October 15, 2010

最強自転車が備えるべき要素

最強の自転車とは、どんなものでしょう。


人によって違うと思いますが、一流のブランドやビルダーによる高機能素材のフレームに、最上級のコンポ、ホイール、その他のパーツの材質や性能、軽さなどに、ひたすら高スペックを求めた、価格も桁違いのモデルを思い浮かべる人も多いと思います。最強スペックの自転車です。

もちろん、自転車の種類によっても違ってくるでしょう。ロードバイクやMTB、フォールディングバイクなど、それぞれに名門や人気メーカーがあります。最高速ならリカンベントかも知れませんし、雨にも強いベロモービルを最強と考える人もあるかも知れません。

世界一周に出かけるような、頑丈な自転車こそ文字通り最強と考える人もあるでしょう。普通の自転車であっても、自分なりに工夫して、最強の通勤用自転車とか、最強の街乗り仕様など、自分なりの最強を目指している人もあるに違いありません。最強の自転車はいろいろありそうです。

BOND bicycle, www.bondbike.com

この自転車、“BOND bicycle”も最強の自転車の候補と言えるでしょう。その「最強」の内容は半端ではありません。自転車の敵に対する攻撃力や防御力を備えています。各種の「武器」を備えた自転車とは、今まであまり聞いたことのないコンセプトです。

ハンドルのグリップ部分には、なんと火炎放射器が装着されています。道路を走行中に幅寄せしてくるクルマに対して、炎で威嚇し、間隔をあけさせることが出来ます。「普通の自転車だと思って近寄ってきたらヤケドするぜ。」というわけです(笑)。

BOND bicycle, www.bondbike.comBOND bicycle, www.bondbike.com

サドルにはイジェクトシート機構が備わっています。イジェクトシートとは、戦闘機からパイロットが脱出する時、コックピットの座席ごと空中に飛び出し、パラシュートが開く、あのシートのことです。射出座席ともいいます。それを自転車のサドルに採用し、自転車泥棒に対する攻撃力としています。

自転車盗が、盗んだ自転車に乗って逃走する時にサドルを射出して懲らしめることが出来ます。もしくは、盗もうとしている時に、サドルを飛びださせ、泥棒をノックアウトすることも出来るかも知れません。まさか、自転車のサドルが飛び出すとは夢にも思っていないはずです。

BOND bicycle, www.bondbike.comBOND bicycle, www.bondbike.com

外観上、一番特徴的なのは、なんといっても後輪です。キャタピラー式になっています。これは道路のくぼみなど、路面の舗装の悪い部分や、落下物などのアクシデントに絶大な威力を発揮します。どんな悪路でも走破するためには、やはりキャタピラーが一番という、戦車と同じ思想です。

前輪にもスキーの板のようなものが装着されています。もちろん冬季の積雪への備えです。雪が降って滑りやすい路面などで、後輪のキャタピラーと共に機能して、安定的に走行することが出来ます。まさに、走行する場所や時期を選ばない最強の足回りというわけです。

この“BOND bicycle”の“BOND”は、“Built of Notorious Deterrents”の略です。悪名高い抑止力で構成された自転車ということですが、当然、007のボンドカーを意識したネーミングであることは容易に想像がつきます。このご時世ですから、本家の映画にも、ボンド自転車が登場しないとも限りません(笑)。

BOND bicycle, www.bondbike.comBOND bicycle, www.bondbike.com

破天荒な最強自転車ですが、残念ながら購入はできません。実はこれ、イギリスの保険会社が800人のサイクリストを対象におこなったアンケートを元にして製作した自転車なのです。先日ロンドンのアールズコートで開かれた自転車ショーで公開されました。

そのアンケートによれば、52%のサイクリストが一番脅威に感じているのが、すぐ脇を猛スピードで追い越していくクルマやトラックです。そのため、火炎放射器が搭載されました。理由と解決策には飛躍がありますが、イギリスは左側通行ですので、右のグリップの先から放出されます。

25%の自転車乗りは、道路の舗装に不満を持っています。後輪にキャタピラーを装着することで、対応します。7%の回答者が自転車盗を心配しています。イジェクトサドルが効果を上げるだろうという理屈です。2%のユーザーが、寒い日に自転車に乗るのが一番厄介と答えたので、スキー板も装備しました。



このボンド自転車を紹介している“ETA(The Environmental Transport Association)”という組織は、ロードレスキューなどを行う、日本のJAFにも似た組織です。ただ、違うのはドライバーの権利を代表したり、クルマメーカーによる組織ではなく、「持続可能な移動」を標榜している団体なのです。

