August 19, 2010

涼しく自転車に乗れるところ

相変わらず暑い日が続いています。


この猛烈な暑さに、街を歩いていても汗が玉のようにふき出します。日本列島は広い範囲で記録的な暑さに見舞われていますが、こうも暑いと、週末も自転車に乗るのは熱中症になりそうだからと敬遠して、海や川に泳ぎに行くという方も多いかも知れません。やはり夏は、涼しい水遊びが魅力的です。

街中にいても、思わず川や池に飛び込みたくなるような暑さです。自転車に乗れば風を受けますので、それなりには体温の上昇を抑えますが、それでもこの日ざしと気温ですし、照り返しも強く、体力も相当に消耗します。この暑さなら、海や川で泳ぐほうが気持ちがいいですし、水に潜ったりしたくなるのも当然です。

でも、この“The Scubster” なら両立できます(笑)。この潜水艇、実はペダルの力で進む、言わば水中自転車なのです。リカンペンントのような姿勢でペダルをこいで水中を進みます。形はベロモービルにも似ています。ただ、この潜水艦、普通とは違って内部にも水が入って来ます。ですから水中でも自由に出入り出来ます。

Scubster, www.scubster.orgScubster, www.scubster.org

つまり、スキューバダイビングをする装備、マスクをつけて空気ボンベを背負ったまま乗る潜水艇なのです。ウェットなサブマリンです。スキューバダイビングの装備のままですから、艇内に水が入ってきても平気です。逆に、内部に空気を保つ必要がないので、簡単な構造の潜水艇がつくれるというわけです。

これが普通の潜水艦だと、当然艇内には空気が満たされていて、何も無くても普通に呼吸出来ます。しかし一方で、その気密性を保持し、浸水してこないような造りにし、外部からの水圧に耐えるために、相当頑丈にしなければなりません。この水中自転車なら、内部にも水が入りますから、気密性も水圧も関係ないのです。

ちょっとした発想の転換と言えるかも知れません。構造が簡単で軽く出来ますから、水辺までの陸上の運搬も容易です。人の手で上げ下ろし出来ます。まさに水中自転車の気軽さです。ただ、水の中なので気持ちはいいとしても、これでは潜水艦の意味が無いと思う人も多いでしょう。そのまま水中を泳いだって変わりません。

Scubster, www.scubster.orgScubster, www.scubster.org

慣れた人ならダイビングスーツを着て容易に泳げるでしょうが、誰もが効率よく水中を移動出来るわけではありません。水中でもペダルを回すなら簡単です。水中で使う荷物なんかを運んで移動するにも便利でしょう。危険な海中生物から身を守る役割も期待出来ます。それなりにメリットはありそうです。

どうしてもサブマリンというとイエローになってしまうようですが、軍用ではないのですから、黒というのも変ですし、黄色だと目立つので安全性も高まります。これがグレーや白っぽい色だったら、サメに間違われそうです。知らずに、海中でグレーのScubsterを見たら肝を冷やすかも知れません。

ペダルの力は、左右のスクリューに伝えられます。角度を変えることが出来るので、浮上や降下も出来ます。旋回したり、前後左右、上下と自在に操縦することが出来ると言います。ボンベやマスクは必要ですが、手軽に一人乗りの潜水艦に乗れるというのは斬新です。




でも、実はこれ、レジャー用に開発されたわけではありません。フランス人の工業デザイナーとフランスの大学のエンジニアチームが製作しているもので、来年のインターナショナル・サブマリン・レースに参加するのが目的です。今、南フランスの海中で試験潜航を続けています。

デザインもいいですし、レジャー用にしても人気が出そうです。のんびり海中散歩には持って来いの乗り物のような気がします。しかし、ダイビングの装備が必要なのがネックです。装備をつけているのですから、ダイビングでいいわけですし、わざわざこのScubsterに乗る必要に乏しいのは否めません。

それでもペダル式の潜水艇、水中自転車というコンセプトは悪くありません。こちら、ロシアの会社が開発する潜水艇もペダル式です。こちらは、ダイビングの装備は必要ありません。先端技術で製造される、れっきとした2人乗りの潜水艇ですが、これもペダルによる駆動の水中自転車方式なのです。

