April 07, 2011

気がねさせずに飲ませる工夫

東京では桜が満開となっています。


でも今年は、いつもの年とは様子が違います。夜桜の下でのいわゆる花見酒を自粛する傾向が広がっています。東日本大震災の被災地では、いまだ避難所生活をおくっている方が大勢おられる中で、花見で一杯という気分ではないというのが多くの人の率直な気持ちなのでしょう。

宴会自粛もちろん、年に一度のお花見くらいやりたいという人もあるはずですが、節電が呼びかけられている折りですし、都知事が花見は自粛すべきとしたこともあって、都内の公園などの桜のライトアップは軒並み中止されています。上野公園などの名所は真っ暗で、実際問題として花見酒をするような環境ではないようです。

一方で、むしろ花見の自粛は被災地のためにならないという声もあがっています。日本酒が大きく売れる花見が自粛されれば経済的に二次被害を受けることになるから、どうぞ飲んでくださいと呼びかける東北の酒造会社の投稿した動画が30万回以上も視聴されています。花見による消費は復興支援になるというわけです。

桜の下でバカ騒ぎをするのがいいかは別としても、毎年恒例の花見が自粛されてしまうと、花見の名所周辺の商店街なども大きな打撃を受けるでしょう。日本全体でみても、例年に比べ、そのぶん関連消費も含めて落ち込むことになるでしょうから、経済にとってもマイナスです。

震災で自粛ただでさえ、震災によって日本経済は非常に大きなダメージを受けています。工場や物流網が被災して部品が調達できず、生産に支障をきたしている業界は多岐にわたっています。営業停止に追い込まれた被災地域の企業は数知れず、原発による風評被害なども広がりつつあります。

レジャーや旅行をはじめ、消費全般を控えるムードも広がっており、日本経済に負の影響を与えることが懸念されています。企業の業績が落ち込み、税収が上がらなければ、復興の資金も捻出できません。このまま自粛ムードが続くのは被災地のためにもなりません。

地震による液状化現象で大きな被害を受けた千葉県浦安市でも、施設への被害は軽微だったにも関わらず、東京ディズニーランドが自粛なのでしょうか、いまだに再開されていません。地元の被災者に対する配慮などもあると思われますが、周辺経済に対する影響は小さくないようです。

プロ野球の開幕に向けて、神宮球場に比べて二十数倍も電力消費が大きい東京ドームでのナイター開催が問題となりましたが、その更に十倍以上というディズニーランドの消費電力も問題のようです。停電で苦労している人も多い中での再開は理解を得られないという判断なのかも知れません。

電力使用制限自粛ムードに加え、こうした首都圏の電力不足が日本経済の大きな懸念となっています。夏場に向けて、電力供給の逼迫が予想されます。計画停電は国民生活や企業活動に大きな影響を及ぼすので、夏場の停電を回避するために大口需要家に対する使用制限の導入も検討されています。

企業は西日本への生産拠点の移転や、夜間操業なども検討しています。業界ごとに休みをずらし、1週間の中で電力需要の平準化を目指す動きもあります。こうした努力にもかかわらず、大規模停電の恐れが出た場合に、緊急措置として計画停電が発動されますが、いずれにしろ、経済活動には大きな足かせです。

家庭でも15〜20%の電力削減が求められています。ネット上などでは、エアコンの設定温度を上げたり、コンセントを抜く、こまめに照明を消す以外にも、さまざまな節電の方法が紹介されています。ただ一般家庭に対しては電力を制限するわけではないので、実際の削減量がとうなるかは未知数です。

さて、家庭での節電の方法もいろいろありますが、節電だけでなく、さらに自家発電によって、少しでも電力受給の緩和に貢献する方法はないでしょうか。よくあるのは、太陽光発電パネルや都市ガスを利用したコージェネレーターなどですが、工事費を含め初期費用が大きくなるのが難点です。

自転車発電機

そこで、この“Pedal-A-Watt”です。400ドル程度という気軽な値段で導入出来ます。自転車をこぐ力を使った発電機です。サイクリストにはお馴染みのトレーナーのような形をしており、簡単に自転車にセット出来ます。今まで室内でトレーニングしていたサイクリストなら、これに代えるだけで発電も出来るというわけです。

