October 30, 2010

狡猾に仕組まれた国民への嘘

最近よくTPPという略号を聞きます。


これまで、あまり聞いたことのなかった略号ですが、環太平洋戦略的経済連携協定(環太平洋パートナーシップ協定)のことです。環太平洋の国々で、関税撤廃と貿易自由化を実現しようというもので、参加国の間でFTA(自由貿易協定)を含むEPA(経済連携協定)を結ぶことを目指しています。

ただでさえ日本は、韓国などと比べて各国とのFTAやEPAの締結が遅れ、それが輸出に影を落としています。このTPPにも乗り遅れるならば大変な不利益だとして、経済界などを中心にして参加を望む声が高まっており、TPP加盟の効果で、GDPが何兆円押し上げられるといった試算も出ています。

しかし、一方で現在778%という高率の関税で保護されているコメをはじめ、農業関係者は当然のように反対しています。何兆円もの損失といった試算も出されています。そして、こうした話の場合に必ず出てくるのが、農業が崩壊して食糧自給率が低下し、食糧安全保障上、大きな問題だというものです。

TPP反対これまでも自由貿易と農業の保護はジレンマでした。今回、菅首相がTPPへの参加検討を表明したものの、政府や与党内でさえ賛否が分かれ、方針決定の難しさを露呈しています。今も40%しか食糧を自給出来ないのに、これ以上農業を疲弊させていいのかと言われると、賛成派としては弱いところでしょう。

穀物価格が高騰して、世界各地で暴動が起きたのも記憶に新しいところです。レアアースのように、何かのきっかけで輸出が止められるようなことがあったらと不安に思う人も多いのではないでしょうか。一説には日本人の9割がこのことを不安視し、自給率の向上を望んでいると言います。

確かに小麦や大豆、トウモロコシといった主要な穀物の多くを輸入に頼っています。輸入小麦が入ってこなければ、パンやパスタやうどんも食べられなくなります。食用には国産大豆もけっこう使われていますが、食用油にする大豆は輸入に大きく依存しています。家畜の飼料としてのトウモロコシも、ほとんどが輸入です。

私も重要な穀物を輸入に頼っている事情は知っていましたから、イザという時のためにも、国産の割合を上げることは重要だと考えていました。食料自給率40%という数字も、農水省の発表するものですから、以前は疑うことなく、そんなものなのだろうと思っていました。

ところが、この食料自給率40%という数字に、実は大きなカラクリがあったのです。普通、食料自給率と言うと、国民が生きていくために必要な食料のうち、どれだけ国産でまかなえているかという数字だと思うでしょう。しかし、そうではないのです。

TPP参加反対この数字はカロリーベースですが、国民一人当たり、国産でまかなわれている食料のカロリーを、供給されている全カロリーで割ったものです。一見、正しそうに見えますが、実は供給されている全カロリーとは、市場で商品となった食料の熱量であり、流通の過程で廃棄される分まで含まれています。

お店で賞味期限が切れての廃棄や、家庭での廃棄分や食べ残しも全て含まれます。廃棄される食料が多いのは飽食日本の問題点ですが、だからと言って、ここで分母に全供給カロリーを持ってくることはないでしょう。日本の国民が生きていく上で必要な熱量は、年齢性別を加味すると平均1千8百キロカロリーほどと言います。

これに対し、供給熱量は2千6百キロカロリーもあります。必要なカロリーに対し、どのくらい自給出来ているかを計算するなら、自給率はそれだけで15%程度跳ね上がります。この点だけでも農林水産省の謀略を感じずにはいられません。

また、牛や豚、鶏など肉類については国産の割合も大きいのですが、仮にそのエサ、飼料を全て輸入に頼っていたとすると、国産の肉であっても、自給率的にはゼロとされる仕組みになっています。確かに飼料が輸入では自給出来ているとは言えませんが、国産を食べているつもりの国民の感覚とはズレがあります。

例えば、豚肉の国産の割合は5割以上、鶏卵は9割5分以上です。しかし、飼料の自給率をかけると、どちらも5%以下になってしまいます。そんなことを言ったら、農機具の燃料などエネルギーとしての原油だって99%以上輸入に依存していてるわけですし、自給率を計算する意味があるのかという話にもなってきます。

混迷今でも、トウモロコシなどの輸入飼料価格が高騰すると、他の代替飼料を使うことがあります。ふだんは価格の安い輸入飼料を使っていても、もし飼料の輸入が滞るような事態に陥ったら、全部は無理でも、何か国産のものを食べさせるのではないでしょうか。このあたりの自給率の意味にも疑問が残ります。