環境と輸送に関する研究を行い、クルマを過度に利用することによる環境への影響について広く啓発活動を行ったり、個人や団体がその移動手段を変えようとするのを支援したりしています。毎年9月22日に行われるカーフリーデーを、1997年に世界で初めて、国をあげて始めた団体でもあると言います。

ユニークなのは、ドライバーに対してだけでなく、サイクリストに対してもロードサービスを行っています。故障やアクシデントの際に駆けつけて、レスキューしてくれます。さらに、自転車に対する保険も提供しています。盗難保険や損害賠償保険、旅行保険もあります。

BOND bicycle, www.bondbike.com

もちろん、このボンドバイクは売っていませんし、“ETA”が、イギリス情報部のエース諜報員、ジェームズ・ボンドばりの、この自転車を推奨しているわけでもありません。こんな改造が許されない以上、サイクリストは正しく道路を通行し、またそのことで、クルマに対し毅然として権利を主張していくしかありません。

もう一つ、転ばぬ先の杖として保険をかけることを考えてみる手があるのでは、と問いかけています。このボンドバイクは、クルマとの事故や、落車などケガの危険、盗難の被害など、自転車を乗る上でのリスクをイギリス流のユーモアで気づかせてくれている自転車なのです。

ひたすら自転車のスペックを追求したり、パーツにこだわったり、自分で使いやすいようにアレンジしたり、楽しみ方はいろいろです。自分なりの最強を目指すのもいいですが、自転車のリスクも頭にいれておく必要があります。保険などでリスクに備えておくことも、最強の自転車には必要な要素かも知れません。


大丸通信販売 Dmall.jp (大丸ホームショッピング)「おせち特集」


しかし、チリの鉱山の見事な救出劇、感動的でした。奇跡の生還を果たした本人も、感動的な再会をした家族も、さぞかし嬉しかったでしょうね。


関連記事


何より事故が起きないように
歩行者との事故で高額の賠償責任が問われる場合が増えている。

自分で自分の身を守るために
自転車の破損による事故という可能性が、否定できないのも事実。

人のフリ見て我がフリを直す
どんな場所で、どんな事故のリスクがあるか知っていて損はない。

自転車の安全を守るヒーロー
ボンドバイクもなく正義の見方もいない以上、自分で守るしかない。


このエントリーをはてなブックマークに追加

 デル株式会社


Amazonの自転車関連グッズ
Amazonで自転車関連のグッズを見たり注文することが出来ます。



 楽天トラベル






この記事へのトラックバックURL

この記事へのコメント
いいですねぇ。こういう夢のある自転車は。
僕も自分なりの最強の自転車を作りました。
クロスバイクをお買いもの仕様にしたもので、前かご、荷台、両足スタンドを装着して100km以上の距離をサイクリングしたり、出かけた先のJAなどで新鮮野菜を段ボール箱に満載して帰ってきたりしています。

http://tonsan.boo.jp/tonsan/cycle/cycle2/merida/spec.html
Posted by トンサン at October 16, 2010 08:55
面白い自転車ですね。発想がいいですよ。でもこの自転車実際に走れるんですかね?後ろのキャタピラーが邪魔になりそうな。
Posted by moumou at October 16, 2010 18:01
こんにちは、いつも楽しみにしております。
とてもおもしろい成果物ですね。最強からは戦闘が連想され、仮想敵の順位は、横暴自動車、人造環境不良、盗賊、自然環境ということでしょうか。無謀自転車が上位に出てこないイギリスがうらやましいです。

信頼できるリーダーのもとで、皆が自負心を持って役割を果たせる社会が継続できたら素的ですね。
Posted by 七九爺 at October 16, 2010 18:38
キャタピラーがごつ過ぎて、明らかにチェーンが負けてしまうでしょう?

