October 09, 2010

果たして国民の声は届くのか

菅内閣の支持率が急落しています。


直接的には、中国漁船の衝突事件への対応に対する不満が反映しているようですが、一時支持率が反転上昇したのも、菅首相への支持と言うより反小沢の裏返しと言われています。今までとは違う市民運動出身の首相としての期待もあるとは思いますが、その政策や実行力が評価されての支持率でなかったことは確かでしょう。

菅首相脱小沢を打ち出したことは好感されたものの、国民は円高や株安が急激に進む中での民主党代表選を冷ややかに見ており、国民不在の権力闘争が支持されたわけではありません。決まりとは言え、菅氏と樽床氏が争ったばかりなのに、またすぐ代表選をやることに疑問を感じた人も多かったに違いありません。

その代表選では、先の衆議院選でのマニフェスト修正の是非が争点となりました。しかし、いくら衆議院選で大勝したとは言え、民主党のマニフェストが全て支持されたわけでないのは、誰もが指摘するところです。中には疑問の声が大きいものもあります。それを全てまとめて実現を迫るというのも乱暴な話です。

選挙公約として守らなくてはならないとの理屈はわかりますし、それはそれで誠実な態度と言えるでしょう。しかし財源が限られる中で、現実問題として全て実現するのは不可能です。国民の声を聞きながら、修正や撤回も躊躇すべきではないと思います。

農家の戸別補償制度も理解できますが、FTAとの絡みで言っても、農業の抜本的な改革が必要です。高速道路の無料化も、料金所を全て廃止して恒久化し、人件費等が一切不要になるならともかく、中途半端なまま国費の補てんで実施するのでは費用ばかりかさみ、その効果が疑問視されても仕方が無いでしょう。

地域主権戦略会議での菅首相子育て支援にしても、長期的な少子化対策としては必要な政策だとしても、待機児童などの問題はそのままに、現金だけ支給するのが適切かについては議論があります。景気浮揚効果も疑問ですし、マニフェスト通り全額支給出来るのか、財源的にも危ぶまれます。

おおむね誰もが賛成するのは、公務員制度改革や行政の無駄の徹底的な排除という部分でしょうか。しかし、無駄を省けば出てくると言われた財源も、結局ほとんど捻出できず、これぞ一番のマニフェスト違反だと指摘する声もあります。すぐに税金の無駄遣いをなくすののは難しいとしても、国民の不満は強いものがあります。

その中で、目新しさもあり、かろうじて人気を集めたのが「事業仕分け」です。仕分けた金額は大きいとは言えないものの、国民のうっ憤をはらすことに多少は貢献したでしょう。仕分けの中身については異論もありますが、仕分け人の蓮舫氏の詰問口調が連日お茶の間に流され、流行語のようになりました。

蓮舫行政刷新相その蓮舫氏は、仕分け人としての人気も手伝って、参議院選では171万票を超える最多得票で再選されました。菅首相が行政刷新担当大臣に任命したのも、その人気にあやかろうとした部分が無かったとは言えないでしょう。また、あの調子で、行政の無駄に切り込んで欲しいと期待する人も多いのではないでしょうか。

さて、その蓮舫行政刷新担当大臣が、内閣府特命担当大臣として副議長を務めるのが、内閣府に設置された行政刷新会議です。議長は菅総理です。他に仙石官房長官や野田財務大臣、玄葉国家戦略大臣、片山総務大臣らの閣僚や民間からのメンバーで構成されています。

行政刷新会議では、国の予算や規制・制度など行政全般を見直し、ムダの削減し、刷新していくとしています。事業仕分けの第3弾も予定されていますが、その取り組みを加速し、また新成長戦略を実現させていくために、広く国民の声を聞く仕組みを立ち上げています。国民の声アイディアボックスです。

国民の声アイディアボックス新成長戦略の7つの分野を中心に、国民からの提案も踏まえて、規制・制度の改革を進めていこうというわけです。一応PRには努めているようですが、まだあまり広く一般に知られていないようなのが残念なところです。同時に国民の声ツイッターも開設されています。

国民の声の募集として、最初9月10日に開始されたのは、おかしなルールの見直しにつなかる提案を、専用のフォームなどから投稿する普通のスタイルのものでした。国民生活や仕事に関係の深い規制や制度について、ムダや非効率を生んでいるものはないかという点への提案の募集です。

24日から加わったのが、国民の声アイディアボックスと国民の声ツイッターで、他の人のアイディアを自由に参照できるようになりました。投稿に対して賛成や反対、もしくは中立でコメントをつけることも出来ます。賛成・反対・中立とそれぞれの人数もわかるようになっています。

