最近は、自転車関連のイベントも、以前とは違ったものが見られるようです。今年は猛暑の日本列島ですが、暑さに負けず、多くの人が自転車に乗って楽しんでいます。今回は例によって、最近の自転車関連のニュースからピックアップして取り上げてみたいと思います。
八幡さまもびっくり?! 参道石段をMTB快走 京都
京都府八幡市の石清水八幡宮で14日、マウンテンバイクによる自転車レース「レッドブル・ホーリーライド」が開催された。
表参道の約400段の石段や山道を利用した約1キロの特設コースでタイムを競った。寺社を利用したレースは国内初という。
大勢の観客が見守る中、約120人の選手が猛スピードで次々と石段を駆け降りる姿に、八幡大神もさすがにびっくり?!(2010.8.14 産経新聞)
なんと、神社の石段をMTBで駆け下りるというイベントです。夏場のスキー場などで開催されることはありますが、神社の石段と言うのは聞いたことがありません。郊外のスキー場だと、ギャラリーは限られてしまいますが、市街地に近い場所で行われれば観客も増え、レースの人気が出る可能性があります。
このようなレースについては、以前、ポルトガルのリスボンの市街の中の階段を駆け下りるマウンテンバイクのレースを取り上げたことがあります。(下の関連記事参照。)日本でもこんなに早く、こうしたレースが身近に見られるようになるとは思いませんでした。
遍路道1400キロ走破へ 自転車駅伝松山入り
四国霊場八十八カ所を自転車でリレーして走破する「四国霊場88サイクル駅伝」(実行委員会主催)の一行が愛媛県入りし、14日、松山市などの札所を巡った。参加者らは炎天下の伊予路を汗だくになって、たすきをつないだ。
遍路文化を全国にPRしようと香川県善通寺市観光協会などが毎年夏に開催しており、6回目。8日に75番札所善通寺をスタート、9日間かけて約1400キロを走り、16日に同寺にゴールする。今回は愛媛県の12人を含む9都県216人が参加。速さは競わず、各人の希望区間を5〜19台が一団となって走る。
14日、松山市浄瑠璃町の47番札所八坂寺では、早朝に西予市を出発し、久万高原町から松山に下ってきた自転車8台をはじめ、スタッフ、交代メンバーら約20人が参拝。お参りや掛け軸に朱印を押すなどしていた。(2010年08月15日 愛媛新聞)
四国八十八カ所のお遍路を自転車でリレーするというユニークなこの大会、初めて開かれた時にも記事にした覚えがあります。今年でもう6回目となり、夏の四国の風物詩として定着しつつあるようです。やはり四国八十八カ所という知名度もきいているのでしょう。
海外でも、夏休みなどに自転車に乗って聖地へ巡礼をするという人はいます。(下の関連記事参照。)もちろん宗教的な背景から、聖地巡礼に対する意識は大きく違うわけですが、日本発祥の独特のスタイル、駅伝で「たすき」をつないで巡礼するイベントというのは、他にはないでしょう。
おそらくこの時期、夏休みに自転車で四国八十八カ所巡りをしている人もあると思います。本来の姿である「歩き」だと全て廻るのに40日間程度はかかります。バスで廻るのでは、あまりにラク過ぎてお遍路と言うには気がひけます。自転車だと日程的には、ちょうどいいかも知れません。
被爆地つなぐ自転車の旅ゴール 親子で500キロ走破
広島から長崎へ、二つの被爆地をつなぐ自転車旅に挑戦した父子2人が15日、長崎市の平和公園に到着した。東京都板橋区の大庭純さん(48)と小学5年の長男梨駆君(10)。10日に広島を出発し、愛媛、大分、熊本を経て、6日間で計500キロを走った。
「平和を広げよう」という願いを込め、「和を駆ける」と背中に書かれたそろいの黄色のTシャツを着て走った。それを見た人から飲み物を差し入れしてもらったり、「平和のために、親子で頑張って」と励まされたりした。連日30度を超える猛暑の中、日差しで肌は真っ黒に焼けた。台風の影響で、長崎到着は予定より半日遅れた。
純さんは学生時代から、自転車で世界各地を旅してきた。現地の人々と触れ合い、「草の根の交流が平和の一歩だ」と実感した。人事サポート会社を経営する傍ら、8年前からは板橋区の国際交流財団で、ボランティアで外国人に日本語を教えている。親子で平和を発信したいと、終戦記念日に戦跡をめざす自転車旅を3年前に始め、沖縄、広島を訪ねてきた。今年は長崎を目的地に選んだ。
平和公園では中学1年の長女の梨和さん(12)と義母の大坪木乃実さん(68)が待ち受けた。4人で平和祈念像に花を供え、「二度と戦争が起こりませんように」と手を合わせて祈った。 (2010年8月16日 朝日新聞)
