内閣府の原子力安全委員会によれば、国際評価でレベル7という最悪の原発事故となった福島原発では、いまだに1日当たり百数十テラ・ベクレルという規模で放射性物質が放出されていると言います。震災後の世論調査でも、国民の不安のトップが福島原発の今後の推移です。
東京電力は原子炉の安全な状態である冷温停止状態まで、最短でも6ヶ月から9ヶ月かかるとしていますが、具体的な収束への見通しは立っていません。一時と比べれば小康状態を保っているように見えますが、安定冷却の道のりを憂慮する専門家もあり、依然として楽観は許されない状況にあります。
震災前までは、原発に付属する変電施設が火事になっただけで大騒ぎでした。わずかでも放射能漏れがあれば大問題だったでしょう。それが、あろうことか原発が爆発するという事態に至り、大量の放射性物質が周囲にまき散らされるという、以前だったら考えられなかったような状況になっています。
放射性物質の流出量は、史上最悪と言われるチェルノブイリの1割程度と言われていますが、これには海洋への流出が含まれていません。発生から10日でほぼ止まったと言われているチェルノブイリと違って、福島ではいまだに放出が続いていることも懸念されます。
今回の事故で、原子力発電所の安全神話は完全に崩壊したと言っていいでしょう。本震と比べ、数百分の一のエネルギーに過ぎない今月の余震でも、女川原発では設計で想定する以上の揺れを観測し、外部電源を一時喪失する事態に陥っています。今まで深刻な事故がなかったのは、単に幸運だっただけと言わざるを得ません。
福島原発の今後の推移についても、原子力が専門である人ほど深刻な見方をしているケースが少なくありません。不安を煽るつもりはありませんが、今のような状況でおさまっているのは、むしろ幸運であり、もっと酷い状況になっていても不思議ではなかったとか、今後の状況の改善は非常に困難な道と指摘する専門家もいます。
チェルノブイリとは違い、福島では原子炉自体が爆発して、大量の放射性物質が飛び散る心配はないと言われています。また、再臨界が起きて、原子炉が暴走するような恐れは無いとも言います。専門家が言っているのですから、おそらくそうなのでしょう。
しかし、再臨界が起きないなら、冷却水にホウ素を入れる必要はないはずです。万一の為なのでしょうけど、ホウ素は再臨界を防ぐために入れているわけで、裏を返せば、全く心配が無いとは言えないことになります。炉心が溶融して落ちれば、燃料が溶けて固まるなど再臨界に至らないとは言い切れないのでしょう。
また、圧力容器内に窒素を注入しているのは、原子炉が水素爆発してチェルノブイリ化するのを防ぐためです。予防的措置をとるということは、可能性がないわけではないことを示しています。そのほか、炉心が溶融して、大量の水と接触しておこる水蒸気爆発の可能性も低いかも知れませんが、全くゼロとは言えないはずです。
こうした事態に対し、多くの国民が福島原発の今後の推移に不安を感じるのは当然です。調査によっても多少違いますが、国民の8割から9割に上っています。他の原発で事故が起きる不安についても、同じくらいの割合の国民が不安を感じていると回答しています。
ところが、原子力発電所を今後どうするかという設問になると、少し様子が違ってくるようです。読売新聞の調査によれば、「現状を維持すべきだ」と答えた人が最も多く46%、「減らすべきだ」が29%、「すべてなくすべきだ」は、12%となっています。
朝日新聞の調査では、「減らす方がよい」と「やめるべきだ」が合わせて41%でした。4年前の調査と比べて否定派の割合は増えているとは言うものの、「増やす方がよい」と、「現状程度にとどめる」が合わせて56%と、容認派が過半数となっています。
毎日新聞の調査では、「原発は減らすべきだ」が41%で「全て廃止すべきだ」の13%と合わせて54%がエネルギー政策の見直しが必要との認識を示しています。しかし、「やむを得ない」も40%に上るなど、容認するという人も多いことがわかります。
各紙でバラツキがあるものの、今回のことで、原発は廃止すべきと考える人は必ずしも多くありません。個人的な感想としては思ったよりも少ないという印象です。ネット上でも、こうした結果を意外に感じた人は多く、「すごい違和感」「容認派が過半数を超えているのに驚いた」といった意見も多いようです。
テレビで政府の発表だけを聞いていると、ただちに健康への心配はないと繰り返していますので、それほど深刻な事故とは感じていない人も多いのかも知れません。もっと酷い危機的な事態が起きるかも知れないとは思ってはいない人も多いのでしょう。
