部品を替えれば気分も変わる
自転車は部品交換が容易です。
と、言うより本来は、各パーツを選び、組み合わせて使う製品と言った方が正しいでしょう。便宜上、ほとんどのパーツが組まれた上で、完成車として売られている場合が多いですが、いわゆる上級者やパーツにこだわる人であれば、フレームはこれ、コンポはこれ、ホイールはこれ、といった買い方をします。
ある程度以上複雑な工業製品なら、今どきは分業が進み、全ての部品を一社で製造するものは、あまり無いかも知れません。でも通常は、家電でも何でも、見た目には1つのメーカーの製品に見えます。しかし、自転車は完成車として買ってきても、そのパーツにさまざまなメーカーの名前が入っているのは珍しくありません。
いろいろなメーカーの部品を必要に応じて組み合わせて使うのが普通であり、その組み合わせ方は無数にあります。完成車は一つの提案に過ぎません。何を使おうと基本的に自由です。何かの部品を交換するのに、その代替品として同等の材質やスペックどころか、同じ構造である必要すらない場合もあります。
日本では、基本的に同等の構造を持つ部品に交換するか、オプションとして追加する場合がほとんどでしょう。あまり奇抜な部品交換をしている人を見ることは稀ですが、海外ではもっと自由な発想で交換している例が少なくありません。交換したことで、大きく性質や用途、印象が変わってしまうような部品もあります。
こちらは、普通の自転車を3輪車、
トライクにしてしまう部品です。前輪をフォークごと交換するだけで前2輪のトライクに早変わりです。後ろ2輪の場合は構造的に難しいですが、前輪なら交換も容易です。3輪車と言うと、日本では後ろ2輪のイメージがありますが、欧米では前2輪のほうが多いと思います。
基本的に3輪にすれば、2輪と違って静止していても倒れなくなります。自転車に乗れない人でも簡単に乗れるようになるでしょうし、例えば雪が降った時に交換して3輪にし、ゆっくり安全に、安定した走行が出来るようにするなんていう使い方も考えられます。
荷物を運んだり、子供を乗せたりするのにも3輪であれば安定しますし、安全性も高まるので好都合です。子供が小さい時だけ3輪にして、後は戻すことも考えられます。日本でも、子供を乗せるために交換する、前2輪の部品が開発されてもいいのではないでしょうか。
こちらは、普通の
マウンテンバイクを電動二輪に変えてしまうというキットです。実は日本でも、普通の自転車を、ペダルをこがなくても進む、いわゆるフル電動の自転車にするキットは、これまでいくつも売り出されたことがあります。しかし、ほとんど話題にもならず、売れずに消えていってしまいました。
日本の場合はフル電動の自転車にすると、原動機付自転車の扱いになってしまい、法的な問題が出てきます。そのままでは公道で乗れず、ナンバーを取得したり、ウィンカーを取り付けたりと面倒なことになります。ヘルメットも義務です。ですから、わざわざそうした製品を使うメリットが少なかったわけです。
この製品は少しコンセプトが違います。MTB、それもダウンヒル用のフルサスのMTBに装着できる製品です。基本的にダウンヒル用のMTBは下り専用なので頑丈に出来ており、サスペンションもついていて重いのが当たり前です。ダウンヒル用のMTBで山道を登るのは容易ではありません。と言うより普通は登りません。
通常、ダウンヒルを楽しむのは夏場のスキー場が多いと思います。スキー場ならば、リフトなどの機動力が使えるからです。そうでない場合は、トラックなどにMTBを積んで運んでもらうのが現実的な選択肢でしょうか。しかし、このキットを使えば、そうした機動力が使えない場所でも乗れる可能性が出てきます。
動画で見ると、ペダルをこがずに山道を登っていきます。このキットによって、重いMTBでもラクラク山に登れます。スキー場や林道が整備されている場所以外でもダウンヒルが楽しめる可能性が出てくる電動化キットというわけです。日本での需要は多くないかも知れませんが、面白い商品です。
部品を交換すると言っても、男性には縁のないものもあります。それはドレスガードです。スカートやコートなどの裾を後輪に巻き込まないようにするための部品です。日本でもママチャリなどに取り付けられているのを見ます。冬場にコートを着て自転車に乗るならともかく、男性には普通あまり縁がない部品でしょう。
