May 16, 2011

クルマと自転車との使い分け

GMが今年、世界販売台数で世界一に返り咲く見通しだそうです。


抜き返されるトヨタは、言うまでもなく今回の震災が大きく響いています。一連のリコール問題によるダメージも影響しているのでしょう。ゼネラルモーターズと言えば、つい一昨年、破産申請して事実上国有化されたのも記憶に新しいところですが、さすがに77年間も世界一だったメーカーです。

もちろん国が救済したからとは言え、わずか2年前には、存続すら危ぶまれていた企業とは思えません。同じく破たんしたクライスラーやフォードを合わせた、いわゆるビッグスリーは、ここのところ、いずれも大きく売り上げを伸ばしています。一方、トヨタを含めた日本勢は市場全体の伸びを大きく下回る状況となっています。

最近のアメリカ市場では、ガソリン価格の高騰で小型車の人気が高まっています。でも従来のように、ガソリンを食う大きなアメリカ車に対し、燃費のいい日本車という構図には必ずしもなっていません。震災で日本車の供給が滞っていることもありますが、それだけではないようです。

This image is in the public domain.GMは、製造業として世界最大の負債を抱え、債務超過に陥り破たんしました。時代の流れに逆らって大型車にこだわり、そのツケで不振に陥った販売を値引きで繕っていました。金融子会社にローンを組ませて返済能力の無い人にまでクルマを買わせ、売り上げをかさ上げするようなことまでしていたと言われています。

まさにサブプライムローンのクルマ版であり、GMはもはやクルマ会社ではなく金融会社だと言われた所以です。一方で、クルマメーカーの根幹をなす新車の開発まで外部に委託するようになっていたことに同業他社も驚いています。巨額の年金や退職者医療の債務などもあり、行き詰ったのもゆえなきことではありません。

しかし、環境への意識の高まりと顧客の志向の変化で、燃費の良い小型車やハイブリッドカーにシフトする市場に背を向けたGMは、もはや存在しません。時代の流れに逆行し、高い利益率だったフルサイズのSUVやピックアップトラックなどにこだわるあまり、逆に小型車部門を整理・縮小させたGMは過去のものです。

国の救済を受けて新生GMとなり、債務が整理されて財務面を劇的に改善させたばかりでなく、小型車のラインナップを強化し、次世代の環境対応車の開発にも力を入れるようになりました。日本車に対して、コンパクトカーでも十分対抗しうるようになってきているようです。

GMC Granite

私は、クルマ業界に詳しいわけではなく、GMの個々のモデルもよく知りません。たまに海外でGM車を借りて運転することはありますが、デカイなという印象しかありません(笑)。当然ながら、このGMの復活の評価や今後の業績の推移を予測することは出来ません。

ただ、小型車を充実させ、顧客の求めるものに目を向け始めているのだろうなという印象はあります。そのことは、デトロイトで行われた昨年の北米国際自動車ショーに出品されていたコンセプトモデル、GMのブランドの一つGMCの“Granite”などを見てもわかる気がします。

大型のSUVや高級ピックアップトラックのブランドというイメージのGMCですが、この“Granite”は、GMCのこれまでのモデルでも最小のクルマです。全長4097mm、全幅1786mm、全高1536mm、ホイールベースは2631mm、エンジンは1.4リットルと言いますから、SUVですが十分に小型車です。

GMC GraniteGMC Granite

小型車としてのスペックもさることながら、私が面白いと思ったのは、独自の折りたたみ式シートを採用し、自転車の前輪を外さないで、そのまま収納出来るようになっていることです。小型とは言えSUVですから、マウンテンバイクなどを積んで出かけるケースを想定しているのでしょう。

ユニークなのは、片側の前後2席をたたむことで、自転車をそのまま積むスペースをつくっていることです。ドアは観音開きにすることで、大きな開口部をつくり、自転車を積みやすくしています。フローリングにも対候性の素材を使うことで、泥汚れなどに強い仕様となっています。

SUVとは言え、わざわざ自転車を積むことを想定するクルマは、そう多くないでしょう。ましてやコンパクトなモデルです。後部のカーゴスペースでは、とてもそのまま自転車は積めないわけですが、片側の前後の座席をたたんで積めるようにするとは、簡単なことのようですが斬新なアイディアです。