国民の声ツイッターこれによって、どんな意見が賛同を集めているのかが一目瞭然となり、サイト上での議論も深まる形になりました。従来のような形で提案を募集するのと比べ、国民の関心も高まり、提案を引き出しやすくなっていると言えるでしょう。この点については投稿者の評価も総じて高いようです。

この国民の声アイディアボックスの仕組み自体を評価し、10月14日までの募集ですが、その後も存続してほしいという意見も数多くみられます。政府の意見募集の制度自体が、そのような評価を受けるという点で画期的なことと言えるかも知れません。

肝心の寄せられた内容は、実にさまざまです。規制や制度の無駄や非効率といった枠組みをこえて、日常生活で感じる不満や要望から抽象的な議論まで、玉石混交といった状態です。ニッチなものや専門的な話もありますし、注目すべき意見、提案も含まれています。

行政の無駄を省くと言うより、例えば屋外は全て禁煙にしてほしいといった、むしろ規制を求めるような意見も多く寄せられています。一種の不満のはけ口的な部分もないとは言えないでしょう。しかし、いろいろ雑多な意見であっても、まず寄せてもらわなければ始まりません。

国民の声アイディアボックス細かく見ていくときりがないのですが、面白いものも見受けられます。例えば、粗大ゴミの持ち込みに対してお金を払うというアイディアです。粗大ゴミの処分費用をとるのではなく、逆に支払うのです。高い金額は払えないとしても、少なくとも費用がかかるわけでなければ、不法投棄する人も減るだろうというわけです。

多くの自治体が処分費用をとると思いますが、お金を払いたくないと不法に投棄する人が後を絶ちません。その不法投棄防止のパトロールや投棄されてしまったゴミの回収や処分にも多大な費用がかかっています。そのお金の使い方を変えるという発想です。上手くいくかわかりませんが、興味深い提案だと思います。

リサイクルに関しての提案は、他にもあります。環境への配慮やレアメタルの問題もクローズアップされる中、多くの人が、もっと資源を有効に利用すべきと感じているのでしょう。採算ベースに乗らない部分があって実現していないリサイクルについては、政府の何らかの関与が必要でしょう。

ざっと見渡した限りでは、パチンコに税金をかけろという意見も目につきます。パチンコを撲滅せよという意見もありますが、他の公営ギャンブルなどと比べ優遇されているので、もっと税金をかけるべきであり、そうすれば税収も増えるという意見が多いようです。

行政刷新会議NHKを廃止解体せよといった意見も多く、賛同者も多くなっています。廃止が果たして妥当かについては議論があると思いますが、確かに肥大化しすぎていますし、不祥事も絶えず、腐敗体質も長年指摘されています。半ば強制的に徴収される受信料を問題視する声も多いようです。

当然ながら、公務員全般に関連する意見も多く寄せられています。賛同者の多い投稿を見ていくと、「国民の声」が見えてくるような感じがします。公務員の非効率な仕事ぶりや、相対的に給与が高いことなどに対して厳しい目が向けられています。批判・非難ばかりでなく、建設的な意見も含まれています。

ワークシェアリングや、自殺の防止、うつ病の職場復帰への支援、労働基準監督署の強化、いわゆるブラック企業の取締りなど、雇用や労働関係の提案も少なくありません。児童虐待の対策や、ワークライフバランスの推進、待機児童の解消、教育に関するものなど身近な問題もあります。

そして、自転車に関する提案、賛同者も少なくありません。ブームということもあるのでしょうが、意外に多くの人が、自転車の走行空間の整備を求め始めているように見えます。政策としてのプライオリティの問題はあると思いますが、個人的には是非実現してほしいものです。

菅直人首相費用対効果が低いように思われていますが、国民医療費や介護費用の低減という意味でも、長い目で見れば大きな効果も見込めると思います。目先の財政収支も大切ですが、国民の安全を守ると共に、環境に配慮し、国民の健康を増進することは、国民の幸せにもつながるテーマだと思います。

見ていると、他にもさまざまな分野に関して、それぞれの問題点が浮かび上がってくる感じがします。中には、誰もが賛同するような意見も少なからずあります。こうした意見に対しては、政府の姿勢が問われているわけで、政策として早急に実現出来るか試されることになりそうです。

意見の中にもありましたが、こうして国民の声を聞く仕組みがあっても、それが活かされている、反映しているという実感が無ければ、国民の関心は離れていくでしょう。逆に国民の声が反映するとなれば、政治への関心も高まり、内閣の支持率も上がっていくに違いありません。

今回は、仕組み的にも国民の声を聞こうという姿勢が感じられ、評価されています。しかし、結局は、寄せられた意見にどう答え、いかに実現していくかです。マニフェストに変にこだわるより、国民の声を反映していくことこそが、支持率回復にもつながるでしょう。出来ることからどんどん実行していって欲しいものです。