もちろん、野菜や果物などは多くが国産ですが、カロリーが低いため、カロリーベースでの自給率には反映しにくい仕組みです。事実、カロリーベースでなく金額ベースでみると現在でも70%の自給率があり、この数字は世界的に見ても決して低いとは言えないのです。

金額ベースで言えば、日本の農産物の輸入額はアメリカやドイツより低く、イギリスと同じくらいです。さらに国民一人当たりの金額でみれば、英、独、仏といった国々の半分しか輸入していません。決して農産物の輸入大国ではないことになります。このカロリーベースというところにも、大きなカラクリが隠されているわけです。

実際、世界中でカロリーベースの食料自給率なんて計算しているのは、日本と韓国の一部だけ、この数字を取り上げて、政策上の問題にしている国は日本だけです。農林水産省が比較のために発表している世界各国の自給率も、農水省が各種の統計をもとに勝手に計算して出しているだけなのです。

世界的には重要な指標どころか、政策的に全く意味がない数字と見なされています。カロリーベースの食糧自給率が40%と宣伝するのは、農林水産省の策略です。国民の不安を煽ることで、既存の補助金や予算を死守し、あるいは農協などの既得権を守り、天下り先を確保しようとしていると言っても過言ではないでしょう。

民主にも反対派海外からの農村物の輸入が減れば、自給率は上がります。いいことのように見えますが、そうとも限りません。輸入が減り、輸入先が減るということは、いざ国内が凶作に見舞われた時、それをカバーする手段が少なくなることを意味します。緊急に輸入が出来ないと、江戸時代のように本当に飢えることになりかねません。

これはこれで非常に困る事態であることは農水省も認めています。本当の意味で、食糧の確保ということを考えるのであれば、食料の純国産化を進めるより、輸入先を分散してリスクを減らすことが重要です。一方で日本の農産物の輸出を増やし、緊急時にも対応できる農業生産力の余力をつけるということではないでしょうか。

実際に日本の農業生産力は、必ずしも小さいとは言えません。農業生産額でみれば、先進国の中で日本はアメリカに次ぐ2位です。ヨーロッパ各国よりも多いのです。もちろん価格が高いこともあるので、金額だけで比べるのは無理がありますが、日本の農業生産力が必ずしも弱小とは言えないのです。

むしろ高い関税によって保護することで、かえって日本の農業を弱体化させるような、これまでの政策を転換し、本当の意味での農業の競争力の強化を図るべきではないでしょうか。農業の担い手の高齢化もあり、これは急務です。その激変を緩和するためにも、農家の個別所得補償などの制度は必要になるでしょう。

所得補償は欧米諸国でも普通に行われている政策です。やはり市場だけに完全にまかせてしまうと、農業の場合は不都合なことも出てきます。そうした保護の必要性は否定しません。農家は保護しつつ、FTAやEPAを進め、自由貿易を促進しても耐えうるような農業を目指すべきではないでしょうか。

TPPに参加をもちろん食料の安定供給は重要です。しかし、だからと言って自由貿易を進めていかなければ、日本の輸出産業が成り立たなくなります。グローバルな競争に勝ち残っていけず、雇用は減少、国民の所得が減り、貧しくなって食料が買えず、あるいは外国に買い負けて、別の意味で食料が満足に確保できなくなりかねません。

消費者は食料自給率というインチキな大義名分の元に、間違った農業政策に多くの税金を取られ、高い農産物を買わされ、自由貿易は阻まれてきたのです。このままでは農業が残っても、それを買う国民の購買能力のほうが心許なくなります。自由貿易の推進という日本の国益が損なわれることにもなるでしょう。

農水省の嘘に騙されてはいけません。海外では全く意味がないとされているにも関わらず、こんな数字を流布することは、国の利益にならないばかりか、農業政策と言うより省益を優先するものであり、まことに農水省の官僚は狡猾、厚顔無恥と言わざるを得ません。

円高や今の経済情勢から言っても、また世界的に見てもFTAを推進し、輸出を伸ばすことこそ求められ、また必要欠くべからざる政策でしょう。TPPへの参加も躊躇すべきではないと思います。いつまでも食糧自給率というレトリックに騙されていては、本当に道を誤ることになるのではないでしょうか。


デル株式会社


このことについては、ご存じの方もあると思いますが、まだ多くの人が気付いていないようです。私も、あまり深く考えずに農水省のインチキに騙され、自給率が40%しかないといった書き方を過去にしたことがあります。その後、この嘘を知り、間違いを正す意味でも、いつか書こうと思っていました。今回、TPPが話題になったことを機会に記事にしてみました。