Underwater vehicle, www.bluespace.ruUnderwater vehicle, www.bluespace.ru

動力を人力にするメリットは小さくありません。エンジンなどの装置や燃料タンク等が不要になることで、大幅に軽量化でき、船体製造のコストも劇的に小さくなります。つまり安く販売出来ます。難しい操縦方法を覚える必要もなければ、特別なトレーニングを受ける必要がないのも、一般に販売する上では大きなアドバンテージです。

オプションで電動モーターは用意していますが、ペダルをこげば燃料代もかからず、給油や充電の手間もありません。車体の重量も軽くなりますので、トレーラーに載せて、クルマでけん引して運ぶことも出来ます。小型のボートを個人で所有するように、個人で気軽に潜水艦を所有できるわけです。

コアンダ効果。This image is in the public domain.しかし、果たして人力で実用的なスピードが出るのかという問題があります。この会社では、コアンダ効果と呼ばれる理論を利用して、画期的な船体を設計し、大幅にスピードをアップさせたと言います。コアンダ効果とは、水流の中に物を入れると、その物の形に沿うように水が流れる現象です。(左の図)

そのほか操作性や操縦装置などにも工夫をこらし、魅力的な商品としながらも、既存の小型潜水艇を大幅に下回る3万ドルから7万ドル程度の価格にして、市場性を探る計画です。単なる移動手段でなく、レジャー用や観光用、フィットネス、科学研究、水中撮影からレスキューまで、さまざまな用途、需要が考えられます。

ダイビングをやらない人にとっては、水の中なんて、テレビのドキュメンタリーで見ることぐらいしかありません。それが個人で潜水艦に乗って潜航するなんて、いきなり、まるで007の映画の世界にでも来たかのようです。新しいレジャーとして広がっていく可能性は充分あると思います。

Underwater vehicle, www.bluespace.ruUnderwater vehicle, www.bluespace.ru


ちなみに、007から連想するなら、誰でも気軽に潜水艦が使えるとなると、密入国や麻薬の密輸など、悪事にも利用されてしまうかも知れません。ましてペダル式ならば、エンジン音もありませんからソナーにも探知されません。もちろん使い方、使う人の問題で、何であっても悪用する人はいますから、心配しても意味はないですが..。

いずれにしても、この個人用水中ビークルは、ダイビング以外の水中のレジャー、水中で普通の呼吸をしながらの活動を個人にも身近にする可能性があります。今日は暑いから、陸上じゃなくて、水中サイクリングにしようなんていう選択肢が現実となり、気軽に水中散歩出来る日も、そう遠くないのかも知れません。


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この記事へのコメント
キャビンの下部を開放して上部に空気を保つことで、
船体を軽量にすることもできますよ、理屈上は。

しかし潜れば空気は圧縮され浮力が減っていくので
20〜30m潜ってまた浮かんでくるためには、
投下バラストとか圧搾空気ボンベとか何らかの
浮力調整装置が要るので水浸し方式よりは複雑に
なってしまいますが。
Posted by 横着サイクリスト at August 20, 2010 14:32
個人的には、海中遊覧船や海中展望台で十分です。海中遊覧船で水深1m位でも楽しかったです。

エクストリームアイロン?危険な事しながらアイロンかけるみたいなスリルを楽しむ人には水中潜水自転車は受けそうです。

普通のアイロン掛け(家事)に追われている人は楽なレジャーしたいです。
Posted by ジャムおばさん at August 21, 2010 14:48
横着サイクリストさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
なるほど、言われてみれば確かにそうですね。
でも、浮力調整もそうですが、限られた空気では酸欠になってしまうでしょうから、ボンベをつけずに、普通に呼吸をしながら潜り続けることは難しいでしょう。
酸素を補充するような仕組みも必要になりそうです。やはり、スキューバダイビングの格好のままだと、いろいろ簡単になりますね。
Posted by cycleroad at August 21, 2010 23:12
ジャムおばさんさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
海中を覗ける遊覧船、ありますね。地上からそのまま海中に潜っていける展望台も確かに手軽です。
ただ、必ずしもスリルを求めなくても、水に入れば、何より気持ちいいですし、遊覧船や展望台では味わえない水の感触があります。全く別の体験です。
遊覧船や展望台よりは、確かに手間がかかりますが、ダイビングも、体験してみれば、けっこうハマるかも知れませんよ。
Posted by cycleroad at August 21, 2010 23:20
 
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