この
ドレスガード、普通は金属かプラスチックなどで出来ていると思いますが、手作りで毛糸を編んだものが、ヨーロッパでは立派な部品として売られています。クリップで泥除けに装着するようになっています。色も鮮やかで、武骨な自転車でも可愛らしい印象になるところが女性に人気のようです。
特にオランダあたりでは、ドレスガードにこだわる女性が多いと言います。自転車に毛糸のパーツとは意表を突きますが、逆にそのあたりが女性の心を捉えるのかも知れません。確かに、これだけで印象はずいぶん変わります。日本の女性に受け入れられるかどうかはわかりませんが、これもユニークな商品です。
今回取り上げた製品は、どれも日本では見かけないものばかりです。これから入って来るかも知れませんが、果たして日本で普及するかと言われれば、首をかしげざるを得ません。もともと万人向けのパーツではありませんし、日本独特の市場や自転車環境もあります。
しかし、必ずしも日本で需要が無いわけでもないでしょう。むしろ、自転車を一つの製品のように考えている人が多く、部品を交換すると言っても、単純に壊れた場合や、同等の機能や構造を持ち、スペックだけ違うようなものに交換する場合がほとんどということが背景にあるような気がします。
完成品として自転車を買うのが悪いわけではありません。しかし、何か不都合なこと、不便なことがあっても、自転車はこういうものだという固定観念から、あまり部品を交換することで改善したり、改造したりしようと考える人が少ないのも事実でしょう。
用途や必要に応じて、もっと柔軟に部品を変えることがあってもいいと思いますし、好みで個性的なパーツに変えてもいいような気がします。自転車は本来、もっと自由な道具であり、自分好みにカスタマイズするものだという、欧米人などが持つ感覚は、日本人がもう少し取り入れてもいい部分かも知れません。
意外と自転車が不足しているという児童養護施設は多いようです。寄付もありますが、一方で大量の自転車が廃棄されている現状があります。自治体の担当者が、少し気を利かせれば、すぐなんとかなりそうなものですが..。
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Posted by cycleroad at 23:30│
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こんにちは。
>自転車はこういうものだという固定観念から、あまり部品を交換することで改善したり、改造したりしようと考える人が少ないのも事実
確かにそうだと思います。安いママチャリが普及しているせいで、壊れたらなおして使うよりも壊れたら自転車そのものを捨てて買い直すという"消耗品"としてのイメージが定着してしまっているかもしれません。
スポーツ自転車乗りにとっては改造もひとつの楽しみ方だと思います。それはスピード(軽量化)重視、快適重視、ファッション(見た目)重視等さまざまで個性あふれるものです。自動車好きの人が自分の車をカスタムするように自転車好きも自分の自転車をカスタムします。自動車に比べれば部品がとても安いので気軽にできると思います。ママチャリしか乗らない人は自転車本来の楽しみを知らないから、自転車のカスタムに魅力を感じないのでしょう。
多くの人がスポーツ自転車に乗り、カスタムの楽しさを知ることで、"消耗品"としてのイメージが払拭されればと良いなと思います。
自転車版の"みんカラ"みたいなのがあっても良いのですが...
さすらいのクラ吹きさんへ
下記サイトに自転車SNSへのリンクが張ってありますよ。
http://www.cycleportal.jp/speak/index.html#a
僕は参加していませんが。
自分も児童養護施設で自転車が不足しているのは意外に思いました
駅前では邪魔者扱いされるほど余っているのに無い所には無いんですね
EGO-Kits、笑いました!
以前からよくMTB仲間同士で「電動アシストMTB出たりして」って言ってました。
まさか本当に出るとは!