GMC Granite

メーカーは、クルマに乗る人は自転車に乗らない、あるいはクルマを買ったら自転車に乗らなくなると無意識に考えているのでしょう。実際にそうなのかも知れませんが、あまり自転車を積みやすくしたクルマというのはお目にかかりません。クルマメーカーが自転車の搭載を意識するのは珍しいと思います。

SUVとして、MTBなどを積んで出かけることを想定しているのは間違いないですが、車体をコンパクトにして、狭い都市部の道路での優れた操作性を実現するというコンセプトからすると、それだけではないでしょう。つまり、都市でクルマと自転車を併用するという生活スタイルを意識しているように思われます。

ただ単に自転車を積むだけなら、普通のクルマでも積めます。ラゲッジスペースが狭ければ、タイヤを外せばいいだけです。もちろん、クルマの後部やルーフに専用のラックを取り付ければ、どんなクルマでも、自転車を何台か積むことは可能だと思います。



それを、わざわざタイヤを外さずに載せられるようにしているところに意味があります。趣味のサイクリストならばタイヤを外すくらいワケないですが、シティサイクルなどタイヤが外せない場合や、タイヤを外すことに、あまり馴染みがない人も多いと思うので、このことの持つ意味は小さくないはずです。

例えば、クルマで都市部へ通勤する際、渋滞が始まる手前、都市の周辺部にクルマを停め、あとは積んでおいた自転車を使う、パークアンドライドなんていうスタイルも考えられます。都市部へ出かけた際、中心部であちこち移動するには、自転車の方が便利ということもあるでしょう。

家族の誰かが雨に降られた時、迎えに行って、自転車ごと持ち帰るなんてシーンも考えられます。もちろん、自転車を積んで遠くまで出かけ、そこを拠点に自転車で走り始めるという用途でも使えます。MTBに限らずロードでも、ツーリングの行動範囲が広がることになります。

そのほか、いろいろなシーンでクルマと自転車を使い分ける人にとっては重宝するに違いありません。いちいちタイヤを外さないで済むので、日常のちょっとした用途でも、気軽に自転車をクルマに積んで出かけられるというのは便利なのではないでしょうか。

GMC GraniteGMC Granite

この“Granite”、残念ながらデトロイトショーに出品されたコンセプトカーの段階です。個人的には市販されたら面白いと思いますが、果たしてこのまま発売されるかは不明です。ただ、昨今の環境意識の高まりで、自転車の活用が見直されている中、クルマメーカーとしても自転車を意識するところがあるのかも知れません。

アメリカでも、少なくとも都市部では、昔のようにクルマ優先、まずクルマありきの意識ではなくなってきています。大きくて立派なクルマをつくれば黙っていても売れる時代ではありません。メーカーのほうでも、時代の趨勢や市民の生活スタイル、顧客のニーズや意識の変化を見定めざるを得ないのは確かでしょう。

市民だけでなく、行政も自転車の活用に力をいれ、少なくとも都市部では、なるべく化石燃料への依存を減らそうとしています。クルマも自転車との積極的な棲み分けを意識すべき時代なのかも知れません。新生GMがそんな柔軟な発想を持っているならば、その将来にも期待がもてそうな気がします。





枝野長官も言っていましたが、東電は、日本にどれだけ損害を与え、これから与えるのか、世間からどう見られているのか、全くわかっていないのでしょうか。とんでもない会社ですね。

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この記事へのコメント
日本はクルマ社会だから自転車が普及するとクルマが売れなくなって経済がだめになるという意見も聞きますが、自転車とクルマの欠点をお互いが補うようにすれば共存できそうですね

Posted by 職人気取 at May 20, 2011 07:24
職人気取さん、こんにちは。コメントありがとうございます。
都市部以外では、いくら自転車が普及しようが、依然としてクルマが必需品という地域も多いと思います。
都市部でクルマが売れなくなるのは、自転車の普及が原因と言うより、公共交通が充実していてクルマの必要性が低いからという部分が大きいと思います。もちろん経済性などの判断もあります。
若年層を中心に、クルマに魅力を感じないとか、もっと他のものにお金を使う、レンタカーやカーシェアでいい、など価値観の変化も大きいでしょう。
クルマを自転車だけで代替するとは限りませんし、むしろ、そういう人は少ないと思います。用途的に重ならない部分も多いはずです。
つまり、クルマと自転車は二者択一ではなく、使い分けるもので、おっしゃるように当然共存できると思いますね。
Posted by cycleroad at May 20, 2011 23:58
 
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