人力で発電するなんて、マンガに出てきそうなベタな方法ですが、意外に侮れません。普通の脚力の人ならば、125〜300ワットも発電出来ると言います。部屋の照明や、例えば32型の液晶テレビの150ワット、扇風機やノートパソコンの各50ワットなどくらいなら余裕でまかなえる能力です。

仮に、東京電力管内に住んでいる人の5%、20人に1人がこれを使って、1人200ワットを発電したら、合計50万キロワットも発電出来ることになります。今問題になっている福島第一原発1号機の出力、46万キロワットを越えます。机上の計算に過ぎませんが、けっこうな値になるものです。



もちろん実際にそれだけ発電するのは現実的ではないですが、人がペダルをこぐパワーなんてと思えば、意外に大きな能力があるものです。自転車をセットするのではななく、直接チェーンを発電機につなげれば、ロスも少なくなって、もっと出力は上がるでしょう。

スポーツジムで汗を流す人など、ふだん運動をする人は多いはずです。会社帰りなど、夜の電力消費のピーク時に、これで1時間程度でも運動して発電する人が増えたら、差し引き、かなり電力需給に貢献するのではと思ってしまいます。ダイエットやトレーニングが発電にもなって一石二鳥です。

Crowne Plaza hotel

自転車をこいで発電してもらうなんてナンセンスに思えますが、実は実践しているところもあります。デンマークはコペンハーゲンのホテル、“Crowne Plaza hotel”です。ここではお客さんが任意で15分、自転車発電機をこぐことで36ドル分の食事券がもらえると言います。

実際に15分の発電量が32ドルもあるとは思えませんが、ただ値引きするよりも、この方法なら宣伝効果やイメージアップも見込めます。うまいアイディアです。さすが省エネや温暖化ガス削減の意識の高いデンマークならではのサービスと言えるでしょう。

節電対策ふだん、当たり前のように消費している電力ですが、自分でペダルをこぐことで、その出力を実感し、エネルギーの使いかたをあらためて考えるきっかけとなるかも知れません。実際の発電量は少なくても、省エネを促す啓発効果も期待出来ます。

この自転車発電、もっと積極的に使ってみる手はないでしょうか。例えば、最初に発電エアロバイクで汗を流し、シャワーを浴びて一杯飲む、なんて発電バーがあったら面白そうです。自分で発電した電力で飲むというスタイルにするわけです。さらに酒やつまみが東北産なら復興支援にもなります。

節電が呼びかけられる中、飲み屋に寄って電力を使うのも気がひけるという心理が働くのか、消費が伸び悩んでいるようです。実際の発電量はともかく、自ら発電してもらうことで、そうした自粛心理も軽減できるでしょう。節電しつつも過度な自粛はせず、楽しみながらこの夏を乗り切る方法を、考えていきたいものです。





こともあろうに「津波は天罰だ。」と言い放って物議を醸した都知事が一転して「同胞の痛みを分かち合う連帯感だ、(太平洋)戦争の時の日本人の連帯感は美しい。花見は自粛すべき。」と言ってライトアップ中止ですから、各方面から反発が出るのは無理もない感じがしますね。

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この記事へのコメント
自転車をこいで発電とは、素晴らしいの一言です。

日本でも100ボルト出力のが発売されれば、新し物好きの日本人は買うでしょうね。

僕も欲しいな。

トレーニングジムでは電気を使って汗をかいて、エアコンのきいた部屋で・・・。

この運動量が即エネルギーに転換されれば最高ですね。

その分のホテル代を安くしてくれるなんて、嬉しい。

ライトアップは自粛しても、花見はあってもいいのでは。
Posted by 二浪独河 at April 08, 2011 17:13
Pedal-A-Watt 超欲しい!
これなら節電になるし、部屋でお酒飲みながら漕げますよね!(笑)
飲酒運転になりませんよね?

