January 19, 2011

自然にかぶる人が増えるよう

一昨年には7百人もの方が亡くなりました。


自転車が関係する事故での死者です。ふだん忘れていることも多いですが、自転車に乗っていれば交通事故に遭って死亡することは当然ながらあるわけで、あらためて事故のリスクを考えさせられます。もちろん、この何倍もの方が負傷しているでしょうし、障害が残った人もあるに違いありません。朝日新聞の記事を引用します。


自転車運転、頭守ろう 米系メーカーがヘルメット配布

ヘルメット配布米系の大手自転車メーカーが、自転車用のヘルメットを無償で配り始めた。自転車の事故で亡くなる人の6割が頭部を打っているのに、乗車時にヘルメットをかぶる人は1割に満たないからだ。

東京都目黒区にあるウェブサービス会社「はてな」東京本店。昨年12月、「自転車通勤をしている方々へ」と新品の自転車用ヘルメット5個が届いた。スポーツタイプの自転車や関連商品の製造販売で世界的に有名な米スペシャライズド社の日本法人からだ。馬場誠社長(55)は「頭は命にかかわる。しっかり守って安全な運転を」と話す。

警察庁によると、2009年に自転車の関係する事故で亡くなった人は695人。数は減る傾向だが、自動車を含む交通事故全ての死者での割合は約14%で、年々高まっている。死者の63%が頭部に損傷を受けていることに注目した同社は、インターネットを使って約300人の自転車通勤者に調査した。すると、ヘルメット着用者は10%以下だった。

調査では、5人に1人が「通勤中に事故にあった」と回答。一方で、自動車も運転する人の約4割からは、「ヘルメットをかぶっている自転車の利用者のほうが視認しやすい」との答えも得た。

事故の状況同社によると、欧米と比べて日本では自転車に乗るときにヘルメットをかぶる大人が少ない。理由を調査したところ、「面倒」「暑い」「髪形が崩れる」「格好悪い」が大半を占めた。日本で流通しているヘルメットの多くは欧米向けで、頭の横幅が広い日本人にフィットしにくい。このため大きいサイズを選ばざるを得す、結果として装着感が悪い――と同社はみる。

そこで同社は日本人の頭にあうヘルメットを開発。「まずは無料で配って『食わず嫌い』を解消し、習慣づけてもらおう」と考えた。昨年9月下旬から自転車通勤に熱心な企業から希望を募り、3社に45個を贈ることにした。

真っ先に応募したのが、はてな。01年の創業当初から環境活動に力を入れ、自転車通勤者に月2万円の手当を出している。十数人いる社員のほとんどが自転車通勤者だ。国土交通省などが自転車通勤を促すために創設した「エコ通勤優良事業所」にも認定された。

ヘルメットを受け取ったはてなの田中慎樹執行役員(36)は「学生時代、転倒してヘルメットに救われた。社員にも使ってもらい、安全でエコな自転車通勤の輪を広げてゆきたい」と話す。

スペシャライズド社は利用者からかぶり心地や安全への意識をアンケートし、今後の普及・販促に役立てる方針。一方、日本人向けのヘルメットを生産してきた「オージーケーカブト」(本社・大阪府)は、「ここ数年で利用者は増えている。周りの利用者を見て『意外に格好がいい』と考えて、ますます普及してくれれば」と期待する。(2011年1月17日 朝日新聞)


死亡者数が減る傾向にある理由としては、医療技術の進歩も大きいでしょう。逆に言えば、死亡は免れたものの、大ケガを負って後遺症に苦しむことになってしまった人も相当数に上るものと推測されます。毎年の死亡者数以上に、多くの悲劇が起きていることになるわけです。

OGK LEFF死者の63%が頭部に損傷とありますが、重篤な後遺症も含め、頭部の保護が事故の被害を軽減し、死者や重傷者を減らす効果があることは論を待ちません。事故のリスクを完全になくすことは出来ませんから、もし遭った場合の被害を少なくすることは、きわめて合理的な行動です。

にもかかわらず、日本ではスポーツバイクに乗る人の一部を除けば、ヘルメットをかぶっていない人がほとんどです。自転車に乗っていて死亡事故に遭う可能性があることは誰でもわかっていますし、ヘルメットをかぶったほうが死亡のリスクが低くなることも自明です。