多くの人は、不安を感じながらも容認させるを得ないというところでしょうか。すでに電力の3割を原発に頼っている以上、簡単に廃止するのは無理という現実的な判断があるに違いありません。首都圏では、今回の計画停電で電車が止まったり、不便や不自由な生活を経験した人が多いことも背景にありそうです。
今回、計画停電が無くなってからも、首都圏などでは以前と比べて全体的に照明が暗くなっています。いかに電力を無駄に使っていたか気付いた、今までが明るすぎたという感想を持つ人も多いはずです。電力を自由に使えた事のありがたさを感じると共に、大きく依存している現代の生活も実感したのではないでしょぅか。
日本の原発始まって以来最悪の事故に、原発周辺の住民は避難を余儀なくされ、広い範囲で多くの人が苦しい生活を強いられています。しかし、空気中の放射線量の増加や水道水の摂取制限、野菜や魚への不安といったくらいの影響しか受けていない首都圏の住人、あるいは西日本の人とは、やはり温度差もあるのでしょう。
おそらく、こうした諸々の背景もあって、これだけの事故にもかかわらず、原発を容認せざるを得ないと考えている人が多いのだと思います。確かに、すぐ原発を廃止しろと言うのは現実的ではないと思います。しかし、それでも、原発は減らしていくべきなのではないでしょうか。
原発をやめるのは、人類にとって進歩の放棄だと言う人もいます。例えば飛行機も、墜落して人が死ぬリスクを乗り越えて進歩してきました。何の技術でも、リスクをとって挑戦してきたからこそ進歩があるのであって、挑戦をやめるべきではないという主張です。
しかし、原発の場合はリスクが大きすぎます。飛行機は乗った人が落ちるだけですが、原発は周辺の多くの人を危険に晒し、大きな被害を与えます。もし最悪の事態が起きれば、非常に広範囲、あるいは国境を越えて世界的に影響が及びます。進歩の必要性は否定しませんが、人類が使うべき技術なのでしょうか。
兵器への転用を考えると、人類を滅亡に導く可能性のある技術ということもあります。放射性廃棄物の最終処分場も確保できておらず、出来たとしても数万年に渡って廃棄物を管理する必要があります。子孫に負担を先送りする無責任な技術、人類が制御や管理しきれない技術であり、ほかの方法を探るべきではないかという考え方もあります。
今後、この事故は日本経済に大きな影響を及ぼすでしょう。すでに農作物や魚介類への被害が出ていますが、地元の企業だけでなく、日本の他の地域から輸出される工業製品にまで国際的な風評被害が広がりつつあります。訪日外国人観光客は激減し、これもいつまで続くかわからず、観光への打撃は甚大です。
補償も莫大です。東電が負担出来る範囲を越えれば、最終的には電気料金や税金といった形で私たちが負担せざるを得ません。また、福島県の広い範囲で土壌の除染を行うだけでも膨大な費用がかかります。原発の再保険料などは高騰し、今後の原発のコストにもはね返るでしょう。
原子力はコストが安いのが魅力と言われて来ました。しかし、政府の原発立地地域への補助金など、直接ではないコストを加えれば、決して安くないと言います。さらに、今回のような莫大な費用がかかるリスクを考えれば、むしろコストの高い発電方法ということになるでしょう。
ウランが国内で産出されない以上、エネルギーの海外依存の脱却にも寄与しません。地震が少なく、大津波のリスクのない国ならいざ知らず、日本での原発は、採算が合わないということになるはずです。それを今まで、安全神話の元に国民を欺いてきたのは、莫大な金額規模になる原子力利権と言われています。
ドイツなどでは、脱原発へ動いています。多くの国で原発に対する反対運動も起きています。これだけの被害を出した日本が、原発容認でいいのでしょうか。今後、日本経済にボディブローのように効いてくるはずです。日本の国難を引き起こした原発は考え直すべきではないでしょうか。
もちろん、すぐに原発停止せよと言うのではありません。しかし、ゆくゆくは原発を廃止していくという決定を下さない限り、原発は無くせないと思います。逆に、将来的に原発に頼れない、原発と決別すると決めれば、原発以外の発電技術の開発が大いに進むに違いありません。
風力発電や太陽光など、クリーンエネルギーと呼ばれるものでは、まだまだ力不足であり、原発の穴を埋めるには至らないのは確かでしょう。しかし、日本での発電量は微々たるものですが、クリーンエネルギーの導入へ踏み出している国では、政策的な後押しもあって、飛躍的に伸びている国もあります。
日本の太陽光発電パネルなどの技術は高いものがあり、日本でも政策が変われば、十分に原発の穴を埋めると話す専門家もいます。まだコストは高いですが、それは、送電網を握る電力会社が普及を阻んでいるからであり、送電と発電が分離され、自由化されれば、大量生産されて十分に価格競争力も出るそうです。