イベントでなくても、夏休みを利用して自転車で遠くへ出かけた人は多かったに違いありません。やはり、まとまった休みでないと、長い距離は走ることが出来ません。10歳で500キロ、しかも6日間で走破とはたいしたものです。大きな自信を得たことでしょう。
平和を願って広島から長崎というのも、意義のある目標です。テーマや場所はともかくとしても、夏休みに親子や夫婦、友人などと自転車で出かけた人も多かったのではないでしょうか。2人で走行し、お互いの絆を深め、いい思い出が出来たという人も多かったに違いありません。
タンデム走行可能に 広島県
広島県公安委員会は、2人が力を合わせてペダルをこぐタンデム自転車が県内全域の公道で走行できるよう、今秋にも県道交法施行細則を改正する。公道走行を解禁した愛媛県からの要請がきっかけ。両県を島づたいに結ぶ瀬戸内しまなみ海道全線で、タンデム自転車でのサイクリングが可能になる。
タンデム自転車は、1台に二つのサドルと二つのペダルを備え、前後に並んでこぐ。レンタル用の自転車として観光地での活用が見込まれ、高齢者や視覚に障害がある人も後席でサイクリングを楽しめる利点がある。
現在の広島県道交法施行細則は、6歳未満の幼児を専用座席に乗せる場合などを除き、公道で自転車に複数人が乗ることを原則禁止している。
一方で愛媛県公安委員会は、タンデム自転車について今月1日に公道での走行を解禁した。サイクリングガイドに取り組む今治市のNPO法人「シクロツーリズムしまなみ」が県に提案し、改正が実現した。
ただ、広島県では公道を走れないため、しまなみ海道を渡り切ることはできない。愛媛県の加戸守行知事は7月23日の知事会談で、広島県の湯崎英彦知事に解禁を要請。湯崎知事も「全国の自転車好きが、しまなみ海道に集まる環境づくりになる」と応じた。
広島県警は既に走行実験を済ませ、安全性を確認。県公安委員会は秋の観光シーズンに合わせて県道交法施行細則を改正する方針を固めた。(10/8/11 中国新聞 )
「しまなみ海道」を挟んで向かい合う愛媛県と広島県では、タンデム自転車が解禁されることになりました。「しまなみ海道」は、海の上を走れるという、他に類を見ないサイクリングロードとして、サイクリストに人気となっています。遠方から自転車で目指す人もあるようです。
愛媛県側では、一足先に今月1日から解禁になり、まだ広島まで渡りきることは出来ませんが、タンデム自転車で走行できるようになりました。広島県側も今秋にも解禁することを決めたので、その後は全面走行できるようになり、しまなみ海道は新たな魅力を増やすことになります。
愛媛・松山市、2人乗り自転車、公道疾走
四国・松山城のお堀周りの公道を、1日から愛媛県内で全面解禁となったタンデム自転車(2人乗り自転車)が走った。前側サドルには主婦津賀薫さん(59)。後ろ側サドルには視覚障害者の三谷武さん(39)。2人で1台の自転車をこいだ。(2010/08/11 共同通信社)
すでに、愛媛県側ではタンデム走行が始まっています。しまなみ海道というサイクリストに人気のスポットが、両県のタンデム走行解禁に道を開いた形ですが、これが他の都道府県にも広がることを期待したいところです。でも、しまなみ海道の影響は、タンデム走行だけにとどまりません。
自転車客の乗船料割引 尾道
尾道地区旅客船協会は9月11日から、自転車で瀬戸内しまなみ海道沿線を訪れる利用客の運賃を50〜10%割り引く社会実験を始める。尾道市内の港を発着点とする尾道、三原、愛媛県上島町の14区間を対象に、瀬戸内海の島々を船と自転車で巡る旅をアピールする。
割引券の名称は「しまなみサイクルーズPASS」。レンタサイクルがある同市西御所町の駅前港湾駐車場や三原市の三原港など7カ所で発行する。アンケートに答えた自転車利用者に当日有効の割引カードを渡す。
通常の運賃(乗船料+自転車)は最も高い尾道―因島土生町が950円、最も安い尾道―向島が70円。乗船時にカードを示せば、50〜10%引きとなる。
同協会はフェリーや渡船を運航する29事業者でつくる。うち11事業者が、向島▽因島▽生口島▽佐木島▽弓削島▽岩城島などを結ぶ14区間で割引を実施する。期間は2月末まで。来年度以降は通年実施を目指す。
社会実験に合わせて、参加業者は航路の時刻や料金を一覧表にまとめて配るなどサービスの充実も図る(10/8/13 中国新聞)