死亡率がヘルメットの着用だけに左右されるわけではありませんが、実際に、日本と違ってヘルメットの装着率の高いヨーロッパなどの国、着用を義務付けている国では、日本よりかなり低い死亡率になっています。自転車に乗っての不慮の事故で、年間これだけの人が亡くなるというのは、きわめて不幸な状態と言わざるをえません。

個人的には、ヘルメットをかぶりましょう、などと言うつもりはありません。親が子供にかぶせる努力義務があるのを除いて、法律で義務付けられているわけではありませんし、個人の自由です。かぶろうと思う人が、かぶればいいだけですし、かぶらない人を責めるつもりもありません。

ただ、基本的に国民の命や健康が損なわれることは、社会にとっての大きな損失です。ヘルメットによって尊い人命が失われるケースを減らし、医療費などの社会的コストが減らせることも事実です。後で悔やむ人を減らすためにも、ヘルメットの着用を推進することには意義があると思います。

Giro(ジロ) INDICATOR法律で義務付けられているわけではない以上、かぶりたくない人に、無理やりヘルメットをかぶせるべきだとは思いません。でも、ヘルメットの着用を啓発したり、人々にヘルメットをかぶってもいいなと思わせる環境を整えることで、結果としてかぶる人が増えるのであれば言うことはありません。

現状では、何より周りが皆かぶっていないというのが大きな壁になっています。徐々にでも普及し、かぶっている人が増えてくれば、ヘルメット着用への抵抗も少なくなっていくと思います。逆に、周囲がかぶっているのに、自分だけかぶらないと格好が悪いくらいになれば、誰もが、かぶるようになるに違いありません。

そこまでいくのは大変ですが、もし普及してくれば、人数の面で日本は自転車大国ですから、潜在的な可能性を持つ魅力的な市場と考えるメーカーが出てくるのも不思議ではありません。スペシャライズド社のようなメーカーが販促活動を行うことで、徐々に増えていく可能性があります。

人々がヘルメットをかぶらない理由にはいろいろあるでしょうが、一度かぶってしまうと習慣になるということはあると思います。そうした意味で、スペシャライズド社が無料で配布するなどして、まず使ってもらおうという戦略は、地道ながらも効果があるかも知れません。

ヘルメットに、いろいろな選択肢が増えることも重要だと思われます。自転車用のヘルメットと言うと、どうしても写真のようなタイプという固定観念を持つ人が少なくありません。でも、こうしたタイプが自分には似合わないと感じている人も多いのではないでしょうか。

例えば、帽子だったら、野球帽や麦わら帽子、山高帽に毛糸の帽子、ハンチング帽から目出し帽まで、実にさまざまな種類があります。それほどは無理としても、ヘルメットにも、もう少しバリエーションが増え、自分の好みや似合うものを選べるようになると違ってくるかも知れません。

Urbanize N' Light Helmet, www.lazerhelmets.com

日本では需要が少ないため、店頭での品揃えが豊富とは言えませんが、最近ではいろいろな種類のヘルメットが出てきています。後頭部にLEDのテールランプを配置し、夜間の後方への視認性をよくするなどの工夫が施された製品もあります。

LED mohawk bike helmet, www.ubergizmo.com

ここまで派手なものにニーズがあるかはともかく、なかには個性を強調したいという人もいるでしょう。少なくとも夜間の視認性は抜群です。とにかく目立ちたいという人には、こうした個性的なヘルメットを構成できるキットなんかがあってもいいかも知れません。

belle helmets, bellehelmets.combelle helmets, bellehelmets.com

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ヘルメットに一個一個、手書きのペイントを施し、作品としてヘルメットを製作しているアーティストもいます。他人と差別化し、自分だけの一品が欲しいという人には魅力的です。ものによっては、自分のヘルメットを持ち込んで描いてもらうことも出来ます。

Paul Smith For Giro, www.paulsmith.co.uk

有名デザイナーがデザインしたヘルメットもあります。こういう他との違いを打ち出すヘルメットが出てくると、カバンや靴などと同じように、オシャレをする感覚で、かぶる人が出てくるかも知れません。これまでのように実用面だけでなく、所有する満足感や収集の楽しみなどの面も出てくる可能性があります。

A DIY Sun-Protective Brim for a Bicycle Helmet, www.instructables.com

夏の日差しを避けるため、ひさしのついたヘルメットがあってもいいでしょう。夏、自転車に乗る時、何らかの日よけがついた帽子をかぶる人も多いと思います。それがヘルメットであってもいいはずです。この人は自作していますが、けっこうニーズはあるかも知れません。