キャタピラーを直接回して欲しかったな!
それで、もう2枚くらいスキー板追加すれば、雪の上を走れるのでは???
Posted by ヨッシー at October 16, 2010 21:12
トンサンさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
おお、これはすごい。さまざまな改造をされてますね。こうした自分で考えた工夫をあれこれ施すのが、また楽しい部分ですよね。
いろいろと手を加えるにしても、人によって方向性も違えば手法も違ってくるとは思いますが、用途や生活スタイル、あるいは自分の理想に沿った自分だけのオリジナルをつくり上げると、また愛着も違ってきます。
そんな愛着の深い自転車こそ、その人の最強自転車ですね。
Posted by cycleroad at October 16, 2010 23:11
moumouさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
確かに、スピードは遅いでしょうね。雪が無ければ、スキー板も無用の長物ですし..。
スピードが遅すぎて、せっかくの火炎放射器も、ドライバーの目にとまらないかも知れませんね(笑)。
Posted by cycleroad at October 16, 2010 23:22
七九爺さん、こんにちは。コメントありがとうございます。
なるほど、たしかに無法な自転車への対策、例えば逆走してくる自転車への武器は入っていませんね。車道の左側走行が当たり前で、皆無とは言わないまでも、あまり逆走するような人はいないのでしょう。
そうですね、市民同士が武装して、お互いを警戒し合う社会はご免蒙りたいです。
市民一人ひとりが身勝手な行動をとることなく、社会の中で協調し、互いに思いやりやモラルをもてるような余裕のある社会になってほしいものです。
Posted by cycleroad at October 16, 2010 23:26
ヨッシーさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
たしかにキャタピラーが強調されすぎて、ボンドカーのようなスマートなイメージは出せていませんね。
むしろ雪上用の特殊自転車に見えてしまい、パッと見ただけでは、本来のユーモアが理解できないのが惜しいところです。
Posted by cycleroad at October 16, 2010 23:32
ハイテクバイクのように見せて、密かにハンドルについた起動スイッチのボックスがレトロで最高に可笑しいです。
ジェームズボンド=ショーンコネリーってことですかねw
Posted by JAMIS乗り at October 17, 2010 09:11
JAMIS乗りさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
よく気が付かれましたね。言われてみれば、確かに今どき、このスイッチはないでしょう。
おっしゃる通り、このレトロっぽさから言うと、ショーンコネリー時代のボンドバイクですね(笑)。
Posted by cycleroad at October 17, 2010 23:55
火炎放射器、これはスゴイw
でもこの自転車、メンテが大変そうですね
Posted by youshookme at October 18, 2010 18:56
youshookmeさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
火炎放射器は、きっとオイルかガスかを注入するんでしょう。イジェクトシートは圧縮空気か何かでしょうか。
キャタピラーもありますし、確かに面倒くさそうですね(笑)。
Posted by cycleroad at October 18, 2010 21:28
これで電動アシスト付でしたら、超最強ですね。
乗る人の器量にも寄りますが…
個人的には自分で修理・加工できる人が最強ではないでしょうか?自分にあったスペック・調整は自分にしかできません。
Posted by 小径者 at October 19, 2010 00:41
小径者さん、こんにちは。コメントありがとうございます。
アンケートでは、坂が敵だという人はいなかったのでしょうね。
確かに、最強とうたった自転車を買ってくるだけなら誰にでも出来ますが、それでは皆と同じわけで、最強にするテクニックやノウハウを備えていないと、最強に出来ないというわけですね。
Posted by cycleroad at October 19, 2010 22:51
これはおもしろいですね。

自転車向けの保険といえば、少し前までは大手の損保会社でも扱っていたのですが、今は大半の保険会社が撤退してしまっているようです。

理由はもちろん、販売が思わしくないから。

保険会社というのは量が売れないと事務費で赤字になってしまうのですね。

自動車でいうJAFのようなところが、自転車の保険も取り扱っているというのはとてもうらやましい話だと思いました。

ペットの医療保険の専門会社とかいうのもあるんだから、自転車も盗難保険と対物・対人保障などセットにして専門で取り扱う保険会社があっても良いと思うんですけどね。
Posted by 検索エンジン最適化対策 at October 22, 2010 23:04
検索エンジン最適化対策さん、こんにちは。コメントありがとうございます。
確かに自転車保険は少なくなりました。入る人も少ないですし、採算が合わないようですね。
ただ、以前の記事でも取り上げたのですが、日本でも、日本交通管理技術協会というところがTSカードという制度で、自転車に保険を付与しています。
こうした制度もうまく利用すべきでしょうし、保険会社でも賠償責任保険は、依然としてかけることも可能だと思います。
でも、実際に加入するかどうかは、自転車利用者の意識の問題も大きいのだろうと思いますね。

Posted by cycleroad at October 22, 2010 23:52
 
※全角800字を越える場合は2回以上に分けて下さい。(書込ボタンを押す前に念のためコピーを)