自転車のフェリーの乗船料金が割引きされることになりました。しまなみ海道だけ渡り切って終りではなく、時間がある場合は、周辺の島々の観光もしてもらおうというわけです。本四陸橋の開通で、クルマや鉄道に乗客を奪われがちな客船・フェリーへの集客策ということもあると思います。
しまなみ海道という、サイクリストに人気のスポットだからこその自転車向け割引きなのでしょうが、見過ごされがちな、自転車客に対するサービスの向上という点でも喜ばしい傾向です。そもそも自転車の搭載が実現していないところもあると思いますが、自転車客という視点が多くの交通機関に広がってほしいものです。
夢の自転車、アイデア募集 実際に製作も 大阪
こんな自転車あったらいいな−。河内長野市天野町の財団法人自転車センターは「夢の自転車」のアイデアを募集している。


市民の自由な発想で夢の自転車をデザインしてもらうことにより、自転車の開発に広がりと豊かさをもたせるのが狙い。昨年は全国から2万6126点の応募があったという。寄せられた作品の一部は実際に製作され、同センターで開催される作品展と試乗会で発表されるほか、地方公共団体主催のイベントなどに貸し出される。
2部門で公募されており、「近未来型自転車部門」では、年配者が安心して乗れる自転車、幼児を乗せられる3人乗り自転車など。「おもしろい乗り物部門」では、ユニークな乗ってみたいと思える自転車などが想定されている。
申し込みは9月8日までに、はがきに部門名、イラスト、作品の名称と説明のほか、住所、氏名など連絡先を明記したうえで、同センター夢の自転車アイデア係(〒586−0086 河内長野市天野町1304)に郵送。問い合わせは同センター((電)0721・54・3213)。(2010.8.10 産経新聞)
旅行関連のイベントだけではありません。関西サイクルスポーツセンターが、新しい発想で自転車を生み出すコンテストを行なっています。こうしたイベント、海外ではよく行われているのを見聞きします。自分でオリジナルな自転車を手作りしてしまうような人も少なくありません。
ただ、日本では自転車の製作に興味を示す人は少ない気がしていたので、昨年2万6千点もの応募があったとは驚きます。ブームで自転車への関心が高まっている側面もあるのかも知れませんが、日本でもこんなに、自転車の創作に興味を示す人が多いとは思いませんでした。
企業も自転車向けの新商品のアイディアをしぼっています。自転車のハンドルやヘルメットに装着できるビデオカメラ、「自転車用ミニDVカメラ」発売のニュースがリリースされています。自転車にビデオカメラを装着するための部品は、これまでにもありましたが、こんなにコンパクトなら気軽に装着出来て便利そうです。



YOUTubeの普及もあって、個人でも動画を撮る人は増えています。アップロードするかは別として、自転車での走行記録を動画で残す人も増えるかも知れません。既存の商品でも、自転車向けに再構成することで、新しい価値が出るものは、いろいろあるはずです。今後、こうした点に着目する企業は増えていくのかも知れません。
自転車ブームに環境問題、健康ブームなどの背景もあるのでしょうが、石段のMTBにしても、タンデム解禁にしても、これまであまり見られなかった動きです。海外では普通なのに、日本ではほとんど見られなかったイベントや現象も出現しつつあります。人々の自転車に対する意識も徐々に変わりつつある気がします。
最後にもう一つ。日本でなくベルギーでの話ですが、路上に施錠してある自転車が簡単に盗めてしまうことに気づいた人がいます。これは盲点です。当局も知るところとなり、秋までには改修される予定と言います。この時期、遠出して知らない場所に駐輪する機会も増えると思いますが、施錠する対象物には、くれぐれもご注意を。
この暑さですから、水に入りたくなるのはわかりますが、水の事故も多いですね。危なそうに見えず、なめてしまう人も多いのでしょう。気をつけたいものです。
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意外な場所で意外なイベント
海外では、市街地内でMTBの大規模レースが行われる所もある。
真直ぐ向かうか順番に巡るか
海外では自転車で遠路はるばる教会へ巡礼に出かける人もいる。
本来は自由に乗れて当たり前
タンデム自転車での走行が出来る県と出来ない県の違いは何か。
バスで行くか自転車にするか
自転車を搭載できる交通手段がもっと増えてもいいのではないか。