NYC Helmet, www.fuseproject.comNYC Helmet, www.fuseproject.com

NYC Helmet, www.fuseproject.comNYC Helmet, www.fuseproject.com

こちらは、普通のヘルメットにファブリックを組み合わせることで、機能的にしています。日ざしを避けたり、首の後ろに日があたるのを防ぐことも出来ます。冬の寒い時用に、耳を覆うような形にすることも出来ます。ニューヨーク市のヘルメット普及政策の一環として依頼されたデザインだそうです。

Kranium, www.anirudharao.com

ヘルメットと言うと、発泡スチロールが使われている場合が多いと思いますが、形状によってはダンポールのほうが衝突エネルギーの吸収に優れるという研究もあります。頭の形に合わせるのも容易で、二次元から切りだして組み立てて使え、軽くて価格も安いので、他にもいろいろメリットがあると言います。

Carbon, www.bernunlimited.com

素材ということで言えば、カーボンファイバーで出来たヘルメットもあります。衝撃吸収材は別として、表面のシェルが劣化や破損しにくいというメリットがあります。素材としても高級感があるので好む人もいると思います。こうした選択肢があってもいいでしょう。

шлемами, good.kzшлемами, good.kz

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こんなユーモアのある製品だったら、かぶってみたくなる人もあるかも知れません。これは、ロシアの広告会社が製作したもので、実際に商品になっているわけではありませんが、ユニークです。昼間だったら、周囲の視線をひきそうです。

Pango Folding Helmet, www.dahon.com

フォールディングバイク、折りたたみ自転車で有名な“Dahon”社には、なんと折りたたみの出来るヘルメットもあります。これなら、バッグにも入ります。ヘルメットは自転車から降りた時の持ち運びが不便で、邪魔になるといった不満も解消出来るでしょう。



探せば、いろいろなヘルメットがあるものです。選択肢が増えてくれば、ヘルメットを選ぶのも楽しくなります。需要が少ないので選択肢が増えないという、ニワトリと卵のような部分もあると思いますが、日本でも需要が増えてくれば、ヘルメットの品揃えも充実してくるでしょう。

そして、洋服やカバン、アクセサリーなどを楽しむのと同じような感覚で、ヘルメットをかぶるのがファッションになってくれば、もっと普及していくと思います。事故による死者を減らすためにも、ヘルメットが、出来ればかぶりたくないものから、楽しむものに変わっていくことを期待したいものです。


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卓球で最年少勝利更新ですか。しかし、小学生に負けるっていうのも悔しいでしょうね(笑)。

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この記事へのコメント
こんばんは。いつも楽しく読ませてもらっています。

僕はローディがかぶっているようなヘルメットは、今の自分のサイクルスタイルに合わないのでかぶる気がしません。
なので改造したヘルメットを使っています。
(以前紹介したことがあると思いますが)

http://tonsan.boo.jp/tonsan/kosaku/kosaku2/kosaku30.html

また「ママチャリからスポーツバイクに乗り換えよう」
という気にさせたいなら
「前かごの付いたスポーツバイクを作るべき」です。
ママチャリには何故かごが付いているのか、考えるべきだと思います。

僕はクロスバイクにかごを付けたり、両立スタンドを付けたりしましたが、取り付けのための改造はかなり大変でした。
売っていれば人にも勧めます。みんな売っていないから、そういう文化にならないのです。
メーカーの市場リサーチができていないと思います。


Posted by トンサン at January 20, 2011 20:29
こんにちは。

僕は去年、歩道走行中に歩道と車道の切れ目にあった段差でバランスを崩し、そのまま転倒してしまった経験があります。さいわいヘルメットにヒビが入ってくれたおかげで頭部の方は大丈夫でした。

転倒する以前は、まぁ安全のためと思って被っていたのですが、いざ転倒するとヘルメットの重要性を認識させられました。

ただ、ヘルメットを被るのはやっぱり抵抗があると思います(自分のは地味で真っ黒のヘルメット愛用してます)。交通バラエティ番組で某芸人I氏がヘルメットを被っている人の事を"宇宙人みたいなヤツ"と発言したのも問題になりましたね。

もっと気軽に、ヘルメットを被ることが普通となるような環境も必要かもしれませんね。
Posted by さすらいのクラ吹き at January 20, 2011 21:25
トンサンさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
ヘルメットのカスタマイズを実践されてらっしゃるんですよね。ご自分で何でもハンドメイド出来る腕をお持ちなのがうらやましいです。
実際にウェアと合わせづらいとか、似合うものがないなど、ヘルメットのバリエーションが少なすぎて不満を持っている方は多いのかも知れません。

