相変わらず、ひったくりの被害に遭う人が絶えません。
先月も、千葉県松戸市で自転車に乗った女性がひったくりに遭い、転倒して死亡するという痛ましい事件が起きました。その犯人2人が警察に逮捕されたことが報じられています。例によって「遊ぶ金欲しさにやった」と供述し、「大変なことをしてしまった」と青ざめているそうです。
通常は大きなニュースとして取り上げられませんが、身近で非常に多く起きています。地域によって減っている地区と増えている地域がありますが、誰かが犯行に及んで成功すると、仲間や後輩などにやり方を伝授して、連鎖的に一気に犯行が増えることもあると言います。減っている地域でも、安心は出来ません。
「ひったくり」と言うと、比較的軽い犯罪のようなイメージがあります。手っ取り早く現金が手に入れられる方法として、気やすく手を染める青少年も多いのでしょうが、とんでもないことです。無理やりひったくる犯行も多く、相手にケガをさせたり、場合によっては死亡させる事例も増えています。
ひったくりは万引きなどと同じ窃盗だと思っている人が多いと思いますが、相手にケガをさせる可能性のある犯行であれば強盗罪になりますし、実際にケガを追わせれば強盗致傷です。もちろん死亡させれば、強盗殺人罪が適用される場合もあります。
窃盗と強盗は違います。窃盗は重くて10年以下ですが、強盗殺人の最高刑は死刑です。おそらく、周囲に誘われて軽い気持ちで犯行に及ぶ場合も多いのだろうと思いますが、たかが、「ひったくり」などと考えていると、とんでもないことになります。そのあたりを認識していない青少年は多いに違いありません。
特に最近は、逃走のことを考え、クルマやオートバイを使って犯行に及ぶことが多いわけで、相手が反動で転倒したりする恐れは充分にあります。つまり、強盗罪が適用されてもおかしくありません。粗暴な犯行も増えており、もはや、ひったくりと言うより強盗といったほうが適切なのではないでしょうか。
個人的には、警察やマスコミは、犯罪抑止の観点からも「ひったくり」という呼び方を変えてもいいと思います。人に怪我を負わせたり、死亡させる事例も増えており、ひったくりは窃盗と言うより、もはや強盗であり、強盗致傷、もしくは強盗殺人になることを、もっと広く周知するべきだと思います。
被害者の9割は女性と言われていますが、酔っ払っていたりすれば、男性でもひったくられることがあります。これだけの件数が起きていれば、家族が被害に遭うことも含め、誰もがいつ巻き込まれてもおかしくありません。ケガが無ければ幸いですが、物的な被害も軽微とは限りません。
現金などの直接の被害以外にも、身分証明書などが悪用され、二次被害を被る恐れもあります。家のカギなどを作り直したり、クレジットカードや免許証の再発行手続きなど、大変な手間や時間もかかります。ケータイのデータの喪失や、身の回りのものも盗られてしまうなど、物理的にも心理的にも多大な損害です。
そんな被害に遭わないために、日頃から注意したいものです。ちょっとした注意によって、被害に遭う確率は大きく下がると言われています。格好は悪いですが、カバンをたすき掛けにしたり、車道側に持たないだけでも違うと言います。歩きながらのメールや通話も絶好のタイミングとして狙われるので注意が必要です。
ひったくりの被害者は、歩行者とは限りません。全体のうち徒歩が6割、自転車が4割ほどと言われています。そして自転車での被害の9割程度が、前カゴからひったくられています。つまり自転車の前カゴにバッグを入れて無防備に走行している人は、格好の餌食として狙われているのです。
前カゴからのひったくり被害防止には、ひったくり防止ネットが有効と言われています。各都道府県の警察も、前カゴにネットの使用を呼び掛け、街頭での無料配布を行うなどして、その利用を促しています。ただ、場合によっては、それが仇になる可能性も否定できないように思います。
つまり、防止ネットによって引きずられ、転倒してしまう可能性です。そのあたりの分析や統計が見当たらないので、危険性については断定出来ませんが、ネットが見えないこともあるでしょうし、ネットをしていても、バッグの持ち手が出ていたりすると強引にひったくる犯人も少なくないと言います。
買い物の量などによっては、ネットがうまく掛けられなかったり、ふだんは注意しているのに、ついうっかりということもあるはずです。そんな、「つい、うっかり」という人を探して犯行に及んでいるわけですから、いつも注意していたのに、と悔しい結果になりかねません。よくよく注意する必要があります。