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この記事へのコメント
いわゆる数字のマジックというヤツでしょうか。

40%と結果だけが報道され続けてきましたが、どのようにしてその数字が出てきたかというのが報道されない。
今の政府にとって都合のよいことだけが報道され、都合の悪いことは報道されない。国民の知る権利や報道の自由はどうなってしまっているのでしょうね。

国会中継にしても、少し揉めると音声や映像の中断があります。国民はその止まっている間にどんなことが話されているのかも知りたいと思っています。

FTAにしても、日本の方が締結が早く、韓国は最初遅れをとっていましたが、現在は逆に韓国のほうが沢山の国とFTAを締結しています。
今度は日本が追いつく番になるのでしょうね。
Posted by ろい at October 31, 2010 12:32
 こんにちは。

 TPP参加を加速させる側の論理にもインチキがあることにも目を向けた方が
良いと思いますよ。
農産物の関税が撤廃されたら、日本の農業は壊滅的な打撃を
受けます。
お相撲さんに例えたら、幕下の力士が横綱と戦うようなものです。全く勝ち目がありません。

 日本の農業はこれまでも貿易の犠牲になってきました。
今の米価は20年前の半値以下です。農業県の山形県でさえも、この5年間に
農業者人口が2万人も減少しています。今年の米価大暴落で
更に加速するでしょう。一般には、所得保障政策で農家が救済されるように
思われていますが、大幅な下落には対応できない欠陥商品です。
筺だけ立派でも中身はほとんど空のようなものです。

 給料が半分以下になっても、そのまま勤めますか?。
農家は今、瀕死の状態です。営農を放棄せざるを得ません。

 食料を他国に依存する国に未来はありません。ただ滅びるだけです。
Posted by ファーマー佐藤 at October 31, 2010 14:13
言われて久しいですが食料政策に国家戦略がないですよね。官僚の上が無能なのが大きいのでしょうが政治家も情けないし、真面目に現場でやっている官僚の下の人たちが下剋上するしかないですよね。
Posted by moumou at October 31, 2010 16:18
難しい問題ですね!
しかしながら、自由化の方向に向かうことは、避けることが出来ません。
何故なら、GDPの大部分を占めている、稼ぎ頭の競争力を無くすわけにはいかないからです。
問題は、如何に、そしてどの位農業を保護するか?
海外では一般的と言われている、所得補償等の方法と、お金を何処に集中するかが議論の焦点になると思います。
競争力のある農業は補助金を出しても育て、外国に頼るものは、自由化するべくでしょう。
でも、こんな当たり前のことを、今の農水省が出来ますかね??

自分は、何十年も製造業で汗水たらして外貨を稼いで、農業保護のため税金から金を貢いでいたことになりますが、それが過保護で、今の農業をダメにしたと言われても、腹が立つばかりです。
こんな政策を50年も続けてきた政治家や官僚の生き残りには退場願いたい気持ちで一杯です。