これは「登りはイヤ!下りだけやりたい」なダウンヒラーには結構ウケると思いますよ!
だって、「絶対登りたくない」って人いますもん!(笑)
私は登りも好きなんで、こんなの欲しくないですけど。
でも、是非乗ってはみたいですね〜!
EGO-Kitsのサイトでスペック見てきましたけど、この装置結構重いんですね。
4.4kgか…。これ付けたら輪行は無理ですね (^^;
ドレスガード、私のママチャリに付けたいです!
自作してみようかな?
さすらいのクラ吹きさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
ママチャリの場合は、とにかく安くするために、最初から部品交換なんて考えられていないような部分があって、タイヤやチューブ一つ交換するのでも大変ですからね。ちょっと分解するだけでも、えらく骨が折れます。
ママチャリもクイックリリースにすれば、パンク修理も簡単になるのですが、最初から修理することを前提にしていないのでしょう。
スポーツバイクのカスタマイズは楽しいですし、軽量化一つとっても奥が深い世界ですからね。ただ、3輪にしてみようなんて人は、滅多にいないでしょうけど..。
自転車全体は多いですが、スポーツバイクに乗る人ということで見れば、最近増えているとは言え、まだまだ人数が少ないということなのでしょうね。
トンサンさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
最近は自転車関係のサイトも増えて来ましたし、自転車好きの集まるコミュニティもいろいろ出来てきているようですね。
情報ありがとうございます。
職人気取さん、こんにちは。コメントありがとうございます。
ですよね。まだ新しいのに廃棄されたり、二束三文で処分されて輸出されたりしているのに、一方で不足しているというのは意外でした。
今回の現象で、融通するような動きが出てくるといいですね。
youshookmeさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
MTB風にしただけでスポーツと名付けたような電動アシスト自転車は売られていたりするようですが、本格的なMTBの電動アシストというのは、確かに笑えますね。
ただ、日本のようにリフトや林道が整備されていない、原野のようなところも多いのだろうと思いますし、ダウンヒルの重い車体を電動だけでも駆動出来て、単独で登って行って、ダウンヒル出来るという用途の需要は、少ないかも知れませんが確実にあるのでしょう。
フル電動の自転車も、登録するだけとか、日本のように規制のない国も多いですから、電動MTBの需要も見込めるのかも知れません。
背中に背負うバッテリーもありますし、確かに輪行は大変そうです。
ドレスガードの自作、ぜひ挑戦してみてはいかかですか。オランダ女性にもてるかも知れませんよ(笑)。
>日本でも、子供を乗せるために交換する、前2輪の部品が開発されてもいいのではないでしょうか。
日本の法律では、二人乗り禁止だったのではないでしょうか?
> ドレスガードの自作、ぜひ挑戦してみてはいかかですか。オランダ女性にもてるかも知れませんよ(笑)。
あの、私、女なんです…。すみません。
そうですか、オランダ女性にモテますか(笑)
モテたらMTB仲間の男性達に紹介してあげます!
2回も投稿すみませんでした。
コジロウさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
何か勘違いされているのではないかと思いますが、16歳以上の者が、幼児用座席を取り付けた自転車に6歳未満の幼児1人を乗車させる場合は、除外されています。
街でも、幼児を乗せた人はたくさん、当たり前に見かけると思います。
2009年7月1日の道路交通法規則の一部改正では、安全確保の基準を満たす自転車に限っては、幼児を2人乗せる3人乗りも許可されています。
youshookmeさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
これは大変失礼いたしました。ご承知のように、スポーツバイクに乗る人は男性が圧倒的に多いものですから、あまり性別を意識せずにと言いますか、ついつい思い込みで、男性のつもりでコメントしてしまいました。
お詫びすると共に訂正させていただきます。
「オランダ男性にモテること請け合いです(笑)。」
実際、どこかのショップが扱ったりでもしたら、日本女性の間でもブレイクするかも知れませんね。ちなみに、何度コメントしていただいても結構ですので、お気づかいなく。
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