ところで、最近はスポーツバイクに乗る女性も増えてきました。自転車通勤している女性も見ます。スポーツバイクには前カゴが無いものが多いので、リュックやメッセンジャーバッグか、ショルダーバッグなど、たすき掛けして背中に回せるバッグを使っている人が多いようです。
でも、リュックばかりではなく、かわいいハンドバッグを持ちたいという自転車女子も少なくないはずです。日頃から、機能的でファッショナブルな自転車向きのバッグが見つけられないことに不満だった女性がアメリカのシカゴにもいました。エミリーとマリアの2人です。
そこで彼女たちは、自ら“
Po Campo”というブランドを立ち上げました。彼女たちのデザインしたバックは、荷台やハンドルバーに固定することが出来ます。特にハンドルに固定すると、ハンドルバーバッグのような感じになります。これなら前カゴがなくてもバッグが携行出来ます。
こんなオシャレで機能的なバッグなら欲しいという女性も多いかも知れません。自転車に乗るには便利そうですし、自転車本体に固定できるので、ひったくられずに済みます。確かに機能的だと思いますが、残念ながらひったくり犯が、こうしたバッグの存在を知っているとは限りません。
単にハンドルの上にのっけているだけと見誤って、ひったくろうとする可能性は排除できません。そうなると、かえって転倒などの危険が増してしまうことになります。せっかくのオシャレで機能的なバッグが、逆効果になりかねないとしたら残念なことです。
自転車に固定できるバッグは便利ですが、ひったくれないように固定されていると広く世間に知られていないと安全とは言えないわけです。“Po Campo”のバッグも魅力的ですが、かと言って、その一種類だけでは満足できないという女性も多いに違いありません。
そこで、自転車のほうに、バッグを固定する仕組みを設けたらどうでしょうか。例えば、ハンドルの手前あたりに、前カゴとは別にバッグを固定するバーか掛けるハンガーなどを用意するわけです。ママチャリの多くは、フラットではなく湾曲したハンドルが多いと思われますので、ハンドルの中央あたりに設置してはどうでしょう。
形状はいろいろ考えられますが、要はバッグハンガーとしてハッキリ認識され、バッグが固定されていて、簡単にひったくることは出来ないということが広く知れ渡るようにする必要があります。これなら自転車用でない手持ちのバッグでも持って行くことが出来ますし、ひったくり被害に遭わなくなる可能性は大です。
前カゴには買い物袋など、ひったくられても被害の少ないものだけ入れるようにするわけです。自転車メーカーが装備しなくても、後付けで取り付けられるものは容易に製造できるのではないでしょうか。こうしたバッグハンガーが普及すれば、ハンガーからはひったくれないと認識されるようになり、安全になるはずです。
どこか一社が発売しても認知度は上がりにくいかも知れません。ひったくりが出来ないということが、広く認知されるのがポイントなので、自転車メーカーや、パーツのメーカー、警察など関係省庁や自治体などが連携して導入を進める必要があるかも知れません。
ひったくりは死者まで出す憎むべき犯罪です。なんと言っても警察による犯人の逮捕を願うと共に、割に合わない犯罪と認識させるためにも、検挙率の向上が期待されます。しかし、残念ながらそれは必ずしも容易ではありません。だとするならば、犯罪を未然に抑止することを考える必要があります。
警察やマスコミなどは、ひったくりと呼ばずに、強盗として重罪であることを強調していくことも有効ではないかと思います。もちろん、私たちの日頃からの注意も大切です。それにプラスして、自転車のほうの仕組みを作れば、更に効果が期待できるのではないでしょうか。
ようやくと言うか、急にと言うべきか、朝晩は涼しくなってきました。これからは、出かけるにもいい季節ですね。街に自転車も増えそうです。
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ビジネスシーンでも自転車を
自転車でスマートに荷物を運べる方法が、もっと出て来てもいい。
どこで出くわすかわからない
検挙は難しくても、パトロールを強化することは有効だろうと思う。
機能か重さかファッションか
自転車用のバッグを使うと便利で、ひったくり防止にも有効だろう。