その蓮舫氏にも、いろいろ問題が持ち上がっているようですね。頑張ってほしいところですが..。

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この記事へのコメント
そうですねえ、頑張って欲しいです。突飛な考えですが例えば全国の高速道路を自転車専用道路にすると面白いことが起こるでしょうね。そのぐらいのドラスティックなことを考えて欲しいものです。
Posted by moumou at October 10, 2010 18:02
国民の声に、取りあえず登録しました。
これから、アイデアを投稿します。

宣伝が足りないような気がしますが・・・。
Posted by ヨッシー at October 10, 2010 20:49
また新たな社会を教えていただけました。
ここで取り上げられたことによっても議論が活性化するのは、とてもすばらしいことだと思います。菅総理にも蓮舫大臣にも期待しているので、国民の声を聞いた結果のなんらかを、どう考えたからどう決めたというのを、しっかり見せて欲しいですね。
それにしても、歩行者、自転車ライダー、自動車ドライバーで、見方がかなり違いそうのだなぁということがよくわかってきました。喧嘩にならないルールと配分がしっかり決まった下で、各人が気持ちよく創意工夫できる世の中になりますように。
Posted by 七九爺 at October 10, 2010 22:04
ども、こんにちは

今、国はお金無い上に、税収増が期待できませんから、国民が満足するような事をするのは厳しいでしょうね

というか、ドル円レートも82円で上がりそうにはないですから、今後も民主党が思い切って借金を増やす方にでも舵を切らない限り経済が回復することを望むのは厳しいように思われます。
Posted by mak at October 11, 2010 13:13
moumouさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
道路公団を全て廃止して、他の国道と同じようにメンテナンスだけ税金でまかなうならば、余分な国費を投入せずに高速無料化も可能なのではないでしょうか。
確かにドラスティックに変えた方がいいものもあると思いますね。
Posted by cycleroad at October 11, 2010 21:20
ヨッシーさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
さっそく登録されましたか。確かに、せっかくこれだけ評価する声も多いのですから、もっとPRすればいいのにと思います。民主党も、そのあたりが下手ですね。
Posted by cycleroad at October 11, 2010 21:22
七九爺さん、こんにちは。コメントありがとうございます。
政治とカネの問題も大切ですが、国民の声が直接国政に反映するとなれば、もっと政治に関心を向ける人も増えるでしょう。
関心が高まれば、投票率も上がり、国民も真剣に議員を選ぶでしょうし、議員も真剣に政治に取り組むようになるはずです。それが、国会議員の質を高め、三流と言われた日本の政治も、もう少し良くなると思います。
政治が良くなれば、経済も良くなって、国民の生活も良くなるのではないかと思うんですけどね。
Posted by cycleroad at October 11, 2010 21:33
makさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
おっしゃる通り、そのあたりがジレンマというか、苦しいところでしょう。
ただ、財政の規律を優先するのならば、あとは知恵を出すしかありません。
大胆に規制を見直したり、制度を変えたりすることで、経済にも好影響を与えるような、上手い知恵があるといいんですけどね。
Posted by cycleroad at October 11, 2010 21:38
国民は政治家に期待しすぎな部分もあるように思います
特に経済はいくら国が対策を取っても国民がカネを使ってくれないとよくなりませんから自分の財布のヒモをゆるめずにいるのに景気対策を期待するなら、どうやってカネを使うかを考えたほうがいいと思います


歩道でよく見かける「自転車は押して通りましょう」の看板ってなんなんですかね
看板を設置するんだったら「自転車は左側を走りましょう」のほうが役に立つはずなんですけど
看板に書いたからってみんなが守るとは思いませんけど「押して通る」よりは書いてあることを守る人がいると思います
Posted by 職人気取 at October 12, 2010 07:07
職人気取さん、こんにちは。コメントありがとうございます。
今の状態で、政府が財政出動してバラマキをやったとしても、雇用や福祉の将来不安から、貯蓄にまわって消費が伸びませんし、もっと根本的な改革が必要なのでしょうね。
円高にしても、日本の株式にしても、政治が決断できないことを市場に見透かされていて、むしろ政治が経済の足を引っ張る構造は相変わらずと言えるでしょう。
まさに、自転車を歩道通行にした道路行政の矛盾が「自転車は押して通りましょう」になっているのだと思います。
歩道通行で事故が起きて看過できないから、降りろとなるのでしょう。最初から歩道を通すからいけないのが、わかっていませんね。
Posted by cycleroad at October 13, 2010 21:22
 
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