Posted by ヨッシー at October 31, 2010 21:20
ろいさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
確かに数字的なトリックですが、それをワザと使っていると言われても仕方がないでしょう。
世界的に使われていない、意味のない数字を使うことには、悪意すら感じます。
知る権利という意味では、調べれば一応はわかりますが、わざわざ調べないだろうという憶測の元に、平気でこんな数字を出しているということなのでしょう。
各数字の根拠などについて、公開を拒否している部分はあるようです。
報道されないというのは報道機関の姿勢なのでしょうが、このことを指摘している方は少なくないですし、本も出ています。
世界の国と競争しなくてはならないのに、省益を争ってどうするという話ですよね。
Posted by cycleroad at October 31, 2010 23:13
ファーマー佐藤さん、こんにちは。コメントありがとうございます。
確かに、TPP賛成派の論理にインチキがあったとしても不思議ではありませんね。ただ、具体的にどんなトリックがあるのかについては、私はあまり聞いたことがありません。
私も、日本の農業が壊滅的な打撃を受けてもいいと思っているのではありません。そんな状態になるのを座視していいなんて言うつもりは、毛頭ありません。
私も国産のコメが食べたいですし、品質、安全性、信頼性という意味でも日本の農産物を食べたいと思います。実際、国産と輸入があったら、価格が高くても必ず国産の農産物を買っています。しかし、わざわざカロリーベースの食料自給率を使うという、国民を騙すような農水省のやり方は支持出来ません。
国民には数字のトリックを使って、危機感を煽っておけばいいというやり方は、あまりに国民を愚弄するものだと思います。
農業がどうなってもいいから、自由貿易を進めろなんて言うつもりはありません。どちらも大切だと思うのは多くの人に共通するのではないでしょうか。そのあたりは本文でも書いてようにジレンマだと思います。
農業を守るのが重要なことは言うまでもありません。一方、多くの資源を輸入する日本は、自由貿易を進めなければ、今のような生活を維持できないのも事実でしょう。
経済がグローバル化する中で、自由貿易の方向に向かうのが世界の趨勢だとするならば、関税ではない方法で農家を守るしかありません。
そこで、所得補償を当たり前の政策として行っている欧米諸国と同じような方向に向かうのだろうと理解していました。それが、おっしゃるように欠陥だとするならば問題ですね。
食料を完全に海外に依存してもいいと思っている国民は、おそらくほとんどいないのではないでしょうか。難しい問題ですが、それだけに国民を騙すようなやり方をしていてはいけないのではないかと思います。
Posted by cycleroad at October 31, 2010 23:21
moumouさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
省益を優先するものだけが出世するような官僚の構造とか、既得権を手放さないことだけに必死な農業団体とか、農家の票だけが欲しい国会議員とか、いろいろ問題はあると思います。
少なくとも、従来の体制では、今の国際情勢に対応できなくなっていることは間違いありませんね。
Posted by cycleroad at October 31, 2010 23:35
ヨッシーさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
今の農水省に、これからの日本の農業を守り育てていけるかと言われれば、疑問ですね。こんなやり方をして、主権者たる国民を騙そうとしているだけでも、愚かと言わざるを得ません。
ただ、どんな組織であっても、自らの存在を否定したり、組織の存続を否定するように動くことはありません。
農水省の役人だって、農水省が縮小され、リストラされたくないですから、農水省の権益や予算を拡大しようとするのは、組織としてみれば当然の活動と言えるでしょう。
だからと言って、こんなあざといやり方をするのは容認できませんが、今の省庁の構造、縦割行政の限界の部分もあります。
農業だけでなく、他の産業との兼ね合いもありますし、もっと大きな視野にたっての国益を考え、国家戦略をたてるのは、やはり政治の役割ということになるのでしょう。
しかし、その政治にしても、与野党のせめぎ合いや党内の勢力争いに明け暮れ、票集めと人気取りしか頭にないようでは、到底期待できません。
国家の行く末を憂うような政治家が、今の世の中にどれだけいるでしょうか。大きなビジョンと強いリーダーシップを持った政治家に登場してほしいものです。
でも、政治家のレベルの低さは国民の政治への関心の低さの反映と言わざるを得ないのも事実です。政治家の登場も、選挙によるしかありません。私たちも、目先の利害ではなく、大きな視野を持って、国会議員を選ばなくてはならないでしょうね。
Posted by cycleroad at October 31, 2010 23:46
農業の話題は盛り上がりますねー
もうけようと思うプロの都市近郊農家は米なんぞ作りません。果物や野菜を生産します。
米を作るのは度田舎か、兼業農家でしょう。
米に人生をかけている人もいますが、どこかピントがずれているように思います。ビジネスでなく,意地でやっているような感じです。
もう少しで、兼業の米農家は早く絶滅させてプロのじゃまにならないようにするべきです。
自由化以外の道はありません。
Posted by クラウド at November 02, 2010 00:33
クラウドさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
やはり、日本の農業への懸念や関心が高いということなのかも知れませんね。
私は農家の実態はよく知りませんが、税制的などの点から農地を手放さずに集約が進まないとか、減反で虫食い状態に宅地化しているとか、耕作放棄地が広がっているとか、農業団体にも根深い利権が絡むとか、いろいろと問題は聞きます。
自由化の問題は別としても、その改革は容易ではないのでしょうね。
Posted by cycleroad at November 02, 2010 23:24
 日本で農地集積といっても、たかが知れています。
一戸当たりの耕地面積が2,000倍近くある大国には全く
敵いません。日本農業の現状を知らない人は、バカの一つ覚えのように

「大規模化でコストダウンをしなきゃダメだ!!」

と言いますが、日本では全く平な農地が少ないので、どうしても段々の
小区画圃場になってしまいます。それでも国の指導の下に大規模化を
進めてきた農家、あるいは集落営農組織は増えましたが、現況では
そうした担い手である大規模経営農家&組織が真っ先に廃業するしかないです。
大方の期待に反して生き残るのは兼業農家の方です。