純粋に走りの違いに驚いて、カゴがなくてもママチャリからスポーツバイクに乗り替える人も多いですし、むしろスポーツバイクからは、なるべく余分なものを省きたいという人も多いと思います。そして荷物を運ぶ場合はママチャリと使い分けたほうがいいと考える人もいます。いろいろな考え方があると思います。
別にメーカーの肩を持つわけではありませんが、前かごの付いたスポーツバイクにどれほどのニーズがあるかということについては、それなりにリサーチしているのではないでしょうか。
すなわち、現状ではニーズが少ないと判断しているから作らず、ニーズが出てくれば作るということだと思います。逆に作ればニーズが出てくるのかも知れませんが、そのあたりは、やはり鶏と卵のようなものなのかも知れませんね。
Posted by cycleroad at January 20, 2011 23:43
さすらいのクラ吹きさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
ヘルメットの重要性を痛感される経験をされましたか。かぶっていないで痛感したのでなくて幸いでした。
ころんでも頭は打たないと思っている人も多いかも知れませんが、思いもよらないところで転倒することも多いですから、油断は禁物ですね。むしろ、そういう不測の事態のための防御策ともいえます。
そうですね、その抵抗感が最大の壁でしょう。まわりがかぶっていないから、抵抗があるのも当然です。
結局は自分のことであり、自己責任の話ですから、かぶろうと思った人が自分でかぶればいいだけの話ですが、スポーツバイクに乗る人の中での装着率は比較的高いと思いますので、スポーツバイクがもっと増えてくれば変わってくるのかも知れません。
周りに増えてくれば抵抗感も薄れるはずですが、そこまでいくのが、難しいところですね。
Posted by cycleroad at January 20, 2011 23:57
このサイトからも含めて知識を得るほどに、ヘルメットの必要性を感じます。
想像力と安全感性を高めれば、きっと被りたくなるはず。クルマのシートベルトと同様に、直接的な防御効果だけでなく、カチッと締めることで高速移動体を操る責任感と危険感受性のスイッチが入れば、ママチャリ行動とは決別です。カッコイイとの追い風が吹いて、ヘルメットブームの大きなうねりになればと思います。

今後は乗らないと誓約していたくせに、ブレーキのない競技用自転車でまた公道を走った福岡のワカモノに、道交法違反の略式命令が出たとのこと。逆送、ケータイ、無灯火など含め、指導や取締りを徹底するとともに、自転車や用品の提供者からも、正しい知識の啓蒙に努めて欲しいですね。
Posted by 七九爺 at January 21, 2011 19:25
私は、長距離走る時は被っていますが、近所に行くときは被っていません。
でも、これからは、いつも被るようにしようと思います。
事故は、思わぬ時にやってきますからね!

でも、日本には、楽しい自転車グッズが少ないですね?
国で補助金でも出して、もっと色々な自転車用品が増えると良いですね??
Posted by ヨッシー at January 21, 2011 20:02
七九爺さん、こんにちは。コメントありがとうございます。
そうですね、ママチャリで歩道をのんびり走行しているぶんには、必要性は感じないでしょう。
ただ、ママチャリでも、それなりにスピードが出る時がありますし、そんな時に何かと衝突したり転倒したりすれば、やはり怪我につながります。
場合によってはヘルメットが生死をわけるかも知れません。
現状では余計なお世話と感じる人が大多数だと思いますが、シートベルトと同じように、習慣になってしまれば、意識することもなく、事故死者を大きく減らし、悲しむ人を多いに減らせるに違いありません。
おっしゃるように、自転車に乗る、歩行者とは違うという自覚も促すでしょう。
少なくともヨーロッパ諸国並みには事故死者が減るでしょうし、自転車に乗っての不慮の事故で、年間これだけの人が亡くなるという不幸な状態はなくせるでしょうね。
Posted by cycleroad at January 21, 2011 23:14
ヨッシーさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
そうですね、こんなところで、というところでも事故は起きますし、やはり事故は自宅近くで起きるのが多いという統計があると聞いたこともあります。
せっかく、ふだんはヘルメットをかぶっていたのに..と悔やむのも残念です。
ただでさえ財政難ですから、補助金は難しそうですが、日本の市場の潜在的な可能性は大きいはずですから、メーカーには期待したいところですね。
Posted by cycleroad at January 21, 2011 23:23
 
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