類もロードバイクに限らず、マウンテンバイクだろうが電動アシスト自転車だろうが、BMXであろうが利用できます。

磁気センサーだけでなく、ホール効果センサー、歪み計、光電センサー、音声ピックアップセンサー、心拍数モニター、加速度計、GPSなどの多様なセンサーと組み合わせることになります。ガイド音声を流したり、音声認識で操作することも可能で、天候や温度、消費カロリーといった、さまざまなデータも扱えると言います。



BikeMateLite - ZeroOne MIA Inc.                      MapFan for iPhone - INCREMENT P CORPORATION

早くもネーミングは“iBike”ではないかとか、“iCycle”だろうなどと、盛り上がっているファンもあるようです。スマートフォンの次はスマート自転車と聞いて、新たな機器が発売されると勘違いしている人もあるようですが、スマートバイクと言っても、アップル社が自転車を作るわけではありません。

自転車に詳しくない人は誤解するのかも知れませんが、こうしたコンセプト自体は新しいものではありません。高機能なサイクルコンピューターや、GPSなどの機器によって既に実現しているか、実現可能です。また、“iPhone”のアプリと、自転車用のセンサーキットで使うものも、すでにあります。

新たな機器としてサイクルコンピュータを発売するわけではなく、あくまでも“iPod”もしくは、“iPhone”を中心としたシステムで、そのセンサーやアプリケーションが発売される形になると思われます。ちょうど、ナイキのシューズによって走行データをiPodに集計できる「Nike+iPod」の自転車版のようなものです。

Nike + iPod Sport kitRunAway Adapter iPod Sports KitiPodセンサーホルダーiPod リモートコントロール

「Nike+iPod」は、ランナー向けのシステムで、シューズのインソールのポケットにセンサーを入れ、そのセンサーの信号をiPodで受信するものです。ランナーをサポートしたり、シューズ内のセンサーからiPodにデータを転送し、取得したデータをいろいろ活用出来るようになっています。

The Smart BikeThe Smart Bike

アップル社については、いまさら私がここで説明するまでもないでしょう。創業事業であるコンピュータばかりでなく、“iPod”、“iPhone”、“iPad”と世界的ヒット商品を立て続けに世に送り出しています。今や主力はコンピュータではなく、“iPod”を中心とした音楽事業となっています。社名からもコンピュータが外れました。

“iPod”が登場した当初、他にもフラッシュメモリ型の携帯音楽プレーヤーはいろいろありました。相対的に価格も高かったので、今のような大成功を収めると思っていた人は多くありませんでした。ところが、もはや世界的に携帯音楽プレーヤーの代名詞のようになっています。

“iPhone”も、既にあるスマートフォン市場へ参入したわけですが、その先進性やデザインで世界的な人気を確立したのはご存じのとおりです。“iPad”にしても、タブレットPCとしても電子書籍としても、特別に新しい発明というわけではありません。しかし、広い層に受け入れられつつあります。



RL Compass3G/3GS - y4u            Run Logger Free - y4u           Bicycle Stats - gnddesign.com

そう考えると、サイクルコンピュータの分野でも圧倒的な人気を確立し、事実上の標準となる可能性を秘めています。携帯音楽プレーヤーやスマートフォン、電子書籍などと比べれば小さな市場です。たくさんの互換性のない機器が乱立している中で、その高いブランド力やデザインなどで圧倒的なシェアを奪う可能性は充分あるでしょう。

何しろ、“iPod”や“iPhone”を持っている人は、世界中で膨大な数になります。その中の自転車に乗っている人に限っても、かなりの数の人が愛車に取り付ける可能性があります。すでに台数は、どんなサイクルコンピュータをも凌駕しています。あとはセンサーや取り付けキットの発売を待つだけです。

自転車用情報機器の、いわゆるデファクトスタンダードになる可能性十分です。中には、それがトレックやジャイアントといったメジャーな自転車メーカーによるものでもなければ、シマノやキャットアイといった自転車用品メーカーでもない、全くの異業種の製品になることに意外な感じを持つ方もあるかも知れません。



Run Logger Mini - y4u            Cycle Calculator - shimsite           deliBike - Deliapps

しかし、そもそも自転車部品メーカーのほうが自転車本体のメーカーよりはるかに規模が大きいという業界です。他にも圧倒的なシェアを誇る部品メーカーがあります。アップル社の“iPod”や“iPhone”が、既存のサイクルコンピューターに代わって、事実上の標準のようになっても不思議ではありません。

むしろ、サイクルコンピューターの利用者を増やしたり、走行記録を保管する人を増やすきっかけとなるでしょう。多くの人が同じフォーマットで、しかも簡単に共有できる方法で記録するようになれば、個々のデータだけでなく、蓄積されたデータ全体に違った用途が見出されたり、新たな展望を切り開く可能性があります。

記録をとったり、それを共有するだけでなく、自転車に“iPod”や“iPhone”が搭載されることで、ナビゲーションや情報端末として使うような動きも当然出てくるでしょう。新たな自転車部品としての発展をみせる可能性もあります。自転車がみなネットにつながるような時代が来ないとも限りません。



Crank Pacer - shimsite            SizeMyBike - La Pomme Chez Vous           HCPowerCalc - Noah Software

今のところ日本では、アプリはあっても、サイクルコンピュータに比べて大きな“iPod touch”や“iPhone”をつけている人はあまり見かけません。でも、もしこれが製品化されてヒットすれば、すぐに見慣れることになるに違いありません。まだ、予断は許しませんが、ちょっと楽しみな動きと言えそうです。


 iTunes Store(Japan) iTunes Store(Japan) iTunes Store(Japan) iTunes Store(Japan) iTunes Store(Japan) iTunes Store(Japan)


こんな記事を書いていたら、偶然、“iPod”の加熱や発火がニュースになっています。自転車だったら、冷えるからいいかも知れませんね(笑)。

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アプリが登場し始めた時点で、プラットフォーム化が始まっていた。

体験に位置をつけて共有する
すでに自転車の走行ログを共有化しようという試みは始まっている。

なるべく走りやすいルートを
自転車で走りやすい道路情報の、共有化につながる可能性もある。

ストリートの景色の先の未来
個人の自転車にもカメラが搭載され景色を共有するかも知れない。


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この記事へのコメント
今後こういうアプリケーションが増えていくでしょうね。私なんかはまだサイコンのデータを手入力でExcelに入れている程度ですがGPSロガーやサイコンからの自動転送など欲しい機能はどんどんでてきますよね。
Posted by moumou at August 15, 2010 18:55
moumouさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
自分のパフォーマンス向上が実感できるのはいいとしても、そんなデータまで必要か?と思いつつ、どうせならと項目数も増えてしまうものかも知れません。
余計なものはあまり付けたくない一方で、GPSだとか、いろいろ欲しくなるのは確かですね(笑)。
Posted by cycleroad at August 15, 2010 20:20
欧州を自転車旅行していますが、バックパッカーの人が、iPadを使っているのを見て、非常に便利だと思いました。
画面が大きいので、地図が見やすいです。
自転車に付けたら便利だろうなと思いました。
Posted by ヨッシー at August 27, 2010 04:00
ヨッシーさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
これは、これは、ヨーロッパからアクセスしていただき恐縮です。
iPodやiPhone用の取付具は出ていますが、さすがにiPadのは見たことがありませんね。確かに見やすいのは間違いないでしょうけど..。
どうか、気をつけて旅を続けてください。帰ったら、またコメントしてくださいね。
Posted by cycleroad at August 28, 2010 00:37
 
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