「TPPに参加すれば食料自給率は15%に下がる」

というのはそういうことです。

 続く…
Posted by ファーマー佐藤 at November 03, 2010 01:10
 一次産業が潰れれば、二次産業、三次産業も甚大な影響を受けます。
第二第三の夕張市が出てくるでしょう。

 政府試算では、TPPに参加しない場合の失業者に対して参加した場合の
失業者は4倍の320万人になるそうです。前原外相に言わせれば、

「たかがGDPの1.5%の一次産業……」

ですが、環境保全機能も含めれば、とんでもない話です。

 私は専業農家で、稲作と果菜類栽培で生計を立てています。
国が定めるところの「担い手」でもあります。
地域では水田農業推進協議会の委員で、今の農業政策の現場に
深く関わっているので良く分かりますが、民主党の政策は最悪です。
水田などどうでも良い農家にも助成しようというのですから、自民党が

「ばらまきだっ!」

と批判するのは当たっていると実感します。

 自民党時代の農業政策は最悪だと思っていましたが、民主党は
それ以上に悪いです。

 そんな政党に国の運営を付託した国民はバカとしか言いようがないですね。

 東大大学院の教授で、国の諮問機関の座長を務めていた人と一対一で
話した時に彼が言っていました。

「結局、ひもじい思いをしないと分からないんですよ…。」

 ひもじい思いをしたこともなく、食料生産の現場を知らない人達が
国を動かしているんですからこんなことになります。

 これは、農業問題だけでなく、外交にしてもしかり。
中国と睨み合って下を向いてしまったもんだから、ロシアにもすっかり
舐められてしまいました。どっちを向いてもこの国に未来はなさそうです。(ーー
Posted by ファーマー佐藤 at November 03, 2010 01:13
みなさん弱肉強食の世界がお好きなのですね。
また、外でも内でも敵でない者を敵とみなして国内をまとめようとするようなそんな言説が飛び交っておりますね。
TPPに参加したとして、この国の製造業がアジアの後発メーカーに勝てるのでしょうか?
アメリカの自動車産業のようになるだけではないのですか?
グローバル資本主義の暴力性の犠牲になるのはいつも弱いもの達です。
今やるべきは富の再配分の公正化による内需拡大だと思います。
Posted by こいし at November 04, 2010 09:03
ファーマー佐藤さん、こんにちは。コメントありがとうございます。
私は現場のことは全く知りませんし、農政についても詳しくないのでわかりませんが、なるほど、問題の根は深そうですね。
ただ、政府試算と言っても省庁ごとに言っていることが違っているので、なかなかどれが正しいのかわからないのが、大方の人の感想ではないでしょうか。
ファーマー佐藤さんの立場からの主張は、よくわかりますし、もっともだと思います。ただ、一方で円高で大手メーカーが海外へ生産拠点を移す中で職を失ったり、受注を失う下請けなど、製造業の現場で苦悩している立場の人はまた違う意見だと思います。
民主党を選んだことが結果的に間違いだったと言えばそうかも知れません。国民がバカだと言えば、そのとおりかも知れません。
が、それが民主主義というものでしょう。民主主義の結果を見て、自らも国民なのに、他人事のようにバカだと言ったところで意味はありません。
農業の問題について、おっしゃるような問題があるのは確かでしょう。でも、農業は大切ですが、農業だけが政治ではありません。
逆に、食料生産の現場を知っている人達だけが国を動かしたほうがいいなんてナンセンスです。
客観的に見て、どちらかだけの主張が一方的に正しいという話ではないでしょう。だからこそ大きな問題となっているのだと思います。
その中で、農水省のやり方は、かえってマイナスなのではと思うだけです。前回も書いたように、農業のことを軽視するつもりは全くありません。
Posted by cycleroad at November 04, 2010 23:01
こいしさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
TPPに参加しても、新興国のメーカーの易い労働力には太刀打ちできないかも知れません。しかし、少なくとも同じ先進国同士の競争で不利になることはないということではないでしょうか。
それで、経済界を中心に、TPPへの参加を望む声が高まっているのでしょう。
富の再配分について何が正しいかというのは、日本の中でも、いろいろな考え方が分かれる部分ではないでしょうか。ヨーロッパ的な社会民主主義的な立場と、アメリカ的な市場原理主義的な立場では大きく違ってきます。
また、それをどう内需拡大につなげていくかが問題なのではないでしょうか。
Posted by cycleroad at November 04, 2010 23:45
 
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