私も酒大好きなんですが、残念ながら日本酒飲めないので東北の助けになりません…
(鹿児島産焼酎ばっかり飲んでる…)

お花見は、ゴミを散らかさなければ何の問題も無いと思います。
私は隅田川の近所なので、毎年お花見と花火の時には山積みの放置ゴミにうんざりさせられます。
モラルを守って日本の美しい四季を楽しみたいですね。
Posted by youshookme at April 08, 2011 22:28
二浪独河さん、こんにちは。コメントありがとうございます。
欲を言えば、こいだ分が蓄電することが出来て、その電力をこぎ終わった後に使えるといいですね。
トレーニングジムが、街中のちょっとした発電所になったら面白いですね。
非常用電源にすることも考えられます。災害時の避難場所に常備しておいて、ポンプや照明などの必要な電力を、交代で発電するなんて使い方もあります。
計画停電の時に、どうしても電力が必要な場所へは、ボランティアで発電しに行くなんて使い方も考えられるかも知れません。
いろいろ使えそうですよね。
Posted by cycleroad at April 08, 2011 23:33
youshookmeさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
もちろん、部屋でこげます。一般の人は、自転車を部屋に持ち込むという感覚がないかも知れませんが、サイクリストの中には、ローラー台など室内でトレーニングする人も多いと思います。
これなら飲みながらでも、テレビ見ながらでもこげます。トレーニングと発電も同時に出来て時間の節約にもなりますね。
部品や資材なども含め、意外に東北の産品は多いですから、直接に日本酒でなくても、消費を控えないことが復興に貢献することになるでしょう。
そうですね、私もバカ騒ぎやゴミの投棄などモラルにもとる行為を自粛すれば、花見酒をしてもいいと思います。
Posted by cycleroad at April 08, 2011 23:52
東北のお酒ばかり飲んでいると、他の地方のお酒が売れないし、環境負荷の少ない地産地消か好きなメーカーでもと思います。私自身は手がかかる息子がいるので、酒飲めなくて、お米食べて応援します。

スポーツクラブのエアロバイクは無駄に電気使ってますね。走行距離や消費カロリーが表示出来るから楽しいです。これからは発電量を表示して、電力として使える道筋がつけばと思います。

ママチャリが電池不要で回転が重くならないハブダイナモのライトがついているのに、スポーツタイプの自転車は電池式が多いのはどうしてでしょうか?節電ならハブダイナモでしょう。ついでに携帯も充電出来ると助かります。通話しながら自転車に乗れない位置に充電設備をつけたら一石二鳥です。
Posted by ジャムおばさん at April 09, 2011 07:33
ジャムおばさんさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
なるべく東北のお酒をと言うだけで、飲む人は、産地にこだわっていては足りないので、他の地域の酒も飲むでしょうし、東北以外だからと言って売れない心配はないでしょう(笑)。
スポーツジムでエアロバイクこぐなら、外で自転車に乗るほうが、よっぽど電力を使わなくて済むわけですが、それを言っても仕方が無いので、発電自転車は有意義な選択肢になるかも知れませんね。
ハブダイナモ自体の重さもありますし、構造的、取付の問題、他のパーツとの兼ね合いもあるからでしょう。パーツとしてのスポーツバイク用のハブダイナモがないことも理由でしょうか。
使わない時に余計なものをつけたくないというのもあるのでしょう。
考え方は正しいと思いますが、通話しながら乗れないようにするにはいろいろ問題がありますし、商品としてはあまり売れないでしょうね。
Posted by cycleroad at April 09, 2011 08:17
食物だけでなく電気も自給自足。素晴らしいアイデア。国が各家庭に一台ずつ無料で配布し電力の供給をお願いする。供給された電力量に応じて税金を割引する。これだけで恐らくほぼ全ての日本国民が競い合うようにして電力を供給すると思われる。加えて、「どれくらい発電したのか」とか「我が家では一日で一体どれくらいの電力を消費しているのか」と言った事が一目で分かるようなシステム(装置)も同時に無料で配布する。国が負担する初期投資としては大きいが先を考えればほぼ¥0に等しいと思われる。
Posted by passerby Ω at April 09, 2011 13:40
エコは偽善だなんていう専門家もいますが偽善とか言ってられない状況になってしまいました
電気を使わず物を買うのが一番、被災地のためになると思います