日本には化石燃料が乏しいですが、風力や太陽光は、日本の国産エネルギー開発にもなります。そのほか地熱とか、海も利用出来るはずです。潮力発電、海上風力発電などもあります。海水と真水の浸透圧とか、深海との温度差とか、海流の流れで発電するなど、海を利用してエネルギーを得る方法だけでも、いろいろあります。
実は、その中には意外にも大きな電力が得られる有望な方法もあって、一部の海外の企業では研究が進んでいると言う話も聞きます。原子力に頼りきっていては、こうした新しいクリーンエネルギーの開発が進まず、いつの間にか技術的に遅れてしまう危険性もあるでしょう。
家庭に燃料電池を普及させる方法もあります。燃料電池はクルマよりも家庭に入ると画期的な革新になると言われています。発電所から送電すると大きな電力のロスが出ますが、それがなくなるというメリットが大きいからです。そのほか、都市ガスなどを使って家庭で発電する方法もあります。
日本は年間の降水量も多いので、水力発電にもまだ可能性があります。もちろん、新たにダムを造るのは無理としても、マイクロ水力発電と呼ばれる小さな発電装置をつくる方法もあります。日本にたくさんある河川、小さな水路や農業用水、上下水道など、いたるところに設置出来ます。
ビルなど上の階からの、高低差による普通の排水でも利用が可能です。無数の利用可能なエネルギーが、実は手つかずになっていると言われています。出力は小さいですが、たくさん合わせれば大きな電力になります。遠くへ送電せず、その場で使うならば、送電ロスも小さくなります。
このほかにもバイオマスとか、多くの方法があるはずです。一つ一つは大きな出力が見込めなくても、いろいろな方法を採用すれば、発電方法を多様化し、リスクを分散することにもなります。国内に埋もれているエネルギーを使うことで海外依存も減らせます。送電や発電の自由化、スマートグリッド化と共に進めていくべき課題です。
こうしたエネルギーの改革を阻んできたのが、ある意味、原発であり、原子力村と呼ばれるような巨大な原子力利権です。その催眠術は絶大な効果をあげており、それは、これだけの事故にも関わらず、多くの人が現実的に考えて、原発を使わざるを得ないと思っているのを見ても明らかです。
一朝一夕には原発を廃止出来ないのは確かです。原発を廃止して3割電力が減っても、生活水準を落として節電すれば可能だと言う人もいますが、それでは多くの人の理解を得られません。しかし、長期的に原発を他の発電方法に転換していくのは可能なはずです。国民の意思で、徐々に原発への依存度は減らせるはずです。
例外として、日本各地の原子力発電所の中には、すぐ止めたほうがいいものもあると思います。例えば、中部電力の浜岡原発など、東海地震の震源域の上にあって危険度が高く、施設が古いこともあり、すぐにでも停めるべきだという人は少なくありません。地震が起きてからでは遅すぎるのは間違いありません。
無駄に明るいなど、生活スタイルを見直すことも必要でしょう。しかし、生活水準を落とさなくても、発電方法を見直すならば、徐々に原発依存は減らしていけるはずです。そのためには、まず仕方がないと諦めずに、原発への依存を減らしていこうと、多くの人が考えなければならないと思うのです。
普通の地震でも簡単に外部電源を喪失してしまう原発は、もはや信用出来ません。各地の原発では、あわてて電源車の配備をしていますが、そのほとんどは、冷却装置を動かす電力としては足りないと言います。実は対策として不十分なのです。こんな泥縄的で見かけだけの対策では不安は解消されません。
国民が原発はいらないと考えるならば、脱原発は達成できるはずです。原発だけが技術ではありません。私は元々、反対でも推進でもありませんでしたが、今回の事故で、原発に疑問を感じるようになりました。いろいろな考え方があると思いますが、ぜひ、多くの人に考えてほしい問題だと思います。
自転車とは直接関係のない話題ですが、世論調査の結果が気になったので取り上げてみました。
10年以上前に東京電力の原子力発電所見学ツアーに参加しました。水に沈んだ長い棒を見ました。今から思えば建屋の中まで見学したみたいです。同時は見学しても、発電の仕組みは分かっていませんでした。
燃料棒から電子を取り出すのかと勘違いしてました。原子力も火力も水力も清掃工事の発電もタービンを回しているだけなのですね。
思いきって、我が家は太陽光発電システムを買いました。自家用車1台分の費用でした。
原発反対を唱えて、電気使い捲る人は如何なものかと思います。原発反対するのなら、節電や自然エネルギーに出資すべきです。
将来、我が子を原発現場で働かせたかいです。出来たら、違う分野で活躍して欲しいです。今、福島原発で働いている方に感謝です。ただ、廃炉に向けて命がけなのも、虚しいです。