石原さんの不思議発言は何なんでしょうね
連帯しなきゃ命にかかわるんだから美しいとかいう話じゃないと思うんですけど
Posted by 職人気取 at April 09, 2011 17:10
 こんにちわです、何時も楽しく読ませて頂いてます。
自転車(人力)発電、いわゆるマイクロ発電系ですね。
#電動アシスト付き自転車の回生充電もある意味マイクロ発電ですが、、
 日本だと趣味人な方々が同じような機材で自転車に乗って発電したり、ハブダイナモ付きのリムをそのまま使っての風力発電や水力発電に挑戦なされている方も多いですね。
 今までは安定・安価に電気供給されていたのでこういった発電はコスト面で採算が取れなかったのですが、今後はそうも言えなくなるかもしれません。
 目黒川ではこんなこともするみたいです、、
http://bit.ly/hemaFB

 気兼ねなく花見とお酒と言うと、サイクリストだとコレやってみたいですよねぇ〜
http://www.bierbike.de/
http://www.weinbike-freiburg.de/
日本だと法律的に色々と問題があるんでアレなのですが。
Posted by Tomohiro at April 09, 2011 18:06
passerby Ωさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
そうですね、各家庭に無料配布してもいいくらいですね。節電に積極的に協力している人が多い今なら、自家発電による更なる節電も期待できそうです。
いざ停電という時でも、自転車による自家発電で、自分の家の照明やテレビ、水道のポンプくらい供給できるというのは心強いでしょう。
長期的なインセンティブがないと続かない場合も多いと思うので、発電に応じて割引するのも一案だと思いますが、人力で発電できるワット数は大きくないので、金額的な効果は、あまり実感できないような気もします。
ただ、大規模に配布するなら、この夏の電力不足を補う一助にはなるかも知れませんね。
Posted by cycleroad at April 10, 2011 22:06
職人気取さん、こんにちは。コメントありがとうございます。
そうですね、節電しなければ計画停電せざるを得ず、信号も止まれば電車の本数も減るなど、市民生活に大きな影響が及びますし、産業、日本経済への打撃も大きくなりますから、エコだの何だのと言っていられる話ではありませんね。
彼は、何か失言したとしても、作家ということで誤魔化されてしまい、許されてしまう部分があるようです。
Posted by cycleroad at April 10, 2011 22:35
Tomohiroさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
考えようによっては、一生懸命自転車をこいでも、200ワットくらいですから、効率がいいとは言えませんね。
ただ、発電所から送電線を通して大きなロスをしながら送られる電力と違い、その場で作ってその場で使うという意味では、効率的と言えるかも知れません。
自転車乗りが、どうせトレーニングで室内で自転車をこぐなら、ついでに発電するという意味では合理的ですね。今までは単に熱として捨てていたエネルギーですから。
確かに、停電などなく、普通に電気が使えていたら、あまり注目されることもないでしょう。
目黒川の人力ライトアップは、私もテレビで見ました。面白い使い方だと思います。
エコという観点からの人力のライトアップは、これまでもイベントなど世界各地でも時々行われているようです。
ビアバイクですね、このプログでも過去に取り上げたことがあります。
道交法では想定されていないのは間違いありませんが、どうなんでしょう、ハンドルを握る人だけは飲んでいなければ、飲酒運転にならないような気もしますが..。
Posted by cycleroad at April 10, 2011 23:03
ちょうど今朝そんな記事を書いたところでした。

初めまして、宮城県の長男と申します。

あまりに思っていたこととぴったりの物で、断りも無くリンクを張ってしまいました。事後報告で申し訳ありません。

今までの練習が全て発電されていたらと思うと・・・

これからは、日本の電力業界を背負って練習に励めそうです!^0^
いやー、感動です。

貴重な情報ありがとうございました!
Posted by 長男 at April 23, 2012 16:47
長男さん、こんにちは。コメントありがとうございます。
いえいえ、リンクを張っていただくのは一向に構いませんよ。
ローラー台などでの練習は、もちろん練習として役に立っているわけですが、せっかくのエネルギーを熱としてに無駄に捨てていたと考えると、いかにも、もったいない気がしますよね。
街にあるトレーニングジムやフィットネスクラブのエアロバイクなんかも、同じです。
うまく改良すれば、小電力ですが、街中の人力発電所になりそうですね。
Posted by cycleroad at April 23, 2012 23:44
 
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